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カーボンニュートラルとは? 脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきこと

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環境問題で時折耳にする「カーボンニュートラル」という言葉。今回はカーボンニュートラルとは何かや「脱炭素」との違いを解説します。また、現在カーボンニュートラルが必要とされている理由、企業が取り組むべきことなどを事例も交えて紹介します。

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目次

カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にすること

まずは「カーボンニュートラル」という言葉の意味について確認しておきましょう。「カーボン」は「炭素」、「ニュートラル」は「中立」の意味で、直訳すると「炭素中立」となります。
図1は国立環境研究所・温室効果ガスインベントリオフィスの「日本の温室効果ガス排出量データ」を基に経済産業省が作成した図で、2018年の日本における温室効果ガス(Greenhouse Gas、GHG)の排出量を示しています。温室効果ガスにはCO₂(二酸化炭素)に加えメタン、一酸化二窒素、フロンガスなどが含まれますが、その大部分は石油や石炭などの化石燃料をエネルギー源とする際に生成される「エネルギー起源CO₂」が占めていることが読み取れます。

図1:日本の温室効果ガス排出量データ(経済産業省資源エネルギー庁Webページより転載)

参考:経済産業省資源エネルギー庁「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」

現在地球規模で進行している気候変動に対応するためにはこれらの温室効果ガスの排出量を削減する必要がありますが、中には民生部門(家庭でのエネルギー消費やサービス業など第三次産業でのエネルギー消費)のように大幅な削減が難しい分野もあります。
そこで、CO₂(カーボン、炭素)の排出削減と併せてそれらの吸収・除去を行うことで、排出量と吸収・除去量を均衡(ニュートラル化、中立化)させ「差し引きゼロ」を目指すというのが「カーボンニュートラル」の考え方です。
「全体としてゼロ」を表す「ネットゼロ」などの用語もカーボンニュートラルと同義に使用されています。

脱炭素とはどう違う?

「カーボンニュートラル」と似た言葉に「脱炭素」がありますが、こちらは温室効果ガスの大部分を占めるCO₂の排出量ゼロを目指す考え方を示す言葉です。
カーボンニュートラルが吸収・除去量を含めた均衡を目指すのに対し、排出量の削減に重点と置いていますが、CO₂排出量ゼロ(≒実質ゼロ)を達成する「脱炭素社会」を目標とする点は同一のため、しばしばカーボンニュートラルと並んで「脱酸素」という言葉が使用されることがあります。

カーボンニュートラルが重視されるまでの背景

カーボンニュートラルが重視されるようになった契機として、「京都議定書」「パリ協定」があります。
「京都議定書」は、1997年に京都で開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択されました。CO₂など6種類の温室効果ガスについて、2008年~2012年の期間中に1990年と比較して少なくとも5%削減するという目的を定めるとともに、各国の排出量が定められた割当量を超えないよう法的拘束力のある数値目標が設定されました。
2015年には、パリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択されました。パリ協定は京都議定書の後継として位置づけられた国際的な枠組みで、途上国を含むすべての温室効果ガスの主要排出国に対し「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃に抑える」「21世紀後半にはカーボンニュートラルを達成する」という世界共通の長期目標が提示されました。
現在では気候変動枠組条約に加盟する196カ国すべての国が参加しており、日本も参加国として2050年までのカーボンニュートラル達成に向けて行動を開始しています。

カーボンニュートラルを実現しなくてはならない理由

世界各国が一致してカーボンニュートラル実現に取り組む背景には、産業革命以前に比べ気温上昇が著しいという事実があります。
図2は日本の年平均気温を表したグラフです。日本が産業革命を迎えた1900年頃から実に1℃以上も気温が上昇していることが分かります。

図2:日本の年平均気温偏差

参考:気象庁「日本の年平均気温」

実際、パリ協定で提示された「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃に抑える」を達成するためには2050年までにカーボンニュートラルの実現が必要と算出されています。今後も年平均気温の上昇が続いた場合には、気候変動により気象災害が発生し、経済活動や生活に悪影響をおよぼす危険性もあります。こうした事態を避けるため、世界各国が一致団結してカーボンニュートラルに取り組んでいるという現状があります。

また、企業にとってもカーボンニュートラルの実現は重要です。気候変動により資源やエネルギーなどの入手が困難になるなど、中長期的な事業リスクを回避するためという側面もありますが、それに加えて「カーボンプライシング」が検討されていることもあげられます。
「カーボンプライシング」は、企業が排出するCO₂の排出に値段を付ける政策を指し、具体的には排出量に応じて税金を掛ける「炭素税」、企業間で排出量を取引する「排出量取引制度(Emission Trading Scheme、ETS)」などの手法があります。つまりカーボンニュートラル対応を怠った場合、将来的に事業運営に必要とされる経費が増大する危険性があるわけです。

カーボンニュートラル実現に向けた国内での動き

温室効果ガス46%削減を目指す「2030年目標」

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、各段階における具体的な目標が設定されています。
2021年に米国が主催した気候サミットでは、当時の菅総理が2030年度に温室効果ガスを2013年度と比較して46%削減すること、さらに50%削減に向け挑戦を続けることを宣言しました。そしてその実現のため、2030年度までに全国に100ヶ所以上の「脱炭素先行地域」を設け、地域特性などに応じた先進的な取組を行い実施の道筋をつけることを目指しています。

地方から始める脱炭素への移行を目指す「地域脱炭素ロードマップ」

そして2030年以降には前述の「脱炭素先行地域」の取り組みを全国に伝搬し達成を目指す「脱炭素ドミノ」を起こし、2050年を待たずにカーボンニュートラルを達成することが目標とされています。
国・地方脱炭素実現会議が2021年に公表した「地域脱炭素ロードマップ」によれば、その実現のため、

  • 人材、情報・技術、資金面での継続的・積極的支援
  • 国民が自発的に脱炭素に参画できるようライフスタイルイノベーションに誘導
  • 社会全体が脱炭素に向かうための制度改革

の3つの基盤的施策を実施するとしています。

カーボンニュートラル実現を加速させる「改正地球温暖化対策推進法」

実際に制度改革も進んでいます。2021年には地球温暖化対策推進法の一部が改正され、カーボンニュートラルを基本理念と位置づけるとともに、その実現に向けて地域の再生可能エネルギーの活用、企業の排出量情報の見える化などカーボンニュートラルへの取り組みを後押しする内容を追加しました。
また、2022年にはさらに対策を強化し、温室効果ガスの排出削減への取り組みに対し資金を供給する「株式会社脱炭素化支援機構」の設立や国が地方公共団体への財政上の措置に努める旨などを追加する改正を実施しています。

グリーンエネルギーの活用による経済成長を促す「グリーン成長戦略」

経済産業省が中心となり、関係省庁と連携した「2050年カーボンニュートラルにともなうグリーン成長戦略」も策定されています。温暖化への対応を経済成長の足かせやコストの増加ではなく「成長の機会」と捉え、イノベーションを実現し、革新的技術を社会実装しようという戦略です。
具体的には、太陽光発電、水素・燃料アンモニアなど成長が期待できる14の産業分野を選定し、国が予算、税制、金融面などで政策を総動員してカーボンニュートラルに向けた企業の取り組みを支援しようというものです。
同戦略では2050年の経済効果として約290兆円、雇用効果として約1,800万人を見込んでいます。

カーボンニュートラル・脱炭素社会実現に向けて企業が取り組むべき5つのこと

自社における温室効果ガス排出量の把握

まずは自社における温室効果ガスの排出量を把握します。「見える化」を促進し、排出量と基準日からの排出削減量を把握することに役立てます。排出量の計算については日本商工会議所がWebページで公開している「CO₂チェックシート」などのツールを利用するほか、電気の使用量など自社の活動規模に関する量に排出係数を乗じて算出することも可能です。
さらに現在、後述するようにサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量などを求める必要性も増してきており、一部では既にステークホルダーなどからの要請に応える形で情報開示も開始されています。こうした動きは今後社会全体に広がる見込みですから、各企業は早期に取り組む必要があるでしょう。

再生可能エネルギーへのスイッチ

事業で消費する電力の一部を風力発電、太陽光発電、地熱発電などの再生可能エネルギーに置換することも効果的です。自社内に太陽光発電設備などを設置する方法に加え、電力会社から「再生エネルギー由来電気」を購入する方法もあり、中堅・中小企業においても取り組みやすい、環境負荷を減らしカーボンニュートラルに貢献できる基本的な方法といえるでしょう。

サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の削減

サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の把握が全世界的に重要度を増しています。各事業者単独ではなくサプライチェーンでつながった全体として俯瞰してとらえることで、さらに排出量を削減できる可能性があるためです。実際に、ISO(国際標準化機構)では、ISO/TR14069として組織の直接および間接排出量の定量化、そして報告方法に関する指針を示しています。
中堅・中小企業においては、まずは前述の「自社における温室効果ガス排出量の把握」「再生可能エネルギーへのスイッチ」に取り組むことが効果的ですが、それに加えて生産プロセスの省エネ化、省エネ性能に寄与する製品の開発などに取り組むことでさらにサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の削減に貢献できます。また、廃棄された製品を回収し、リユース・リサイクルにつなげることも効果的です。

ペーパーレス化推進による資源保全

身近なところでは、ペーパーレス化推進も効果的です。日本製紙連合会・LCA小委員会の2011年の調査によれば、コピー用紙(Plain Paper Copier、PPC)を1t生産する際には実に約1,520kgのCO₂が発生するとされており、ペーパーレス化は製紙、印刷、廃棄の各過程におけるエネルギーの消費削減や環境保全に大きく寄与すると考えられます。

参考:日本製紙連合会発表資料「紙・板紙のライフサイクルにおけるCO₂排出量」

ペーパーレス化を実現する方法には文書をまとめて印刷するなど紙の消費を直接削減するほか、文書を電子化したり会議にタブレット端末を利用したりするなど様々な方法があります。中堅・中小企業のITツール(ソフトウェア、アプリ、サービスなど)の導入を支援する「IT導入補助金」なども利用できる場合があるため、それらの制度を利用してペーパーレス化の達成を目指すのも良いでしょう。

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[動画]いまさら聞けない「脱炭素化」とは?

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TCFDの提言に沿った情報開示

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」といい、各企業の気候変動への取組みなどについての情報開示基準を定めたものです。各国の中央銀行やIMF(国際通貨機関)などの代表が参加する金融安定理事会(Financial Stability Board FSB)により2015年に制定されました。
現在、プライム市場に上場している企業にはTCFDの提言に沿って「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目について開示することが実質義務化されており、このうち「指標と目標」には事業者単体およびサプライチェーン全体の温室効果ガスの排出量が含まれます。
開示が不十分な場合、または開示内容が不適切な場合には投資家や金融機関の信用を失う事態ともなりかねません。また今後は開示が求められる企業の範囲が拡大されることも予想されており、この点からも企業はカーボンニュートラルに取り組む必要があります。

カーボンニュートラル・脱炭素化に向けた企業の取り組み事例

製造業での取り組み事例

経済産業省・関東経済産業局が2023年に公開した「カーボンニュートラルと地域企業の対応」には、カーボンニュートラルに取り組む企業がいくつか紹介されています。
静岡県の自動車部品メーカーでは、工場内に太陽光発電設備を設置したほか、再生エネルギー由来電気を購入することで自社が消費するエネルギーのカーボンニュートラル化を達成しました。環境に配慮した製品であることを取引先に訴求することで、競争力も向上したそうです。

小売業での取り組み事例

長野県内でフェアトレード商品を扱う企業では、開業当初からレジ袋を提供せず、マイバッグの持参を奨励していました。また、SDGsやエシカル消費に関する情報の発信も積極的に行い、消費者や取引先の価値観の変化を促してきました。
現在は太陽光や雨水などを活用した「環境保全型オーガニックレストラン」を企画中で、オープン後にはエコな体験を共感できる場として顧客に新たな価値を提供するといいます。

まとめ

今回は、温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を均衡させ差し引きゼロとする「カーボンニュートラル」について解説しました。
「京都議定書」「パリ協定」を経て全世界で取り組むこととなったカーボンニュートラルは、年平均気温の上昇を抑えるという観点からみても喫緊の課題といえるでしょう。実際に、日本でも「2030年目標」「地域脱炭素ロードマップ」「改正地球温暖化対策推進法」「グリーン成長戦略」などを通じて2050年より前にカーボンニュートラルを達成することを目指しています。
ただし、カーボンニュートラルを達成するには各企業の協力が必要不可欠です。自社における温室効果ガス排出量を把握した上で、再生可能エネルギーへのスイッチやサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の削減、ペーパーレス化の推進、適切な情報開示などを行ってカーボンニュートラルへの寄与を目指しましょう。
今回紹介した取り組み事例のほかにも、すでに自社のカーボンニュートラルを達成した企業は多数あります。カーボンニュートラルに取り組む際には、そうした事例を参考にするのも良いでしょう。

※ICT Digital Columnに記載された情報は、リリース時点のものです。
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