技業LOG
目次
はじめに
近年、開発チームの生産性向上において「感覚」や「経験則」に頼った改善には限界があります。
では、どこにボトルネックがあるのか?何がスピードを阻害しているのか?
“データで見て、データで改善する”時代へシフトしているように思います。
この記事では、Findy Team+を活用して開発プロセスを可視化し、実際に3チームがどのように改善サイクルを回して成果を出したのかを紹介します。
取り組みのきっかけ
1. 開発サイクルを高速化するために、まず“見える化”が必要だった
我々サービスイノベーション室では内製を中心にアプリケーションの開発に取り組んでおり、そのサイクルをもっと素早く回したいというニーズがありました。
しかし、どこにボトルネックがあるのか、何がチームのスピードを阻害しているのかが定量的に把握できていない状態でした。
- 「プルリクエスト(Pull Request)のレビューに時間がかかっているのか?」
- 「実装よりも調整に時間がかかっているのか?」
- 「各フェーズで何が滞留しているのか?」
こうした“開発プロセスの現状”が見えなければ、闇雲に試行錯誤を繰り返すことになります。
また、改善にかけるコストが適切であるのかを説明することもできず、関係者の理解を得ることもできません。
そこで私たちは、まず開発生産性を可視化する仕組みづくりに着手しました。
2. “負担なく改善に使える指標”を整備することが、継続的な改善のカギだった
仮に可視化と改善の仕組みができたとしても、その仕組みがチームの負荷になってしまっては長続きしません。
そこで私たちは、
“日常業務の延長で、自然に可視化と改善を回せる仕組み”を作ることが最重要
と考えました。
- 計測のためだけの追加作業は不要
- ダッシュボードを見るだけで変化が分かる
- チームが同じ数字を見て会話できる
こうした環境を実現できれば、チーム文化として自然に根付いていくはずです。
そこで検討したのが Findy Team+ でした。
これは開発プロセスに関わる指標を自動で収集し、サイクルタイムなどを一元的に可視化するツールです。
3. 可視化 × 定量データにより、「改善を続けられるチーム」へ
開発生産性は、単に“速ければよい”というものではなく、改善のサイクルを継続して回せるかどうかが最も重要です。
私たちの活動目的は、まさにこの部分にあります。
- 開発プロセスの現状を正しく可視化すること
- 改善ポイントを定量的に把握できること
- 数字を介して、チーム全員が共通認識を持てること
- その結果、改善を継続できるチーム文化が育つこと
Findy Team+の導入は、この目的を実現するためのアプローチのひとつです。可視化によって課題が明確になり、明確になった課題は行動につながります。
モバイルサービス向けフロントエンドアプリ開発チームでの活用事例
モバイルサービスでの取り組みと成果
導入前の課題
我々は、普段からスプリントレビューやスプリントレトロスペクティブ、ワーキングアグリーメントなどを取り入れて日々チームとして開発プロセスの改善に取り組んでいました。しかし、いずれもチームメンバーの主観・直感に基づいた改善しか行うことができず、手応えが薄い状況でした。
Findy Team+を導入したことで、開発プロセスの各工程を具体的な数値として客観的に把握・分析できるようになり、そこから自分たちの状況に合わせたプロセス改善を実施できるようになりました。
振り返りの材料として活用
最初の取り組みとして、スプリントレトロスペクティブの中でFindy Team+のサイクルタイム分析機能を利用した開発タスクの振り返りを行いました。
サイクルタイム分析ではスプリントの単位で次の期間の平均時間を確認することができます。
- Gitの作業用ブランチを作成してからプルリクエストをオープン(開始)するまで
- プルリクエストがオープンされてからレビューが開始されるまで
- プルリクエストレビューがアプルーブ(承認)されるまで
- プルリクエストがマージされるまで
これらを振り返りの材料とすることで、
- 今回はどこで滞留が起きていたのか
- 前回と比べて何が変わったのか
チーム全員で客観的な数値として確認・分析できるようになりました。導入前は個人の主観・直感に依存していたので、これは我々にとって大きな変化でした。
スプリントレビューでの振り返り資料
客観的な情報の効果
振り返りをこのやり方に変えたことによって、次の効果を得ることができました。
- 具体的な狙いを持って改善策を考えられる。
- 実行した改善策の成果を可視化できる。
例えば添付の画像を例にすると、
- 具体的な狙いを持って改善策を考えられる。
「プルリクエストレビューがアプルーブされるまでの時間を短くするため」に「タスクの粒度を細かくすること」、「プルリクエストに気づいたら最優先で対応すること」に取り組みました。 - 実行した改善策の成果を可視化できる。
タスクの粒度を細かくしたことで、「プルリクエストレビューがアプルーブされるまでの時間」が「10時間」と「プルリクエストをオープンするまでの時間」が「7時間」、それぞれ短くなり改善の方針が適切だったことを具体的な数値として確認できたので、この取り組み内容を開発ルールに取り入れました。
時系列でのチームの調子の変化を確認
別の活用方法として、数ヵ月のスパンでチームの調子を確認することにも取り組みました。
こちらは、ある新機能の開発期間(4ヵ月弱)でのチームの開発生産性を表したグラフになっています。
このグラフに業務のフェーズをマッピングさせる(下の帯の部分)ことで、「いつ」「どの局面で」「どんな」変化が起きたのかを確認することができます。
例えば、「Findy Team+導入」後プルリクエスト数は増加していますがその他の項目はほぼ横ばいであること、導入前よりも生産性が高い状態が維持されていたことを確認することができます。
一方で、追加要望期間はプルリクエスト数が低い状態が続いていますが、これは仕様検討に時間がかかって生産性が一時的に低下していました。
このように、短期的にはスプリント単位、長期的にはリリース単位で客観的にチームの状態を確認・分析でき、それに基づいてプロセス改善に取り組めるようになったのは大きな変化であり、今後もこの取り組みを続けていきたいと考えています。
健康経営支援チームでの活用事例
導入前の課題
私たちのチームでは、以前からプルリクエストレビューに時間がかかっているという感覚がチーム内で共有されていました。ただ、それが具体的にどの程度なのかを数値で把握できておらず、改善の打ち手も明確ではない状態でした。
Findy Team+を導入したことで、サイクルタイム分析を通じてプルリクエストがオープンされてからマージされるまでの各工程の所要時間が可視化され、「なんとなく遅い」が「どこで、どれくらい遅いのか」に変わりました。
チームの構成の変化とレビュープロセスの見直し
数値が見えるようになったことで、まず「プルリクエストレビューは24時間以内に対応する」という目標をチームで改めて合意しました。しかし、ちょうどこの時期にチーム構成が大きく変わることになります。
2026年に入り、入社1年目のメンバーが2名加入した一方で、チーム内で最も技術力のあったメンバーが異動となりました。それまでのチームは3〜5年目の中堅メンバーが中心で、プルリクエストレビューは全員をレビュワーに指定し、手の空いた人がレビューするという運用で回っていました。しかし、チーム構成が変わったことでこの方式がうまく機能しなくなり、レビューがなかなか進まない状況が発生しました。
Findy Team+のサイクルタイム分析を確認すると、12月頃のレビューからアプルーブまでの平均時間が高止まりしていることが数値でも明確に表れていました。
レビュワー指定方法の変更と成果
この課題に対して、レビュワーの指定方法を見直すことにしました。
- 変更前: レビュワーをチーム全員に指定し、手の空いた人が対応
- 変更後: プルリクエストごとに特定の1名をレビュワーに指定
「全員に指定する=誰かがやるだろう」という状態になっていたものを、1名に責任を明確化することで、レビューの滞留を解消する狙いです。
以下は、Findy Team+での推移グラフです。
グラフを見ると、2026年1月30日以降プルリクエストの件数は増えていますが、オープンからマージまでの平均時間(黄色の線)が明確に低下していることがわかります。また、オープンからレビューまでの平均時間(オレンジ色の線)も低下しており、24時間以内が目標のところ、約4時間まで改善することができました。
この改善は、Findy Team+で数値を継続的にモニタリングしていたからこそ、チーム構成の変化によるプロセスの機能不全に早期に気づき、具体的な施策(レビュワー指定方法の変更)につなげることができた結果だと考えています。
mazucocoチームでの活用事例
背景と課題:見えづらかった開発の停滞ポイント
レビュープロセスのあいまいさ
mazucocoチームの開発フローの中で特に課題となっていたのが、プルリクエストレビューで次の2点です。
- レビュー完了の判断基準が明確でない
- 「誰が・いつ・どこまで見ればよいか」が属人化していた
その結果、プルリクエストが滞留しやすく、サイクルタイムの増加につながっていました。
レビューに時間がかかりすぎる問題
もう一つの大きな課題は、とにかくレビューに時間がかかることでした。
- 実装の意図を読み解くのに時間がかかる
- 軽微な指摘に時間を取られてしまう
この状態では、レビュー待ちがボトルネックとなり、開発全体の流れが滞ってしまいます。
アプローチ:数値化と継続的な振り返りによる改善
サイクルタイムを軸にした定期的な振り返り
mazucocoチームでは、2週間に一度、サイクルタイム分析を踏まえた振り返りを実施するようにしました。
- サイクルタイムを可視化
- チーム独自に「平均コメント対応スピード」を算出
- 数値を基に議論することで、感覚論を排除
振り返りのフレームワークとしては、KPT(Keep / Problem / Try)を採用し、改善点を継続的に洗い出すようにしました。
振り返りの結果、次のようなものをTryとして取り組むことにしました。
明確なレビュールールの策定
レビューの属人化を防ぐため、次のルールを明確化しました。
- プルリクエストは2人以上のLGTMコメント後にマージ
- マージはプルリクエスト作成者が速やかに実施
これにより、「誰の判断で止まっているのか」が分かりやすくなり、レビュー待ちの停滞を減らすことができました。
GitHub Copilotを活用したレビュー効率化
レビュー時間短縮のために、GitHub Copilotを事前レビュー役として活用しました。
- Copilotにある程度レビューさせた状態でプルリクエストを作成
- レビュアーは本質的な観点(設計・意図)に集中
これにより、人がゼロからレビューする負担を軽減し、全体のレビュー速度向上につなげています。
成果:サイクルタイムの大幅な改善
これらの取り組みの結果、サイクルタイムには明確な改善が見られました。
- 初回計測(7/10〜8/4):合計120.0時間
- 2回目計測(9/4〜9/29):合計52.8時間
約1か月の比較で、半分以下まで短縮することができています。
成果につながった背景には、次のような変化がありました。
- メンバー全員が数値を意識して行動するようになった
- 改善活動の効果が、継続的に可視化された
- 小さなTryを積み重ねる文化が定着し始めた
単なるルール変更ではなく、「数値 → 振り返り → 改善」というサイクルが回り始めたことが、大きなポイントだったといえます。
mazucocoチームの取り組みは、特別なツールや大掛かりなプロセス変更を行ったものではありません。
サイクルタイムを計測し、定期的に振り返り、具体的なアクションに落とす――この地道な改善の積み重ねが、確かな成果につながりました。
現状の限界点
Findy Team+の導入と活用を通じて、チーム内の開発生産性の向上には一定の手応えを感じています。一方で、開発生産性の向上だけでは解決しきれない課題も見えてきました。それは、お客さまにスピーディーに価値を届けるためには、開発生産性だけでなくリリースプロセス全体の最適化が不可欠だということです。
健康経営支援チームでは、Findy Team+の導入以前から、リリース速度に対する課題感がありました。当時のリリース頻度は3〜6ヵ月に1回程度。この状況を改善するため、上層部との交渉を経てリリースフローを見直し、現在では隔週に1回、多い時には週1回のペースでリリースできる体制を実現しています。
次はFindy Team+で確認できるデプロイ頻度の推移です。
グラフを見ると、2024年後半まではデプロイがほとんど発生していなかったのに対し、リリースフローの見直し以降、安定的にデプロイが行われるようになっていることが分かります。
しかし、このリリースフローの改善はあくまで健康経営支援サービスの中に閉じた取り組みです。他のチームでは依然として従来のリリースフローが適用されており、組織全体のリリースプロセスが変わったわけではありません。
チーム内の開発生産性の向上とリリースプロセスの組織的な改善は、車の両輪のようなものだと実感しています。私たちのチームでの取り組みが一つの成功事例となり、組織全体のリリースプロセス改善につなげていくことが、今後の課題です。
今後の取り組み
改善活動をチームの外に広げる
これまで、サイクルタイム分析や定期的な振り返りを通じて、開発プロセスの改善に取り組んできました。
結果として、Findy Team+ を用いて改善活動に取り組んだ3チーム全てで大幅に開発プロセスの改善に成功することができました。
今後は、この取り組みを特定のチーム内に閉じず、より広い範囲へ展開していくフェーズに進んでいきます。
改善活動の可視化と認知向上
まず注力していきたいのは、これまで行ってきた改善活動を社内に認知してもらうことです。
- 数値のビフォー・アフターだけでなく、そこに至るまでの試行錯誤も含めて共有する
- 「ツールを導入した」という事実ではなく、「どう活用し、何が変わったのか」を伝える
こうした情報発信を通じて、同じような課題を抱える他のチームが、改善活動を自分たちにも適用できるものとして捉えられる状態を目指します。
改善を一部の取り組みに留めず、再現可能なアプローチとして認識してもらうことが重要だと考えています。
Findy Team+活用の裾野を広げる
もう一つの重要なテーマが、社内でFindy Team+を使ってくれる人を増やすことです。
Findy Team+を活用することで、
- 開発プロセスを数値として捉えられるようになる
- 振り返りの議論が感覚論ではなく、事実ベースで行えるようになる
- 改善の効果を継続的に確認できる
といった変化が生まれてきました。
今後は、
「Findy Team+の設定方法」や「機能紹介」よりも、
「Findy Team+を使うことで、チームの会話や意思決定がどう変わるのか」
に焦点を当てた事例共有を進めていく予定です。
具体的な活用イメージを持ってもらうことで、ツール導入の心理的ハードルを下げ、自然と利用が広がっていく状態を目指します。
継続的改善を支える環境づくりへ
最終的な目的は、特定のツールや手法を広めることではありません。
数字を見て振り返り、改善を試し、その結果をまた確認する――
このサイクルが日常的に回る環境を社内に根付かせることです。
これまでの取り組みや得られた知見を共有しながら、より多くのチームが自分たちに合った形で改善を進められるよう、今後も実践と発信を続けていきます。
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※Findy Team+はファインディ株式会社の登録商標です。
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※GitHubは、GitHub Inc. の商標または登録商標です。
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※Copilotは、米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標です。
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※健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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※「mazucoco」は、NTTPCコミュニケーションズの登録商標です。
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NTTPCのサービスについても、ぜひご覧ください



