NTTPCコミュニケーションズ docomo business

開催概要

NTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)は2025年2月26日、ビジネス交流イベント「Innovation LAB Meetup #3」を開催しました。このイベントは、NTTPCのビジネス共創プログラム「Innovation LAB」に加盟するパートナーおよそ100社を中心に、AIスタートアップやテクノロジーベンダー等のテック企業、大学、さらにAI導入/開発ニーズを持つ一般産業分野の企業の皆さまが集まり、生成AIなど先端技術のビジネス実装をテーマとした企業間交流を目的とした会です。

当日は、120社/250名を超える方々がイベントに参加され、第1部では筑波大学図書館情報メディア系 准教授/デジタルネイチャー開発研究センター長 落合陽一氏によるキーノートと、2つのパートナーセッションが行われました。また、第2部では立食パーティー形式のリラックスした雰囲気の中、参加者同士が共創パートナーと出会うためのビジネス交流会が開催されましたので、その模様をお届けします。

\当日の様子をダイジェストでご覧いただけます/

第1部|キーノート

デジタル世界における人類とAIの共生

落合 陽一 氏
筑波大学図書館情報メディア系 准教授/
デジタルネイチャー開発研究センター長
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 代表取締役

インテリジェンスの爆発的向上に向かう生成AI
生成AIの知能・性能はどこまで向上するのか?という壮大な社会実験が世界レベルで進められています。この1-2年で生成AIへの学習投入量は4倍に増大しましたが、さらに学習を進めることであらゆる問題をAIが解決できる時代になるのでしょうか?それともいずれ限界を迎えるのか、その答えはトライしてみるしかありません。ある一定のボーダーラインを超えたときに、AIが自己成長して新たな次元に到達する可能性もあります。近年では、学習データが枯渇してきていること、そして生成AIの性能をベンチマークすることが難しくなってきていることが課題として挙げられます。

デジタルネイチャーの時代に向けて
シミュレーションによってモノの実世界を作ること、また一方でモノを計測~モデル化してシミュレーションすることが融合すると、計算機と実世界が接続された新たな体系、すなわち「デジタルネイチャー(計算機自然)」が生まれます。
また、「人間と機械が協調する」という今までの常識は、「AIが生成、実装したものを人間が選ぶ」というパラダイムへとシフトしつつあります。予測可能な限界点とも言える5年後を見据えながら、次世代に必要な技術やツールは何か、そのために必要な実験は何か、といった点を研究テーマに取り組んでいます。

第1部|Session1

バーチャルヒューマン × AIエージェントの融合

守屋 貴行 氏
株式会社Aww
代表取締役 / CEO

中根 正雄 氏
エヌビディア合同会社
メディア&エンターテイメント
スマートスペース,リテール
ビジネスデベロップメントマネージャー

ファシリテーター
NTTPCコミュニケーションズ 
AI/IoTビジネスデザイン部
髙島 綜太

最初のパートナーセッションでは、国内随一のバーチャルヒューマン・カンパニーである株式会社Aww(アウ)代表取締役/CEOの守屋貴行氏と、エヌビディア合同会社でメディア&エンターテインメントの事業領域でAI活用を支援する中根正雄氏をパネラーとしてお招きして、バーチャルヒューマンについてお話を伺いました。ファシリテーターはNTTPCの髙島綜太(AI/IoTビジネスデザイン部)が務めました。

髙島バーチャルヒューマンについて教えてください。

守屋3DCGや生成AIなどの技術を使って生成された、ほぼ人間に近い外見、行動、会話などを総称したインターフェースをバーチャルヒューマンと呼んでいます。Awwが生み出した「imma」をはじめとするバーチャルヒューマンたちは、国内外の企業プロモーションやブランドアンバサダーなどさまざまなジャンルで採用されています。

中根NVIDIAでもバーチャルヒューマンには積極的に取り組んでいます。LLM、音声認識、Text-to-Speech、Audio to Face、NVIDIA Omniverse™で開発したアバターなど、複数の技術を組み合わせて実現しており、メディア&エンターテインメントはもちろん、リテールや医療、セールス、カスタマーサポートなど、さまざまな業界や用途に適応することを考えています。

髙島バーチャルヒューマンはどのようなビジネスにつながるのでしょうか。

中根AIエージェントあるいはエージェンティックAIとしての使い方が登場してくるでしょう。カスタマーサービスやトレーニングインストラクターなど、バーチャルヒューマンを使ったさまざまなセルフサービス型のビジネスが考えられます。

守屋自社のIPコンテンツとしてバーチャルヒューマンを作って欲しい、といった開発依頼も増えています。また、会話に特化したバーチャルヒューマンは、たとえば認知症患者の話し相手になったり、英会話やジムトレーナーなど、さまざまな応用が可能です。



バーチャルヒューマン は、人の肌を表現する精緻なレンダリング、生成AIを使った音声発話や音声認識、表情や動きの再現など、さまざまな技術の組み合わせで実現されます。さらなる人間らしさの追求と合わせて、これからのビジネス応用の拡大に注目です。

※「imma」は株式会社Awwの登録商標です。

第1部|Session2

“ジャパンクオリティ”のAI化と海外展開を目指す『なんとかなる事業』

井口 一世 氏
株式会社井口一世
代表取締役

齋藤 康平 氏
株式会社みらいリレーションズ
代表取締役

ファシリテーター
NTTPCコミュニケーションズ 
AI/IoTビジネスデザイン部
庄司 洋一郎

続くパートナーセッションでは、金属加工分野に革新的な仕組みと技術を導入し、高収益かつ従業員満足度の高い中堅製造業である株式会社井口一世の井口一世氏と、東京科学大学連携ベンチャーキャピタルのみらい創造機構から誕生し、新規事業のコンサルティングやプラットフォーム構築を担う株式会社みらいリレーションズの齋藤康平氏をパネラーとしてお招きして、AI活用やデータドリブンを中心としたモノづくりについてお話を伺いました。ファシリテータはNTTPCの庄司洋一郎(AI/IoTビジネスデザイン部)が務めました。

庄司井口一世ではビッグデータを活用して高い生産性を実現しているそうですね。

井口金型レスや切削レスといった独自の加工技術に加え、24年間の加工実績をビッグデータとして活用し、経験がない人でもボタンを押すだけで精度の高い加工ができるシステムを開発・運用しています。従業員一人あたりの売上高は4億円ですが、10億円を目標にさらなる生産性向上に取り組んでいます。将来的には、画像、音声、テキストなど、あらゆるパラメータを分析して適切なアウトプットが得られるマルチモーダルAIの開発を検討していきたいと思っています。

庄司「なんとかなる事業」の概要を教えてください。

井口こんなものを作れないか、とお客さまから相談があったときに、井口一世がパイプ役と設計を担い、各製造分野に強みをもつ技術パートナー企業とのエコシステムを利用しながら、お客さまのニーズに全方位的に対応できることを目指す事業です。

齋藤日本のモノづくり企業は顧客の要望に対して、「なんとかなる」すなわち「なんとかする」というマインドで仕事をしてきました。また、「匠の技」として個人に依存してきたわけです。しかしそれではグローバルな競争力が得られません。そこで、分断したサプライチェーンをつないで発展させることをみらいリレーションズでは支援しています。クローズドな競争領域を持ちながら、プロセスを標準化してオープンにする取り組みが重要です。



日本のモノづくりは生産性の低さや属人化の多さがしばしば指摘されます。ビッグデータの活用、AIや生成AIの導入、パートナーとのネットワークなどを通じて、競争力の強化が図られることが期待されます。

第2部|ビジネス交流会

第2部では、立食パーティー形式による「ビジネス交流会」が開催されました。
本イベントには、さまざまな立場で「AI」という共通テーマに携わっている、120社/250名を超える企業・団体の方々が参加されましたが、そうした企業同士の交流をサポートするためのビジネスマッチング企画を実施しました。

会場には、各社の事業アセットや強みを紹介するパネルが展示されており、参加者はこのパネルを見て気になる企業にマッチングを申し込むことで個別に会話や商談をすることができます。
製造DX関連のAIスタートアップ×製造業、独自LLMを開発するAI企業×データサイエンス企業など、さまざまな分野の企業同士がリアルな熱量を持って語り合う様子はとても印象的でした。当日は50件を超えるマッチングが成立し、今後のビジネス共創に向けて固い握手を交わすシーンも見られました。このコミュニティを通して、今後の新しいビジネスが生まれることを期待しています。

NTTPCのビジネス共創プログラム「Innovation LAB」に参加する企業・団体の数は100社を超え、ビジネス共創案件も生まれるなど、パートナーコミュニティとして少しずつ成長してきました。今後も、パートナー企業の皆さまと日本のAI市場を盛り上げていきたいと考えています。