技業LOG
はじめに
皆さん、"宇宙ビジネス"と聞いて何を思われるでしょうか?
"自分には関係ない事?"、"政府や研究機関がやる事?"、"小説や映画での話?"それはすべてNOです。
我々の生活で宇宙からのサービスは切っても切れないほど深い関りを持っているのです。
例えば、気象衛星から得られる天気予報、位置測位衛星からは車の運転に欠かせないGPS、飛行機や船舶、災害地との通信に使われる通信衛星など日常的に気にせず使われています。
今回は、そんな宇宙ビジネスの現状や今後について4回にわたってお伝えしたいと思います。
- 第1回 地球を取り巻く現状
- 第2回 月で何をしようとしているの?
- 第3回 火星と地球に近づく小惑星
- 第4回 未定
今後、私達の生活はより宇宙と密接になって行きます。そんな時代を迎えるにおける一助になればと思います。
目次
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1. NTTと宇宙ビジネス
「NTTって宇宙にも関わっているの?」と思われるかもしれません。実はNTTグループでは、宇宙ビジネスを本格的に進めるため、「NTT C89(シーハチキュウ)」というブランドを立ち上げました。
この"C89"には、NTTグループ各社の宇宙関連の取り組み(事業、サービス、研究開発など)を「星」と見立て、それらをつなぎ、新しく"89個目の星座"をつくっていく、という想いが込められています。(詳しくはこちら)
NTTでは、人工衛星を使った通信サービスや、衛星から取得できる画像(可視データ)やSARデータ(地形の微細な変化をとらえる技術)を使ったデータ解析サービスなどにも取り組んでいます。
2. 衛星ビジネスって?
「今、地球のまわりにどれくらいの人工衛星があるかご存じですか?」
国連の宇宙機関(UNOOSA)によると、現在使われている衛星が約15,000基、壊れてしまった衛星が約3,400基、そして軌道を外れたものが約900基あるそうです。
この2~3年は、なんと毎年2,000基以上も増えていると言われています。その背景には、SpaceXのような民間企業の参入が活発になったことや、衛星がコンパクトで打ち上げやすくなったことがあります。
実は今、私達の頭上には、これだけたくさんの人工衛星が飛んでいるのです。
衛星には、目的に応じて大きく3つの種類があります。
- 通信・放送衛星:
インターネットや電話、テレビ・ラジオ放送に使われます。例えばSpaceX社の「Starlink」などがあります。 - 位置測位衛星:
スマホの地図アプリやカーナビなどで、位置を正確に知るために使われます。日本の「みちびき」もこの種類です。 - 地上観測衛星:
宇宙から地球の様子を観察します。気象予報や、山・海・森・街の変化を見守る役割です。有名なものでは日本の気象衛星「ひまわり」があります。

Credit: JAXA
また、NTTPCはSPACE SHIFTと協力し、衛星データを使ったビジネスの検討も推進しています。検討しているアイデアの1例として「都市開発モニタリング」(新規開発の建物および既存建物の取り壊しがあったエリアの検知)があります。
赤色部分が都市開発モニタリングにより変化点として検知されたエリアになります。

最近では、複数の衛星を連携させて同時に運用する「コンステレーション」技術も発展しており、例えばStarlinkは、通信の途切れを減らすために多数の衛星をうまく連携させることに成功しています。
ISS(国際宇宙ステーション)について
日本を含む15か国が参加している国際宇宙ステーション(ISS)は、2030年に運用を終了し、2031年に太平洋に落下させる予定です。それまでの間は、民間企業も含めて活用が進められることになっています。
NASAはISSの次のステップ「ポストISS」について、2025~2026年にかけて民間企業の提案を受けて選定する予定です。日本でも、この「次の宇宙ステーション」に関して、民間企業の利用も含めて検討が始まっています。
ISSでは、宇宙でしかできない実験や、小型人工衛星の放出など、新しいビジネスの可能性が広がっています。
3. スペースデブリって?
人工衛星が増えると同時に問題になっているのが「スペースデブリ(宇宙ごみ)」です。
現在、人工衛星以外にも、壊れた衛星やロケットの残骸、さらには破壊実験や衝突事故で出たデブリがたくさん宇宙を漂っています。
その数は、
・10cm以上:約36,000個
・1cm以上:約120万個
・1cm未満:数千万個とも言われています。
これらは相対速度で秒速10~15km(ライフルの弾の10倍以上)というとんでもない速さで飛んでおり、もし人工衛星や宇宙船にぶつかれば、重大な事故につながる恐れがあります。
こうしたリスクを減らすため、世界ではスペースデブリを減らす取り組みや、回収ビジネスが注目されています。
例えば、国際ガイドラインでは「軌道を外れた衛星は25年以内に大気圏に落とす仕組みをつくる」「地上からデブリの動きを監視する」といった対策が求められていますが、1cm未満の小さなデブリは対応が難しいのが現状です。
JAXA(日本の宇宙機関)では、アストロスケールと一緒に、大型のデブリを回収する計画を進めています。
方法としては、ロボットアームでつかんだり、磁力やレーザーを使ったり、小型衛星をぶつけて落とすといったアイデアが検討されています。
日本はこの分野でも世界をリードしていて、将来は「宇宙ごみ回収ビジネス」が本格化するかもしれません。

Credit: JAXA
4. 宇宙旅行って?
宇宙ビジネスの中でも、私達にとって一番身近に感じるのは「宇宙旅行」ではないでしょうか?
2021年は「宇宙旅行元年」と呼ばれ、世界で29人の民間人が宇宙旅行を体験しました。では、2025年にはどこまで進んでいるのでしょうか?

Credit: Virgin Galactic
宇宙旅行は、その高度(高さ)によって次のように分かれます:
- 成層圏旅行(20~30km)
→ 気球に乗って数時間。無重力はありませんが、地球の丸さを体感できます。 - サブオービタル旅行(80~100km)
→ 宇宙の入り口まで行き、数分間の無重力体験ができます。 - オービタル旅行(300km以上)
→ 地球をぐるぐる周回。宇宙ステーションに滞在することもあります。
SpaceX(スペースX)
- オービタル宇宙旅行(高度300~500km、ISSへの搭乗もあり)
- 使用宇宙船:クルードラゴン(Crew Dragon)
- 宇宙滞在期間:3日~1週間
- 帰還方式:大気圏再突入後、パラシュートで海上着水
今後の計画
- スターシップ(Starship)による月周回・火星旅行を計画中
Blue Origin(ブルーオリジン)
- ロケットスタイルのサブオービタル宇宙旅行
- 使用ロケット:ニューシェパード(New Shepard)
- 到達高度:100km超、飛行時間:数分の無重力体験後、パラシュートで着陸
今後の計画
- チケット非公開、100万ドルとのうわさ
Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)
- 航空機スタイルのサブオービタル宇宙旅行。
- 使用機体:VSS Unity(母機で高度15km→切り離し後にロケット点火)
- 到達高度:80~90km、数分間の無重力体験
今後の計画
- 2026年半ばから再開予定、チケット価格は約60万ドル
岩谷技研
- 北海道拠点の企業。高高度ガス気球で成層圏宇宙旅行。
- 飛行高度:18~25km、飛行時間:約1時間
- 無重力体験はないが、成層圏の眺望を体験可能
- 訓練不要、将来的に100万円での提供を目指す
今後の計画
- 2025年6月以降運用開始予定
今はまだ費用が高額で、誰でも気軽に行けるというわけではありませんが、これからどんどん手の届く存在になっていくと期待されています。
5. まとめと次回予告
今の宇宙ビジネスは、人工衛星を中心に「観測」「通信」「データ収集」といった分野で大きく進化しています。特に、衛星が小型化・高性能化し、たくさんの衛星がチームで動くようになったことで、これまでにないスピードと精度で様々なサービスが実現しています。
この変化は、日常の暮らしにもじわじわと広がってきており、将来は「宇宙経由の高速移動」も夢ではありません。例えば、今13時間かかっている東京~ニューヨークの移動が、将来は1時間で行けるようになるかもしれません。
JAXAや日本政府も、民間企業の宇宙進出を積極的に支援しており、「宇宙戦略基金」として今後10年間で1兆円規模の支援が計画されています。
「宇宙は特別な人のもの」から「自分たちも関われる場所」へ。そんな時代が、いま目の前に来ています。
次回予告
人類が初めて月に降り立ってから、すでに60年。
今、月では何が起こっているのでしょうか?
次回は「月とその未来」についてお話しします。
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