技業LOG
はじめに
皆さんは「HACCP(ハサップ)」という言葉を耳にしたことはありますか?
中には、食品の包装に「HACCP」マークが付いているのを見たことがあるという方もいらっしゃるかと思います。HACCPはアメリカではじまった食品の衛生管理に関する手法で、今では世界的に導入が進められています。今回はそのHACCPについて、具体的にどのような手法なのかを説明すると共に、HACCPに則った管理の一例として「温度管理」に着眼し、温度データの自動収集・監視・記録を行う温度センサーについて紹介いたします。
HACCPとは?
HACCPとはHazard(危害)・Analysis(分析)・Critical(重要)・Control(管理)・Point(点)の略称で、「危害要因分析重要管理点」と邦訳されます。
HACCPは、食品の製造・出荷の全工程において、食中毒菌汚染や異物混入等を引き起こす可能性のある危害要因を把握した上で、危害要因を除去または許容できるレベルにするための重要な工程(重要管理点:CCP)を継続的に監視・記録することで、製品の安全性を確保する手法です。
例えばカレーの製造工程における「煮込み」を重要管理点とすると、下記のような管理プランを作成します。
管理プラン | |
---|---|
重要管理点 「煮込み」 | |
危害要因 | 食中毒菌の生残 |
発生要因 | 加熱温度 / 時間の不足 |
管理手段 | 十分に加熱する(温度 / 時間) |
管理基準 | 品温を85℃以上、20分以上加熱 |
モニタリング方法 | 担当者が温度計、タイマーを確認し、記録 |
改善措置 | 再加熱 |
従来の最終製品のみを検査する抜取検査と比べ、全工程を管理するので、問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能になると共に、原因追求と改善対応が迅速に行えるようになります。
制度化への動き
2018年6月に、「HACCP制度化」を含む食品衛生法等の一部を改正する法律が公布されました。これにより、原則としてすべての食品等事業者に対して、HACCPの導入が求められることになります。今後は、2020年に義務化の法令が施行され、1年間の猶予期間を経て、2021年に完全義務化が予定されています。
HACCPにおける温度管理
食品等事業者にとって、2021年の完全義務化に向けたHACCP対応は今や急務となっております。特に温度管理は、HACCPで最も重要な管理の1つとして挙げられ、食品工場や厨房の温度、スーパーにある冷蔵 / 冷凍庫の温度、加熱食品の中心温度など、様々な場面における温度データの記録・管理が求められます。
しかし従来の、測定箇所を巡回し温度を目視して記録するという管理は、手間がかかり、作業負荷も大きい上、紙の帳票の管理も煩雑になるという課題があります。
その為、最近では電池駆動の無線温度センサーを用いて温度データの収集・監視・記録を行う、温度管理の自動化が盛んになっています。
温度センサーの紹介
それでは、温度管理を自動化する温度センサーについて紹介いたします。
① 株式会社ティアンドデイ おんどとりRTR-500シリーズ
基本情報(温度測定タイプ)
- 測定範囲:-40℃~+80℃
- 無線通信距離:約150m ※見通しの良い直線において
- 電池寿命:約10か月 ※利用環境によって異なる
- 防水性能:IP67
- クラウド:有り(おんどとりWeb Storage)
温度を測定・記録する子機と、記録データを収集する親機及びデータを保管・可視化するクラウドで構成されるデータロガーです。高い防水性能を誇る為、結露や水がかかる恐れのある場所にも安心して取り付けることが可能です。また温度測定以外にも、温湿度を測定できるタイプや、より広範囲の温度を測定できるタイプもラインナップされているので、環境に合わせて子機を選択することが出来ます。記録されたデータは、無料クラウドサービス「おんどとりWebStrage」に格納され、異常温度検知時にはアラートを発報させる事もできる為、手軽に温度管理を始めることが可能です。
② タイムマシーン株式会社 ACALA
基本情報(タイプT)
- 測定範囲:-20℃~+85℃
- 電池寿命:約5年 ※利用環境によって異なる
- 防水性能:IP67
- クラウド:有り
子機と親機及び管理クラウドからなるデータロガーです。メッシュネットワーク技術(センサー同士が通信を行い、自動的に網の目状の伝送経路を形成。データをバケツリレー方式に転送する)を採用しているため、仮に通信経路で障害が起きてしまっても、通信可能な迂回経路を自動選択して通信を継続する、高い耐障害性を持っています。また、おんどとりと同様、こちらも防水対応であり、センサーのラインナップも多種多様である為、様々な場所に設置することが可能です。データはクラウド上に格納され、メーター形式やグラフ形式で温度データを確認できるほか、トポロジーマップを用いたセンサー同士の通信状況確認や、アラート発報、帳票出力機能等を有しているため、遠隔での一元管理が可能です。
上記で紹介したセンサーは、多種多様なセンサーのほんの一部です。
設置する環境や業務内容に合わせて、最適なセンサーを選ぶことが重要です。
おわりに
HACCPによる衛生管理は今や国際標準となっており、義務化を前に導入する企業も年々増えています。しかし一方で、HACCPを導入すると、管理するための人員を割かなければならないため、人手不足の中小企業や小規模飲食店ではHACCP対応がなかなか進んでいないのが現状です。だからこそ、IoTを活用したHACCP対応の自動化が求められています。NTTPCとしても、こうしたHACCP対応に役立つサービスを検討し、さらなる食の安全向上に貢献していきたいと考えています。
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