技業LOG
前書き
私は営業活動において顧客への業務改善提案を行ってきましたが、一方で、自らの抱えるルーチンワークや定型業務を改善しようと思いつつも、既存の社内システムに依存し、なかなか改善できない状況が続いていました。
そんな私が、このままではいけない!と奮起し、個々の業務改善を進めるために簡単に利用できるツールとして使い始めたのがMicrosoft Power Automateを利用したRPA(Robotic Process Automation)です。
Power Automateはローコードツールであり、プログラミング言語とは無縁の方でも簡単に扱うことができます。
本記事は、これからRPAを使って業務改善してみたい方、Power Automateのフロー作成に苦労している方の手助けになればと思い、自身の経験を元に書いてみました。
なお、本記事は2023年12月時点の仕様を元に作成しています。Power Automateおよび関連アプリケーションの最新仕様については、サービス提供元の公式情報をご確認ください。
目次
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1. Power Automateとは
Power Automateの特長について、Microsoft社サイトで次のように記載されています。
- ローコードと AI を利用した包括的なエンドツーエンドのクラウド自動化プラットフォーム。
- AI とデジタルおよびロボティック プロセス オートメーションにより、ほぼ無制限のシステム、デスクトップ アプリ、Web サイト全体を自動化できます。
Power Automateは、イベント発生をトリガーにフローを自動実行することで、人手をかけずにスピーディーかつ正確にタスクを処理することが可能です。いわゆるRPA(Robotic Process Automation)の機能を有します。
利用イメージ
利用例)
- 定型フォームへ入力した内容を、メールやチャットで自動送信する。
- 特定の相手から受信したメールを、分類して管理表へ自動入力する。
- 毎月1日の朝10時になったら、リマインドと作業マニュアルが届く。
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RPA導入のメリット
- 定型作業を自動化 ⇒ やりたい業務に注力できる
- 人の作業量の軽減 ⇒ 人為ミス(誤送信など)による不意の事故を防止できる
- フローの可視化 ⇒ フローを横展開し、組織全体の業務を効率化できる
3. Power Automateを使ってノーコードでフローを作ってみる
それではさっそく、Power Automateで簡単なフローを作ってみましょう。
今回は、Formsに入力した情報をメール送信するフローを作成してみます。
まずはPower Automateを立ち上げます。
Microsoft365トップページから次のようにアクセスします。
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※アプリ欄でPower Automateが見つからない場合は、「その他のアプリ」をクリックして探します。
次に、Power Automateでフローを作成します。①~④のような流れになります。
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①Formsアプリでフォーム作成
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②Power Automateでフローを作成
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③フロー作成ページでフローを作り込む
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④フロー保存、フロー開始、テスト
① 先にFormsアプリでフォームを作成する
本事例では次のフォーム名とします。
フォーム名:【サンプル】イベント参加表明フォーム
② Power Automateでフローを作成する
「作成」→「一から作成」→「自動化したクラウド フロー」と進めていきます。
本事例では下記の設定としました。
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
フロー名 | イベント参加表明 | 命名設定は任意 |
トリガー | Microsoft Forms 新しい応答が送信される時 |
③ フロー作成ページでフローを作り込む
次のようにフローを作り込んでいきます。
キャプチャ画面統一のため、本事例では右上の「新しいデザイナー」をON→OFFにして作成を進めます。
「新しいデザイナー」ONのままでフロー作成していただいても問題ありません。
「フォームID」を確定させます。確定方法は次のいずれかとなります。
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
フォーム名選択 | 一覧表示されるフォーム名から選択 | 一覧にない場合はカスタム値指定 |
or | ||
カスタム値指定 | Forms URLから一部を入力 | 入力方法は次(参考)を参照 |
(参考)カスタム値に指定するURLについて
Formsアプリのフォーム作成ページのURLのうち、「design&id=」より右側を指します。
https://forms.office.com/Pages/DesignPageV2.aspx?origin=NeoPortalPage&subpage=design&id=これ以降を切り取る
本事例では、「design&id=」の後に続く「xrUe9~(末尾まで)」が該当します。
「新しいステップ」をクリックし、フローの作り込みを進めます。
項目 | 内容 |
---|---|
コネクタ | Microsoft Forms |
項目 | 内容 |
---|---|
アクション | 応答の詳細を取得する |
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
フォームID | 上述と同様の指定をする | フォーム名選択orカスタム値指定 |
応答ID | 応答ID ※動的なコンテンツから指定 |
応答ID欄をクリックすると 「動的なコンテンツ」が出現する |
フロー全体図で見ると、本事例は下図のように作り込んでいきます。
「終了」ステップは終了明示のためとなり、必ずしも作る必要はありません。
ここまでフローを作成できたら次を進めます。
④ フロー保存、フロー開始、テスト
ここまで完了したら、フローを保存してテストしてみましょう。
【フローの保存】
次の手順を進めてフローを保存します。
手順 | 備考 |
---|---|
右上の「保存」をクリック | エラー時は保存不可 |
↓ | |
次の表示を確認 「フローを開始する準備ができました。テストすることをお勧めします。」 |
緑色で表示 |
↓ | |
作成したフロー名をクリックし、画面遷移 | 本事例は「イベント参加表明」 |
【フロー開始】
下図のページへ遷移後、下記を確認します。
確認項目 | 状態 |
---|---|
所有者 | 自身のアカウントである |
状況 | オン(=フローが作動中) |
接続(=コネクタ) | 必要なアプリケーションが表示されている |
アプリケーションが自身のアカウントで認証されている |
【テスト】
Formsを入力・送信し、メールを受信できることを確認します。
Formsに必要事項を入力、送信ボタンを押す
メールが受信できることを確認
Power Automateの実行履歴が「成功」となっていることを確認
これでフロー作成は完了です。
4. フロー作成応用1(機能を活用する)
前項までは、Power Automateの内容と作り方について紹介しました。
この項では、私が活用している便利な機能をご紹介します。
【フロー基本構成】
まずはPower Automateで作るフローの基本構成をつかみます。
フローは下図の流れで作成します。
【既設フローの活用】
前項では、フローを「一から開始する」で作成しましたが、次のようにテンプレートやパッケージを活用することが可能です。
活用方法 | 利用方法 |
---|---|
Microsoftのテンプレートを利用する | 「作成」タブ → テンプレートから開始する |
「テンプレート」タブ | |
社内の有識者からパッケージをもらう | 「マイフロー」タブ → インポート → パッケージのインポート(レガシ) |
【活用例】
1項の利用イメージに加え、私がフロー作成で活用した機能を4つ紹介します。
① Microsoft 365に登録済みの社員情報を活用する
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機能:トリガー情報と社員情報を紐づけ、各アプリケーションで利用する
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活用例:Formsに入力者情報(氏名、連絡先)欄を設けなくても、Microsoft 365の登録情報を元に入力者宛に受領メールを自動送付する。
項目 | 内容 |
---|---|
コネクタ | Office 365 Users |
アクション | ユーザープロフィールの取得 |
活用できる情報
- 所属会社名
- 部署名
- 表示名(姓+名)
- 役職
- 電話番号
- ニックネーム など
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※くれぐれもプライバシーにご配慮ください。
② 自分宛にTeamsで通知する
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機能:特定の情報を自身のTeams宛に通知する
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活用例:ワンタイムパスワードなど、特定のメールをTeamsへ転送させる。
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※自身を投稿者にすると自身宛のメンションは機能しませんが、フローボットを投稿者とすることでメンションも利用可能です。
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フローボットから通知させる場合
項目 | 内容 |
---|---|
コネクタ | Microsoft Teams |
アクション | チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する |
投稿者 | フローボット |
投稿先 | Chat with Flow bot |
Recipient | 自身のメールアドレス |
Message | チャットで伝えたい内容を自由記載 動的なコンテンツから指定するなど |
(参考)メンション機能を利用したい場合は、「チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する」の手前で次のアクションが必要です。
項目 | 内容 |
---|---|
コネクタ | Microsoft Teams |
アクション | ユーザーの@mentionトークンを取得する |
ユーザー | 自身のメールアドレス |
注意! | 「チャットまたはチャネルでメッセージを投稿する」フローのMessage欄で、動的なコンテンツ「@mention」を指定すること |
③ トリガーの内容を元にフローを分岐させる
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機能:フローチャート図の「判断」にあたる部分を自動化する
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活用例:顧客のお問い合わせ内容にあるワードから依頼先を自動判別し、内容を転送する
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※顧客向けお問い合わせフォームと連携することで問い合わせの選別業務の削減を図る
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項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
コネクタ | コントロール | |
アクション | 条件 | はい/いいえで分岐させる場合 |
スイッチ | 特定ワードの有無で分岐させる場合 |
④ ファイルを送る
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機能:ファイルをメールなどに添付して送付する
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活用例:ファイルをFormsにアップロードすると、メールで自動送信する
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注意!
ファイルをFormsへアップロードすると、OneDriveのフォルダーに格納されます。
ファイルをOutlookやTeamsに添付する際はOneDriveに取りに行くことになりますが、元のファイル名が書き換わっており、そのままでは活用できません。-
※ファイル名に"アップロード者の姓名(かな表記)"が書き加えられます。
そのため、次の方法で活用します。
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活用方法:
【前提】OneDriveの格納場所について
「【サンプル】イベント参加フォーム」というフォーム名にアップロードしたファイルは、
下記のフォルダーへ格納されます。
自分のファイル > アプリ > Microsoft Forms > 【サンプル】イベント参加フォーム > 質問
1. アップロードしたファイルを特定する
項目 | 内容 |
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コネクタ | OneDrive for Business |
アクション | フォルダー内のファイルの検索 |
検索クエリ | ファイル名を記載(拡張子は不要) ※事例は「テスト.pptx」の「テスト」を記載 |
フォルダー | OneDriveのフォルダー名を記載 |
ファイル検索モード | Pattern |
2. ファイル名から姓名(かな表記)を削る
項目 | 内容 |
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コネクタ | OneDrive for Business |
アクション | パスを使用したファイルの移動または名前変更 |
注意! | ここで「Apply to each」が出現 気にせず進める |
以前の手順から出力を選択 | 本文 ※動的コンテンツから指定 |
ファイルパス | パス ※動的コンテンツから指定 |
対象のファイルのパス | 任意のOneDrive上のパス/ファイル名+拡張子 |
上書きする | はい ※同一フォルダーに同じファイル名が乱立することを避けるため ※「いいえ」の場合は削除フローが別途必要 |
事例における「対象ファイルのパス」: /アプリ/Microsoft Forms/【サンプル】イベント参加フォーム/質問/テスト.pptx
3. 元のファイル名を活用できる状態にする
項目 | 内容 |
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コネクタ | OneDrive for Business |
アクション | パスによるファイルコンテンツの取得 |
ファイルパス | OneDrive上のパス/ファイル名+拡張子 |
4. メール送信を行う
項目 | 内容 |
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コネクタ | Office 365 Outlook |
アクション | メールの送信(V2) |
添付ファイル名 | 任意のファイル名を記載 |
添付ファイルコンテンツ | ファイルコンテンツ ※動的コンテンツから指定 |
宛先、件名、本文は通常のメール送信どおりに入力する |
5. フローを実行し、「ファイル名が変更できていること」「メールが送信されていること」が確認できれば完了です。
(参考)不要ファイルを削除する方法
Formsにアップロードしたファイルは、OneDriveに残り続けるので、定期的に削除することをお奨めします。
特に、手順2で「上書きする:いいえ」を選択した場合はフォルダー内に同じ名前のファイル名が共存できず、フローが回らない可能性があります。
1. トリガーを指定(定期的に削除するフローで作成する)
「作成」→「一から作成」→「自動化したクラウド フロー」と進めます。
項目 | 内容 |
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フロー名 | 任意で記載 |
開始日 | 任意で設定 |
繰り返し間隔 | 任意で設定 |
2. 右図のように「Recurrence」(繰り返し)トリガーが出来上がります。
さらにフローの作り込みを進めます。
OneDrive上のファイル削除は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
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コネクタ | OneDrive for Business |
アクション | ファイルの削除 |
ファイル | OneDrive上のパス/ファイル名+拡張子 |
フローを実行すると下図のようにファイルが削除されます。
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注意!
テストを実施したところ、「Recurrence」(繰り返し)トリガーが定刻に発動しない場合があります。開始時刻がグリニッジ標準時(協定世界時、UTC)となっている可能性が高いため、時間を調整することで希望時間にトリガーが発動するようにします。
項目 | 内容 |
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コネクタ | スケジュール |
アクション | Recurrence(繰り返し) |
タイムゾーン | (UTC+9:00)大阪、札幌、東京 ← 変更不要 |
開始時刻 | yyyy-mm-ddThh:mm:ssZ ← 希望時間のマイナス9時間とする 例)2024年3月1日10:00希望 ⇒ 2024-03-01T01:00Z |