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COMPUTEX TAIPEI 2025 ~生成AIとGPU戦略の進化 現地展示風景・製品写真を交えて~

2025.08.04

GPUセールス 市口 信治

GPUセールス
市口 信治

GPUセールス 松本 和也

GPUセールス
松本 和也

毎年台北で開催されるコンピューター関連機器の総合展示会「COMPUTEX TAIPEI 2025」。今回、当社からも3名が現地で参加しました。
今年は2025年5月20日~23日に開催され、世界34カ国から約1,400社が出展し、約8万㎡の南港展覧館は4,800ものブースで埋め尽くされました。AIや次世代通信、グリーンITなど最新技術が一堂に会し、ビジネスと技術の熱気が会場を包んでいました。同時開催されたスタートアップ見本市「InnoVEX」も大盛況で、400社以上の新興企業が独自の技術をアピール。まさに、アジアの最先端がここに集結していました。


会場内の様子(NTTPC社員撮影)

現地を訪れたメンバーより、NVIDIAを中心に見た生成AIとGPU戦略の進化を、現地展示風景・製品写真を交えて紹介します。


展示会場マップ

1. イベント全体の所感

今回NTTPCから参加したメンバーの中には、数年前にもCOMPUTEX TAIPEI への視察を経験しているメンバーも含まれますが、過去と比べてイベント全体の雰囲気の変化を感じました。

【以前のCOMPUTEX TAIPEI】

  • メイン会場にはPCの周辺機器(マウス・キーボード・ケーブル等)や精密機器のパーツ類など、細かい部品が数多く展示されており、コンシューマー向け/ニッチ市場向けの展示品が多かった。
  • サーバー関連の展示はあったものの、そこまで数は多くなく、全体を通してパーツ類の展示会のイメージ。

【COMPUTEX TAIPEI 2025】

  • 『NVIDIAのイベント』と言っても過言ではないほど、各社NVIDIAとの連携を全面的に押し出した展示。
  • サーバー関連の展示がメイン会場にあり、規模も大きい。パーツ類の展示はサブ会場に移り、その規模は以前と比べて小さくなっている。

各社がNVIDIAとのパートナー会社であることをアピールしており、NVIDIA 創業者/CEO のJensen Huang氏も各ブースを回っていました。Huang氏が各社展示ブースに残した「ここに来た!」サインを至るところで目にしました。


会場入り口にはNVIDIAの大きな看板が(NTTPC社員撮影)

ASUSブースで見かけたJensen Huang氏のサイン(NTTPC社員撮影)

2. 世界の潮流は空冷から水冷へ

今年のCOMPUTEX TAIPEI 2025を歩いて強く感じたのは、「空冷から水冷へ」というグローバルトレンドの加速です。会場内では水冷ソリューションを軸にブースを展開する企業が目立ち、実機の展示やデモも豊富に見られました。特に、水冷パーツや水冷対応のラック型システムなどが多く出展されており、まさに次世代インフラの主役が見えてきた印象です。


各メーカーのNVIDIA認定済み水冷製品(NTTPC社員撮影)

3. パーソナルAIスーパーコンピューター「NVIDIA DGX Spark」

私たちがCOMPUTEX TAIPEI 2025で最も注目したポイントの一つは、「NVIDIA DGX Spark」と、そのOEMメーカーモデルの展示です。 特にASUSとGIGABYTEのブースでは、Grace Blackwell GB10 Superchipを搭載した手のひらサイズのマシンの実機が披露され、多くの来場者の関心を集めていました。

ASUSモデル(製品名:「ASUS Ascent GX10 AI Supercomputer」)は、スタイリッシュな筐体が印象的で、一般企業のオフィスにも溶け込むデザインが特徴です。

一方、GIGABYTEモデル(製品名:「AI TOP Atom」)は、エッジAIやローカル推論用途を意識した堅牢な設計となっており、工場内での稼働や車両への搭載など、よりプロフェッショナル向けのニーズに応える仕様となっています。各メーカーがそれぞれの個性を発揮しています。

これらはいずれも、最大1PFLOPSのAI性能と128GBの統合メモリを備え、NVIDIAのDGX OSやAI開発ツールがプリインストールされています。 これにより、AIモデルのプロトタイピングからファインチューニング、推論までをデスクトップ環境で完結できる点が大きな魅力です。今後のAI開発の現場において大きな役割を果たすことが期待されます。
参考:NVIDIA DGX Spark製品仕様

4. 「DGX Station」が再度市場に投下される

次に私たちが注目したのは、「DGX Station」の展示です。 DGX Stationは、デスクトップ型の筐体に、NVIDIA Blackwell Ultra GPU (288GB/HBM3e)とGrace CPU(72コア、Neoverse V2、496GB/LPDDR5X)が搭載されたPCです。過去にはNVIDIAから純正のDGX Systemsとして提供されていたStationシリーズですが、今回からはマザーボードのみNVIDIAから提供され、筐体は各OEMが生産するようです。

「NVIDIA DGX™ B200」など、GPU8基相当が稼働するサーバーと比べ安価に調達することが可能なため、学術用途やAI開発の初期フェーズにうってつけの製品です。説明員の方に話を聞いたところ、リリース時期こそ未定なものの、サーバー設計はほとんど終わっているとのことでした。


GIGABYTE製DGX Station(NTTPC社員撮影)

ASUS製DGX Station(NTTPC社員撮影)

5. コンテナタイプの小型データセンター

さらに、会場で特に目を引いたのが、Delta Electronicsが展示した実物大のコンテナ型AIデータセンターでした。コンテナ内部に実際に入室できるということで、私たち以外にも多くの来場者から注目を集めており、長蛇の列ができるほどの人気を博していました。
参考:https://www.deltaww.com/en-US/news/39729/

私も列に並んでコンテナ内に入ることはできましたが、すぐに次の方と交代することになり、詳細をじっくりと見ることはできませんでした・・・残念です。また別の機会に調査したいと思います。

このようなコンテナ型のデータセンターは、AIやエッジコンピューティングの需要増加に伴い、柔軟で迅速なインフラ構築を可能にするソリューションとして注目されています。 同社の展示はその先進性を体感できる貴重な機会でした。

今回のイベントでは、サーバー・ネットワーク機器などのハードウェアだけでなく、それらを安定して稼働させるためのデータセンター技術の最前線を体感できる展示も多数あり、業界の最新動向を肌で感じることができました。

6. NVIDIAとGPU業界の最新動向

イベント中には、NVIDIA CEOのJensen Huang氏による基調講演に加え、Intel、Qualcommなどの企業による講演も行われ、私たちも聴講することができました。すでに多くのメディアにも取り上げられていますが、今後のGPU業界に大きな影響を与える新たな発表がありました。

【主な発表内容】

  • NVIDIAが台湾でAIスパコン構想を発表(Foxconn・TSMC連携)
  • NVLink Fusionをオープン化。異種チップとの連携が容易に
  • NVIDIA Grace Blackwell SuperchipやNVIDIA DGX Sparkなどハードウェア新製品を続々リリース
  • AMD/Intelも高性能GPUやCopilot+ PCで対抗製品を投入

講演で発表された新情報に対応するように、展示会場でも各メーカーが新製品を競ってお披露目していました。


ASRock製HGX™ B300(NTTPC社員撮影)

Inventec製HGX™ B300(NTTPC社員撮影)

展示の中で私が気になったのは、各メーカーのHGX B300 / HGX B200のサーバー内部構造が独特なことです。HGX B300サーバーの中には、GPUをフロント側に配置し、リアから吸気する、通常(HGX B200)とは逆のエアフロー設計を採用しているものが多くありました。


ASUS製HGX B300(フロント側)

ASUS製HGX B200(フロント側)

この構成変更の大きな要因は、NVIDIA ConnectX🄬-8 NICがHost Boardではなく、GPU Board側に実装されたことです。その結果、PCIeやNVLink🄬と同様に、ネットワークI/Oの物理的な出力ポートもGPU側=フロント側に集中する構成となり、エアフロー設計を逆転させる必要が出てきたのです。これにより、サーバー筐体の奥行サイズもやや大きくなるため、搭載予定ラックに問題なく収まるか事前に確認するとよさそうです。

さらに、ASUSからはマルチタスクに対応する柔軟で拡張可能なサーバー「RS720A-E13-RS8U」が発表されました。搭載可能なシステムメモリはなんと最大 3072GB!私の知る限り他メーカーにはない仕様です。複数人が同時にアクセスする場合など、大きなメモリ空間が必要な用途に適しています。

7. Supermicro主催「Innovate APAC 2025」Dinnerレセプション

COMPUTEX期間中、台北市内の別会場では、Supermicroが主催する「Innovate! APAC 2025」 レセプションが開催されました。当社もお招きいただき、本レセプションに参加することができました。
毎年恒例となっているこのディナーイベントは、今年も期待を裏切らない豪華な内容で、まさにSupermicroの勢いとスケール感を体現する一夜となりました。

会場内には展示ブースが設けられ、同社の新製品が紹介されています。最新の「NVIDIA GB300 NVL72)やそのマニホールドなども展示されていました。供給に向けた準備を確実に進めている様子が見て取れました。

展示だけでなく、上質な料理とともにプロの歌手とバンドによるライブ演奏が披露され、参加者の皆さんも自然と笑顔に。ビジネスイベントでありながら、どこかフェスティブな雰囲気も漂う、特別な時間が流れていました。改めて、Supermicroのパワーとおもてなしの精神を感じる素晴らしいレセプションでした。来年の開催も今から楽しみです!

番外編:コンシューマーエリア

今回私たちはビジネス向け製品をメインに見学しましたが、コンシューマー向けゲーミング製品を展示するエリアにも少し足を伸ばしてみました。
以前は、COMPUTEXといえば最新ゲーム向けハードの展示!といわれるほど活気がある展示エリアでしたが、今年は思いのほか人が少なかった印象です。

とはいえ、一見するとパソコンには見えない恐竜やスポーツカーをモチーフにした様々なゲーミングパソコンが展示されており、来場者を楽しませてくれました。
(ガンダムをモチーフにしたパソコンもありましたが、写真を撮り忘れました。)