オペレーション改善活動への取り組み

【技業LOG】技術者が紹介するNTTPCのテクノロジー

2020.12.23
その他
根津 憂花

ソフトウェアエンジニア
根津 憂花

技業LOG

はじめに

NTTPCでは、2020年11月に、オペレーションツールとして、ServiceNow, IncのITサービスマネジメント(以下、ITSM)ツールを導入しました。

ITSMは、ITサービスの運用における様々なプロセスを、ITIL準拠のワークフローで運用できるようにする統合管理ツールで、インシデント管理や問題管理、変更管理等を運用します。

オペレーション改善活動の目的

私たちのオペレーション改善活動の目的は、"オペレーションの価値を高めることで、より良い顧客体験を提供する"ことです。しかし、オペレーション改善活動の開始当初は、オペレーションの価値を高める以前の問題として、オペレーションの基盤が整っていなかったため、ServiceNow®を主軸にこの基盤づくりに尽力しました。

オペレーション改善活動当初の状況

NTTPCはサービス数が多く、サービスの数だけオペレーションプロセスが存在しており、そのサービス内でも、故障内容や故障機器によってさらに対応が分岐していました。そのため、オペレーション対応のほとんどが属人化しており、オペレーションプロセスのブラックボックス化や、オペレーション効率の低下が顕在していました。また、こうした複雑なオペレーションの対応記録がテキストベースで管理されていたため、蓄積されたデータを分析するためには、データの形成が不可欠でした。さらに言ってしまえば、人手をかけて作成したレポート自体も、何のために作成しているかの分析目的が明らかではなく、レポートを作成すること自体が目的化していました。

導入前までの課題

1. 人に頼り切ったオペレーションの定常化

  • 属人化したオペレーション
  • サービスや機器ごとに異なる複雑なオペレーション
  • オペレーション内容のブラックボックス化

2. 対応内容のテキスト管理

3. 分析目的が不明確なレポートの作成

ServiceNow®導入の目的

私たちはまず、オペレーションの基盤を整えるため、これまでオペレーションの主軸として利用してきたシステムを、グローバルスタンダードなITSMツールであるServiceNow®に一新しました。ServiceNow®のITSMとは、ServiceNow®の中のライセンス形態の一つです。ITSMは、ITIL(ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス)をベースとした"オペレーションのチケット管理"に則したパッケージとなっています。このServiceNow®を利用し、オペレーションの基盤を下記のようにすることがServiceNow®導入の目的です。

  • ITILを参考にオペレーションフローを刷新
  • チケットベースでのオペレーションを徹底
  • 属人化したオペレーションから脱却
  • データの可視化とオペレーション改善サイクルの定着化

こうしてオペレーションの基盤を整え、オペレーション改善サイクルを数値に基づいてまわすことが、効果的なオペレーション価値の向上に繋がります。

ServiceNow®にとらわれすぎない設計が大切

前述した通り、ServiceNow®はグローバルスタンダードなITSMツールであるため、導入さえしてしまえばグローバルスタンダードなオペレーションが実現できると思われがちですが、もちろんそんなことはありません。NTTPCでは、ServiceNow®の導入にあたり、ブラックボックス化されたオペレーションプロセスを洗い出し、標準化・簡素化し、可視化するための設計が必要でした。設計にあたり、NTTPCのようにサービス数が多い場合には、ITILやServiceNow®のベストプラクティスは、"そうしなければいけないもの"ではなく、"可能な限り近づけるもの(あくまでも参考)"として扱うことをお勧めします。これは、あまりにもITILやServiceNow®のベストプラクティスにとらわれてしまうと、オペレーターにとっての使いやすさを無視した、かえってオペレーションの価値を低下させるシステムになりかねないためです。

オペレーターの負担を減らすことが重要

NTTPCでは、"既存の業務にとらわれない・ServiceNow®のベストプラクティスにとらわれない・実際に利用するオペレーターの意見を無視しない"オペレーションを実現するため、導入当初から下図のような体制をとってきました。

これにより、リリーススピードの向上や、相互の信頼関係の構築にもつながったので、今後もこの体制を続けていきたいと思います。
この体制の中で、"ServiceNow®エンジニア"について気になった方もいるかと思いますが、NTTPCはServiceNow®の構築は全て内製で行っています。そのため、開発手法やナレッジの共有方法に試行錯誤はしておりますが、外注とは全てにおいてスピードが違いますので、NTTPCのように継続的に改善を行っていくような場合には、コストをかけてでもServiceNow®エンジニアを育成する方が良いかと思います。

さて、オペレーション改善活動に取り組む上で、関係者とゴール感を合わせることは常に必要なことです。しかし、ファーストステップで最終ゴールを目指してしまうと、既存オペレーションプロセスの変更の大きさにオペレーターが混乱し、オペレーションが停止してしまう恐れがあります。そのため、ゴールまで数ステップに分けて、オペレーターの負担を減らしていくこともまた、オペレーション改善活動を成功させるポイントです。

オペレーション改善活動を1年取り組み続けた現在の状況

では、前述してきたような取り組みの結果、"オペレーション改善活動当初の状況"で紹介した課題は、現在どうなっているのでしょうか。

課題内容 現在 ServiceNow®
利用機能
ServiceNow®
利用のメリット
ServiceNow®
利用のデメリット
人に頼り切った
オペレーションの定常化
標準カタログを作成し、標準から逸脱する部分は別カタログを用意
  • カタログ機能
  • Flow Designer
  • オペレータープロセスを「カタログを実行する」で統一でき、カタログ選択後はシステムによる自動実行が可能になる
  • Flow Designerにより、非エンジニアでも、フローをGUIから視覚的に設定できる
Flow Designerがworkflowというレガシーなワークフロー機能に置き換わる新しい機能であるため、安定性に欠けるケースがある
対応内容のテキスト管理 チケットによる管理の実施 インシデント管理機能 チケットでの運用が実現でき、入力項目を即時
レポート化できる
ライセンス料に対する効果が出るまで時間がかかる
分析目的が不明確な
レポートの作成
KPIを設定し、KPI達成のための分析用レポートを作成 レポート機能 リアルタイムにレポートを作成できる レポート上で複雑な数値計算ができない(合計・平均などの単純なものは可能)

上記の表のように、現在はServiceNow®の導入目的でもあったオペレーションの基盤づくりがほとんど完了したため、オペレーションの価値を高めるための活動に着手し始めています。

おわりに

本記事では、NTTPCが利用しているServiceNow®に着目しながら、オペレーションの改善活動について紹介してきました。ですが、本記事で取り上げた課題は、ServiceNow®利用の有無にかかわらず、オペレーション改善に取り組む上での共通課題かと思いますので、何か一つでも皆さまのご参考になれば幸いです。そして、オペレーションの改善活動(=オペレーションの価値を向上すること)に終わりはありませんので、これからも皆さまにより良い顧客体験を提供できるよう、オペレーションの改善活動に取り組んでいきたいと思います。

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