【技業LOG】
技術者が紹介するNTTPCのテクノロジー

2019.11.22
IoT・M2M

高齢化社会に向けて、IoTを活用した
認知症老人対策

伊藤 大啓

ビジネスプランナー

伊藤 大啓

はじめに

高齢化が進む日本において、認知症の患者の数も他の先進国に先駆けて有病率が高まっております。厚生労働省によると2025年には700万人になると推計され、65歳以上の高齢者の方の約1/5となる数字となっております。
より身近になりつつある認知症の中、介護する方にとって悩ましい症状が徘徊です。
警察庁によると平成28年における認知症または認知症の疑いによる行方不明者は15,000人以上となり、中には踏切事故や交通事故、寒冷地での凍死といった痛ましい事故が発生しております。

厚生労働省は、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定し、認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進をはじめとした7つの柱をうたい、国を挙げた取り組みとして認知症への対応をうたっております。

このような中、認知症による徘徊者の早期保護を目指したIoTのサービスが市場に提供されてきております。それに用いられる技術や特色について本稿で述べてゆきます。

徘徊者捜索の考え方

徘徊者捜索にあたり、ポイントは2つとなります。

1 : 家 / 施設 からの徘徊を早期に検知する

徘徊を以下に早く認識し、いかに迅速に捜索をするかという考え方です。認知症の方でも一般の方と同等に歩行ができる為、徘徊と認識して捜索を以下に早く開始するかが捜索する範囲や発見率に大きく影響します。
(単純計算で、時速4kmで歩行するとして、捜索開始が15分遅れると、捜索範囲の半径が1km増える事になります。)

2 : 徘徊中の位置をどうやって把握するか

捜索者がいかに効率よく広範囲に捜索し、徘徊者がどのエリア、どの範囲にいるかの絞り込みを迅速に行う必要があります。

徘徊発生を早期に検知する方法

徘徊を早期に検知する為に、足ふみマットによるブザー等の方法が用いられてきました。家庭等においては外出者が限定される為有効な手段ですが、施設等においては職員や来訪者の出入りでもブザー反応してしまう為、徘徊検知の精度に問題がありました。かといって昨今の人出不足の中、常に出入口で人が監視するのも難しい現状です。

そこで昨今では、出入口を通過するものの中から、該当者だけを選別してアラートする仕組みが可能となってきました。主な2つの方法を以下に記します。

1 : 監視カメラを用いた画像解析によるアラート通知

監視カメラに画像解析技術を組み合わせ、徘徊の可能性のある方の顔を認識し、該当者の外出のみアラートするという仕組みです。

  • 長所
    • 該当者に何か身に着けてもらう等の必要がない
  • 短所
    • 事前に該当者の画像を登録する必要がある
    • マスクや帽子をしていると認識率が大幅に落ちる
    • カメラを設置することのプライバシーへの配慮

2 : RFIDタグやBLEビーコン等の近接によるアラート通知

施設の出入口にRFID(Radio Frequency IDentification)やBLE(Bluetooth Low Energy)の電波で検知する装置を設置し、該当するデバイスを持った徘徊の可能性のある方が接近すると、アラートを発するという仕組みです。

  • 長所
    • プライバシーへの配慮がされている
    • 該当者の登録等が容易
  • 短所
    • デバイスを常時携帯してもらう工夫が必要
    • 電波の受信精度による誤検知の可能性がある(接近したが折り返した等)

以前はどちらの方法も機器費用や運用コストが高いというそもそもの負担がありましたが、昨今のIT技術の発展により、どちらの方式も導入コストが大きく下がってきました。それぞれ強み弱みがありますが、どちらの方法も早期に徘徊を検知するには効果的となります。

徘徊者の徘徊中の位置情報の把握方法

携帯電話の普及による無線通信、GPS(Global Positioning System)を用いた衛星による位置情報把握、無線タグ等の短距離無線通信による近接検知、これらの技術にはそれぞれ長所 / 短所があります。代表的な技術について記します。

1 : GPSトラッカーを用いるもの

GPSトラッカーとはGPSで取得した位置情報を携帯電話網などで送信するもので、インターネットで接続したパソコンやタブレットPC、スマートフォンでその位置情報を表示閲覧して利用します。ほぼリアルタイムに近い形でトラッカー携帯者の位置情報を表示することができます。
当初は通信料や電池寿命等がネックとなっておりましたが、昨今の携帯電話料金の低廉化、LPWA(Low Power Wide Area)といった従来に比べて省電力で遠距離通信を実現する通信方式の登場により、より使い勝手の良いものが登場してきました。

個人が個人を捜索するのに適した技術といえます。

  • 長所
    • 屋外であれば、ほぼリアルタイムにGPSトラッカーの位置情報を把握できる。
  • 短所
    • 屋内や地下等GPS衛星を捕捉できない場所では位置把握が困難。
    • サービス費用が割高(モバイル通信費用が含まれるため)
    • 充電が必要(LTE通信を用いたもので10日に1回程度)

2 : BLEビーコン等無線タグを用いるもの

スマートフォン等にも用いられている短距離無線通信技術、Bluetooth Low Energyを用いたものです。
BLEビーコンは、自身の個別識別情報(アドバタイズパケット)をBLEにて常時発信をするもので、BLEビーコン自身にはGPS等の位置情報をもっていません。
BLEビーコンの発するアドバタイズパケットを受信したスマートフォン等の装置が、受信した日時と共に装置自身の位置情報を加える事で、BLEビーコンがどの辺の位置にいるか把握できます。よって、アドバタイズパケットの伝送距離分の位置情報の誤差が生じます。
BLEビーコンはその仕組みの単純さや、そもそもの電波規格の省電力もあり、小型、安価、軽量、電池長寿命という特徴を持っています。その為、財布、杖、靴、衣服等に入れ込むことが可能となり、該当者への負担を減らせます。またスマートフォンにはBLEの電波を受信する機能がほぼ標準で実装されていることから、アプリのインストールのみで、BLEビーコンの受信機として機能させることができます。
BLEの電波は環境や特性にもよりますが、目安として30m以下と狭い範囲となります(一部アンテナ特性に工夫して100m以上届くものもありますが)。また、BLEのかわりに特定小電力無線等を用いてより電波範囲を広げたものもあります。(ただしスマートフォンでの電波受信は不可となります。)

如何にして電波受信できる範囲が広いかがポイントとなる為、スマートフォンによる協力者の多さや、受信機が地域に多く設置されているかがポイントとなります。

集団が個人を捜索するのに適した技術といえます。

  • 長所
    • 小型で軽量かつ電池が長寿命で、該当者の物理的負担が少ない
    • 装置自身が安価かつ、ビーコン自体のモバイル通信費用も不要で導入コストが安価
  • 短所
    • スマートフォン等の受信機が電波を受信しないと、位置情報がわからない

まとめ

認知症の方の徘徊は今後も増加傾向となり、大きな社会課題と言えます。個人で解決する手段もICTの普及により可能となってきましたが、個人で抱え込まず地域や社会全体を相互扶助で見守る取り組みも必要と考えます。

当社ではBLEビーコンを用いた捜索システムの開発と実証実験を協力企業と共に取り組んで参りましたが、技術的な問題点や社会に普及させる仕組みの構築に課題が残っており、サービス提供開始にはいたっておりません。

引き続き技術の発展や社会の動向を注視しながら、当社が社会課題の解決の一助になり得るにはどうすべきか、活動を継続してまいります。

NTTPCのサービスについても、ぜひご覧ください

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