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『GPU Technology Conference 2018』に行ってきた。

2018.04.25

サービスクリエーション本部 GPUプロダクト担当 西野 大

サービスクリエーション本部
GPUプロダクト担当
西野 大

さる2018年3月26日から29日 ( 北米時間 ) までの4日間、NVIDIAが主催するGPU開発者のための世界最大イベント「GPU Technology Conference 2018 ( 以下GTC 2018 ) 」が米国シリコンバレーで開催されました。
NTTPCからも私含め数名で参加してきたのですが、GTC 2018で発表された新製品およびアーキテクチャなどの情報はすでに多くのメディア記事や他社サイトで取り上げられているので、本記事では主にGTC2018の模様や雰囲気について、写真を交えながら思いのままにお伝えできればと思います。

まず、GTCについてですが、現在では米国はもとより、欧米、そして日本、中国、韓国、台湾、インドといったアジア圏でも開催される一大イベントになっており、その中でも最大規模で行われたのが今回のGTC 2018となります。テクニカルセッション数は4日間の会期中に約600以上、ポスター展示約160、参加企業約160を超える規模となり、今回の有料参加者は65ヶ国以上から約8,500名ということで毎年参加者数は過去最高を更新している状況です。

ちなみに日本企業からどれくらい参加していたかといいますと、約8,500名の内、約350名の参加ということでした。参加者数で優劣があるわけではありませんが、中国を僅差で抜いて米国に次ぐ国別参加者数では第2位ということで、それだけ日本でもGPU、AI ( 人工知能 ) 、VR ( 仮想現実 ) 、DL ( 深層学習 ) 、HPC ( 高性能計算 ) といった分野に多大な関心が集まっていることがわかります。
ちなみに、NTTグループからも20名強のメンバーが参加しており、NTT研究所はトークセッションとパネル展示で研究成果を発表していました。

さて、我々は前日に米国入りし、前日夕方から会場内で開始される来場者登録を済ませて翌日のGTC 2018会場へ向かいました。
会場であるSan Jose マッケンナリー・コンベンション・センター周辺、およびSan Joseダウンタウンは、米国のスプリングブレーク/イースターブレイク ( 学生の春休み ) も相まってか、San Jose州立大学などの学生の姿が見られない一方、数多くのGTC 2018参加者で賑わっていました。また、会期中のSan Joseダウンタウン周辺は、世界各国からの参加者で周辺ホテルはどこも満室になっているという話も聞かれました。

会場に到着してまず目につくのが、入口前の自動運転で使用される大型トレーラーヘッドと自動走行車の展示。会場内に入ったところにも同じく自動走行車が展示されていました。それらの中の1台は日本の自動車メーカーのものでした。

会期2日目にNVIDIA創業者兼CEOであるJensen Huang ( ジェンスン・フアン ) 氏の恒例であるKey Note ( 基調講演 ) が予定されており、そこで発表される新製品やその他参加企業の展示も2日目以降であることから、それら以外の展示は見られず、初日はトークセッションとトレーニングセッションがメインとなっていました。
トークセッションは25分と50分がメインで、会期中4日間前述の通り約600のセッションが複数並行して行われています。セッション内容はNVIDIAサイトとGTC用専用スマホアプリで事前に確認可能ですが、正直説明文だけでは内容とレベルの把握は困難です。
あまりにもセッション数が多いこと、本会場以外に会場両サイドに隣接する2つのホテルもセッション会場となっており、しかもセッション間の休憩が5分と短いため、次回参加される方は予め事前にスケジュールをきちんと立てて目的のセッションを聴講することをお勧めします。

肝心のトークセッションですが、大別するとNVIDIA及び機器・チップベンダーによる新製品や新アーキテクチャの解説、大学研究所・各企業研究所の学生を含む研究者や開発者のAI/DLに関する推論や学習に関するアプローチとその結果の発表、各企業の開発者・エンジニアによる各種ソリューション、GPUクラウド関連の紹介とそこに導入された技術説明などがメインでした。
もちろん一部しか聴講できませんでしたので、他にもさまざまなトピックがあったかと思いますが、概ね上記のような内容のものが多かったように思います。セッションの中には時間の都合から導入部分または概要のみで「詳しくは当社WEBサイトへ」や「詳しくはこのメールアドレスへまで」といったものも多かったように思えます。

4日間を通じて聴講した感想は、各国の研究者、開発者がAI、DL、HPCの分野に非常に早いスピードかつさまざまなアプローチを用いて、後にサービス基盤となる要素技術の研究に精力的に取り組んでいるということ。また、現行の技術を用いてそれらを成果物としてのサービスとしてすでに提供しているスピード感を感じることができました。
一方で私自身の知識レベルもありますが、セッションごとの技術的なレベルもまちまちで、トピック的には興味あるものだったが実際の内容は想定と異なるものであったりと、セッションの選択が難しかったというのが正直なところです。

トークセッション以外にもポスター展示、ラボトレーニング、NVIDIAエキスパートとのQ&Aセッションなどがありましたが、NVIDIAエキスパートとのQ&Aセッションに参加した人に聞いたところ、日本人の不得意とする英語という障壁があり、技術的な部分よりもむしろそちらで苦戦したという話を聞くことができました。今後このセッションを受けたいと考えている方は、ぜひ英語力もあげて臨むことをお勧めします。

さて、2日目は9時からNVIDIA創業者兼CEOであるJensen Huang氏のKey Noteがあるため ( むしろ、これがメインで参加されている方もいるかもしれません ) 、Key Noteが行われるホールへの入場待ちの行列は、まるで有名アーティストのライブかのごとく朝一から凄いことになっていました。それだけこのKey Noteに注目が集まっているということなのでしょう。我々も大行列に並び、ホール内へ入ることができたため、残り数少ない席を見つけて聴講することができました。
会場内は、まるで何かのエンターテイメントが始まるのではないかという演出の中からJensen Huang氏が登場し、新製品や新アーキテクチャ、そのコンセプトなどについて、最終的には予定を30分近く超えて2時間半、一気に披露していきKey Noteは終了しました。

ここでは、Key Noteの主なトピックだけを挙げますので、詳細はNVIDIA公式サイトや各メディア記事をご確認いただければと思います。また、Key Note終了後には、ここで発表されたTesla V100 GPU 32GBモデルを512基搭載したPreferred Networksのスーパーコンピュータ「MN -1b」のプレスリリースがあり、NTTPCもその構築に参画することになりました。

・Quadro GV100 GPUの発表

・Quadro GV100 GPUとNVIDIA RTXを用いたリアルタイムトレーシングの発表とデモ

・Tesla V100 GPU 32GBモデルの発表

・Tesla V100 GPU 32GB 16基とNVSwitchを用いたNVIDIA DGX-2の発表

・医療画像解析技術Project Claraの発表

・Plasterコンセプトの提言
( Programability/Latency/Accurate/Size/Throughput/Energy efficiency/Rate of learning )

・自動運転走行テスト仮想シミュレーションNVIDIA Drive SIM and constellationの発表とデモ

・自動運転用ハードウェアOrinの発表

・推論最適化エンジンTensorRT4の発表

・オーケストレータKubernetesの新機能発表とデモ

・AIロボット開発ツールISAAC の発表

私自身が個人的にKey Noteで印象に残ったことは、本題の発表はもちろんですが、「我々NVIDIAはムーアの法則以上の進歩を遂げている。」という言葉と、よほど気に入ったフレーズなのでしょうか、DGX-2発表後に何度も繰り返し言っていた「The more you buy, the more you save」というJensen Huang氏の謳い文句です。

開催2日目のKey Note終了後には、展示会場がオープンし、NVIDIAブースにはDGX-2、Quadro GV100 GPU、Tesla V100 GPU 32GBモデルなどの展示やその他のデモ、そしてそこにはJensen Huang氏もメディア向けに登場し、来場者との握手や写真撮影に長い時間応じていました。
その他の企業ブースでもVRやAIロボによるデモや、ここでも自動運転走行車の展示、NVIDIA GPUを搭載するサーバーメーカーの製品展示、その他ソリューションを提供する企業の展示、スタートアップ企業などが自社製品やソリューションを紹介していました。
理由は定かではありませんが、展示会場のオープンはランチタイムの約2時間という限られた時間のため、最終日の午後ゆっくり見ようと思っていても見ることはできないので、今後も同じようなスケジュールかはわかりませんが、次回以降参加される方は注意が必要です。

以上、ざっとGTC 2018の模様を紹介してきました。
残念ながら観覧・参加することはできませんでしたが、他にも会期中にはスタートアップ企業のアイデアを審査・表彰するInception Award ( なんと優勝賞金100万ドル ) 、3日目の夜には会場内のホールで不思議の国のアリスをテーマとしたGTC Partyが開催され、クラブDJによる音楽とパフォーマンス、そしてお酒と食事が提供されていたようです。

最後に、今回GTC 2018に4日間参加しましたが、この分野に参入する企業がすでに実現しているプロダクトやサービス、また実験・研究成果の発表などを間近に見て、またGTC 2018の副題が「AI & Deep Learning Conference」とされていただけあり、ほんの10年前はゲーミングコンピューター向けGPUを提供しているメーカーであったNVIDIAという企業が、AIやDL、HPCという分野を通じて、そう遠くない未来のライフスタイル、そして多くの産業の形を大きく変えるのではないかと感じずにはいられませんでした。

次回のGTCは5月30日から2日間に渡り台湾で開催される予定です。日本では9月13日から同じく2日間に渡り開催される予定です。
また、GTCとは別に日本では「NVIDIA Deep Learning Seminar 2018」が4月24日に開催される予定ですので、GTC 2018に参加できなかった方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。