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DX化とは
ビジネス用語としてすっかり定着したDXという言葉。「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、経済産業省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。
以前は似たような言葉としてIT化というものもありましたが、IT化はデジタルツールを導入して業務の効率化を目指すものであり、すでにIT化が当たり前となった今、そこから生まれるデータを活用していかに変革を起こすか、それが重要になってきています。
ただゼロから立ち上げるならまだしも、すでに既存の業務プロセスやシステムを長く運用している場合、DX化には様々な障害があり一朝一夕には実現できるものではありません。
この記事では営業組織におけるDX化に焦点を当て、世の中にどのようなソリューションが存在し、実際にNTTPCで何をどのように導入してきたのかを紹介します。
DX化に役立つソリューション
世の中にはDX化を掲げる様々なソリューションが存在しています。その中でも営業に関する製品やサービスはセールステックという造語でもよく聞くようになりました。せっかくなので流行りのChatGPT(ver3.5)に聞いてみました。
Q.営業DXに役立つソリューションを教えてください
A.もちろんです。営業DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するいくつかのソリューションは次の通りです:
- CRMシステム(顧客関係管理):顧客情報を一元化し、営業活動を最適化するためのツールです。
- セールスオートメーションツール:タスクの自動化やワークフローの最適化を通じて、効率的な営業プロセスを実現します。
- データ分析ツール:顧客の行動や傾向を分析し、より戦略的なアプローチを可能にします。
- AI・機械学習ツール:予測分析やパーソナライズドな提案を通じて、顧客体験を向上させます。
- コミュニケーションツール:チーム内外とのコミュニケーションを効率化し、協力を促進します。
これらのソリューションは、営業DXの実現に役立つツールですが、導入前に組織のニーズや目標に合わせて選定することが重要です。
綺麗にまとまった良い答えですね。では具体的なサービス名で言うとどのようなものがあるのでしょうか。
- CRMシステム
メジャーなサービスだと、やはりSalesforceやDynamics365でしょう。NTTPCでは他に導入しているMicrosoft社製品との親和性を考慮しDynamics365を利用しています。営業DXを行う場合、CRMを中心に進める場合が多いかと思います。 - セールスオートメーションツール
これは利用する場面により様々なツールがあります。マーケティングの分野であればマーケティングオートメーションツールとして、PardotやMarketo、HubSpotなどが挙げられるでしょう。CRMに機能が内包されているケースもあります。
他にiPaaSと呼ばれる複数のクラウドサービスやオンプレミスのデータ・プロセスを繋ぐ自動化ツールとしてZapierやPowerAutomateなどがあります。DX化を単一のサービスですべて実現するのは難しいため、これらのツールを活用してサービス間を連携することは非常に有効です。 - データ分析ツール
BIツールとも呼ばれます。様々なデータを集約しわかりやすく可視化することができます。個人個人でデータ分析を行うのは大変なので、データを扱いやすい状態にしてこれらのツール上で提供すると利用者に大きなメリットが得られます。こちらもある程度はCRMシステムの機能で実現できますが、本格的に分析を行う場合は専用のツールを利用する方がよいでしょう。PowerBIやtableauなどが有名です。 - AI・機械学習ツール
膨大なデータを読み込ませ顧客に合った戦略を導き出したり、未来の傾向を予測したりすることができます。
AzureやAWSなどのクラウドサービス上で利用することができますが、専門的なスキルや知識が必要になりますので、実際にここまでの機能を活用するのは難しいでしょう。
ただ様々なツールにこういったAI機能が備わりつつあり、今後はツールを利用する中で自然にバックグラウンドで機能し、簡単に利用することができるようになると思われます。 - コミュニケーションツール
社内・社外のメンバーとチャットやビデオ会議でコミュニケーションをとるためのツールです。素早く効率的にやりとりを行うことができ、やり取りしたデータは履歴に残り簡単に検索が可能、チームとしてのコラボレーションも非常にやりやすくなります。リモートワークやハイブリッドワークが当たり前となった昨今、欠かせないツールとなっています。
Teams、slack、Chatwork、LINE WORKSあたりが有名でしょうか。
Web会議の内容を自動的に文字に起こして要約したり、どのような場面が重要だったのか文脈から判断したりするなど、AI的な要素を取り込むのがトレンドとなっています。
NTTPCでのDX化ソリューション活用方法
では実際にNTTPCではどのようなサービスを組み合わせて使っているか紹介します。
もともとNTTPCでは各組織でそれぞれのニーズに合わせてサービスを導入してきました。
マーケティングの部門では企業情報データベースとしてuSonarを、MAツールとしてHubSpotを導入。営業部門では名刺管理にSansan、そしてCRMとしてDynamics365を導入していました。
当初は各サービス間のデータ連携は想定していなかったため、例えばそれぞれのデータを顧客単位に集約しようとすると手作業が発生し、その都度大きな稼働がかかっていました。そのため中核となるDynamics365に情報を集約していこうという動きになり、顧客のユニークなキーを法人番号と定め、各サービスのデータを法人番号で名寄せしてCRMに格納するようにしました。
uSonarにはDynamics365との連携機能があるため、その機能を活用し自動的に企業情報を書き込んでいます。
Sansanについてはまだ手動ですが、営業担当がSansanに取り込んだ名刺情報を定期的にHubspotのコンタクト情報やDynamics365の会社・担当者情報として格納しています。これにより営業担当が企業や担当者の情報を手入力する手間を軽減しています。
HubSpotは間にzapierを挟んで、公式サイトの資料ダウンロードや問い合わせが発生すると、即座にDynamics365へリードとして格納しています。
それから社内のSOシステムや請求システムの情報も名寄せを行いDynamics365へ格納しています。
最終的にCRMに集約されたデータはDynamics365との親和性が高いPowerBIを活用し可視化を行っています。また様々な場面で補完的にPowerAutomateも活用しています。
現状では下図のような組み合わせとなっています。
DX化ソリューション導入にあたっての課題
さて、ここまで挙げてきたサービスのほとんどはクラウドサービスで簡単に導入が可能です。ただし細かくカスタマイズを行ったり、複数のサービスを連携させようとすると、それなりの知識やスキルが必要となってきますのでご注意ください。
内製で構築するか外注でベンダーにお願いするのかは非常に重要なポイントです。
内製は担当者のスキルアップにコストがかかりますが、様々な変化や要望に素早く対応できるという大きなメリットがあります。また内製で対応することでノウハウもたまり会社の中で横展開しやすいというのも大きいでしょう。
ほとんどのサービスは無料の試用期間がありますので、興味のあるサービスがあったら、まずは触って試してみるというのは大事です。
またもうひとつ重要なのは、これらのサービスで利用・生成されるデータをどのような切り口で利用したいかという観点です。
最もわかりやすい例では「顧客」という切り口でしょう。ある顧客に対して、どのような引き合いがあったか、WEBサイトの閲覧状況はどうだったか、自社イベントセミナー等への参加履歴は、営業担当との名刺交換状況は、案件はどういったものが進行しているか、サービスは何を使っていただいているか、過去のクレームや問い合わせの履歴は?
これらの情報を顧客の切り口ですべて集約できれば、顧客へのアプローチや問い合わせ対応などを行うときに時に非常に大きな材料になります。
そのためには顧客をユニークに特定するキーが必要になりますが、幸い現在は国税庁の法人番号公表サイトで公表されている法人番号でほとんどの取引先は網羅できますので、NTTPCでも法人番号を活用し会社単位で名寄せを行っています。
もしこれを会社より細かい単位、例えば支店や事業所といった切り口で名寄せする必要があれば、例えばuSonarなどはそのレベルまでマスタ情報を保持していますので、こういったものを活用するのも一つの手だと思います。
営業DX化の今後の展開
ここまでNTTPCにおける営業DX化を紹介してきましたが、ようやく顧客単位で様々な情報を集約して見ることができるようになった段階で、この情報を活用して営業活動に変革を起こすのはまだ道半ばです。
直近では取引先の与信情報の自動取得を検討しています。現在は与信情報を取得するためにいくつかのステップを踏む必要があるため、営業担当の稼働を割かれていますが、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社が提供するサービスはAPIが具備されているため、PowerAutomateを使って自動的に信用情報を取得しCRMに書き込み参照できるようにするつもりです。
またデータ分析ツールはようやく各種データの可視化が可能になったばかりなので、今後は担当者自身が容易に分析できるような形に拡張していく予定です。
将来的には蓄積されたデータを使ってAI・機械学習を行い、顧客への適切なアプローチをリコメンデーションしたり、解約の兆候を捉えるような仕組みを構築したいと考えています。
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