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CPUとGPUを徹底比較:導入で差がつく基礎知識と選択の仕方

2025.04.17

GPUエンジニア

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CPUとGPUを徹底比較:導入で差がつく基礎知識と選択の仕方

AI活用が加速する現代において、企業や大学などのAIを活用する組織ではシステムのパフォーマンスを最大限に引き出すための最も適したインフラ選択が求められています。
特に、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)とGPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)のどちらを導入すべきか、あるいは両方をどのように組み合わせるべきかという判断は、ビジネスや研究の成長を左右する重要な要素です。

CPUは汎用的な処理に強みを持つ一方、GPUは特定の処理、特に並列計算において圧倒的なパフォーマンスを発揮します。しかし、システム導入を検討する際、「CPUだけで十分なのか?」「GPUは本当に必要なのか?」という疑問が生じることもあるのではないでしょうか。

本記事では、CPUとGPUの違いを徹底的に比較し、それぞれの得意分野、導入における注意点をわかりやすく解説します。

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1. CPUとGPUの違いとは?導入で知っておくべき基本

CPUは「汎用的な計算処理を高速にこなす」のに対し、GPUは「膨大なデータの並列処理に優れている」という違いがあります。
この特性の違いにより、CPUは主に制御や論理演算を担い、GPUはAIや画像処理などの大量の計算を必要とする分野で活用されています。

どちらもプロセッサ(計算処理を行うハードウェア)ですが、それぞれ異なる設計思想を持ち、得意とする処理も大きく異なります。システム導入を検討する際には、これらの違いを理解し、自組織のニーズにあった選択をすることが重要です。

このセクションでは、CPUとGPUの基本的な特性と、得意分野の違いについて詳しく解説します。

1.1 CPUの基本特性と得意分野


※CPU(イメージ画像)

CPUは、コンピュータの「頭脳」として、オペレーティングシステム(OS)の実行、アプリケーションの制御、データの入出力など、コンピュータが行うさまざまな処理を、順番に実行する役割を担っています。

CPUの主な特徴は以下の通りです。

  • 汎用性の高さ: 非常に多様な種類のタスクを効率的に処理できるように設計されています。文書作成からWebブラウジング、データベース管理まで、幅広い用途に対応できます。
  • シングルスレッド性能: 1つのタスク(スレッド)を高速に処理する能力に優れています。これにより、複雑な処理や、条件分岐が多い処理でも、スムーズに実行することができます。
  • 複雑な制御: 分岐処理や条件判断など、複雑な処理フローを伴うタスクを効率的に実行できます。これは、CPUが高度な制御機構を備えているためです。

これらの特徴から、CPUは特に複雑な分岐処理や多様な計算タイプが混在する業務に適しています。

1.2 GPUの基本特性と得意分野


※GPU(イメージ画像)

GPUは、もともとコンピュータグラフィックス(画像や映像)の描画処理のために開発されたプロセッサです。
しかし、その高い並列処理能力が、近年、AIやディープラーニング(深層学習)、科学技術計算など、さまざまな分野で注目され、活用されています。

GPUの主な特徴は以下の通りです。

  • 並列処理能力: 多数の小さなコア(計算ユニット)を持っており、これらのコアが連携して、大量のデータを同時に処理することができます。
  • 単純な計算の繰り返し: 同じ種類の計算を大量に繰り返すタスク、例えば、行列の計算などで、非常に高いパフォーマンスを発揮します。
  • 高いメモリ帯域幅: 大量のデータを高速に読み書きできるメモリシステムを備えています。これにより、データ集約型の処理、つまり、大量のデータを扱う処理を効率的に行うことができます。

これらの特徴から、GPUは大量の並列計算が必要な分野で活用されています。特に、機械学習や画像処理、3Dレンダリングなど、大規模な計算を必要とする業務でその性能を発揮します。

GPUの具体的な性能指標や製品比較など、GPU選定に関するより詳しい情報は、次の記事でご確認いただけます。

1.3 CPUとGPUの比較

ここまで、CPUとGPUそれぞれの基本特性について解説しました。CPUとGPUは、設計思想、得意な処理、主な用途まで、さまざまな点で異なります。

次の表で両者の特性を比較しました。

特性 CPU GPU
設計思想 汎用処理、複雑な制御、逐次処理(順番に処理を進める方式) 並列処理、大量のデータ処理
コア数 比較的少ない(数個~数十個) 非常に多い(数百個~数千個)
得意な処理 シングルスレッド処理、複雑なロジック 並列処理、単純な計算の繰り返し
メモリ 低レイテンシ、高速なアクセス 高帯域幅
主な用途 OS、アプリ制御、データベース、事務処理 AI、ディープラーニング、画像処理、科学技術計算
プログラミング 一般的なプログラミング言語(C++, Javaなど) CUDA、OpenCLなど

このように、CPUとGPUはそれぞれ異なる特徴があります。用途に応じて適切に使い分けることで、業務の効率化やシステムの最適化を実現できます。導入する際には、これらの違いを理解した上で、自社のニーズにあったプロセッサを選択しましょう。

その際、選定や構成でお悩みの方は、豊富な導入実績を持つNTTPCにお気軽にご相談ください

NTTPCは、GPUサーバー、ストレージ、ネットワークなどにおいて、マルチベンダーで多様なメーカーの製品を取り扱っています。お客さまの要件に合わせた選択と組み合わせでの提案・構築を行うことが可能です。

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2. プロセッサ導入のメリットと考慮すべき点

システム基盤を支えるプロセッサの選択は、IT戦略において重要な意思決定の一つです。CPUとGPUはそれぞれ異なる特性を持ち、業務内容や目的に応じた適切な選択をすることが重要です。

ここでは、CPUとGPUを導入する際のメリットと考慮すべき点について解説します。

2.1 CPUの導入について

CPU中心のシステム構成は、導入を検討する際に、標準的な選択肢であり、幅広い業務で活用されています。

初期投資が比較的小さく、既存のIT資産との互換性も高いため、スムーズな導入が可能です。また、一般的なIT知識を持つ人材で運用できる点も大きな利点です。

メリット

CPUを導入することで、事務処理、Webサービス、データベース運用など、多くの標準的なビジネスアプリケーションは、最新のCPUで十分なパフォーマンスを発揮します。
特に条件分岐の多い処理や複雑なビジネスロジックを含む業務システムにおいては、CPUの高いシングルスレッド性能が活躍します。

CPU環境は導入コストが比較的低く、既存システムとの互換性も高いため、多くの組織にとって取り組みやすい選択肢でしょう。

考慮すべき点

一方、CPUにはいくつかの制約も存在します。コア数に限りがあるため、大規模な並列処理が必要なAIやディープラーニングなどの分野では性能に限界があります。
また、大量の画像・動画データをリアルタイムで処理するような用途には不向きです。

処理能力を向上させるためには、サーバー台数を増やす必要があり、それに比例して設置スペース、電力コスト、冷却費用などが増加します。

特に行列計算など、GPUが得意とする特定の演算では、CPUは効率が大幅に劣るため、業務の特性によっては非効率になる場合がありますので確認が必要です。

2.2 GPUの導入について

GPU導入は、特定の処理領域で圧倒的なパフォーマンスを発揮し、競争力向上に貢献し、業務のあらゆる場面で大きな効果が期待できます。

特にAI、ディープラーニング、ビッグデータ解析、科学技術計算などの分野では、処理時間の劇的な短縮やこれまで不可能だった処理の実現など、ビジネスに大きな変革をもたらすことができます。

メリット

GPU導入の最大のメリットは、特定の処理における圧倒的なパフォーマンスです。AIモデルの学習・推論処理ではCPUの10〜100倍の速度を発揮することもあり、大規模データセットの分析時間を大幅に短縮できます。
これにより、リアルタイム処理や即時分析など、これまで実現困難だった処理も可能になります。

また、物理的なスペースや電力あたりの処理能力が高く、データセンターの効率化にも貢献します。
数台のGPUサーバーで数十台分のCPUサーバー相当の処理能力を実現できるケースもあるため、設置スペースに制約がある環境でも高性能なシステムを構築できる利点があります。

考慮すべき点(GPUクラスタの構築)

GPU環境の導入には高額な初期投資が必要であり、運用には専門的な知識が求められます。

特に、高性能GPUは1枚あたり数十万円から数百万円と高価です。大規模な計算処理を行う場合は複数のGPUを並列に接続したGPUクラスタの構築が必要となり、システム全体で数千万円~数億円規模の投資が必要になることもあります。

GPUクラスタの運用には、データ転送の最適化や分散処理の設計といった高度な技術に加え、電源や冷却装置などのインフラ整備も欠かせません。こうした要素を踏まえると、導入後の運用体制や技術サポートの確保が大きなポイントとなるでしょう。

2.3 CPUとGPUの併用について

また、ITインフラにおいて、CPUとGPUを適切に組み合わせることで、パフォーマンスの最大化とコスト最適化を両立できます。特に、AIやデータ解析、シミュレーション分野では、それぞれの特性を活かしたハイブリッド運用が業務効率の向上に貢献するでしょう。

メリット

CPUとGPUを併用するメリットはどのような点でしょうか。
次に、それぞれを併用することによるメリットをまとめました。

メリット 説明
タスクごとの最適化 CPUは制御・ビジネスロジックを担当、GPUは並列計算を処理し、システム全体のバランスを向上させる。
コストパフォーマンスの向上 GPUのみを利用するより、CPUと適切に役割分担することで、コスト増加を抑えつつ高性能を実現。
スケーラビリティの確保 負荷の変動に応じて、GPUを追加しながらCPUで処理を補完することで、柔軟な拡張が可能。
インフラの有効活用 既存のCPU環境にGPUを追加し、AIやデータ分析などの計算負荷の高い業務を加速できる。

これらのメリットは現場においてどのように活用されるのでしょうか。

例えば、AI開発の現場ではCPUがデータの前処理や制御を、GPUがモデルの学習や推論といった演算処理を担当することで、高い開発効率と処理性能を実現できます。また、ビッグデータ扱う分析業務においては、CPUで全体のワークフローを制御しつつ、GPUによる大量データの並列処理を組み合わせることで、分析時間の短縮が期待できます。

このように、CPUとGPUの役割を適切に分担することで、それぞれの特性を最大限に活かしたシステム運用が実現されます。

考慮すべき点

CPUとGPUを併用する際は、システム構成の設計が重要です。ただ単に両者を組み合わせるのではなく、どの処理をCPUに任せ、どの処理をGPUに最適化するかを明確にすることが求められます。特に、データ転送の最適化や電力・冷却管理を含めたインフラ設計は重要な要素です。

両者を適切に組み合わせることで、コストを抑えつつ、より適したパフォーマンスを実現しましょう。

NTTPCは、GPUクラスタをはじめとする、設計・構築から、お客さまの環境に適したGPUソリューションの導入をサポートし、特にAIや大規模データ処理など、GPUの能力を最大限に活かせる領域での課題解決・価値創出を支援しています。
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3. 導入時の3つのポイント


図1. 導入時の3つのポイント

CPUとGPUを選ぶ際は、性能の違いだけでなく、組織全体への影響も考慮することが重要です。単なるプロセッサのスペック比較だけでは判断できない業務への適応性やコスト、運用負担なども踏まえ、総合的に判断する必要があるでしょう。

ここでは、経営層から現場担当者まで、導入検討に関わるすべての人が意識すべき4つのポイントを紹介します。

3.1 処理の種類と用途

もっとも適したプロセッサの選択には、「どのような処理を目的に導入するのか」という視点が重要です。ここでは、CPUとGPUに適している処理の種類とその用途を紹介します。

次に、CPUの活用が適している処理の種類と、その理由を示しました。

処理の種類 具体例 CPUが適している理由
複雑な条件分岐を含む処理 会計システム、販売管理システム、人事管理 分岐予測機能に優れ、複雑なロジックを効率的に処理できる
トランザクション処理 ECサイト注文処理、銀行取引、予約システム 連続した処理ステップを高速に実行し、一貫性を保持できる
逐次処理が中心の業務 ワークフローシステム、承認プロセス管理 高いシングルスレッド性能で依存関係のある処理に強い
汎用的な業務アプリケーション 文書作成、表計算、メールや社内ポータルなど 多様な命令セットを持ち、様々な処理に柔軟に対応できる

次に、AIや画像処理などGPUが効果を発揮する処理の種類と、その理由を示しました。

処理の種類 具体例 GPUが適している理由
AI・機械学習処理 大規模言語モデルの学習や推論、画像認識システム 行列演算の並列処理能力が高く、大量のデータを同時に計算できる
画像・動画処理 防犯カメラ映像分析、医療画像診断、動画編集 ピクセルごとの処理を並列で実行でき、高速な映像解析が可能
科学計算・シミュレーション 気象予測、製品設計CAE、創薬研究 同一の演算を多数の異なるデータに同時適用できる構造
大規模データ並列処理 ビッグデータ分析、株価予測、ログデータ高速検索 データの並列処理に最適化されたアーキテクチャを持つ

求められる処理に応じて適したプロセッサは異なります。どのような処理を高速化する必要があるのかを明確にすることが、適切なプロセッサ選択の鍵となるでしょう。

3.2 コスト(導入・運用)

プロセッサ選択は初期投資だけでなく、長期的な運用を見据えた総所有コスト(TCO)の視点が欠かせません。特にGPUの導入にあたっては、初期コストに加えて、電力、冷却、運用管理などの継続的なコストを評価する必要があります。

次に、CPUとGPU環境にかかるコストを比較しました。

コスト要素 CPU環境 GPU環境 考慮すべきポイント
初期ハードウェア 数万円~/個 数十万円~/枚 GPUは高性能モデルほど価格上昇が急
電力・冷却 低~中 中~高 CPUよりGPUの消費電力の方が高く、冷却設備強化が必要
ソフトウェア 標準的(OS・一般アプリ) 追加費用発生(専用ライブラリ・フレームワーク) GPU向けのCUDA、OpenCL、TensorFlow、PyTorchなどのライセンス費用・開発コストが発生

プロセッサの選択の際には、事前のコスト計画ともっとも適した運用体制の総合的な整備が重要となります。まずは概算の金額を把握するために、シミュレーターを活用するのもおすすめです。

GPUサーバー見積シミュレーターの活用

NTTPCでは、お客さまが簡単に費用感を確認できる「GPUサーバー見積シミュレーター※」を用意しています。用途別のおすすめ構成から選択するだけで、初期検討に必要な情報を得ることができます。
こちらからご利用ください。

※本シミュレーション金額は概算料金です。為替や市場在庫の状況により、料金は大きく変動する場合があります。また、本シミュレーターではSupermicro製品の価格を試算できます。その他メーカーの見積をご希望の方はお問い合わせください。詳しくはお問い合わせください。

3.3 オンプレミス vs クラウドの比較

GPU環境を導入する際、オンプレミス(自社設備)とクラウド(外部サービス)どちらを選択するかは、コストや運用方針に大きく影響します。

クラウドは柔軟なリソース利用が可能ですが、オンプレミスは、長期的なコスト削減、高いパフォーマンス、データセキュリティ、カスタマイズ性の面で優れており、高頻度な計算処理や機密データを扱う組織には特に適した選択肢となります。

次に、オンプレミスとクラウド環境を比較しました。

比較項目 オンプレミス(自社設備) クラウド(外部サービス)
初期コスト ハードウェア購入費用、設置・構築費用がかかる 初期費用不要であり、従量課金で利用できる
ランニングコスト 低い(長期的に見るとコストメリットが出やすい) 高くなりがち(従量課金のため、頻繁に利用するとコスト増)
パフォーマンス 専用環境で安定した高性能を維持できる 共有リソースのため、他ユーザーの影響を受ける可能性あり
スケーラビリティ 拡張には追加投資が必要(GPUの増設・設備投資) 柔軟にスケールアップ・ダウンが可能
データセキュリティ 自社内でデータ管理できるため高セキュリティ データを外部に預けるため、情報漏洩リスクの懸念あり
カスタマイズ性 ハードウェア・ソフトウェアを自由に構成可能 提供される環境に制限される(専用設定が困難)
通信コスト・遅延 ローカル環境で処理できるため高速・低コスト データ転送コスト・遅延が発生する可能性あり
運用負荷 保守・アップグレード・監視体制が必要 運用管理をクラウド事業者に委託できる
導入スピード 時間がかかる(ハードウェア調達・設計・セットアップが必要) 即時利用可能

オンプレミスとクラウド環境にはそれぞれ特徴があり、業務要件や運用体制に応じて適した環境を選択することが、パフォーマンスの最大化とコストの最適化につながります。

4. まとめ

本記事では、CPUとGPUの違いを導入の視点から比較し、それぞれの特性を解説しました。CPUは汎用性に優れ、幅広い業務に対応できる一方、GPUは並列処理に強く、AIやビッグデータ解析などの高負荷な計算処理に適しています。

導入にあたっては、パフォーマンスだけでなく、コスト、インフラ環境など、多角的な視点で検討することが重要なポイントです。業務要件に応じた選択を行い、効率的なシステム運用を実現しましょう。

NTTPCは、GPU導入に関する豊富な実績と専門的な知識・技術力を活かし、お客さまの抱える、ビジネス課題にそったソリューションをご提案します。お気軽にご相談ください。
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