IaaSとは? SaaS・PaaSとの違いも比較表つきで解説
クラウド上でITインフラを提供するサービス「IaaS」(イアース)。今回は、開発環境の早期構築などに有効なIaaSについて解説します。また、SaaS、PaaSや各種レンタルサーバーと比較した際のメリット、デメリットについても紹介します。
- 目次
クラウドサービスの一種である「IaaS(イアース/アイアース)」とは
「IaaS」は「Infrastructure as a Service」の略称で、直訳すると「サービスとしてのインフラストラクチャ」となります。また、「イアース」または「アイアース」という読み方をします。
「Infrastructure」(インフラストラクチャ、インフラ)という言葉が含まれている通り、サーバー、ストレージ、CPU、メモリ、ネットワークなど、コンピューターシステムの構築に必要なITインフラをインターネット上で提供するサービスです。サーバーなどのハードウェアを購入することなく、インターネットを通じて「必要な時に、必要なだけ」ITインフラを利用できるサービスと言い変えることもできます。
主要なIaaSサービス
米Gartner社の調査によれば、2022年~2023年のIaaS市場におけるシェア第1位は前年に引き続きAmazon社。同社の提供するクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS、アマゾン ウェブ サービス)」の一環として、「Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)」の名称でIaaSを提供しています。
また、クラウドサービス「Microsoft Azure」の一環として「Azure IaaS」を提供するMicrosoft社が第2位、クラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」の一環として「Google Cloud IaaS」を提供しているGoogle社が第3位となっています。
参考:Gartner Says Worldwide IaaS Public Cloud Services Revenue Grew 16.2% in 2023
IaaSで実現する、短時間での開発環境構築
IaaSは主に高い自由度やカスタマイズ性が求められる分野で活用されています。
例えばアプリやゲームの開発を行う場合、従来であればサーバーやストレージなどのハードウェアを自社で購入する必要がありました。
クラウドサービスの形式で提供されるIaaSであれば、こうしたITインフラのハードウェア部分が一括で提供されるため短時間で開発環境を整えることができます。
ITインフラについて詳しくは、「ITインフラとは? システム基盤の具体例や構築の注意点を簡単に解説」を参照してください。
適切なクラウドサービス選定のために:IaaS・SaaS・PaaS の比較
IaaSと似た言葉に「SaaS」「PaaS」があります。どちらもIaaSと同じクラウドサービスの一種ですが、ここでIaaSとの違いを簡単に押さえておきましょう。
ソフトウェアを提供する「SaaS(サース/サーズ)」とは
「SaaS」は「Software as a Service」の略称で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」となります。読み方は「サース」または「サーズ」です。簡単にいうと、これまでは店頭でパッケージ製品として販売されることの多かったソフトウェアの機能を、クラウドを通じて提供するサービスと言えます。
SaaSの代表的なサービス
SaaSの代表的なサービスとして、Microsoft社のMicrosoft 365があります。従来はパッケージ製品として販売されていたMicrosoft WordやMicrosoft Excelの機能などをクラウド上で利用できるサービスです。
ほかにもGoogle Cloudなど多種多様なサービスがあり、個人、法人を問わず特定の課題を解決するために活用されています。
SaaSのメリット・デメリット
SaaSのメリットは、ソフトウェアをインストールしなくともインターネットを介して多種多様なサービスをすぐに利用開始できる点です。
ただし、大前提としてインターネット接続環境が必要となること、また、SaaSには特定の機能に特化したものが多く、カスタマイズできる範囲もベンダーに依存するため、必ずしも自社のニーズにマッチしない場合があることなどのデメリットもあります。
インターネット上の開発基盤「PaaS(パース)」とは
「PaaS」は「Platform as a Service」の略称で、直訳すると「サービスとしてのプラットフォーム」となります。読み方は「パース」です。サーバーなどのハードウェアに加えて、OSやミドルウェア、データベースなど、アプリやゲームの開発に必要なプラットフォーム(動作環境)一式をインターネット上で提供するサービスです。
PaaSの代表的なサービス
PaaSも各社により提供されています。主なものではAmazon社の「AWS Elastic Beanstalk」、Microsoft社の「Azure App Service」、Google社の「Google App Engine」などがあります。どれもWebアプリやゲーム、Webサービスの開発などに利用されます。
PaaSのメリット・デメリット
PaaSのメリットは、プラットフォームが丸ごと提供される点にあります。構築の工程を短縮して素早く開発に着手できるわけです。
反面、選択肢はベンダー側で用意されたものに限られるため、例えば使用できるプログラミング言語などで制約を受ける可能性があります。
IaaS・SaaS・PaaS、三者の違いや特長のまとめ
これまで説明したように、IaaSはインフラ環境(コンピューターシステム)を、SaaSはサービス(ソフトウェアの機能)を、そしてPaaSはプラットフォーム(動作環境)を提供するクラウドサービスです。
自由度別にみると、開発環境をゼロから構築できるIaaSがもっとも高く、次いでプラットフォームが丸ごと提供されるPaaSが中程度、そして用意されたサービス(ソフトウェアの機能)を利用するSaaSがもっとも低くなっています。特にIaaSとPaaSとの選択で迷う場合には、自社が提供したいWebアプリやゲームがどの程度特殊な開発環境、動作環境を必要とするかを認識することが重要です。
IaaS | SaaS | PaaS | |
---|---|---|---|
提供されるもの | インフラ環境 (コンピューターシステム) |
サービス (ソフトウェアの機能) |
プラットフォーム (動作環境) |
具体例 | Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) Azure IaaS Google Cloud IaaS |
Microsoft 365 Google Cloud |
Azure App Service Google App Engine |
自由度 | 高 | 低 | 中 |
開発環境の構築にはレンタルサーバーという選択肢も
アプリやゲームの開発を行う場合、サーバーやストレージなどのハードウェアを自社で購入する以外にも、共用サーバー、専用サーバー、VPSなどのレンタルサーバーを利用するという選択肢もありました。ここで、IaaSとレンタルサーバーとの違いについても押さえておきましょう。
複数のユーザーで1つの物理サーバーを共用する共有サーバーは管理権限がないなど自由度の点でIaaSにやや劣りますが、運用コストが低いというメリットがあります。また、専用サーバーやVPSではIaaSと比較して自由度がより高いというメリットがある反面、ファームウェアやドライバーの管理を自社で行う必要があるというデメリットもあります。特にクラウドサービスであるVPSは、IaaSと近い感覚で使用できるのではないでしょうか。
IaaS | 共用サーバー | 専用サーバー | VPS | |
---|---|---|---|---|
提供されるもの | インフラ環境 (コンピューターシステム) |
物理サーバーの利用権 (複数のユーザーで共用) |
物理サーバーの利用権 (自社で専有) |
仮想サーバーの利用権 (自社で専有) |
運用コスト | 低 | 低 | 中 | 高 |
自由度 | 高 | 低 | 高 | 高 |
開発現場の救世主となる? IaaSがもたらす4つのメリット
IaaSの利点は短時間で開発環境を構築可能という点だけではありません。そのほかのメリットについてもいくつか紹介します。
自由度や柔軟性が高い
IaaSでは、コンピューターシステムを自由に設計することができます。必要とするCPUの数、ストレージ容量などを自由に設定できるので柔軟なカスタマイズが可能です。また、スモールスタートで開発を開始したのちに必要に応じてシステム性能を拡張するなどの対応も可能です。
コストを削減できる
IaaSを活用すればハードウェアを購入する必要がないため、導入コストを削減することができます。また、開発から撤退する場合もIaaSを解約するだけで済み、準備した機器が手元に残ることもありません。
さらにIaaSの中には利用状況に合わせて料金が設定されているケースもあり、運用コストの削減も見込めます。
ハードウェアの更新や管理が不要になる
IaaSはクラウドサービスですから、ハードウェアの更新や管理についてはベンダー側が対応します。そのため、自社の運用管理負担が軽減され、アプリやゲームの開発に注力することができるようになります。また、ハードウェアを司るファームウェアやドライバーの管理もベンダー側で行われるため、一定のセキュリティを確保できるというメリットもあります。
BCP対策ができる
また、BCP(事業継続計画)の策定においてもメリットがあります。IaaSではサーバー本体はサービス提供事業者の施設内にあり、管理もサービス提供事業者が行います。そのため、遠隔地にあるサービス事業者を選択することで、自然災害などで自社がダメージを受けた場合にもサーバーの稼働を確保でき、事業継続がしやすい状況を生み出すことができます。
IaaS導入前に知っておきたい注意点や準備
これまでIaaSのメリットに着目して説明してきましたが、こうしたメリットを存分に発揮させるためにはいくつかの条件があります。
環境構築が必要
IaaSではネットワークなどインフラ周辺の機能は追加サービスとして提供されますが、そのほかの環境構築、例えば開発環境移行にともなうデータの移行、自社の現行サービスとの接続可否の確認、ソフトウェア面での開発環境の保守などは自社で行う必要があります。
専門知識が必要
IaaSのメリットとして「自由度や柔軟性が高い」ことをあげましたが、これは裏返せば選択肢が多いことを示します。自社に必要な性能を判断して選定し、それらを組みあげて形にするにはそれなりの専門知識が必要となります。
アクセス管理や保守運用が必要
IaaSはクラウドサービスですから、クラウドセキュリティには特に留意する必要があります。例えばユーザーIDやパスワードの管理が不適切であれば不正アクセスにより情報漏えいが発生する危険性があります。サイバー攻撃を受ける危険性もありますから、クラウドセキュリティについての知見が必要となるでしょう。
クラウドセキュリティについて詳しくは、「クラウドセキュリティとは?クラウド環境のリスクと対策方法」を参照してください。
IaaSの導入に、高い柔軟性と拡張性を兼ね備えたハイブリッドな「カスタムクラウド®」
NTTPCの「カスタムクラウド®」は、クラウドサービスの手軽さとオンプレミスサーバーの柔軟性を兼ね備えたIaaSサービスです。
ハイブリッドなシステム構成、ネットワーク構成が可能などカスタマイズ高い一方、日単位の課金+稼働時・休止時料金を設定し、稼働に応じた課金とすることでリーズナブルな料金体系を実現しました。
また、IaaSの構成設計におけるNTTPC社エンジニアによる支援、別提供となる閉域ネットワークサービスとの併用も可能なため、お客さまの望む要件を多様なネットワーク構成・セキュリティ環境で構成することが可能となります。
まとめ
今回はIaaSが「Infrastructure as a Service」の略であること、またコンピューターシステムの構築に必要なインフラ環境をインターネット上で提供するサービスであることを説明し、主要なサービスとして「Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)」「Azure IaaS」「Google Cloud IaaS」などがあることを紹介しました。
また、IaaSには「自由度や柔軟性が高い」「コストを削減できる」「ハードウェアの更新や管理が不要になる」「BCP対策ができる」といったメリットがある反面、利用する際は「環境構築が必要」「専門知識が必要」「アクセス管理や保守運用が必要」などの注意点があることも解説しました。
また、プラットフォーム(動作環境)を提供する「PaaS」、サービス(ソフトウェアの機能)を提供する「SaaS」など、ほかのクラウドサービスとは自由度などの点で違いがあることも紹介しました。
自社のアプリ・ゲームの開発環境をクラウドに移行したい、料金面や管理運営面などの負担を減らしたい、などの課題がある場合には、IaaSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※Amazon Web Servies、AWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
※Microsoft Azureは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※ICT Digital Columnに記載された情報は、リリース時点のものです。
商品・サービスの内容、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。