技業LOG
目次
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1. はじめに
NTTPCコミュニケーションズは、お客さま満足度向上のため、CX(カスタマーエクスペリエンス)/ UX(ユーザーエクスペリエンス)強化に取り組み始めております。今回は、それらを達成するための方法の1つであるユーザビリティテストを実施しましたので、その目的と方法をお伝えしたいと思います。本稿をお読みになることで、ユーザビリティテスト未経験の方々が、何をすればよいかイメージを持っていただけますと幸いです。また、我々も手探りで実施しておりますので、専門家の方々の忌憚ないご意見もいただけますと幸いです。
2. ユーザビリティテストの目的
デザイン思考(参考①)におけるユーザビリティテストの目的は大きく分けて次のの2つです。
- ユーザーの課題を発見するためのテスト(図1課題を発見する)
- ユーザーの課題の解決策の価値を検証するためのテスト(図1価値を検証する)
図1: デザイン思考におけるダイアモンド
今回のテストは、1つ目の目的を達成するために実施しました。ユーザー目線で使いづらい改善個所を発見し、開発チームで改善することで、サービス品質を向上させることが狙いです。
3. ユーザビリティテストプロジェクトの実施手順
ユーザー目線で使いづらい個所を発見するために、日頃から対象のサービスをご利用いただいているお客さまにユーザビリティテストを実施しました。プロジェクトの実施手順は次の通りです(図2)。
図2: ユーザビリティテストプロジェクト実施手順
3.1. テストシナリオとなるユーザー体験の選定
当時のお客さまからのお問い合わせ状況から、「部署移動にともなうアカウントの引継ぎ作業」をテストシナリオとして選定しました。
3.2. ユーザビリティテストの準備・計画
計5名に対してWeb会議ツール上で1回につき1名ずつテストを計画しました(参考②)。また、インタビュアーによって質問の方向性に差が出ないように、Topic Map(図3)と我々で呼ぶ質問リストを事前準備しました。
図3: Topic Map
図3: Topic Map
参考②: https://u-site.jp/alertbox/20000319
また、実査時に不備のないように、パイロットテスト(リハーサル)を実施しました。これらの準備によって、大きな問題なく実査を行うことができました。
3.3. テスト結果分析(顧客課題把握)
テスト結果は、次の分析を行いました。
- 定性評価(事後インタビュー)
- インパクト分析(参考③)
- 定量評価(事後アンケート)
- SUSスコア・・・ユーザビリティの指標(参考④)
- NPS®・・・顧客ロイヤルティの指標(参考⑤)
参考③: https://blog.nijibox.jp/article/usability_test2/
参考④: https://marketing-sphere.blogspot.com/2014/05/sussystem-usability-scale.html
参考⑤: https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/
3.4. ソリューション検討
プロジェクトメンバーで顧客課題に対するソリューション案をつくり、開発チーム、PdM、お問い合わせ窓口チームなどのステークホルダーを巻き込んで認識合わせを行いました。
4. ユーザビリティテストの結果
ユーザビリティテスト結果から、既存のUIに関する8件のユーザー課題とそれに対する改修案を検討できました。今回は改修予定の具体例を1つ紹介いたします。
対象のサービスサイトは、ログイン中のユーザーによる別アカウントの払い出し機能を搭載しています。このアカウント払い出しの完了画面が図4です。
図4: 既存のアカウント作成完了画面デザイン
作成者がアカウントを払い出したタイミングで、設定したメールアドレスに開通案内のメールが届きます。アカウントを払い出された方は、届いたメールの開通案内の手順に従うことでアカウント作成が完了します。
今回のユーザビリティテストは、3 / 5名が、アカウントの開通案内がメールで来ることを自力で認識できずに、テストシナリオを一部完了できませんでした。この原因は、図4の画面の情報では、アカウント払い出しという目的達成のために、ユーザーが次に何をすればよいかわからないことが原因と考えました。
そこで、図4の画面に、「開通案内がメールで届くので確認することを促してください。」という旨の文言を追記する方針に至りました。
これにより、アカウントを払い出した方がアカウント利用者に対してメールボックスの確認を促せるようになり、アカウントの開通案内がメールで来ることを双方が認識できるようになります。
5. やってみた感想
5.1. よかったこと
今回の対象サービスは、今までユーザーの声を開発に反映させることに対する優先度が低い状況でした。このようなサービスに対して、今回の営みができたこと、加えて、SUSスコアやNPS®などの定量的な評価を継続するための第一歩を踏めたことは、大きな収穫だと考えております。また、ユーザビリティテストのノウハウを社内の方に展開できたこともよかったと考えております。
5.2. 悪かったこと
プロジェクトの期間が10ヶ月間かかってしまい、時間をかけ過ぎてしまった印象です。原因としては次のようなことがあると考えております。
- ユーザー体験を洗い出せるほど、ユーザーに共感できていなかった
- テスターのリクルーティングに時間がかかった
- ノウハウの共有に重きを置きすぎた
- 様々なステークホルダーがいる兼ね合いで、意思決定が遅れた
また、お問い合わせ課題をベースにテストシナリオを設計したため、お問い合わせすらしてこない潜在化したお客さま課題にアプローチできなかったと考えております。本来であれば、「ユーザーリサーチ」(参考①)などにもう少し稼働を割いて、十分な「共感」(参考①)を実施したかったです。これにより、対象のサービスを申し込んでから解約するまでのすべての体験を洗い出し、ペルソナ(参考⑥)やジャーニーマップ(参考⑦)を作成した上でテストシナリオを設計するべきでした。
参考⑥: https://www.softbanktech.co.jp/special/blog/dx_station/2022/0027/
参考⑦: https://satori.marketing/marketing-blog/how-to-make-customer-journey-map/
6. 今後の取り組み
今回の課題に関する改善版のアプリケーションを、2024年度第2~3四半期を目途にリリース予定です。
リリース後も、継続的にユーザビリティを測定+改善していく予定です。
7. 最後に
本稿では、弊社サービスで実施したユーザビリティテストに関する目的と方法を紹介しました。ユーザビリティテストを実施したことのない方々が、何をすればよいかイメージを持っていただけますと幸いです。また、我々も手探りで実施しておりますので、専門家の方々の忌憚ないご意見もいただけますと幸いです。
NTTPCコミュニケーションズは、お客さまに満足いただけるサービスを提供できるように、お客さまの声をサービスに届けようとしております。みなさまに使いやすいサービスを提供できるように邁進してまいりますので、引き続きよろしくお願いします。
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