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HPE Discover More AI 東京 2026レポート

2026.05.19

GPUエンジニア 井上 颯斗

GPUエンジニア
井上 颯斗

1. イベント概要

2月19日にザ・プリンスパークタワー東京(下写真参考)にて開催されました。HPE主催イベント「HPE Discover More AI 東京 2026」に参加させていただきました!


(NTTPC社員撮影)

AIはすでになくてはならないパートナーとなっていますが、今回のイベントでは「進化するAIの性能を100%発揮し、活用するためにどういった運用をしていくべきか」ということを念頭に、実践寄りのお話が多くされていた印象を受けました。様々な企業の戦略方針や仮想化技術等、勉強になるたくさんのお話を聞くことができました。


(公式配布資料より抜粋)

プログラムは以上の資料の通りになっており、どのプログラムも人気で会場は満員でした。
私は都合により午前から行くことが叶わず、泣く泣く基調講演の拝聴は断念したのですが、未来のAI事業の希望や戦略、データセンター構想やハイブリッドクラウド活用の話などとても勉強になる内容であったと他の参加メンバーから聞いて、悔しい思いをしました。

午後の分科会については
「B-1 TOP500ランキングに見るHPCの潮流:水冷技術が拓くAI時代の競争力」
「C-2 HPE × Nutanixで実現するAI時代に備えたシンプルで柔軟なクラウドプラットフォーム」
「C-3 仮想化基盤を再構築する!HPEハイブリッドクラウド最前線」
「A-4 AI活用を支えるストレージソリューション・キオクシアの高性能・大容量SSD」
「B-5 AIエージェント時代のHPEデータマネジメントソリューション」
「特別講演 将棋×AIで加速する意思決定:直感を超える“探索”の実装」

以上6セッションの聴講と、展示ブースを観覧しました。
どれも興味深い内容ばかりでしたが、今回は私が特に興味をもったHPEの水冷技術と仮想化基盤の2つについてレポートします。

2. HPEの水冷技術について

最初に、HPEの水冷技術についてのお話です。
私個人の印象かもしれませんが、HPEは以前から液冷を重要な設計思想として捉え、AIやHPCの将来を見据えた取り組みを続けてきた企業だと感じています。

最近では計算密度や消費電力の増大により、空冷だけでは限界が見え始めてきている中、HPEは古くから高密度計算基盤を成立させる前提として液冷を位置づけ、CPUやGPUにとどまらず、システム全体を含めた冷却設計を打ち出しており、その姿勢は、現在のAIインフラにも色濃く反映されていると思います。


(公式配布資料から抜粋)

この考え方がよく表れているのが、今回紹介されていたHPE Cray Supercomputing GX5000 (以下GX5000)です。

GX5000は、まだ本格的な商用利用前にはなりますが、AI・HPCが進化を繰り返し、必要なインフラ基盤がどんどん高密度化していくこれからの時代、そう遠くない未来にこのようなインフラ基盤が主流になるのかなと興味がわきました。
GX5000は100%ファンレスの直接液冷ラックになっていて、1ラックあたり最大400kW級、将来的には1MWの高密度実装を支えられるように設計されています。さらに、最大40℃の温水運用にも対応していて、単に「よく冷える」だけではなく、電力効率や設備全体の運用負荷まで意識した作りになっている点にHPEの液冷思想の本気を感じました。

こういったところを見ると、液冷はもはや特殊技術ではなく、高性能を現実的に使いこなすための前提条件になってきているのだと感じました。これだけ高密度な環境を作れるラックを活用することで、どんな研究開発ができるのだろうとワクワクするテーマでした。

3. 仮想化基盤の再構築について

次に、HPEが提唱する仮想化基盤についてのお話です。

今まで仮想化基盤といえばVMware を前提に設計や運用を考えてきた人が多いのではないかと思います。実際、これまではそれで大きく困らなかったですし、むしろ標準解に近い立ち位置にいたかと思います。


(公式配布資料より抜粋)

しかし本セッションの中で最近は価格体系やバンドル変更によるコストの増加、環境の複雑化などが課題として挙げられ、従来の仮想化基盤をそのまま引き継いでいく判断をするには以前より少し考えなければいけなくなってきているとの話を受け、確かに……と納得させられました。セッション内でも触れられましたが、実効価格が2~5倍、一部ではそれ以上なんて話もあるそうです。(上図参照)
2025年のIDCの調査によれば、回答者の約76%が仮想化環境について何らかの形で環境を変更することを検討しているとの調査結果も出ています。

こうしたことを背景に、これからは仮想化基盤を単純に更改するだけでなく、「基盤をどう再設計していくか」について考えていかなければいけないというのが本セッションの前提のお話です。


(公式配布資料より抜粋)

そこで私が印象に残ったのはセッション内で紹介されたHPE Morpheus VM Essentialsです。特徴としては上図に示した通りです。仮想化に必要十分な機能はちゃんと備わっているかと思います。

セッション内では価格優位性が強く打ち出されており、実運用で困らない十分な機能を納得感のあるコストで使えるのが特徴であると言えます。自分が話の中でいいなと思った点は現場目線で考えてくれていると感じたことです。

個人的な意見としては、コスト削減のために仮想化基盤の見直しを図る際、いかに移行先が優れているのか、コスト削減されるのかよりも、環境の前提が崩れないこと、今まで積み上げてきた運用をどこまで残せるか、を優先したい思いが勝ちます。ここが崩れてしまうと(設備コストは確かに減るかもしれませんが)運用担当者の対応負荷が増え、結果的にトータルコストが上がることが予想されるためです。おそらくですが、共感してくださる方は多いと思います。

しかしながら、話の中でこの部分はしっかりと説明がされており、VMware vCenterとの統合機能が明示されているため、既存のVMware環境を見ながら新しい基盤を検討しやすい設計になっている点は、運用者にとって安心材料の一つだと思います。
理想論で言えば、ボタンワンクリックで勝手に移行できればベストですが、現実的に考えてそんなきれいにいくものでもないので、こういった設計はとても現場目線に立ってくれていると感じました。

さらに踏み込むとHPEのHPE Private Cloud Business Edition(通称PCBE)というソリューションと組み合わせることで運用がさらに楽になるのも魅力的に感じました。
PCBEはVM だけでなく、サーバー・ストレージ・ネットワークまでまとめて管理しやすくするセルフマネージド型のプライベートクラウドのことで、仮想化基盤をまとめて楽に運用するためのパッケージです。
このソリューションはハードウェアも含めてパッケージ化されており、どこかのOSやスイッチ、サーバなどのシステム全体のアップデートが一括でできるので、一部分だけアップデートを忘れて動かないということもなければ、(細かい契約上のあれこれはあるかもしれませんが)極端な話、故障したらHPEに連絡すればいい状態が作れるわけです。お話を聞いた限り、HPEは現場目線で、より仮想化環境の運用を楽にしようと尽力していただいているような印象でした。

4. まとめ・感想

今回のイベントを通して感じたのは、AI時代のインフラに求められるものは、単なる性能競争ではなく、その性能を継続的かつ現実的に運用できる仕組みそのものだということです。各地のデータセンターで水冷設備増設や新しい水冷データセンターの建設が進んでいることも背景に、これからのAI時代のインフラ運用に対して実際どういった対応をしていくべきなのか非常に現実的な視点から考えられ、自分としてもこれまでの業務としての運用を見直し、よりセキュアで継続的な、お客さまにとって価値の高いシステム運用がしたいと改めて思えるような、とても勉強になるイベントでした。

今後も、NTTPCのエンジニアとして、こうした最新の技術動向をキャッチアップしつつ、それを実際の現場やお客さまへの提供価値にどう結びつけられるのかを意識しながら、引き続き学びを深めていきたいと思います。