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駆け出し奮闘記Vol.3
~シンギュラリティはいつ起こる?~

2018.09.14

営業本部 GPUセールス&マーケティング担当 亀谷 淑恵

営業本部
GPUセールス&マーケティング担当
亀谷 淑恵

前回は、今後実現すると考えられている「汎用型人工知能 ( AGI ) 」について触れました。計算機パワーや機械学習技術の進歩にあわせて、人工知能に関する研究はさらに深まっていくと予想されています。
そしてなんと、近い将来には「人工知能の能力が人間を超える日が来る」と言われています!これは「シンギュラリティ ( 技術的特異点 ) 」と呼ばれています。

シンギュラリティはいつ起こるのでしょうか?そもそも、人間が作り出したプログラムである人工知能が、人間の能力を超えることなどありえるのでしょうか??

シンギュラリティとは?

そもそも、人工知能でどんなことができれば“人間を超えた”と言えるのでしょうか?

たとえば、最近NTTPCでも導入したチャットボットなどは、一見非常に高い能力を持っているように見えます。NTTとしても、グループ統一AIブランド「corevo®」のエージェントAI機能として、NTT研究所が開発し、NTTコミュニケーションズがサービス提供している「COTOHA®」があります。
高精度な日本語理解と対話能力をもち、膨大な情報を貯めたデータベースから瞬時に最適解を導くことで、人間よりはるかに正確かつスピーディに業務処理を行うことが可能です。

ただし、現在一般的に利用されているチャットボットは、問いかけに対する答えを検索して返すのみで、自分の脳で考えているわけでも自発的に問題解決するわけでもありません。これでは“人間を超えた”とはいえませんよね。

1980年代からシンギュラリティの概念を提唱し始めたSF作家のヴァーナー・ヴィンジは、その定義について「機械が人間の役に立つふりをしなくなること」としています。
また、人工知能の権威であるレイ・カーツワイル博士は「指数関数的に人工知能は進化し、2045年には人間の脳や知性を凌駕する」と述べており、“2045年問題”として大きな注目を集めています。

つまり、これまでのように人間が機械に仕事をさせるのではなく、プログラムに従って行動するのでもなく、機械が自らの意思や感情を持つ未来を想定していたんですね。
まさに「アイ,ロボット」の世界です!本当にもうすぐそんな時代がやってくるのでしょうか……?

シンギュラリティは本当に起こる?

2045年というと、現在 ( 2018年 ) から約30年後、そのころの世界はどうなっているのでしょうか……

30年後のことは想像できませんので、30年前のことを振り返って ( 私はまだ産まれていませんが… ) みます。1988年当時は、今では当たり前のインターネットは存在しておらず、パソコン通信でした。パソコンはとても大きく、企業においてもペーパーからパソコンへの移行期。スマートフォンどころか、携帯電話はショルダー型で3kgもありました。ビジネス、私生活の大半がデジタルファーストとなった現代をどの程度の方が予想できたのでしょうか?

しかし、フィクションの世界では現在よりもっと進んだ未来が想像されていました。1984年に公開されたターミネーターでは、人工知能「スカイネット」が人類を滅亡させるためにアンドロイドを開発し、タイムマシンで過去へ送り込む!というとんでもないストーリーが描かれています。

公開当初は遠い未来の話でしたが、現在の技術を使えば、映画に登場するいくつかのメカはすでに実現可能なものになっています。さすがにターミネーターそのものはまだ完成していませんが、人工皮膚や液体金属はかなり研究がすすんでいます。また、モトターミネーター ( バイク型ロボ ) は自動運転技術の応用ですし、空中に投影できるディスプレイもすでに実用化されていますよね。

この30年間でコンピューター技術は大きく進歩しました。30年前からの現代と、これからの30年では、きっと比較にならない技術革新と未来が待っているのだと思います。このまま研究が進めばシンギュラリティの実現もそう遠くないような気がしてきませんか?

シンギュラリティはいつ起こる?

先ほど、“2045年問題”について触れましたが、脳科学者の茂木先生は2017年のAWS Summitで「シンギュラリティはもう起こっている」と発言しています。
正確には「人間の脳ごときでは、人工知能の能力とは比べ物にならない」ということだそうです。体力や記憶力に限界があり、体調や気分にも左右される人間と、莫大な計算をこなすことができるものの、感情や性格を持たない人工知能を同じ観点で比較することはできません。ある側面からみると、すでに「人工知能は人間を超えている」といえるのではないでしょうか。

これまで「人工知能が人間に近づき、そして超える」のはいつか?ということを考えてきました。しかし、そもそもこれからの人工知能は人間に近づいていくのでしょうか。彼らはわたしたち人間のように、その時の気分や感情がパフォーマンスに影響を与えることはありません。また、肉体を持たない代わりにまったく休憩なしでも動作できます。さらに ( 故障することはあっても ) 病気やけが、命を落とすという概念はありません。

今後さらに人工知能の研究は進むと思われますが、そのゴールが人間のように不安定な性質を持つことだとは思えません。ターミネーターで人間と人工知能の戦争が描かれているように、人工知能が嫉妬や憎しみなどの負の感情を得てしまうと、人間との争いは避けられないと思います。人間と人工知能が共生する未来こそが、シンギュラリティの到来なのではないでしょうか。