デジタルツインとは? シミュレーション・メタバースとの違いや活用事例を解説

今回は、現実世界のヒトやモノの双子(ツイン)をデジタル世界に構築する「デジタルツイン」について解説します。すでに建設業におけるBIM/CIMなどで活用の進むデジタルツインですが、そのメリットや活用する上でのポイントについて再確認しましょう。
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- 目次
デジタルツインの定義
「デジタルツイン」は、現実世界のヒトやモノの双子(ツイン)をデジタル世界に構築することを意味します。現実世界でデータを収集して忠実なデジタルツインを構成し、仮想空間上で分析・シミュレーションを行い、その結果を現実世界にフィードバックさせれば、将来起こり得る変化にいち早く対応できるようになります。
例えばNTTPCが提供する3次元モデル向け仮想デスクトップサービス「VDIクラウド for デジタルツイン®」を活用すれば、自宅やサテライトオフィスなどの遠隔地からでもデジタルツインを活用することができます。
デジタルツインとシミュレーションの違いは「リアルタイム性」
デジタルツインは従来のシミュレーション技術の延長線上にあり、大きな括りとして捉えた場合には先端技術を用いた一種とも言えます。ただし、デジタルツインは現実空間で実施する従来のものとは異なり仮想空間で行うため、リアルタイム性が高く、素早く検証・分析が行えるという特長があります。
また、従来のものが例えば車両のエンジンなど製品の一部分の動作の検証に留まるのに対し、デジタルツインでは車両全体に加えて歩行者や信号機などを含めた「環境全体」として検証できるという利点もあります。
デジタルツインとメタバースの違いは「現実空間を再現するかどうか」
「メタバース」はデジタルツインと同様に3D仮想空間を生み出す技術ですが、主にユーザー同士のコミュニケーションやゲーム、企業の広報活動などに利用するために設計されています。そのため、メタバースは現実空間を再現する必要がなく、未来世界など非現実の世界をも創造することができます。また、メタバースでは基本的に自身の分身である「アバター」を通じて仮想空間で疑似体験を行いますが、デジタルツインでは検証や分析への活用を意図しているため、通常アバターは使用されません。
【事例紹介】デジタルツインはすでに多くの業界で活用されている

すでに様々な業界においてデジタルツインの活用が進んでいます。具体的な事例をいくつか紹介しましょう。
国土交通省による3D都市モデル化プロジェクト
国土交通省は2020年に都市デジタルツインの社会実装を進める取組み「Project PLATEAU(プラトー)」を開始しました。
2022年度までに国土交通データプラットフォームにおいて全国約130都市の「3D都市モデル」が公開されており、国土や道路、河川などのデータが検索できます。これらのデータは都市計画に限らず、防災や観光、交通などへのユースケースが想定されています。
航空機エンジンをデジタルツイン化し適切な検査時期を把握
米航空機メーカーでは、航空機エンジンにデジタルツインを導入することにより、メンテナンスの効率化を図ることに成功しました。デジタルツインを活用してエンジンブレードの損傷度をリアルタイムで把握することや故障タイミングを予測することが可能となり、メンテナンス頻度の最適化や業務効率化、コスト削減を実現しました。
デジタルツインの活用で建設現場の状態をリアルタイムに可視化
国内のある大手総合建設会社が中心となり、資機材の位置や稼働状況、ヒトの位置などを含む現場全体をリアルタイムに可視化する現場管理システムが開発されています。
同システムはすでに現場に導入されており、カメラやIoTセンサーなどから得られた情報を元に、現場事務所や建設会社の本・支店などの遠隔地から現場の状況を確認するシステムとして活用が進んでいます。
また、デジタルツインは3次元モデルを活用して建築や土木工事の業務効率化・高度化を実現するBIM/CIMにも活用されています。2023年度からは受発注者の生産性を向上させるため、小規模工事を除くすべての公共事業にBIM/CIMの原則適用が開始されており、デジタルツインの活用が進んでいる状況です。
BIM/CIMについて詳しくは「BIM/CIMの現状と展望 原則適用で加速する建設業のデジタル革新」を参照してください。
デジタルツインを取り入れて工場作業者の身体負荷を軽減
ある自動車メーカーは、デジタルツインによりヒトの作業負荷を自動で把握できるようにする技術を開発しました。工場作業者の動きなどの情報から、身体にかかる負荷や安全状態をリアルタイムで分析できる技術です。デジタルツインの導入により、作業者の負荷の軽減、ひいては工場における3K環境の改善につながると期待されています。
サプライチェーンの課題解決と最適化にデジタルツインを活用
デジタルツインの活用は物流分野においても進んでいます。物流業界ではドライバーの時間外労働の上限規制が開始された「2024年問題」を始め、ドライバー不足、ネット販売の普及による配送ニーズの増加など、課題が山積しています。
それらの課題を解決し、物流拠点・在庫の適正化促進を支援するため、デジタルツインを活用してサプライチェーン全体を最適化するサービスの提供が始まっています。
デジタルツイン活用におけるメリット
これらの事例を見てもお分かりのように、デジタルツインの活用により得られるメリットは主に「精度の高いシミュレーションを行うことができる」点にあります。例えばドイツのあるEV車製造企業では、デジタルツインの活用により試作品完成までのプロセスを従来の25%に短縮し18ヶ月での新型車開発を実現すると同時に、予算を9割削減することに成功しました。
また、リアルタイムで状況を把握することができるため、従業員の健康状態を把握し健康経営を促進することや、適切な点検時期を設定して製品の故障を未然に防ぐ予防保全を実施することもできます。
さらに、シミュレーション結果から将来の展開を予測し、サプライチェーンを最適化し適正在庫を確保したり、業務の効率化を図りコストダウンを実現することができます。
デジタルツイン活用における課題
一方、今後デジタルツインの活用を一層進展する上ではいくつかの課題もあります。
まずは導入費用が高額になりやすいことがあげられます。実際にデジタルツインの開発、3次元モデルのレンダリング処理、シミュレーション時の解析などを行うには処理能力の高いGPUなどの高性能コンピューティング環境が必要となるためです。
また、業務、事業においてデジタルツインを幅広く活用するためには多数の関係会社による利用が前提となります。そのため、データ共有やロケーションフリーの仕組みを整える必要もあります。ただし、特にクラウドサービスを使用する場合にはセキュリティリスクも課題となるでしょう。
さらに、デジタルツインの活用には高度な技術力が必要であることも課題の1つです。3次元モデルやデジタルツインの開発など、活用において技術力が必要となるのはもちろんですが、それ以外の部分、例えばGPUサーバーやネットワーク・インフラを含む実行環境の構築や保守運用においても幅広く高度な技術力が必要です。そうした本業以外の環境構築、保守運用の部分でも高い技術力や人的リソース、コストが必要となることは押さえておきましょう。
デジタルツインの活用環境に「VDIクラウド for デジタルツイン®」という選択肢
NTTPCが提供する「VDIクラウド for デジタルツイン®」は、建設業・製造業向けのデジタルツイン活用プラットフォームです。
案件・プロジェクトの規模に合わせた台数・期間での導入が可能で、柔軟かつ適切な初期投資での導入ができます。
また、在宅勤務や出張先、建築/生産現場などどこからでもリモートでクラウド上の高性能マシンを利用し、3次元モデルの作成やシミュレーションを実行することができます。3次元モデルなどのデータをクラウド上で一元管理すれば、情報共有も容易です。
さらにテナント構築、ネットワーク構築もサポート。構築・運用をアウトソーシングすることで、デジタルツインを活用した本業に専念することができます。
当サービスは、クラウドサービスに関する情報セキュリティ管理策のガイドライン規格である「ISO/IEC 27017」認証を取得※。国際規格に準拠した情報セキュリティ体制を構築し、継続して改善に取り組んでいると認められています。
デジタルツイン環境を構築したいが技術的な敷居が高い、デジタルツインの導入費用を抑えたい、などをお望みの場合には、「VDIクラウド for デジタルツイン®」を選択肢の1つに加えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、現実世界のヒトやモノの双子(ツイン)をデジタル世界に構築する「デジタルツイン」について解説しました。
デジタルツインを活用した仮想世界でのシミュレーションには、現実世界で行う従来のシミュレーションとは異なり、周辺環境をも含む検証・分析をリアルタイムで素早く実行できるというメリットがあります。
そうしたメリットもあり、すでに建設現場、生産現場、サプライチェーンなどで活用が進んでいます。
デジタルツインの活用により、健康経営の促進、予防保全、業務の効率化、在庫の適正化、ひいてはコストダウンなど様々なメリットを享受することができます。
導入には開発・導入費用、セキュリティなどの課題もありますが、特に建設業や製造業においてIT活用による業務改善を目指している場合には、是非デジタルツインの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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