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建設業の熱中症対策は? グッズや企業の取り組み事例、ウェアラブルIoTの活用

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建設現場のように屋外での作業が多い職場では熱中症のリスクが高まります。特に気温や湿度が上昇する5月から10月にかけては最も危険な状況となります。今回は厚生労働省の「熱中症環境保健マニュアル」などをもとに、建設現場などの熱中症予防方法について解説します。

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目次

熱中症になりやすい業種

厚生労働省が発表した「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」によると、業種別の2018年~2022年における死傷者数・死亡者数の合計は、図1のようになっています。
死傷者数・死亡者数でもっとも多かったのは建設業、次いで製造業・運送業です。
建設現場・製造業・運送業の場合、直射日光が当たる野外や無風の室内で作業するため、高温多湿での長時間労働により、熱中症になりやすくなります。
水分・塩分をしっかり摂取すればよい、日頃の経験上からこの暑さなら大丈夫、などと安易に考えず、万全の予防対策を立てる必要があります。

図1 熱中症による業種別死傷者数(2018~2022年計)

図1 熱中症による業種別死傷者数(2018~2022年計)

※「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」より転載

参考:厚生労働省「令和4年『職場における熱中症による死傷災害の発生状況』(確定値)を公表します」

熱中症になりやすい時期・時間帯

続いて、同資料から熱中症になりやすい時期・時間帯について見てみましょう。
まず時期については、死傷者数・死亡者数ともに気温・湿度がもっとも高くなる7月・8月が多くなっています。続いて、6月・9月は比較的落ち着いているように見えますが、その時々の気候変化・作業環境・気の緩みなどによっては、十分に危険な状態に陥ってしまう可能性があり、安心できるとは言い難い状況です。

図2 熱中症による月別死傷者数(2018~2022年計)

図2 熱中症による月別死傷者数(2018~2022年計)

※「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」より転載

一方、時間帯についてはやはり気温の高くなる14時台~16時台が最も多くなっているものの、それ以外の時間が特に安全というわけではありません。朝の9時台以前や18時台以降についても注意が必要となります。

図3 熱中症による時間帯別死傷者数(2018~2022年計)

図3 熱中症による時間帯別死傷者数(2018~2022年計)

※「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」より転載

建設現場環境で対策できること

熱中症の予防に向けてどのような対策を取ればよいのでしょうか。国土交通省が発表した「建設現場における熱中症対策事例集」には、様々な対策が示されています。まずは建設現場において企業側が実施できる対策について見てみましょう。

参考:国土交通省「建設現場における熱中症対策事例集」(PDF)

暑さ指数(WBGT値)を計測し周知する

暑さ指数(WBGT、湿球黒球温度)は人体と外気との熱のやりとりに着目した指標で、気温、湿度、日射状況などにより計算されます。単位は「℃」で示され、一般に25℃以下で「注意」、26℃~28℃で「警戒」、29℃~31℃で「厳重警戒」、32℃以上で「危険」とされています。暑さ指数を計測し周知することで、熱中症の危険を各自が的確に把握することができます。

区分 身体作業強度(代謝率レベル)の例 WBGT基準値
熱に順化している人(℃) 熱に順化していない人(℃)
0安静
  • 安静
33 32
1低代謝率
  • 楽な座位
  • 軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記)
  • 手及び腕の作業(小さいベンチツール、点検、組み立てや軽い材料の区分け)
  • 腕と足の作業(普通の状態での乗り物の運転、足のスイッチやペダルの操作)
  • 立位
  • ドリル(小さい部分)
  • フライス盤(小さい部分)
  • コイル巻き
  • 小さい電気子巻き
  • 小さい力の道具の機械
  • ちょっとした歩き(速さ3.5km/h)
30 29
2中程度代謝率
  • 継続した頭と腕の作業(くぎ打ち、盛土)
  • 腕と脚の作業(トラックのオフロード操縦、トラクター及び建設車両)
  • 腕と胴体の作業(空気ハンマーの作業、トラクター組立て、しっくい塗り、
    中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、草むしり、草掘り、果物や野菜を摘む)
  • 軽量な荷車や手押し車を押したり引いたりする
  • 3.5〜5.5km/hの速さで歩く
  • 鍛造
28 26
3高代謝率
  • 強度の腕と胴体の作業
  • 重い材料を運ぶ
  • シャベルを使う
  • 大ハンマー作業
  • のこぎりをひく
  • 草刈り
  • 掘る
  • 硬い木にかんなをかけたりのみで彫る
  • 5.5〜7.5km/hの速さで歩く
  • 重い荷物の荷車や手押し車を押したり引いたりする
  • 鋳物を削る
  • コンクリートブロックを積む
気流を
感じない
とき
25
気流を
感じる
とき
26
気流を
感じない
とき
22
気流を
感じる
とき
23
4極高代謝率
  • 最大速度の速さでとても激しい活動
  • おのを振るう
  • 激しくシャベルを使ったり掘ったりする
  • 階段を登る、走る、7km/hより速く歩く
23 25 18 20

表1 体作業強度等に応じたWBGT基準値
※国土交通省「建設現場における熱中症対策事例集」より転載

大型扇風機やドライミストなどを設置する

暑さ指数は、大型扇風機、ドライミスト、遮光ネットなどの設備を設置することにより低下させることができます。業務にあたる場所が屋外の開かれた場所であれば大型扇風機の設置や散水車による散水などが、作業足場内や狭小な作業場などでは小型扇風機・送風機の設置やドライミストの設置などが有効です。

休憩場所への冷房・シャワー・冷蔵庫などを完備する

休憩場所に冷房、シャワーなど、身体を適度に冷やすことのできる設備を設置すれば、作業環境を大幅に改善することができます。また、冷蔵庫や飲料自販機、製氷機などを設置すれば、冷たい飲み物を摂取することにより体内から身体を冷やすことができます。

作業時間の短縮・休憩時間を決める

長時間にわたって連続して業務に従事することがないよう、適切な作業管理を行うことも重要です。作業時間の短縮、休憩時間の設定、出勤時刻の前倒し(早出、早帰り)などが有効です。また、暑さ指数の上下に応じて臨機応変に休憩時間を設けるなどの工夫も必要でしょう。

作業員が対策できること・グッズ

作業員側で講じることができる自衛対策もあります。また、熱中症対策に便利なグッズも多数あるのでこれらを利用することも有効です。

定期的に水分・塩分を摂取する

自覚症状のないまま脱水状態が進行し、熱中症へと発展してしまうこともあります。特に屋外での作業にあたる場合には、作業前後はもちろん、作業中にも定期的に水分・塩分を摂取するよう心がけましょう。また、万一の事態に備えてあらかじめ経口補水液などを準備しておくと良いでしょう。

電動ファン付きなど、通気性の良い作業着を着用する

熱中症予防の基本は熱を吸収しやすい服装は避け、透湿性および通気性の良い服装を着用することですが、特に建設業などでは、工事現場での安全を確保するため長袖の作業服やヘルメット、安全チョッキなどの安全具の着用が義務付けられることが多くなっています。最近では電動ファン付きのヘルメット、空調装置付き作業服、熱を吸収しにくい遮光安全チョッキなども開発されているので、機会があれば責極的に利用しましょう。

アイスベスト・ネッククーラーなどを着用する

屋外や建設現場での熱中症対策グッズとして「アイスベスト」があります。作業開始前にベストに設けられた両脇や背中などのポケットに保冷剤を収納することで、効果的に身体を冷却することができます。
また、街中でも見かけることも多くなった「ネッククーラー」の着用も有効です。電動式のほか、保冷剤や新素材などを活用したより効果の高いものも登場しています。

感染症対策が必要な場合は通気性の良いマスクを選ぶ

新型コロナウイルスを始めとする感染症対策として必要とされるマスク着用ですが、息苦しさを感じたり、負荷の高い作業を行った時に血中酸素濃度が低下したりする危険性があります。
厚生労働省が発表した「建設現場における熱中症予防と新型コロナウイルス感染防止~建設現場におけるマスク等の正しい選び方、使い方について~」においても、単独作業の場合や屋外で他の作業員と十分な距離(2m以上)が確保できる場合などではマスク等を外した方がよい場合も考えられるとし、「感染防止を図るには、『マスク等を着用する場面』、『マスク等の選び方』、『正しい着用方法』を作業員一人ひとりに徹底することが重要」としています。
また、飛沫飛散防止には「不織布マスク」などが優るものの、快適さにおいてはマウスシールドやフェイスシールドが優ることも紹介されています。

参考:建設現場における熱中症予防と新型コロナウイルス感染防止(PDF)

健康管理の観点から対策できること

作業責任者(職長)による健康管理の観点からの対策が可能です。

労働者の健康状態を確認する

熱中症に対する一番の対策は、労働者の健康状態を常に遅延なく正確に確認することです。作業責任者(職長)が作業にあたる全員の健康状態を確認することはもちろん、作業員自身が健康状態を確認できる環境、相互に健康状態を確認できる環境を整備しましょう。

チェックシートを活用する

各自の健康状態の確認には、チェックシートを活用すると便利です。各人が健康状態を自己記入するチェックシートや、作業責任者(職長)が聞き取りにより記入するチェックシートなどを導入しましょう。
また、前述の「建設現場における熱中症対策事例集」には、健康状態を記入することで体調をチェックできる「熱中症に関する健康状態自己チェックシート」が収録されていますので、こちらを活用しても良いでしょう。

作業中の巡視を強化する

炎天下での作業など特に熱中症の危険が高い状況下では、巡視を頻繁に行い、作業員の健康状態や水分および塩分の摂取状況を確認することが必要です。巡視の際には、必ず経口補水液や冷却用品などを携帯しましょう。また、万一作業者が倒れてしまっていた場合などでも、発見が早いほど早期に回復し、復帰することができるでしょう。

熱中症対策の教育や訓練・管理体制を強化する

熱中症の予防には、作業員自身が意識を高く持ち、自ら予防に努めることが必要不可欠です。環境省の「熱中症予防サイト」などで公開されている資料などを活用し、勉強会などを通じて熱中症に関する理解促進と注意喚起に努めましょう。

参考:環境省「熱中症予防サイト」

企業が取り組む建設業における熱中症対策の事例

厚生労働省のWebページ「熱中症対策事例紹介 -企業別取組事例(令和3年度)-」では、熱中症予防への取り組みが企業別に紹介されています。
大阪市に本社を置き総合工事業を営むA社では、着工時に日陰で休憩できるスペースを確保し、作業員には暑さ指数に応じて1時間に1回程度の休憩をこまめに取るよう指導しています。
また、休憩所内にはウォーターサーバーに加えて冷蔵庫を設置し、ドリンク、経口補水液、塩飴を常備しています。作業員は少なくとも1時間に1~2回程度は水分・塩分を摂取するよう指導され、1時間毎に摂取記録をチェック表に記入することとされています。
そのほか、協力会社の作業員に対しても補助金制度を設けてファン付き作業服の着用を推奨したり、工事担当者または職長が1時間に1回職場を巡回し声掛けを行い作業者の体調を確認したりなどの熱中症対策を実施しています。

参考:熱中症対策事例紹介 -企業別取組事例(令和3年度)

熱中症対策で重要となる「重症度」とレベルに応じた応急処置の方法

重症度Ⅰ度

「手足がしびれる、気分が悪い」「めまいや立ちくらみがある」「筋肉痛や筋肉のこむら返りがある(痛い)」「気分が悪い、ボーっとする」などの症状が出ます。
涼しいところで一休みさせ、冷たい飲み物を飲ませたり、塩分を補給させたりすると回復する場合があります。具合が良くなるまで見守り、回復しない場合には病院に搬送しましょう。

重症度Ⅱ度

「頭ががんがんする(頭痛)」「吐き気がする、嘔吐した」「体がだるい(虚脱感・倦怠感)」「なんとなく調子がおかしい」などの症状が出ます。
重症度Ⅰ度の対処に加え、併せて衣服をゆるめたり、身体を積極的に冷やしたりなどの対処も行いましょう。

重症度Ⅲ度

「意識障害がある、または意識がない」「体がひきつっている(けいれん)」「呼びかけても返答がない、返答がおかしい」「まっすぐ歩けない、走れない」「触って分かるほど体が熱い」などの重篤な症状が出ます。
危険な状態です。ただちに救急車を呼び、最寄りの病院に搬送しましょう。

参考:環境省「熱中症環境保健マニュアル」(PDF)

建設現場の熱中症対策なら「ウェアラブルIoT」の活用で
未然に防げる可能性がある

現場作業員の健康管理を強化し、効果的な熱中症対策を行うには、IoT技術を活用した「ウェアラブルデバイス」が役立ちます。
「ウェアラブルデバイス」とは、衣服や腕時計として身につけて使えるIoT機器のことです。
手に持って操作する必要がないため、建設現場のような作業環境でも業務の邪魔になりません。センサー機能がついているものなら、体温・脈拍数などのバイタル情報を読み取って、スマートフォンやコンピューターへデータを送るといった使い方が可能です。
また、GPS機能によって、現場作業員1人ひとりの位置もリアルタイムに把握できます。そのため、巡視だけでは目が届かない現場作業員の体調変化を監視し、熱中症などの危険状態をすばやく察知することができます。
国土交通省が作成した「熱中症対策リーフレット(2019年度版)」でも、ウェアラブルIoTを活用した健康・危機管理が推奨されています。
建設業のほか、熱中症のリスクが高い製造業や運輸業でも、現場作業員の安心・安全を見守るためにウェアラブルIoTの導入が進められています。

参考:国土交通省:熱中症対策リーフレット(PDF)

ウェアラブルIoTの活用ならNTTPCの「みまもりがじゅ丸®」で効率的に健康管理を

NTTPCが提供する、「みまもりがじゅ丸®」は、リストバンド型のデバイスを装着することで、作業員の「脈拍情報」「位置情報」の変化をリアルタイムに管理できます。
作業員が多く広範囲での作業が必要な状況でも、「みまもりがじゅ丸®」なら全員の状況を簡単に把握できます。作業員の体調変化は管理画面に一覧表示され、熱中症の恐れや身体的な高負荷を察知すると管理者にアラートでお知らせします。
また、建設業、製造業、運輸業などで増加する「ひとり作業」に対応するため、新プランを追加。体調が悪く動けなくなったフィールドワーカーがSOSボタンを自ら押すか、作業者が転倒して動けなくなったことをデバイスが自動感知した場合には管理者がすぐに気づくことができるため、救援や支援などを迅速に実施することができます。
「みまもりがじゅ丸®」は、月額20,000円(税込)から導入可能。お客さまの労働環境やご予算、ニーズに合わせて計測タイプが選べますので、作業員の安全管理について課題のお持ちの方は是非お気軽にご連絡ください。

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まとめ

今回は熱中症の症状、およびどのような条件下で熱中症になりやすいかを解説するとともに、熱中症予防のための具体的な対策について詳しく解説しました。
現在はアイスベストやネッククーラー、そしてウェラブルIoT機器など作業員を熱中症から守る画期的なグッズが多数開発されています。こうしたグッズも上手に活用しながら、安全で快適な作業環境を構築しましょう。

※ICT Digital Columnに記載された情報は、リリース時点のものです。
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