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サーバー水冷技術とは?空冷との違い、DLC・リアドア水冷・液浸冷却の仕組みと選定ポイント

2026.11.05

GPUエンジニア

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サーバー水冷技術とは?空冷との違い、DLC・リアドア水冷・液浸冷却の仕組みと選定ポイント

生成AIやLLMの開発に活用されるGPUサーバーの消費電力と発熱量は急速に増加しています。従来の空冷だけでは対応が難しいケースも増え、サーバーを液体で冷やす「水冷・液冷」の導入検討が現実的なテーマになりつつあります。

サーバーの水冷技術には、リアドア水冷、DLC(Direct Liquid Cooling:直接液冷)、液浸冷却など複数の方式があります。各方式は冷却対象と導入条件が異なるため、施設と運用の要件に合わせて選定することが重要です。
本記事では、GPUサーバーで水冷・液冷が求められる背景、空冷との違い、主な液冷方式の仕組み、導入時の確認ポイントなどを解説します。

1. サーバー水冷技術が求められる背景

水冷を検討する背景には、生成AI・LLMの開発に利用されるハイエンドGPUの消費電力と発熱密度の増加があります。ここでは、GPUの世代別の消費電力と、空冷では対応が難しい理由をおさらいします。

1-1. GPUの消費電力と発熱密度の推移

データセンター向けGPUは、世代が進むにつれて公称消費電力(TDP/TGP/Power Limitなど、指標は製品ごとに異なります)が段階的に大きくなっています。
NVIDIA®の GPU世代ごとの傾向は次のとおりです。

製品・構成 電力の対象 公称電力・ラック電力 特徴・補足
NVIDIA H100 SXM GPU単体 最大700W 学習・推論両用の主力GPU。空冷対応構成も存在する
NVIDIA H200 SXM GPU単体 最大700W H100と同等の消費電力でメモリ容量を141GB HBM3eに拡張
NVIDIA B200 GPU単体 最大1,000W
  • NVIDIA Blackwell世代のデータセンター向けGPU
  • NVIDIA DGX™ B200ではGPU1基あたり700W(デフォルト設定例)
  • 大規模AI学習・推論に対応
NVIDIA GB200 NVL72 ラック全体 約120kW
(参考:NVIDIA「DGX GB Rack Scale Systems User Guide」)
  • NVIDIA GB200 Grace™ Blackwell Superchip(Grace CPU 1基+Blackwell GPU 2基をNVIDIA NVLink™-C2Cで接続した構成)を36基搭載し、ラック全体でBlackwell GPU 72基+Grace CPU 36基を集約
  • 水冷を前提としたラックスケール設計

(自社調べ)

このように、GPU単体で700W〜1,000W級、ラック単位では100kWを超える製品が登場しています。1,000Wというと家庭用のドライヤーや暖房器具に近い電力で、これを空気の力で冷やすのが難しいことは体感的にもご理解いただけるかと思います。

世代を追ってGPU単体の公称電力・ラック電力が拡大してきたことで、GB200 NVL72のように液冷を前提としたラックスケール設計が公式リファレンスとして提供されており、従来の空冷方式で想定されていたヒートシンク前提の熱設計とは条件が大きく異なります。

1-2. 空冷では対応が難しい領域

空冷は、サーバー筐体内のファンで空気を循環させ、ヒートシンクを介して熱を排出する方式です。長らくサーバー冷却方式の主流となってきた技術ですが、GPUの発熱量が増えると、次のような問題が発生します。

  1. ラック密度:1ラックあたりの消費電力が数十kW級になると、空冷ファンだけでは吸排気の熱バランスを保ちにくくなる。NVIDIA DGX™ H100とNVIDIA DGX™ B300の公式資料には、DGX H100 4台構成で約40.8kW、NVIDIA DGX™ B300 2台構成で推定ピーク約39.4kW(AC PDU+空冷)、DGX B300 4台構成で推定ピーク約76kW(DCバスバー+アクティブRDHx併用)といった構成例が示されており、上限は製品・台数・給電・冷却設計・給気条件で変動する。
  2. チップ表面温度:チップの単位面積あたりの発熱量が大きくなると、ヒートシンク等では十分に放熱できず、GPUの温度制御が困難になる。
  3. サーバー室の環境:排熱を吸収するための空調負荷が増加し、データセンター全体のPUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)を悪化させる要因になる。

こうした条件では、ラック側や施設側の設備追加だけでは吸収しきれず、冷却液を熱交換媒体とする水冷方式が選択肢として現実味を帯びてきます。

NTTPCは、NVIDIAエリートパートナーとして、GPUの世代選定から電力・冷却設計、ラック・水冷対応データセンターの提案まで対応します。お気軽にお問い合わせください。
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2. 水冷方式とは?空冷との違い

空冷が空気を熱交換媒体とするのに対し、水冷は水や誘電性液体などの液体でサーバーの熱を回収する方式の総称です。空気よりも熱を運びやすい液体を利用することで、高発熱のGPUや高密度ラックから発生する熱を効率的に処理しやすくなります。

本記事では、導入検討時に比較されやすいリアドア水冷・DLC・液浸冷却の3方式を解説します。

3. GPUサーバーで使われる主な水冷・液冷方式

水冷・液冷方式は、サーバーから発生する熱をどのように液体へ移すかによって仕組みが異なります。ここでは、リアドア水冷、DLC、液浸冷却の3つの方式を取り上げます。

3-1. リアドア水冷

リアドア水冷(Rear Door Heat Exchanger:RDHx)は、ラック背面に熱交換器(ドア)を組み込み、サーバーから排出される熱気を冷却液で冷やしてから室内に戻す方式です。既存の空冷サーバーをそのまま活用でき、ラック単位で効率的に排熱を吸収できる点が特徴です。除熱能力は製品により幅があり、たとえばVertivのチルド水式リアドア熱交換器では最大80kWまでの製品も提供されています。

3-2. DLC(直接液冷)

DLC(Direct Liquid Cooling)は、GPUやCPUの上にコールドプレートと呼ばれる冷却部品を直接密着させ、チップから発生した熱を冷却液で冷やす方式です。液体を熱交換媒体として使うため、高発熱のGPUを効率よく冷却しやすい点が特徴です。CDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配装置)によって冷却液の温度や流量を制御します。

NVIDIAのGB200 NVL72では、このコールドプレートを用いたDLC設計がラックスケール構成として採用されています。NVIDIA公式ドキュメントによると、ラック全体の消費電力は約120kWとされており、高密度GPU基盤ではDLCを前提とした設計が進んでいます。
また、次世代のNVIDIA Vera Rubinプラットフォームでも、100%液冷、入り口温度45℃の温水への対応、コンピュートトレイとNVLinkスイッチトレイのファンレス設計などが示されています。(参考:NVIDIA公式ブログ「GTC Taipei at COMPUTEX」)このように、NVIDIAの主要なラックスケール製品では、DLCを前提とした設計が継続して採用されています。

3-3. 液浸冷却

液浸冷却(Immersion Cooling)とは、サーバー本体を誘電性(電気を通さない性質)の冷却液に直接浸して発熱部品を冷やす方式です。空気を介さず、冷却液がGPU・CPU・メモリ・電源など基板上の主要な発熱部品と直接接触するため、ラック単位・チップ単位の高密度な発熱を処理しやすい特徴があります。
サーバー筐体をそのまま利用するリアドア水冷や、主にGPU・CPUパーツの熱を回収するDLCと異なり、基板全体を冷却液に浸すため、液浸冷却に対応したタンク、冷媒、部品を含む専用構成や、保守手順の立案が必要です。

4. DLCと液浸冷却の違い

DLCはチップ上のコールドプレートで主な発熱源から熱を回収するのに対し、液浸冷却は基板全体を誘電性液体に浸して冷却します。この冷却対象の違いにより、サーバー構成、施設側の設備、冷媒管理、保守手順の条件が異なります。
液浸冷却には、冷却液の状態変化を伴わない「単相方式」と、冷却液の気化・凝縮を利用する「二相方式」があります。


コールドプレート方式(左列)と液浸冷却(右列)の装置例。
上段が単相方式、下段が二相方式です。
(出典:OCP「Base Specification for Immersion Fluids」p.9、
Figure 1/CC BY-SA 4.0
/図部分を引用)

4-1. 液浸冷却の単相方式と二相方式

単相方式(Single-phase Immersion)

単相方式は、冷却液が液体のまま基板の熱を吸収し、自然対流またはポンプによる強制循環で冷却装置へ送って再冷却するサイクルを持ちます。タンク内の冷却液は液体状態のまま温度が上下し、状態変化(気化・凝縮)は伴いません。熱交換器(構成によってはCDUを併用)で冷却液の温度を一定に保ちながら循環させることで、GPU・CPU・メモリなど基板上の主要部品を継続的に冷却します。

構成が比較的シンプルで、密閉構造や凝縮器を必要としない点が特徴です。冷媒には、鉱物油ベースの誘電性液体や、植物由来オイルをベースとした冷却液が用いられます。PFAS(有機フッ素化合物の一群)を含まない冷媒を選べる点も、単相方式の選定要因のひとつです。
実効的な冷却能力は冷媒・流量・熱交換器の設計に大きく依存するため、二相方式との比較は構成条件によって変わります。

二相方式(Two-phase Immersion)

二相方式は、低沸点の冷却液が発熱部品の表面で沸騰し、蒸気となって上昇したのち、上部の凝縮器で液体に戻って重力で落下するというサイクルを回します。相変化に伴う潜熱を活用する点が特徴で、構成によっては単位体積あたりの熱輸送量を高めやすい方式です。原理上、ポンプによる強制循環に依存しない自然対流ベースの構成も可能です。

一方で、タンクを密閉する構造や凝縮器の設計が必要となり、システム全体の複雑さは増します。また、代表的な冷媒として使われてきた3M™ Novec™は、3MがPFAS製造から段階的に撤退(2025年末に製造撤退を完了)しており、在庫や流通状況によって調達性が変動する状態です。

4-2. 冷媒(誘電性液体)の種類と選定

液浸冷却の冷媒は、電気を通さない絶縁性、GPU・基板部品を劣化させない材料適合性、環境負荷、コスト、供給の安定性などの観点で選定されます。

代表的な区分は次のとおりです。

  • 鉱物油系: コスト面と入手性で優位。粘度が比較的高く、単相方式で採用されることが多い
  • 合成炭化水素・植物由来オイル系:単相方式向けにENEOS IX Type B(基材が100%植物由来)などが提供されている。生分解性やPFAS該当性はグレードごとの仕様書で確認する必要がある
  • フッ素系合成液:低沸点品は二相方式、高沸点品は単相方式にも用いられてきた。3M Novecには両方式向けの製品があったが、3MのPFAS製造撤退(2025年末に完了)を受けて代替冷媒の選定が進行中

冷媒の選定は、冷却能力だけでなく、環境規制(PFAS)・調達性・保守時の取り扱いといった運用条件まで含めて判断する必要があります。特に二相方式では、冷媒の供給リスクが液浸冷却導入の可否を左右する要因となる点に注意が必要です。

液冷3方式と空冷方式は「どの発熱をどこで処理するか」が異なり、対応するラック電力の構成例、冷却装置側の除熱能力、導入時の検討ポイントに差が出ます。

以下は各方式の比較表です。
なお、「サーバー側ラック電力の構成例」はIT機器側の消費電力、「冷却装置側の除熱能力の例」は冷却装置ベンダー公表の代表製品値で、両者は別指標です。PUE/pPUEは測定条件の影響が大きく方式間の直接比較には向かないため本表には含めていません。

方式 主な冷却対象 サーバー側ラック電力の構成例 冷却装置側の除熱能力の例 導入時の主な確認点
空冷 サーバー筐体内をファンで空気循環 DGX H100 4台構成で約40.8kW/ラック
(参考:NVIDIA「NVIDIA DGX SuperPOD™ Data Center Design」)
DGX B300 2台構成で推定ピーク約39.4kW/ラック
(AC PDU+空冷、参考:NVIDIA「Data Center Best Practices with DGX B300」)
─
(施設側空調に依存)
従来からのラック・空調設計に準拠して構築できる
リアドア水冷 ラック背面で排熱を熱交換 DGX B300 4台構成(DCバスバー+アクティブRDHx併用)で推定ピーク約76kW/ラック
(参考:NVIDIA「Data Center Best Practices with DGX B300」)
Vertivのチルド水式リアドア熱交換器で最大80kW級 既存の空冷サーバー資産を活かしつつ、ラック単位で改修導入しやすい
DLC
(直接液冷)
チップ上のコールドプレート経由 GB200 NVL72で約120kW/ラック(NVIDIA公式) ─
(CDU・給水条件・製品構成に依存)
対象GPUサーバー製品ごとに保証範囲・給水条件を確認
液浸冷却 基板全体を誘電性液体に浸漬 サーバー筐体・電源設計を液浸対応にした専用構成 Submer SmartPod EXOで最大361kW
(モデル・運転条件による)
サーバーの保証条件・冷媒供給・保守運用の整備状況を製品単位で確認する必要がある

※本表はGPU・サーバー・冷却装置メーカーの公表資料に基づく構成例で、実際のラック電力や除熱能力は製品・給水温度・流量・施設設計により大きく変動します。対象機器・台数・測定対象・運転条件が異なるため、この表の数値だけで方式間の冷却能力を直接比較することはできません。(自社調べ)

水冷技術の動向や、Interop Tokyo 2025に出展したベンダーの取り組みについては、以下の記事もご覧ください。
▶︎ Interop Tokyo 2025で見たGPU水冷技術の進化と未来

5. 導入時の確認ポイント

水冷・液冷方式を導入する際は、対象となるサーバーや冷却方式だけでなく、設置場所となるデータセンターの床荷重、給水・冷媒の管理、搬入経路、メンテナンス時の作業性まで確認する必要があります。これらは従来の空冷とは異なる設備知識や保守手順が求められる領域でもあるため、設計と保守運用計画をあわせて検討することが重要です。
そのため、水冷・液冷対応サーバーの導入実績があるデータセンターと綿密に調整のうえプロジェクトを進めることが推奨されます。

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6. まとめ

本記事では、GPUサーバーで水冷・液冷が求められる背景から、空冷との違い、リアドア水冷・DLC・液浸冷却の仕組み、導入時の確認ポイントまでを解説しました。
リアドア水冷はラック背面で排熱を回収し、DLCはコールドプレートでGPUやCPUの熱を直接持ち出し、液浸冷却は基板全体を誘電性液体に浸して冷却します。これらの方式に上位・下位の関係があるのではなく、扱うGPUの発熱量、ラック密度、施設側の給水・荷重条件、冷媒の調達・保守手順に応じて選び分けることが重要です。

NTTPCは、NVIDIAエリートパートナーとして、GPUの世代選定から電力・冷却設計、ラック・水冷対応データセンターの提案まで対応します。
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※NVIDIA、DGX、DGX SuperPOD、Grace、Blackwell、Vera Rubin、NVLinkは、米国およびその他の国におけるNVIDIA Corporationの商標または登録商標です。
※Vertivは、Vertiv Group Corp.の商標または登録商標です。
※3M、Novecは、3M社の商標です。
※本記事に掲載している内容は、2026年9月時点での情報をもとに作成しています。
※液浸冷却については、技術動向および方式の比較を目的として掲載しています。NTTPCにて対応可能な冷却方式や構成については、個別にお問い合わせください。