AIOpsとは?機能や用途、利用するメリットなどを解説

AIの活用によりIT運用の自動化や効率化を実現する技術である「AIOps」。今回はAIOpsの概要や注目されるようになった背景、具体的な機能、導入のメリットなどについて解説します。また、AIOpsの導入が効果的なユースケースも紹介します。
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AIOpsはIT運用にAI技術を適用する手法の総称
「AIOps」は「Artificial Intelligence for IT Operations」の略で、日本語に訳すと「IT運用のためのAI(人工知能)」となります。もともとは米ガートナー社が2016年に「Algorithmic IT Operations」(アルゴリズムによるIT運用)の略語として定義しましたが、近年のAIの活用が進んだ状況を踏まえて2021年に再定義されました。「エーアイオプス」という読み方をすることが多いようです。
AIOpsの概要について
AIOpsは、具体的にいうとIT運用をAIの力を借りて効率化しようという取り組みです。将来的にはIT運用の完全自動化を達成する技術として期待されており、現在注目を集めています。
AIOpsが生まれた背景
従来のIT運用は自社ネットワークを対象としたものが中心でした。ウイルス攻撃などに対する防御も社内外を隔てる境界でのいわゆる「境界型防御」が中心で、インシデント発生時にも境界内部への対応に注力することができました。
ところが、日常業務においてクラウドサーバーやSaaSの活用が進んだ現在では、システムが複雑化・高度化しました。また、働き方改革などにより社外で業務を行う機会も増えたため、IT運用の対象も広範囲となり、インシデントに対して十分な時間と労力をかけて対応することが難しい状況になりました。
そこで、IT運用にAIを活用することで運用の自動化を進め、IT運用における人手不足を解消しようという発想から誕生した概念がAIOpsです。
MLOpsとの違い
「AIOps」と似た言葉に「MLOps」があります。しかし、両者には明確な違いがあります。
機械学習モデルの実装から運用をスムーズに進めるための管理体制
「MLOps」は「Machine Learning(機械学習)」と「Operations(運用)」とを組み合わせて作られた造語で、主に大規模な機械学習システム構築において開発部門、IT運用部門などが協力することで、各工程の最適化を図るという手法・概念を指します。
AIOpsがIT運用の問題解決にAIを活用するものであるのに対し、MLOpsは機械学習モデルの開発を最適化するものという違いがあるのです。
AIOpsの機能と重要性

続いてAIOpsの代表的な機能について見て行きましょう。
システムパフォーマンスを監視する
サーバーやネットワーク機器などの各ITインフラ機器からデータを取得し、状態をチェックする機能です。大規模なシステムにおいても、AIの働きによりすばやく分析することができます。
この機能により、最適化によるネットワークの遅延防止、無駄な回線の廃止や適切な回線増強など、コスト最適化が実現できます。
システムの異常を検知する
大量にあるデータの中から、過去の傾向や法則性に合わない「異常なデータ」を検知する、データマイニング機能です。こうした大量のデータ処理はAIの得意分野の1つといえます。
この機能は、システム内での「故障検知」や悪意のある第三者による「不正使用検知」などに応用できます。
障害が発生した根本的な原因を分析する
障害などのインシデント発生時に、大量のイベントログなどを分析し、根本的な原因を特定する機能です。
この機能により適切な是正措置を特定し、以降同様の問題が発生することを防ぐことができます。また、将来的に効率的な運用を実現できます。
ITサービスを管理する
現在では、Webアプリケーション、クラウドサービス、クラウドストレージなど数々のITサービスが登場しています。こうしたITサービスを、ニーズに応じて設計・運用する機能です。
この機能により、サービスの改善やストレージ容量などでリソースの最適化が実現できます。
自動化を実装する
単純な反復作業の機会による自動化はすでに製造業などで幅広い分野で実現されており、IT業界においてもRPAを始めとする自動化ツールの活用が進んでいます。
AIOpsではさらに一歩進み、インシデント対応など定型化できない突発的な業務においても自動化を進めることができる機能があります。
AIOpsを導入することで企業が得られるメリット
AIOps導入のメリットは数々ありますが、ここでは主なものを4つ紹介します。
生産性が向上し、事業の安定性が高まる
AIOpsの導入により、IT運用の省力化が実現できます。また、データの高速処理により、インシデントに対しても迅速な対応が可能となります。
結果として、システムの信頼性が向上し、企業のDX推進、生産性向上に寄与します。
属人化対策になる
IT運用は日々の管理やメンテナンスに加え、システムの更新、インシデント対応など業務が広範囲にわたるため、属人化が進みやすい環境といえます。
AIOpsの導入により、人間による判断が影響する場面が減少すれば、属人化の解消が進むことが期待されます。
顧客満足度の向上につながる
ITサービスにおいて、エラーの発生やサービスの停止はそのまま顧客満足度の低下につながります。極端な場合には顧客の離脱につながる事態ともなりかねません。
AIOpsによるビッグデータ分析により、エラー発生時に詳細をリアルタイム表示できるようになり、スピーディーな対応が可能となります。また、複数のエラーが同時に発生した場合でも、優先度をつけて効率的な対処が可能となります。
顧客満足度の向上においても、AIOpsの導入は有効なのです。
ビッグデータの運用にかかる負担を軽減できる
顧客データや購買データなど、日々増加していく大量の収集データ(=ビッグデータ)を解析するには、それなりの人的リソースが必要となります。また、それらを使って購買傾向の分析や将来予測を行うにはさらに人的リソースが必要です。
AIOpsを導入すれば、ビッグデータをスピーディーかつ効果的に解析することができます。
AIOpsのユースケース、活用事例
続いて、IT運用を効率化し、故障対応の自動化・省力化が可能なAIOpsのユースケースをいくつか見てみましょう。
ITサービス管理
SaaSなど、24時間365日の稼働が求められるITサービスでは、当然24時間365日の運用管理体制が求められます。
AIOpsを導入すれば、交代勤務などの必要がなくシステムを一元管理できます。また、障害発生時の自動復旧や各種設定変更の自動化、故障予知などでも支援が可能です。
パフォーマンスの監視や分析
動画配信など、繁忙期と閑散期で大きく利用者数が変化するITサービスでは、AIOpsによるビッグデータの分析により精度の高いパフォーマンス監視が可能です。また、数時間後の需要を予測して適切な負荷分散を前もって行うことも可能です。
根本的な原因の特定や分析
ECサイトでは、ダウンタイムは売り上げ低下に直結します。AIOpsを導入すれば、複数の要因が影響する障害が発生した場合でも、ビッグデータを素早く分析し早期の復帰を実現することができます。
異常の検知
公的サービスなど、個人データを始めとする重要データを取り扱うITサービスでは、ウイルス攻撃などを受けた際には早期に異常を検知し対応することが求められます。AIOps導入すれば、分析アルゴリズムを活用することにより、未知の攻撃にも素早く的確な対処が可能となります。
AIOpsを活用したネットワーク&セキュリティサービス「Prime ConnectONE®」で「攻めのDX」へ
NTTPCの「Prime ConnectONE®」は、AIの活用によりIT運用業務を自動化し、攻めのDX推進にシフトできる企業向けネットワーク&セキュリティサービスです。
AIOpsの導入により、情報システム部門の運用や故障対応に関する負担を減らす「守り」の領域を効率化し、収益・利益の拡大や生産性向上につながるDX推進にリソースをシフトさせ「攻め」の経営を実現できます。
お申し込みや変更の手続き、各拠点の設定変更はすべてダッシュボードから一元管理可能。また、通信状況や異常個所などの見える化もダッシュボードで実現しているため、IT運用における負荷を大幅に軽減できます。
ICTインフラ運用業務の負担を削減したい企業さま、トラブル発生時の迅速な復旧を実現したい企業さま、既存の回線を活かしながら安全・快適にクラウド/SaaSにアクセスしたい企業さまには特におすすめしたいサービスです。
まとめ
今回は、IT運用をAIにより最適化するソリューションである「AIOps」を紹介しました。
AIOpsは年々複雑化・高度化の一途を辿るITシステムの運用を自動化し、人手不足を解消できるソリューションとして注目されています。
AIOpsには、「生産性が向上し、企業の安定性が高まる」「属人化対策になる」「顧客満足度の向上につながる」「ビッグデータの運用にかかる負担を軽減できる」などのメリットがあります。今回紹介したユースケース/活用事例に当てはまるとお考えの企業さまは、是非導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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