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【Part3 展示ブース編】NVIDIA GTC2025 現地参加レポート

2025.05.12

GPUセールス&マーケティング担当 亀谷 淑恵

GPUセールス&マーケティング担当
亀谷 淑恵

みなさんこんにちは。NTTPCの亀谷です。
Part1 基調講演編Part2 セッション編に続き、GTC2025の現地レポートをお届けします。本記事では、各社が最新製品を出展する展示ブースの模様をレポートします。

1. 展示ブース

GTC2025では、400以上の企業が最新製品・サービスを出展しました。
会場内は複数のエリアに分かれています。「デザイン&シミュレーションパビリオン」「産業&フィジカルAIパビリオン」「ヘルスケア&ライフサイエンスパビリオン」「自動車パビリオン」、そして「NVIDIA Inception Startups」と名付けられたスタートアップ企業が集まるブース群など。さらに一部の自動運転メーカーは会場外にも車両を展示していました。今回は残念ながら体験できませんでしたが、試乗会も実施されていたようです。

また、会期中にはポスターセッションイベントも行われました。主に大学や研究機関、企業の研究部門の方がNVIDIAテクノロジーを活用した研究成果を発表し、訪問者と直接ディスカッションできる場が設けられていました。

たくさん歩き回って疲れた人のために、展示会場内にはドリンクカウンターやキャンディーが配布されるラウンジも用意され、夕方以降はビアガーデンもオープンしていました。


展示会場内のドリンクカウンター(NTTPC社員撮影)

会期中にNVIDIA創業者兼CEOのJensen Huang氏が展示会場を訪れ、各ブースを回って展示機器にサインしました。Huang氏を一目見ようと大きな人だかりができていました。


Huang氏を写真に収めようとたくさんの人が集まっています(NTTPC社員撮影)

多くの企業がブースを出展していましたが、今回は私が気になったブースを5つ取り上げます。

2. 展示内容

2.1 NVIDIA

展示会場は基調講演終了直後にオープンしました。会場内で一番大きな面積を占めるNVIDIAブースでは、基調講演で発表されたばかりの新製品「NVIDIA B300 NVL」や「Kyber」「Photonics (フォトニクス)」などが展示され、連日長蛇の列ができていました。


NVIDIA HGX™ B300 NVL16(NTTPC社員撮影)

Kyber(NTTPC社員撮影)

左:NVIDIA Spectrum™-X Switch
右:NVIDIA Spectrum™-X Photonics
(NTTPC社員撮影)

特に「NVIDIA DGX™ Spark」や「NVIDIA DGX B300」の展示前には多くの見学者が集まり、写真撮影にも苦労するほど。注目度の高さがうかがえました。


NVIDIA DGX Spark(NTTPC社員撮影)

NVIDIA DGX B300(NTTPC社員撮影)

基調講演で発表された「NVIDIA RTX PRO™ 6000 Blackwell」ファミリーも実機が展示されていました。


NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition(NTTPC社員撮影)

第5世代Tensorコアと第2世代Transformer Engineのサポートにより、RTX PRO 6000 Blackwell Server Editionは、エージェントAIおよび生成AIアプリケーションにおいて、前世代のNVIDIA L40S GPUと比較して最大5倍のパフォーマンスを実現するという説明がありました。


NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition(NTTPC社員撮影)

これらのNVIDIAが新たにリリースしたハードウェアのほか、各パートナーとの共同開発ソリューションも展示されていました。特にSynchron社が開発した、脳とコンピューターをつなぐブレイン・コンピューター・インターフェイス(BCI)技術のデモは興味深い発表でした。利用者はなんとVRヘッドセットを着用して”考える”だけで、さまざまなデバイスを操作できるようになるということです!


脳が展示されているとSF感があります笑(NTTPC社員撮影)

また、基調講演でもロボット開発を支援すると明言されていた通り、ロボティクス分野のパートナーとの共同出展も多く見られました。


各ロボットメーカーとの共同出展(NTTPC社員撮影)

2.2 Dell Technologies

会場内にひときわ大きなブースを構えるDell Technologies は、2024年から「AI Factory」をテーマに、大規模にスケールする環境におけるAIの迅速な導入・展開に必要な幅広いポートフォリオを提供しています。スタートアップ企業からエンタープライズ企業、ハイパースケーラーなど、すでに2,000社以上のお客様のAIファクトリー開発を支援されているとのことです。


Dell Technologiesブース外観(NTTPC社員撮影)

ブースの目玉である大きなラックは、今回発表された「NVIDIA GB300 NVL72」です。複数のGPUコンピュートノードと、それらを高速に接続するためのNVIDIA ConnectX🄬-8 SuperNIC搭載ネットワークノードから構成されています。ラック全体で20PFLOPSのAIコンピューティング性能を誇り、計784GBの統合システムメモリ(最大288GBのHBME3e GPUメモリ+496GBのLPDDR5X CPUメモリ)を備えています。


NVIDIA GB300 NVL72(NTTPC社員撮影)

NVIDIA GB300 NVL72 水冷ラック背面(NTTPC社員撮影)

ラック裏側もじっくり見学することができました。Blackwell GPUが消費する電力を効率的に冷やすために最適化された水冷設計が目を引きます。

さらに、Dell PowerEdgeシリーズより、NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Editionを最大8基搭載可能な「XE7740」サーバーも提供されるということです。生成AIの学習・調整・推論や、エージェントAI推論などに適した強力なプラットフォームです。


Dell PowerEdge XE7740(NTTPC社員撮影)

ワークステーション / ノートパソコンのラインナップである「Dell Pro Max」の新型番も発表されました。
手のひらサイズの省スペース筐体に、最大1PFLOPSのAIコンピューティング性能、128GBのユニファイドメモリを詰め込んだ「Dell Pro Max with GB10」(NVIDIA DGX SparkのOEMモデル)や、NVIDIA RTX PRO Blackwell GPUを利用できるノートパソコンなどがリリースされました。2025年初夏以降順次発売予定ということです。


Dell Pro Maxシリーズ(NTTPC社員撮影)

ここで紹介した内容はごく一部です。GTCでの発表された内容の詳細については、ぜひDell Technologiesのリリース(https://www.dell.com/ja-jp/blog/nvidia-ai-pc/)もご覧ください。

2.3 Hewlett Packard Enterprise

会場入口近くに出展するHewlett Packard Enterprise(以下HPE)ブースも見学しました。ブース内でHPEのプレジデントやエンジニアが次々とライブセッションを行い、多くの聴講者・来場者でにぎわっていました。


HPEブース外観(NTTPC社員撮影)

HPEのNVIDIA GB300 NVLは、HPE が過去50年以上培ってきた液冷環境の構築・管理のノウハウを駆使して設計されています。エージェントAIに代表される大規模AIモデルのトレーニング・調整・推論に画期的なパフォーマンスを実現します。2025年後半に提供開始予定ということです。


NVIDIA GB300 NVL72(NTTPC社員撮影)

16 個のNVIDIA Blackwell Ultra GPU(B300)を搭載した「NVIDIA HGX B300 NVL16」をサポートするHPE ProLiant Compute XDサーバーは、2.3TBのHBM3eメモリ、NVIDIA ConnectX🄬-9 SuperNICを採用し、Hopperアーキテクチャの7倍以上のAI性能を誇ります。もちろん水冷モデル・・・かと思いきや、空冷版もリリースされるようです。こちらも2025年後半に提供開始予定ということでした。


NVIDIA HGX B300 NVL16(NTTPC社員撮影)

さらに、現在提供中のサーバー「HPE ProLiant Compute DL380a Gen12」がNVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell GPUを搭載可能であることも発表されました。

DL380a Gen12は、ダブルワイドGPUを10基、またはシングルワイドGPUを16基搭載できる拡張容量、そしてパフォーマンスと効率性を向上させる直接水冷オプションなどが特長の4Uラックマウントサーバ―です。HPE iLO7に対応し、PCIe Gen5と最大4TBのDDR5メモリを搭載します。
NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition PCIeベースGPUを搭載したモデルは、2025年後半に提供開始予定です


HPE ProLiant Compute DL380a Gen12(NTTPC社員撮影)

詳しい発表内容・製品情報が知りたい方は、HPEのサイトもご覧ください。
https://www.hpe.com/us/en/discover-more-network/events/nvidia-gtc.html

2.4 Supermicro

Supermicroも「NVIDIA GB300 NVL72」や「NVIDIA HGX B300 NVL16」システムを発表しました。


NVIDIA HGX B300 NVL16(NTTPC社員撮影)

また、NVIDIA HGX B200™ 8-GPUシステムである「AS-A126GS-TNBR」も見ることができました。AMD EPYC™ 9005/9004 CPUを搭載し、最大9TBのDDR5-6000メモリを搭載可能な大規模AIサーバーです。


AS-A126GS-TNBR(NTTPC社員撮影)

また今回、私がSupermicroブースで注目したのは、ストレージサーバーの多彩なラインナップです。新たにリリースされた「ARS-121L-NE316R」は、NVIDIA Grace CPU Superchipを搭載したペタスケールサーバです。同等のx86サーバーよりも少ない消費電力で、NVIDIA GPUDirect Storageを用いてネットワーキング・プロトコルを高速化できます


ARS-121L-NE316R(NTTPC社員撮影)

その隣に展示されていた「SSG-229J-5BE36JBF」は、2Uフォームファクターに2つのホットプラグ対応システム(ノード)を搭載したスーパーストレージです。
各ノードは以下をサポートします。

  • 専用LANによるIPMI管理
  • 共有LANによるBF3管理
  • 最大3つのPCIe 5.0 x16 FHFLスロット
  • ノードあたり最大2基のDPUと1基のGPU
  • 最大36基のホットスワップ対応E3.S 1T NVMeドライブベイ
  • 2基の冗長化2000W Titanium Level電源

SSG-229J-5BE36JBF(NTTPC社員撮影)

SupermicroのGTC2025での発表内容について、詳しくは下記Webサイトもご覧ください。
https://www.supermicro.com/ja/event/gtc

2.5 Automotive Pavillion

展示会場の一角は自動車が並ぶ「Automotive Pavillion」となっていました。
アメリカの自動運転スタートアップ「nuro」の技術は、既存の車両にカメラやレーダーを外付けすることで自動運転に対応させるという画期的なものです。会場ではプリウスにセンサーを搭載し、トランクに積んだエッジAIデバイスで推論する様子が展示されていました。現時点ではテスト段階のようですが、プリウスのほか、さまざまなサイズの完成車に後付けできるのこと。とても便利ですね!


自動運転システム「P3」が外付けされたプリウス展示車(NTTPC社員撮影)

ちなみに、Nuroは配達用途の自動運転車「R」シリーズも販売しており、Domino’sやWalmart、FedExなどが利用しているそうです。2025年4月には、日本でも地図データの収集を行うことが発表されました。

番外編. サンフランシスコでWaymoに乗ってみた

サンフランシスコ市街では、レベル5の自動運転商用サービス「Waymo」が運行しています。
乗車予約はアプリから簡単に行うことができ、目的地を指定すると自動で配車されます。アプリの操作は非常にシンプルで、直感的に使える設計になっています。


Waymoアプリのスクリーンショット

実際にWaymoに乗ってみると、人間が運転しているのとほとんど変わらないスムーズな動きで、歩行者や交通標識、路上駐車している車両などを正確に検知し、安全に走行していました。歩行者や自転車に乗っているサンフランシスコ市民もWaymoをあまり意識せず、生活に溶け込んでいるようでした。


公道に停止しているWaymoの様子(NTTPC社員撮影)

車内は非常に快適で、広々とした空間が確保されていました。ダッシュボードにはタッチパネル式のディスプレイが設置されており、マップの表示や室内温度の調整、ヒーリングミュージックの切り替えなどが簡単に操作できるようになっています。特に驚いたのは、画面にWaymoが認識している情報がリアルタイムで表示される点です。例えば、他の車両や歩行者の位置、信号の状態、一時停止標識などが詳細に可視化されており、Waymoの高度な認識能力を実感することができました。


Waymo車内の様子(NTTPC社員撮影)

降車時には、トランクに荷物を積んでいる場合、そのことをアナウンスで知らせてくれます。降車時には自動でトランクが開く仕組みになっており、荷物の取り忘れを防止してくれる設計になっていました。荷物を取り出した後は車両がしばらく待機したのち、スムーズに走り去っていきました。


走り去るWaymo(NTTPC社員撮影)

乗車位置を間違え、ドアが開錠できないというこちら側のミスはありましたが(ちょっと焦りました!)、大きなトラブルなく目的地へ連れて行ってくれました。
2025年4月14日より、東京都心7区でWaymo車両の走行が試験開始されました。実際に乗車できるのはもう少し先のようですが、日本でのサービス開始が待ち遠しいです!

3. 所感

当社は2024年に続き2回目のGTC参加となりました。昨年に比べ開催規模が広がり、総参加人数も増え、ますますグローバルでのNVIDIAの注目度が高まっていることを肌で感じることができました。

また、すでに普及期に入りつつある生成AIの次のトレンドとして注目されている、「エージェントAI」と、それに続く「フィジカルAI」という今後の大きな方向性が示されました。

  • エージェントAI: 高度な目標に基づいて複雑なタスクを自律的に推論、計画、実行
  • フィジカルAI: ロボットや自動運転車などが現実世界の物理法則を認識、理解して行動

推論性能の急激な増大に対応できるよう、次世代GPUアーキテクチャ『Blackwell Ultra』『Vera Rubin』『Rubin Ultra』が続けてリリースされたことも、今回注目すべきポイントです。

さらに、次の産業革命に向けた「AIファクトリー」をキーワードに、各メーカーが新たなAI向けハードウェアを発表しました。GPU性能が高まるにつれて消費電力が大きくなる傾向にあるため、データセンター側の中期的設計もこれに対応する必要があります。特に大規模なシステムを効率的に運用するためには、水冷・液冷などの効率的な冷却方式の導入対応が欠かせません。世界では水冷方式に対応したデータセンターが増えつつあり、今後日本でも普及していくことは間違いないでしょう。

今回のGTCでは、パートナーエコシステムの重要性があらためて示されました。
NVIDIA×パートナーが登壇するパネルディスカッションや、ユーザー利用ケースを紹介するセッションなども多く、いずれも人気を集めていました。またポスターセッションでは、アジア・ヨーロッパ・北米エリアのさまざま企業・大学が成果を公表し、参加者と活発に交流されていました。さらに、NVIDIA Inception Partner(スタートアップ支援プログラム)に加盟するスタートアップ企業が集まる展示会場もあり、エッジの利いたソリューションが展示されていました。そして、GTCに参加した人同士が意気投合し、新しいビジネスの可能性が生まれる瞬間も目の当たりにしました。(私たちも今回の参加を機に、新たなパートナー様との協業が進んでいます!)

誰か1社だけが勝者になるのではなく、AIに関わるあらゆるステークホルダーが協力しあって共に未来を創っていこうというメッセージを感じました。
私たちNTTPCも、パートナー様と連携して新しい価値を生み出していきたいと思います。