お客さまのご要望から生まれた
新しい通信方式とサービス機能の拡充

【技業LOG】技術者が紹介するNTTPCのテクノロジー

2020.06.03
IoT・M2M
赤池 宏一

ソフトウェアエンジニア
赤池 宏一

取得資格:スクラムマスター

技業LOG

NTTPCコミュニケーションズ(以下NTTPC)のIoTサービスは期せずしてユニークなネーミングです。
(みまわり楽太郎、みまもりがじゅ丸®など)
今回は、そのなかから「みまもりがじゅ丸®」に関して書いてみたいと思います。

NTTPC、こだわりのIoT
~ウェラブルデバイス開発当初のサービス構成~

「みまもりがじゅ丸®」は、2017年8月から提供を開始した、ウェアラブルデバイスを活用したIoTサービスです。
サービス開始当初は、同様のデバイスを使った定額サービスはまだ多くありませんでした。
2020年になってもまだ多くは大企業向けのSIや、実験的な利用例が多いように思います。
その中で、NTTPCでは、実際の現場に活用できるよう低価格、シンプルでわかりやすいをモットーに、「サービス」提供にこだわってきました。

IoTでは、センサーデバイスとクラウド、それにデータを中継するゲートウェイが基本的な構成となります。

みまもりがじゅ丸®のサービス開始当初は、次のような構成となっていました。

みまもりがじゅ丸® 開始当初の構成図

センサー部(リストバンド型)は、脈拍が測れるコンシューマー向け製品としてはスタンダードなEPSON PS-100を選択。
我々は、ハードウェアを独自に開発できるわけでもないので、市場で安定的に入手できるという条件がありました。
いろいろと同様のセンサーを購入し、検証したところ、BLEのGATT(Heart Rate Profile)(※後述)に対応し、かつ個体識別が可能という要件を唯一満たした製品でした。

次に、ゲートウェイ機器についてですが、BLEが利用でき、かつインターネットに接続できるというネットワーク的な要件と、利用シーンを想定すると常に服などのポケットに携帯することから、バッテリーを内蔵している必要があります。そのためスマートフォンを利用することとしました。

クラウドは、多くのクライアント(センサー)から頻繁にデータを受信できる必要があることからスケーラビリティを重視して最初からパブリッククラウド(Azure)を採用しています。

さて、先ほどさらっと記載していましたが、BLEのGATTについては、次の別の記事をご参照ください。

IoTとしてのヘルスケアサービス ~活動量計の計測データについて~2018.01.16掲載)

  • フィールドで働く方々の「安全」と「健康」をみまもる、NTTPCのウェアラブルIoTサービス
    みまもりがじゅ丸®

お客さまの声から、みえてきた課題

サービス開始から1年を迎えた2018年夏、これまでの多数のお客さまの声からいくつかの課題を見出すことができました。

課題

  1. 特に建設業の作業者においては、スマートフォンを全員に配布するのはコスト的に難しい
  2. スマートフォンを作業中に見る行動は危険なので画面がないほうがいい
  3. カメラを持ち込めないところが多いため、スマートフォンは持ち込みを許可できない

なお、これまで使っていたGATTでは、ペアリングまたはボンディングが必要になるため、まず、課題1を解決するためには多数のセンサーを少数のゲートウェイに集約することが必要です。
また、課題2、3を解決するためには、スマートフォン以外のゲートウェイが必要になります。

課題解決のための要件整理

提供中のサービスの仕様を踏襲するための要件は次のようになります。

センサーの通信要件

  • 脈拍センサーが、4秒間隔で計測が行えること
  • 1日10時間×2日以上の計測が充電なしで行えること

ゲートウェイの通信要件

  • LTEでの通信が行えること
  • Wi-Fiでの通信が行えること
  • ゲートウェイは、LTEまたは、Wi-Fiでインターネットへ接続できること

ハードウェア要件

  • センサーの形態はリストバンド型であること
  • ゲートウェイは、可搬型で内蔵したバッテリーで動作できること
  • ゲートウェイは、位置情報(GPS)を取得できること
  • センサー(リストバンド)の販売価格が約1万円/台程度で提供できること

なお、ゲートウェイの価格は、集約できるリストバンドの数によるところが大きいですが、およそスマートフォン相当の価格をイメージしていました。

これらの要件を満たす手段は、それほど多くなく、特に価格面で実現可能な手段は限られていました。
折しも、これまで販売していたリストバンドの生産中止に伴い新しいリストバンドの選定も同時に行っていたところ、このメーカーで、我々が検討していた方式の実現が可能であることが分かったことから実は選択肢はほぼ一択の状態でした。

とはいえ、一応技術者らしく我々が選択した以外の方式についても少し補足しておきます。
複数のセンサー情報を集約する方法としてIoTでよく利用される無線通信方式では、次のような選択肢が考えらえます。

  1. BLEのAdvertise packet(ブロードキャスト)
  2. LoRaなどのLPWA
  3. ZigBeeなどのマルチホップ対応の近距離無線

それぞれ簡単に比較すると以下のようになります。

  BLE(Advertise) LoRa ZigBee
通信距離 100m程度
BLE4.x Class1
10Km
(見通しが良い場所)
300m程度
(見通しが良い場所)
通信上の特徴 ブロードキャスト(片方向)
狭い範囲での利用が中心
スター型構成
デバイス主導発信
非常に広範囲をカバー可能
(速度、量に制限アリ)
双方向通信可能
マルチホップ可能なため広範囲をカバー可能
対応機器 スマートフォンや家電、IoTセンサー
(一般向け)など多数
IoT機器(特定用途) IoT機器(特定用途)
価格 非常に安価 非常に高価 高価

我々が選択したのは、上記の1.のBLEのAdvertise packet方式です。
決め手は、以下の点です。

  • センサーのハードウェアが既製品をそのまま使えること(ファームウェアの変更のみで対応可能)
  • ゲートウェイのハードウェアも既製品が安価で手に入ること(常駐アプリの作成で済む)

また、Advertise packetについての詳細は、次の記事をご参照ください。

みまもりがじゅ丸®では、iBeaconの形式に多少工夫をして、脈拍データを送信しています。
詳細は、公開しておりませんのでご容赦ください。

ついでに、ゲートウェイについてもこの時点で、スマートフォンに代わる現在の通信機にほぼ決定していました。
こちらは、我々がすでにAndroidのアプリケーションを作るノウハウを有していたこと、そのうえで、課題2,3を満たすことができる安価な機器だったためです。

マルチタイプの登場

こうして、出来上がった新しい構成が、次のような標準プラン(マルチタイプ)の内容です。

みまもりがじゅ丸® 標準プラン

ある現場では、2018年は、シングルタイプ(従来の構成)でしたが、2019年は、マルチタイプを導入されたことで、ゲートウェイ2台を設置するだけで作業員10名のデータを収集することができ、コストを抑えると共に、作業員がスマートフォンを持ち込む必要もなくなったので、サポートにかかる稼働も減らすことができました。

方式検討から、サービスの提供までは、約半年となりますが、その間に、リストバンドのファームウェア開発、ゲートウェイのアプリ開発、新しい通信方式に伴うクラウドアプリケーションの開発、さらに、お客さまがわかりやすく価値を活用できるためのダッシュボードの開発まですべて並行して行っていましたので、これまでのサービス開発からするとかなりのスピードでの開発を行っていました。(メンバーの苦労に感謝です)

おかげさまで、2019年夏の熱中症シーズンでは、多くの現場で、このマルチタイプが採用され、お客さまからもその使い勝手などについて好評を賜りました。

最後に、2020年春時点では、新型コロナウィルス感染症の影響で、みまもりがじゅ丸®が活躍する工事現場などは中止や休業となっているところが多く、この状況からの出口を待つところではありますが、NTTPCは新たな価値を見出し、withコロナ、afterコロナの世の中で役に立つサービスの開発を目指して進化を続けています。
今後のみまもりがじゅ丸®の発展にもご期待ください。

技業LOG

この記事で紹介しているサービスは
こちら

みまもりがじゅ丸®

フィールドで働く方々の「安全」と「健康」をみまもる、NTTPCのウェアラブルIoTサービス

おすすめ記事

    お気軽にご相談ください

    • 「みまもりがじゅ丸」は、NTTPCコミュニケーションズの登録商標です。