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「特徴抽出」による50年来のブレークスルー

2018.05.16

営業本部 GPUセールス&マーケティング担当 庄司 洋一郎

営業本部
GPUセールス&マーケティング担当
庄司 洋一郎

人工知能分野の技術革新は留まるところを知らず、大学・研究機関はもちろん、多くの企業でPoC ( 実証実験 ) やサービス開発が加速しています。

人工知能は何も今に始まった話ではありません。その歴史は古く、1950年代まで遡ります。調べてみると、1956年に米国で開かれた「ダートマス会議」において、人間のように考える機械を「人工知能」と定義し、基礎研究がスタートしたようですね。
以降、人工知能のムーブメントは2回訪れていますが、いずれも停滞してきました。そして、第3次ブームと ( 一部では第4次ブームとも ) 言われている今、技術的課題のクリアによってようやく本格的に実用化、事業化が実現しようとしているのです。

では、なぜここにきて急に活発化しているのでしょうか?
それはずばり、機械学習における「深層学習 ( ディープラーニング ) 」の発展が大きなブレークスルーとなったと言えるでしょう。

ディープラーニングは、人間の神経回路を模した人工ニューロンを用いた計算アルゴリズムである「ニューラルネットワーク」で構成されます。
これまでは学習データの不足という課題がありましたが、2000年代後半からのビッグデータ時代の到来により、一気に必要十分な学習データを確保できるようになりました。当然、学習データが豊富であればあるほど、ニューラルネットワークの学習精度は高まります。

そして、ディープラーニングの最大の特徴と言えるのが「特徴抽出」です。
人工知能研究の第一人者である東京大学大学院特任准教授の松尾豊氏は、この特徴抽出を「人工知能の歴史の中で、50年来のブレークスルー」と評価しています。

従来は、人間が対象物の特徴を設計して人工知能に与えてあげる必要がありましたが、ディープラーニングなら自動的に人工知能が特徴を抽出します。つまり、豊富かつ正確な学習データを用意できれば、高い精度で対象物を認識することができるのです。

実際、2015年にはディープラーニングが圧倒的な画像認識精度を実現し、ついに人間の認識能力を上回りました。

著作権の都合で本記事には残念ながら掲載できませんが、ディープラーニングの画像認識精度を語る際によく用いられる画像がまったく異なる対象をランダムにミックスさせた画像です。
「犬 ベーグル」や「犬 クッキー」などが有名ですね。ご存じない方はぜひ検索してみてください。確かに一瞬考えてしまいますよね。それにしても、よくできています笑

また、静止画だけではなく、動画や時系列データを学習するために「リカレント ( 回帰型 ) ・ニューラルネットワーク」と呼ばれる手法の研究も進んでいます。視覚だけではなく、聴覚や触覚も含む、より人間に近づいた認識・学習手法です。

人間に近づくという点で、もうひとつ欠かせない潮流が「深層強化学習」です。
人工知能が対象物を認識し、何かしらの行動をした際、その結果に応じた報酬を与えることで、人工知能がもっとも多くの報酬を得られるように自ら反復学習し、精度を高めていく手法です。Google傘下のDeep Mindが開発した「Alpha Go」が有名ですね。
当然、人工知能は人間のように疲れることもなく、圧倒的な計算スピードがありますから、人間では気の遠くなるような数の学習・シミュレーションを繰り返し、成長し、そして人間を凌駕します。

こうした技術を活用することで、「検知」「制御」「動作」などが可能となり、まさに現在、人工知能が多くの産業分野でのビジネス化に向けて現実化しているのですね。

そして現在、基礎研究が進められているのが「AGI:汎用型人工知能」です。
ある目的に特化した人工知能と異なり、人間のように自由に学び、考え、行動することができる汎用的な人工知能です。

汎用型人工知能の実現にはまだ、いくつものブレークスルーが必要ですが、そう遠くない未来に実現する日が来ることでしょう。

「特徴抽出」や「深層強化学習」の詳細については、あらためて書くこととします。