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LPWA(LPWAN)とは?IoT時代の通信技術を紹介

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IoT時代に適した通信技術として注目されている「LPWA」。「【事例あり】IoTとは?仕組み・機能を分かりやすく解説」、「M2Mとは?IoTとの違いや、事例について解説します!」コラムにも登場しましたが、今回は「LPWA」について詳しく解説します。

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LoRaWAN VPNタイプ大量のセンサーやIoTデバイスとの接続に特化した無線通信

目次

LPWA(LPWAN)とは?

LPWA(Low Power Wide Area)、またはLPWAN(Low Power Wide Area Network)は、低消費電力で長距離のデータ通信を可能とする無線通信技術です。
5Gを始めとして次世代の通信方式はいくつかありますが、LPWAはIoT/M2Mに適した通信方式の一つとして注目されています。

図1 LPWAのイメージ

図1 LPWAのイメージ

各通信方式の位置付け

図2は、LPWAと各通信方式の位置付けを表したものです。
図の下半分は狭域・短距離の通信方式です。左側の消費電力大・高速・高コスト側には家庭用無線ルーターなどでおなじみの「Wi-Fi」が、そして右側の消費電力小・低速・低コスト側にはワイヤレスヘッドフォンやワイヤレスマウスなどで利用されている「Bluetooth」、衣類のタグなどに利用されている「RFID」、そしてスマホ決済システムなどで利用されている「NFC」が並んでいます。

一方、上段は広域・遠距離の通信方式です。左側の消費電力大・高速・高コスト側にはスマートフォンなどで利用されている「3G/4G/LTE」が、そして右側の消費電力小・低速・低コスト側にはLPWAが配置されています。現在スマートフォンなどで利用が拡大している「5G」は、応用範囲が広いため両者にまたがるような位置付けにあると言えます。

図2 各通信方式の位置付け

図2 各通信方式の位置付け

#参考:総務省「平成29年版情報通信白書」

LPWAの特長

図2からも分かるように、LPWAの特長は、伝送速度は低速なものの、LTE並みの広域・遠距離通信を、低消費電力・低コストで実現できるという点にあります。
では、LPWAがIoTデバイスに適しているとされている理由はどのような点にあるのでしょうか。

広域・遠距離通信が可能

ブロードバンド(広帯域)を利用するWi-FiやBluetoothといった従来の通信規格は、近距離でデバイスをネットワークに接続して大容量なデータ通信を行う際に有効ですが、通信距離は10m~数100m程です。それに比べ、LPWAは低速なナローバンド(狭帯域)を利用するため、10kmを超える長距離のデータ通信が可能であり、IoTデバイスがオフラインになりにくいです。
IoTデバイス導入の主目的である遠隔操作・遠隔監視には、広域・遠距離通信が不可欠ですので、通信速度は低いものの、温度センサーや水位センサーなどの通信データ量が少ないセンサーを使い、一定の間隔をおいて送受信を行う場合などでLPWAは適しています。

消費電力が小さい

従来のIoTデバイスはLTEやWi-Fiといった通信を利用するケースがほとんどでしたが、これらは本来IoTデバイスで利用されることを想定した仕様ではありません。そのため、デバイス間のデータ通信は高速である一方、消費電力が高いという課題がありました。これに対して、LPWAはIoTデバイスでの利用を想定した仕様であり、デバイス間のデータ通信速度を抑える代わりに、低消費電力で長時間稼働を実現した通信規格です。
IoTデバイスによる遠隔操作・遠隔監視は、郊外や山中など人のアクセスが難しい場所に、IoTデバイスを配置したときに最も効果を発揮します。消費電力が小さいLPWAなら、バッテリー・電池交換などのメンテンナンス期間の間隔を広げ、運用コストを下げることができます。

低コスト

消費電力が小さく、通信速度も低速という特長からIoTデバイス自体を簡略化し、価格を低く抑えることが可能です。LPWAは多くのデバイスをインターネットに同時接続できるため、多数のIoTデバイスを使う分野に適しています。

LPWAの種類

現在、LPWAには複数の規格が存在しています。まずは無線局の免許および登録が必要ない「アンライセンスバンド」と、免許および登録が必要な「ライセンスバンド」の2つの違いを理解しておきましょう。

アンライセンスバンド

電波法第4条では、「無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない」と定められています。ただし、「発射する電波が著しく微弱な無線局」については「特定小電力無線」として免許および登録が不要とされています。
「アンライセンスバンド」は、この「特定小電力無線」に分類されるLPWA機器です。業務用のトランシーバーや家庭用ルーターの技術を発展させたものと言えば分かりやすいでしょうか。
フランスのSigfox社の「Sigfox」、オープン標準の「LoRaWAN」、米Wi-SUNアライアンスによる「Wi-SUN」、英ZiFiSense社の独自規格である「ZETA」、ソニーネットワークコミュニケーションズ社の規格である「ELTRES」などが策定されています。

ライセンスバンド

一方、「ライセンスバンド」は、免許および登録が必要な無線局です。と言っても、導入時に各社で免許を取得し登録するのは大変ですから、現在は既存の携帯キャリア会社のLTE基地局を利用する規格が中心で、ゲートウェイの設置が不要です。
代表的なものとして、移動体での利用や通信速度に特化した「LTE-M(LTE for Machine-type-communication、旧eMTC)」、機能を限定し機器の小型化とコスト低減に特化した「NB-IoT(Narrow Band IoT)」の2規格があります。

LPWAの比較

アンライセンスバンド、ライセンスバンドの代表的な規格のうち、主なものを比較すると表1のようになります(サービス開始前、仕様確定前のものは予定値を含みます)。

表1 LPWA各規格の比較

種類 アンライセンスバンド ライセンスバンド
規格名 Sigfox LoRaWAN Wi-SUN ZETA ELTRES LTE-M NB-IoT
周波数帯 Sub-GHz帯
(920MHz)
Sub-GHz帯
(920MHz-928MHz)
Sub-GHz帯
(920MHz)
Sub-GHz帯
(920MHz)
Sub-GHz帯
(920MHz)
LTE
(700MHz~3.5GHz)
LTE
(700MHz~3.5GHz)
通信速度 100bps 250kbps 50~300kbbs 300/600/2.4kbps 80bps
(上り)
1Mbps 200kbps
最大伝送距離 約50km 約15km 約3km 約2~10 km 約100km 約10km 約30km
バッテリー寿命 10年以上 10年以上 - - - 10年以上 15年以上

ひとくちにLPWAと言っても、さまざまな規格が存在し、それぞれに利点があることをお分かりになりましたでしょうか。

LPWAの活用事例

LPWAの活用は既に始まっています。次にその中で自治体が導入したものに注目していくつかを紹介します。

農作物の盗難防止

シャインマスカットなどの農作物の生産で知られる山梨市では、NTT東日本と連携し、LPWAを活用した自営無線ネットワーク基盤を構築しました。
リアルタイムで環境を把握し、巡回頻度を必要最低限に抑えたり、人為ミスや機器故障などによる経済的損失を防止したりといった成果が得られています。また、人感センサーによる盗難防止システムも構築されています。

参考:山梨市「デジタル技術を活用した地域課題解決に向けた取組みについて」

ヒートアイランド対策

愛媛県の久万高原町は、愛媛県の中央部に位置する人口約7000人の自然豊かな町です。主幹産業のひとつである林業は労災発生率が突出して第1位ということもあり、町内全域に自営のLPWA通信網を整備し、町内どこの森林からでも正確な位置情報を取得でき、救助要請が可能なシステムを構築し、林業従事者の安全性向上を図りました。

参考:久万高原町「久万高原町のLPWAに関する取組みを紹介します」

マンホール内水位監視の実証実験

令和元年、大阪府寝屋川市は「Sigfox」の利活用促進による市民サービスを図るため、京セラコミュニケーションシステム株式会社と連携協定を締結しました。マンホール内の水位の監視、通信機能付「スマートメーター」による水道の自動検針、人感センサーによる施設管理・警備などを見込んでいます。

参考:寝屋川市「京セラコミュニケーションシステム株式会社とIoTの推進に関する協定を締結」

NTTPCが提供するLPWA

NTTPCではIoT/M2M通信に適した次のサービスを用意しています。

LoRaWAN VPNタイプ

LoRaWAN VPNタイプ

NTTPCの「LoRaWAN VPNタイプ」は、大量のセンサーやIoTデバイスとの接続に特化した無線通信です。低消費電力・見通し1km以上の長距離通信を、初期コストを低減しながら導入できます。

LoRaWAN VPNタイプ大量のセンサーやIoTデバイスとの接続に特化した無線通信

LPWAの今後

現在は広域・遠距離通信が可能で、高速・低遅延な通信が可能な5Gに注目が集まっていますが、消費電力が小さく低コストという特長を持つLPWAは利用用途や分野で5Gと住み分けられて使用されるなど、それぞれのメリットを組み合わせることにより、遠隔手術や環境モニタリングなど現在では実現が難しいさまざまな技術の確立が可能となるでしょう。
実際に、総務省の「情報通信白書 令和3年版」によれば、世界のLPWAモジュールの出荷台数は2020年時点において1.2億台、そして2023年には2.8億台に達すると見込まれています。
今後も5G、LPWAはそれぞれの分野で導入、進化が進むのではないでしょうか。

図2 世界のLPWAモジュール出荷台数の推移及び予測(総務省「情報通信白書 令和3年版」図表0-2-2-20より転載)

図3 世界のLPWAモジュール出荷台数の推移及び予測
(総務省「情報通信白書 令和3年版」図表0-2-2-20より転載)

参考:総務省「情報通信白書 令和3年版」

まとめ

今回はLPWAについて詳しく解説しました。
LPWAには「広域・遠距離通信が可能」「消費電力が小さい」「低コスト」といった特徴があること、さまざまな規格があることをお分かりくださいましたでしょうか。
今回紹介した「農作物の盗難防止」「ヒートアイランド対策」「マンホール内水位監視の実証実験」などの用途以外にも、ファクトリーオートメーション、農業の自動化、災害の余地・被害軽減、労働者の見守りなど、LPWAの応用分野は広いと考えられます。今後は5Gとの住み分けや、時には5Gと組み合わせることで、遠隔手術や環境モニタリングなど現在では実現が難しいさまざまな技術の確立が可能となるでしょう。
業務効率化、稼働削減、ヒューマンエラーの防止、新たなビジネス機会の創出などの課題をお持ちの方は、IoT/M2M導入の際には、LPWA通信を活用してみてはいかがでしょうか。

※ICT Digital Columnに記載された情報は、リリース時点のものです。
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