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NVIDIA® AI Advisor Program研修&試験に挑戦

2025.09.30

GPUセールス&マーケティング担当 亀谷 淑恵

GPUセールス&マーケティング担当
亀谷 淑恵

1. NVIDIA AI Advisor Programとは

このたびNTTPCでは、エヌビディア合同会社様(以下、NVIDIA)、および株式会社マクニカ様(以下、マクニカ)のご支援のもと、「NVIDIA AI Advisor Program」のワークショップを受講する機会に恵まれました。

「NVIDIA AI Advisor Program」とは、営業担当者やソリューションアーキテクト担当者などのフロントエンジニアが、NVIDIA 製品のソリューション提案に対してより豊富な知識やスキルを身につけることを目的とした、2日間の総合的なワークショップです。

このプログラムは、NVIDIA製品とソリューションを市場に提供する、NVIDIA パートナー ネットワーク(NPN)に限定した招待制プログラムであり、現在日本ではマクニカ様が開講しています。プログラム全体は、次のような3つのステップで構成されています。

① 事前カリキュラム(AI Advisor Essentials)

AIの構成要素、NVIDIAエコシステムの優位性などについて、事前にeラーニング形式で自習します。

② ワークショップ(Interactive Workshop)

2 日間のオンサイト形式で開催され、AI のユースケースやお客さまとのエンゲージメント戦略、ケーススタディ分析などをインタラクティブなセッション形式で学びます。

③ NVIDIA AI Advisor認定試験 (Exam with Badge)

ワークショップで習得した知識を評価する試験に合格すれば、「NVIDIA AI Advisor」 資格を取得できます。

日進月歩で目まぐるしく変化するAI 市場の状況や、生成 AI やエージェントAI、さらにAIファクトリーなどの最新テクノロジーを体系的に学習できる貴重な機会です。また、AIの開発・導入を本格的に進めるお客さまに対し、一元的なNVIDIAソリューションエコシステムの価値を訴求する手法を学ぶことで、学習から推論、運用フェーズに至るワークフロー全体の課題解決を支援することが可能になります。
お客さまへNVIDIAのフルスタックでの提案を行うための幅広いコンサルティングスキルを修得するにあたりまたとない機会と考え、本プログラムを受講しました。

2. ワークショップでの学び

オンサイトで開催されるワークショップの冒頭、講師の方から「これは一般的な座学研修ではなく、インタラクティブに対話を行うセッション」であるという投げかけがありました。

その言葉通り、各セッションでは参加者の理解度を確認したり、例示されたユースケースへの意見募集・質疑応答などが行われたりしました。参加者側からも手が挙がり、仕様などに関する詳しい質問が飛び交っていました。
私が気になった点を質問した際も丁寧に回答をいただくことができ、細部の理解が深まりました。


質問するNTTPC参加者

2-1. AI活用とNVIDIAソリューションの理解

ワークショップ初日は、国内外のエンタープライズAI市場動向やAIの活用ポイント、産業別のエージェントAIユースケースなど幅広く解説いただきました。また、NVIDIAアクセラレーテッドコンピューティング戦略の全体像や各ソリューションの詳細も体系的に深く学ぶことができました。


セッション受講中のNTTPC参加者

2-2. 注目技術:AIソフトウェアスタック「NVIDIA AI Enterprise」

特に私が興味を持ったのは、「NVIDIA AI Enterprise」に関するセッションです。
これは生成AIのAI開発フェーズから推論・運用フェーズまで、一連のプロセスで発生する可能性のあるさまざまな課題の解決策をトータルに提示するソフトウェアスタックです。もちろん、NVIDIAのGPUに最適化されたシステムとして提供されているため、手元にあるハードウェアの性能を最大に引き出すことができます。

GPUを使いこなせる高スキル人材の育成に悩まれている方も多いと思います。NVIDIA AI Enterpriseを活用することで「GPUさえ揃えればすぐに開発に入れる」環境が整えられることは大きなメリットだと感じました。

なお、NVIDIA AI Enterpriseには大きく分けて以下の3つのサービスが含まれます。

A) NVIDIA NIM™・・・推論マイクロサービス
  • 主に推論に必要なコンポーネントをコマンドラインで簡単に利用できる
  • Gemma、llamaなどの主要なLLMも包含 日本語モデルも提供
  • GPUごとに量子化プロファイルが提供されており、推論モデルがGPUに最適化されているため応答が速い
  • ローカル環境へ簡単にデプロイ可能なため、データの機密性が保持され、外部サービスに依存しない
  • 実行環境を選ばず、オンプレミスやクラウド、コンテナ環境にデプロイできる

※「Gemma」はGoogle LLCの商標です
※「llama」はMeta Platforms, Inc.の商号または商標です

B) NVIDIA NeMo™ マイクロサービス・・・カスタム生成AIの開発を簡素化するフレームワーク群
  • NeMo Curator:データ整形、重複排除、品質チェック、句読点揃えなどの前処理を合理化
  • NeMo Customizer:NeMoの中核となるサービス。ファインチューニングを簡素化し、効率よく分散学習を実行できる。SlurmやKubernetesもサポート
  • NeMo Retriever:RAG (検索拡張生成)のためのサービス。表や図を取り込み、情報検索、解釈を行うことができる
  • Nemo Evaluator:生成したAIモデルを評価し性能向上に寄与
  • NeMo Guardrails:出力をチェックし、プロンプトインジェクションや不適切な出力、ハルシネーションを予防
  • NVIDIA NIM:推論マイクロサービス
C) NVIDIA AI Blueprints・・・生成AIアプリケーションのひな型
  • カスタム生成AIモデル、AIエージェントを実業務に展開するためのテンプレート
  • 難しい操作なしにテンプレートをそのまま使うことも、個別用途にあわせてカスタマイズも可能
  • フローはNIM+OSSで構成されており、「NIMを使ったリファレンスワークフロー」ともいえる

さまざまな用途に対応するAI Blueprints(参考:Try NVIDIA NIM APIs

これらの要素をパッケージ化したのがNVIDIA AI Enterpriseです。さらにエンタープライズサポートも具備され、NVIDIAエキスパートへの問い合わせや、メンテナンス、アップグレードの恩恵を受けることができます。

AI分野で一般的に使われるソフトウェアはオープンソースソフトウェア(OSS)が多く、商用利用時はサポート面が課題になることも。NVIDIA AI Enterpriseを導入することで、AIを本番環境にスケールする際にも安心して活用できる堅牢な基盤をすぐに手に入れることができ、ビジネスの成功を支える強力な体制を構築することが可能です。

「まずは手元で使用感を試してみたい」という方向けに、NVIDIA AI Enterpriseをすぐに使える試用版もリリースされています。マニュアルも充実しており、わずか数分で使い始めることができます。

▶︎ アプリケーションの機能を確認したい方はこちら
 NVIDIA API Catalog

▶︎ 自分の環境にデプロイして試したい方はこちら
 NVIDIA AI Enterprise 90日間試用ライセンスを申請

 ※なんと試用版でもエンタープライズサポートが受けられます!

2025年は「AIエージェント元年」とも言われています。これまで、企業固有の課題に対応したカスタマイズエージェントを開発するには、LLMの深い理解と高度な実装スキルが不可欠とされてきました。しかし、NVIDIA AI Enterprise やAI Blueprintsの登場により、私のような非エンジニアでも、リファレンスに沿って最先端のAIモデルをデプロイしたり、目的に合わせたカスタマイズを行うことができるようになりました。エージェントAI開発の門戸が大きく開かれ、今後ますます一般への普及が進むと期待できる機会でした。

2-3. AI時代を支える『AIファクトリー』の全体像

研修の中で特に大きく取り上げられたのか「AIファクトリー」というキーワードです。
生成AIモデルのパラメータ数増加、入力データの大型化に伴い、必要なコンピューティングリソースも飛躍的に拡大しています。部署ごとに個別調達するのではなく、企業全体で共有する大規模AIインフラ基盤を統合的に整備し、AIによるイノベーションを推進するための工場(=ファクトリー)と位置付け、意思決定に活かそうという考え方です。
AIファクトリーに集中投下することで、開発部門の生産性を最大化、AIプロジェクトのROIが加速するなど、さまざまなメリットを享受することができます。

NVIDIAは、AIファクトリーの主要なコンポーネントとしては次の4つを提唱しています。下記要素はすべてNVIDIAまたはパートナーから一元提供されています。

コンポーネント 提供システム
ネットワーク NVIDIA AI Networking Platforms
ストレージ NVIDIA-Certified Storage Program
GPUコンピューティング NVIDIA DGX Platform
ソフトウェア NVIDIA AI Enterprise、NVIDIA Mission Control

また、それぞれのブロックを組み合わせる際の指針となる「NVIDIAエンタープライズ リファレンス アーキテクチャ」も公開されています。NVIDIAがクラスタ全体でのパフォーマンス・セキュリティ・スケーリング性などを事前検証し、導入効果を最大化できる推奨構成として打ち出しているものです。これからAIファクトリーの実装を考える方は、このリファレンスアーキテクチャに準拠する構成で導入することを強くお薦めします。

ハイレベルな研修内容でしたが、NVIDIAが提供する包括的なAIプラットフォーム全体の有用性を体感した1日でした。

2-4. AI導入を成功に導く提案フロー

2日目のカリキュラムでは、お客さまがAIの利活用を考えるうえで重視するポイントを把握し、効果的な提案フローを推進してクロージングに導くためのセッションが中心となりました。お客さまの真の目的を引き出し、それに合わせた提案をステップバイステップで進めるという「カスタマージャーニー」と「バイヤーズジャーニー」の考え方を学びます。

グループワーク形式で、生成AI導入段階のお客さまでのよくあるシナリオを例に上げたロールプレイを行い、実践的に提案の流れを考えるような時間もあり、他の参加メンバーと活発に意見交換しながら考えを深めることができました。

実は、今回の参加者のうち約半分は営業担当、残りは技術担当と職種が分かれています。さらに、入社1年目の新入社員から大ベテランまで経験値もさまざま。グループワーク時は年齢や性別、専門分野の異なる混成チームが編成され、各自がこれまでに直面した課題や、シンボリックな成功事例から得た経験を共有し、多角的な議論を行うことができました。


グループワーク形式でのロールプレイセッション

2-5. 複雑化するAIの課題に対応するNVIDIAパートナーエコシステムの力

今回のディスカッションは非常に奥深く、NTTPC1社だけでは解決できないような複合的な課題を抱えるお客さまを想定したテーマもありました。私たちのチームが悩んでいると、講師の方から「外部パートナーの力を借りることも考えてみてください」というアドバイスをいただきました。

複雑化するAIワークロードに対応するため、NVIDIA パートナーネットワーク (NPN) を通じ、幅広いパートナーエコシステムが形成されています。
例えば、特定の業界に深いドメイン知識を持つ企業や、全世界に高電力データセンターを展開する事業者、GPUに最適化されたアプリケーションの開発を行うベンダーなど、パートナー同士がそれぞれの強みを持ち寄ることで、あらゆるシーンへの対応力を強化できます。

NPNには次のようなカテゴリの価値あるパートナー企業が加盟し、NVIDIA製品・ソリューションを市場に提供しています。

NVIDIAパートナーの種類(抜粋)

参考:NVIDIA パートナー ネットワーク

クラウドパートナー NVIDIA 製品を活用するエンドユーザーのお客さまに、ホスティングされたソフトウェアやハードウェア サービスを提供しているパートナー
データセンタープロバイダー NVIDIA DGX™ Systemsを世界中でホストするための、高密度なデータ センター施設、相互接続されたインフラ、最先端の冷却技術などのコロケーションサービスを提供するパートナー
ディストリビューター NVIDIA 製品を販売業者に経由して提供する権限を持つパートナー
ソリューションプロバイダー NVIDIA 製品、NVIDIA ベースのソリューション、NVIDIA 技術の統合機能を含む、付加価値のある再販に注力するパートナー
ソリューション アドバイザー NVIDIA 製品、NVIDIA ベースのソリューション、技術の導入を目指すお客さまへ、コンサルティング サービスおよび専門的なアドバイスを提供することを主なビジネス モデルとするパートナー

このうち、私たちNTTPCは「ソリューションプロバイダー」に認定されています。ちなみに、2025年にはフルスタックエンジニアリングにより幅広い産業分野でAI市場を拡大したことが評価され、NVIDIA国内パートナーの中で最高のアワード『Best NPN of the Year』を受賞しました。

3. NVIDIA AI Advisor 認定試験

研修の最後には認定試験が行われました。
問題文と選択肢がすべて英語(!)ということもあり四苦八苦したものの、2日間のセッションで学んだことを出し切り、なんとか合格することができました。


合格者にはNVIDIA AI Advisorバッジが発行されます。(上記はサンプル)

4. 今後に向けて

NVIDIA はこれまでの多くの方が半導体メーカーとしての認識であったかと思いますが、現在はAIプラットフォーム全体を提供する世界的企業に拡大しています。今回の研修を受講して、利用者目線でハードウェア・ソフトウェア・ネットワーク技術をシームレスに進化させてきたことが、今日の競争優位性の源泉となり、「AIインフラ企業」として圧倒的なポジションを確立するに至っていることをあらためて実感しました。

また、研修受講後の2025年8月27日(現地時間)には、NVIDIAの2026年第2四半期決算発表会が行われました。NVIDIA 創業者/CEO の ジェンスン フアン氏によるカンファレンスコールの中でも、AIソフトウェアスタックの進歩やパートナーエコシステムの拡大、AIファクトリーによる産業構造のシフトなどの重要なアップデートが語られました。

昨今の急速な技術革新を受け、生成AIは「新しい産業革命」の中核を担う存在になりつつあります。NTTPCでは今後も技術・ノウハウを磨きながら、お客さまへ新たな価値を提供するパートナーになれるよう尽力していきます。