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NVIDIA、「GTC 2018」において期待されていた「GeForce® GTX」シリーズの発表は?

2018.03.30

サービスクリエーション本部 GPUプロダクト担当 西野 大

サービスクリエーション本部
GPUプロダクト担当
西野 大

NVIDIA、「GTC 2018」において期待されていた「GeForce® GTX」シリーズの発表は?

 さる3/26 ( 月 ) ~29 ( 木 ) 、NVIDIA社が主催するGPUの一大イベント「GTC 2018 ( GPU Technology Conference ) 」が米国シリコンバレーにて開かれました。「AI & Deep Learning Conference」と銘打たれた本イベントは、一般の論文発表も含めると1,000件近い発表が行われる巨大なイベントです。

 ※GTC 2018のイベントレポートは後日公開予定です

 しかしなんといっても、多くの方の関心が集まるのはNVIDIA社の新たなGPUアーキテクチャおよび製品に関する発表ではないでしょうか。
 新製品発表はNVIDIA社の創立者&CEOのJensen Huang氏が務めるイベント2日目のキーノートで行われましたが、今年の注目は2017年に発表された次世代アーキテクチャ「Volta®」を搭載したアクセラレータ「Tesla® V100」のメモリ容量を従来の2倍とした「Tesla® V100 32GB」 ( ※ ) 、この最新GPU16基をNVLink™ベースでつなぎ、2 PFLOPSもの半精度浮動小数点演算性能を実現したGPUアプライアンス「DGX-2」、リアルタイム・レイトレーシングを可能にするグラフィックボード「Quadro® GV100」、ドライブ仮想シミュレーションシステム「DRIVE Constellation」とその関連技術などでした。
 詳しくは、後日公開するGTC 2018イベントレポートで解説します。

 ※プレスリリース:Preferred Networks、最新のNVIDIA Tesla V100 32GB GPUを採用したプライベート・スーパーコンピュータ「MN-1b」を7月に稼働~NTT Comグループのマルチノード型GPUプラットフォームを拡張

 ということで、NVIDIA社は「データセンターおよび自動運転などのエンタープライズ向け製品に傾倒」「GTC 2018にてゲーム市場向けに新製品を発表するという憶測は懐疑的」という一部の報道やソーシャル上の話題にあったとおり、本イベントで新世代のコンシューマ向けGPUカード ( GeForce® GTX 2070/2080 ) が発表されることはありませんでした。NVIDIA社はもうしばらくの間、コンシューマ向けのゲーミングGPUカードはリリースしていません。

 また、NVIDIA社は開発コード「Turing」と呼ばれる次世代GPUアーキテクチャを開発していますが、この全貌に関する発表および生産は「Computex 台北」後の2018年6月中旬まで開始されないのでは、また実際にユーザーにその新製品が届くのは8月に開催される「Gamescom」になるのでは、とも推測されています。

 この「Turing」に関するニュースは、直近に浮上した別の開発コード「Ampere」の噂でさらにユーザーを混乱させています。いくつかの情報ソースからは、「Ampere」は新たなハイエンドソリューションとして、おそらくNVIDIAの現行アーキテクチャである「Pascal®」ベースの「GeForce® GTX 10シリーズ」の後継 ( GeForce® GTX 2070/2080 ) として、GV104チップを搭載したものであると言われており、4月にも販売開始されるのではと期待されていますが、現状を鑑みるとその可能性は低いと思われます。

 その一方で、GV102チップは次世代「GeForce® Titan」シリーズとなる「GTX 2080 Ti」などのハイエンドマーケットに供給されるとの見方が大筋の予想となっています。さらに、GV106チップはミッドレンジをターゲットとしたソリューションとして、GV107チップおよびGV108チップは予算に制限のあるユーザー向けに供給されると予想されています。

 「Turing」は、直近に行われたNVIDIA四半期決算結果を討論するアナリストとプレスとの電話会議の内容を含んだロイター通信の記事に由来します。本記事は、仮想通貨のマイニング加速により、GPUカードの供給が枯渇することで価格が高騰、NVIDIAがゲームユーザーのためにGPUカードを確保することに苦戦しているという点にフォーカスした内容となっており、実際にNVIDIA社CFOのColette Kress氏もゲーム用GPUカードについて「歴史的に供給難な状況となっている」と発言しています。

 これらの状況が、3つの開発コード 「Volta®」、「Ampere」、「Turing」が存在する理由になっています。一部の噂では開発コード「Ampere」はゲーム用に、一方の「Turing」は仮想通貨マイニング用になるのでは、と言われています。
 それはなぜか?「Turing」の名は、英国のコンピュータサイエンス学者であり、理論生物学者であり、数学者、さらに暗号解読者であるAlan Turing氏に由来しており、彼は第二次世界大戦時、ナチスによって送信された暗号文の解読に助力し連合国の勝利に貢献した人物なのです。そのため、彼の名前を使用することは、仮想通貨マイニング専用GPUとしては理にかなっているといえるからです。

 繰り返しになりますが、ゲーム用にフォーカスしたGPUカードが常に供給不足なのは確かであり、これまで紹介してきた複数のシナリオについてNVIDIA社が近いうちに何らかの発表をするのではないかと推測しています。
 また、 これもあくまで推測になりますが、NVIDIAは開発コード名「Ampere」をやめる可能性もあります。なぜなら同一名をARMベースのサーバメーカーがすでに使用しているからです。「Ampere」や「Turing」が単に2つのメインストリームである市場を区別している一方、「Volta®」は依然として根本的なGPUアーキテクチャとして存在しています。

 いずれにしても、今年の中旬ごろまでにはこれらの推測が正しかったのかどうかの結果が出ていると思いますので、それまで我々は新たなアーキテクチャの発表を楽しみに待つしかないでしょう。

引用: https://www.digitaltrends.com
    http://www.tomshardware.com