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GTC 2026現地参加レポート:GTC 2024との比較から見えた進化

2026.04.08

GPUエンジニア 力石 誠也

GPUエンジニア
力石 誠也

はじめに

私は2024年に、初めてNVIDIA GTC 2024へ現地参加しました。これまで海外カンファレンスとしては、RSA Conference(セキュリティ分野)、CeBIT(ドイツ・ハノーファーで開催されていた世界最大級のIT展示会)、Dell Technologies World(Dell主催のグローバルカンファレンス)などに参加してきましたが、GTCへの参加はこの2024年が初めてでした。

GTC 2024は、コロナ禍以降初めて本格的に現地開催へと回帰したイベントであり、生成AIへの関心が世界的に急速に高まるタイミングとも重なっていました。その結果、会場全体はこれまで参加してきた他のカンファレンスとは異なる独特の熱量に包まれていました。GPU、AI、ソフトウェア、ロボティクス、インフラといった要素が、単なる技術紹介ではなく、「産業としての前提条件」として語られていた点が、特に印象に残っています。当時は、生成AIやデジタルツイン、Physical AIといった領域について、
「本当に実装・運用フェーズまで進むのか」「PoC止まりにならないのか」
といった問いを抱きながら、初めてのGTCの空気を体感していました。
参考: NVIDIA GTC2024 現地参加レポート(基調講演編)

その後、約2年が経過し、2026年に改めてGTCへ現地参加する機会を得ました。
この2年間、当社および個人として、デジタルツイン、Physical AI、NVIDIA Omniverse™、GPUインフラなどの分野で実践的な取り組みを進めるとともに、書籍執筆にも取り組んできました。
参考:NTTPCのGPUクラスタ構築等のノウハウ技術書 『GPUクラスタ×生成AI』を6月13日(金)に発売開始 ~技術の総合格闘技!13のポイントで実現する次世代基盤とビジュアライゼーション実践ガイド~|プレスリリース|ニュースリリース|【公式】NTTPC

ここで取り組んできた内容は、GTC 2026で示されていた「AIをどのように運用し、スケールさせるか」というテーマとも重なるものであり、技術が実験段階から実装段階へと移行していることを示していると感じています。
本レポートでは、初参加となったGTC 2024と、再訪となるGTC 2026を比較しながら、この2年間における自社および自身の取り組みを踏まえ、GTC 2026が示した変化とメッセージを整理していきます。


会場周辺の様子

GTC2024 / GTC2026 比較サマリ

項目 GTC 2024 GTC 2026
開催地 米国・サンノゼ 米国・サンノゼ
開催形式 現地+オンライン(ハイブリッド) 現地+オンライン(ハイブリッド)
セッション数 900超 1,000超
出展社数 約300社 450社以上
展示・ブース規模 約300ブース 大幅拡張(数値は現時点で未公表)
現地来場者数 約2万人規模 現時点で未公表
オンライン含む登録者 約30万人規模 現時点で未公表 ※1
主な注目テーマ 生成AI、LLM、デジタルツイン Agentic AI、Physical AI、AI Factory
象徴的な発表 Blackwell GPU、Grace Blackwell、
生成AI向け計算基盤
Rubin世代を見据えたロードマップ、
AI Factoryの進化

※1 GTC 2026では、これまでなかった4 Dayカンファレンスパスが開催1ヶ月前に売り切れ。その後もOne Day Passも売り切れが続き、最終的にはExhibitorパス(展示入場パス)のみが販売となるなど、高い注目を集めました。

比較から見えるポイント

初めて現地参加したGTC 2024は、生成AIへの関心が世界的に急速に高まる中で開催され、「生成AIとは何か、どのような可能性を持つのか」を幅広く提示することに重点が置かれていました。900を超えるセッションが用意され、技術紹介から事例共有までを網羅する構成となっており、いわば「理解のための場」としての性格が強かったといえます

一方、再訪したGTC 2026では、セッション数・出展規模ともに拡大し、イベント全体のスケールがさらに大きくなっていました。これは、GTCが「技術を理解する場」から、「AIを前提とした産業・エコシステムを体感する場」へと進化したことを示しています。

GTC 2026では、Agentic AI、Physical AI、AI Factoryといったテーマが前面に押し出されており、AIをどのように設計し、運用し、スケールさせるかという、実装フェーズに踏み込んだ議論が中心となっていました。特に印象的だったのは、単にモデルの性能やアルゴリズムを議論するのではなく、推論処理をいかに効率的に実行するかという観点で「トークンあたりのコスト(cost per token)」やスループットといった指標が前提として語られていた点です。

また、AI Factoryの文脈においては、GPUクラスタやネットワーク、電力といったインフラ全体を対象とした設計・最適化が議論されており、デジタルツインを用いてAIインフラそのものを再現・検証する取り組みも紹介されていました。例えば、DSXのような環境を通じて、実際のインフラ構成を仮想空間上で再現し、性能や構成の最適化を行うアプローチは、今後のAIインフラ設計における重要な方向性の一つであるといえます。

さらに、NVIDIAが提示する推論基盤やシステム全体の最適化アプローチは、従来の単体GPU性能の競争から、システム全体としていかに効率的にAIを動かすかというフェーズへと移行していることを象徴しているように感じました。この点は、初参加時のGTC 2024と比較した際の、最も大きな違いといえます。


会場内の展示ブース

AIのJensen Huang CEO

現地で感じた変化 ― サンノゼの街全体が「GTC一色」に

GTC 2026では、基調講演への参加にあたり、今回は朝7時30分頃からSAP Centerに並びました。開始は11時でしたが、その時点ですでに長い列が形成されており、GTCへの注目度の高さを改めて実感しました。

また、前回参加したGTC 2024と比べ、サンノゼの街全体がより「GTC一色」になっているように感じました。SAP Centerやコンベンションセンター周辺では大規模な道路規制が行われ、市内各所に案内や導線が設けられており、単なるカンファレンスを超えて、都市全体を巻き込むイベントへと拡張している印象を受けました。さらに、GTC Parkやナイトマーケットといった公式イベントも開催されており、会場内に閉じない“都市型イベント”としての側面が強まっていることがうかがえます。

移動面でも、公式シャトルバスの路線や本数が拡充されており、周辺ホテルや主要拠点との移動は以前よりも明らかにスムーズになっていました。来場者規模の拡大に対応する形で、運営そのものがスケールアップしていることを実感します。セキュリティ面についても、会場周辺では警備体制の強化が見て取れました。ドローンによる上空監視と思われる光景も複数回確認しており、これだけの規模の国際イベントであることに加え、地政学的リスクを背景とした運営側の慎重な対応がうかがえます。

さらに印象的だったのは、サンノゼ市内でWaymoの自動運転車を頻繁に見かけたことです。GTC 2024の時点ではまだ限定的だった存在が、2026年には街の日常風景に溶け込みつつあり、AIが「デモ」から「社会インフラ」へと移行しつつあることを、会場の外でも実感する象徴的な出来事でした。

 初めて現地参加したGTC 2024では、サンノゼの気候は3月らしく穏やかで、過ごしやすい印象でした。一方、今回参加したGTC 2026では状況が大きく異なり、ベイエリア一帯が記録的な熱波に見舞われ、サンノゼ周辺では30℃前後まで気温が上昇していました。会場内の熱気に加え、街全体が包まれるような暑さの中で、「Jensen Huang CEOが、この熱気まで連れてきたのではないか」と冗談を言いたくなるような、印象的なコントラストが残っています。この気候の違いも含めて、GTC 2026は技術・人・街のすべてが、2年前と比較して一段階スケールアップしていることを実感させる体験でした。


基調講演ステージ

基調講演 自席から

NPN AWARD の場で感じたこと

GTC期間中には、米国現地参加をする日本独自イベントも開催されていました。一般公開されていない招待制イベントのため、詳細は記載できませんが、新年度前、円安、インフレという要素を考えると海外イベントに参加することが難しい中で、GTCの機会にしか出会えない方々と交流ができる貴重な機会でした。

このイベントの中では、「NVIDIA Partner Network Award 2026」の授賞セレモニーが開催されました。GTC全体の賑わいとは対照的に、落ち着いた空気の中で、パートナーとしての取り組みや成果が丁寧に共有される時間となっており、単なる表彰の場ではなく、エコシステムの方向性を示す場としての意味合いも感じられました。

プレスリリースの通り、当社は、2025年・2026年と2年連続でBest NPN of the Yearを受賞することができました。さらに今回は、新たに設けられたBest Personal Awardを、私自身が受賞する機会にも恵まれました。
参考:NTTPCが「NVIDIA Partner Network Award 2026」において『Best NPN of the Year』を2年連続受賞 ~NTTPCエンジニア2名が特別賞として『Best Personal Award』を受賞~

個人賞が新設されたタイミングで選出いただけたことは大変光栄であると同時に、NVIDIAがパートナー企業だけでなく「個人の活動や貢献」にもフォーカスを当て始めていることを示しているように感じました。会場にはメディア関係者も来場しており、複数の方と名刺交換をする機会がありました。GTCというグローバルイベントの中で、パートナーアワード自体が一定の注目を集めていることを実感する場面でもありました。

GTCは、最新技術を学ぶ場であると同時に、パートナー間の関係性を再確認し、次の取り組みへとつなげていく場でもあります。今回の経験を通じて、その側面を強く実感しました。


受賞の様子

Best NPN of the Year受賞トロフィー

Best Personal Award受賞トロフィー

この2年間で取り組んできたこと

この2年間、当社として、また個人として取り組んできた内容は、決して順風満帆なものではありませんでした。
デジタルツインのPoCにおいては、協業するベンダーの選定から始まり、海外ベンダーとの連携にも取り組んできました。時差や言語、文化の違いといった壁に直面し、意思決定や技術的な議論がスムーズに進まない場面も少なくありませんでしたが、その都度調整を重ね、最終的にはPoCを形にするところまで到達しました。

また、GPUクラスタの構築においては、設計・構築にとどまらず、稼働後の運用フェーズにおいても継続的な課題対応が求められました。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークが密接に連携する環境では、単一の問題が全体の性能や安定性に影響を与えるため、一つひとつの事象に対して原因を切り分け、関係者と連携しながら対応を積み重ねてきました。このような取り組みは決して目立つものではありませんが、「実際に現場で使われること」を前提とした活動として、継続してきたものです。

この2年間を振り返ると、当社および個人として取り組んできた方向性が、大きく間違っていなかったことを確認できた点は、一つの成果であると感じています。
デジタルツイン、Physical AI、Omniverse、GPUインフラといった領域において、試行錯誤を重ねながら進めてきた取り組みは、決して近道ではありませんでした。

しかし、今回のGTC 2026、そして受賞という形で評価を得られたことは、これまで積み重ねてきた実装志向の取り組みが、現在のAI市場の方向性とも合致していることを示していると捉えています。
とはいえ、これはあくまで通過点です。今後もエコシステムの一員としての責任を意識しながら、単なる技術導入にとどまらず、「現場で使われ、継続的に価値を生み出すAI」の実装に向き合っていきたいと考えております。

おわりに

GTC 2024からGTC 2026までの2年間で、AIは「可能性を探る段階」から「実装し、運用する段階」へと明確に移行しました。今回のGTC 2026を通じて感じたのは、AIがもはや一部の先進的な取り組みではなく、インフラとして社会に組み込まれ始めているという変化です。この変化に対応するためには、単に技術を理解するだけではなく、それを実際の環境で動かし、運用し、価値につなげていく力がこれまで以上に求められます。

また、私自身チームを率いる立場として、個々の技術力だけでなく、組織として継続的に価値を提供できる体制をどのように構築していくかも、今後ますます重要になると感じています。今後も、現場での実装を軸に、チームとしてAIが継続的に価値を生み出すための取り組みを積み重ねていきたいと思います。

※「NVIDIA」「NVIDIA Omniverse」は米国およびその他の国におけるNVIDIA Corporationの商標または登録商標です。