生成AIをはじめとするAI(人工知能)の普及拡大により、AI処理を担うGPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)の発熱量と消費電力は、世代を追うごとに増大しています。NVIDIA DGX™ B200に搭載されるB200 GPUの最大消費電力は1,000Wに達し、NVIDIA GB200 NVL72のようなラックスケール構成では、フルロード時の総電力が約120kWにのぼるとされており、高電力化しています。
空冷方式は汎用的なサーバー運用を長く支えてきた方式であり、今後も中密度のITインフラを担う方式として広く使われ続けると見込まれます。一方で、ラック密度が数十kWを超えるAI基盤領域では、冷却液を用いて熱を除去する「水冷方式」を組み合わせる構成が増えています。水冷データセンターは、サーバールームに冷却液を持ち込むという発想自体が従来の設計とは異なるため、導入には設備・運用の両面で固有の検討事項が伴います。
本記事では、水冷データセンターの基本的な考え方、空冷との違い、DLC(Direct Liquid Cooling:直接液冷)・液浸冷却・リアドア型といった主要な冷却方式の特徴と使い分け、企業が導入時に確認すべき検討ポイントを整理します。あわせて、NTTPCコミュニケーションズがコンテナ型データセンターを活用して取り組む水冷GPU基盤の検証事例についても紹介します。
水冷データセンターとは?空冷方式との違いを整理する
水冷データセンターとは、サーバーや高性能GPUから発生する熱を、空気ではなく冷却液を用いて取り除く方式を中核に据えたデータセンターを指します。冷却液をサーバー内部の発熱部位、液浸用の専用槽、ラック背面などで循環させることで、熱を効率よく外部へ排出し、高密度な機器を安定して稼働させる構成が可能です。
従来のデータセンターでは、サーバールーム全体を冷やしたうえで、ラック前面から冷風を取り入れ、背面から温風を排出する「空冷方式」が標準的な構成です。空冷は構成がシンプルで管理しやすく、汎用業務システムや中密度のITインフラを支える主流の方式として広く用いられています。一方、水冷方式は熱の伝達効率に優れ、限られた空間でより多くの発熱を処理できる特徴があります。両者はワークロードの性質と密度に応じて使い分けます。
なお、本記事では、水冷データセンターに関連する方式として液浸冷却も取り上げます。液浸冷却は水以外の絶縁性冷却液を用いるため、厳密には「液冷」に分類されます。
水冷データセンターの基本的な仕組み
水冷データセンターでは、サーバー内部やラックに設けられた冷却経路に冷却液(純水や専用の冷媒など)を循環させ、熱源で吸収した熱を外部へ排出します。冷却液の温度・流量・圧力を管理し、熱を別の媒体へ移す役割を担うのがCDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配装置)です。
CDUを介した代表的な排熱方式には、次の2つがあります。
- Liquid-to-Air:サーバー側の冷却液が運んだ熱をCDUやラジエーターで空気へ移す方式。InRow空調などと組み合わせるため、外部の冷却水系を必要としない。
- Liquid-to-Liquid:サーバー側の冷却液が運んだ熱を、CDUで建屋側の冷却水へ移す方式。両ループを物理的に分離したまま熱交換し、建屋側ループから冷却塔やドライクーラー等へ排熱する。
水などの液体は空気よりも体積あたりの熱容量が大きく、熱を効率よく運べる性質があります。そのため、同じ発熱量を冷やすために必要な冷却設備の規模を抑えやすく、1ラックあたりに搭載できる機器の密度を高められます。AI学習や高性能計算(HPC)のように、特定の機器に発熱が集中するワークロードは、水冷方式との親和性が高いといえます
空冷方式と水冷方式の比較
両者の主な違いを観点ごとに整理すると、次のようになります。
| 観点 | 空冷方式 | 水冷方式 |
|---|---|---|
| 熱の運び方 | 空気で熱を運搬 | 冷却液で熱を運搬 |
| 対応できるラック密度の目安 | 従来は5〜10kW級、近年は10〜30kW帯への対応も増加 | 数十kW〜100kW超/ラックに対応可能 |
| 設備構成 | サーバールーム空調(CRAH/CRAC)が中心 | 冷却液配管・熱交換設備に加え、方式に応じてInRow空調または建屋側の冷却水・排熱設備が必要 |
| 設置の柔軟性 | 既存サーバールームに導入しやすい | 配管・漏水対策など事前設計が必要 |
| 電力効率(PUEの設計例) | 従来型設計では約1.4〜1.6 | 統合液冷設計では約1.10 |
| 保守の前提知識 | 既存IT運用の延長 | 配管・冷却液・漏水対応の知見が必要 |
※ PUE(Power Usage Effectiveness):データセンターの電力使用効率を示す指標。値が1.0に近いほど効率が良い。
※ 上表のラック密度・PUE値は、業界資料・メーカー公表値をもとにした目安です(参考:Uptime Institute Global Data Center Survey 2025、ASHRAE AI Data Center Design Principles)。実際の値は構成・運用条件により変動します。
この表から読み取れるのは、空冷方式は構成のシンプルさと既存設備との親和性に強みがあり、水冷方式は高密度かつ高発熱なワークロードに対して構造的に有利だという点です。すべての用途で水冷が必要になるわけではなく、AI用途であっても中密度までの構成であれば空冷で運用されるケースが現在も一般的です。NVIDIA Blackwell世代のラックスケール構成のように、ラック密度が数十kWを超える基盤を計画する場合に、水冷が検討対象となります。
なお、空冷と水冷を組み合わせた「ハイブリッド構成」もあります。サーバールーム全体は空冷の枠組みを維持しつつ、特に発熱の大きいGPUノードだけをDLC(直接液冷)化する、あるいはラック背面にリアドア型熱交換器を追加して局所的に冷却能力を増強する構成は、既存データセンターに水冷を段階的に取り入れるアプローチとして、実運用で広く採用されています。
水冷の主要な冷却方式 ― DLC・液浸冷却・リアドア型の特徴と使い分け
水冷データセンターで採用される冷却方式は1種類ではありません。代表的なのはDLC、液浸冷却、リアドア型熱交換器の3方式で、それぞれ適する用途や運用の前提が異なります。

DLC(Direct Liquid Cooling:直接液冷)
DLCは、サーバー内のGPUやCPUに金属製のプレートを直接取り付け、その中に冷却液を流して熱を取り除く方式です。発熱の大きい部品を集中的に冷やせるため、高密度なAIサーバーの冷却に用いられます。
サーバー全体を液冷にする必要はなく、GPU・CPUは液冷、メモリや電源などは空冷で対応するハイブリッド構成も採用されています。

液冷式NVIDIA Blackwellコンピュートトレイ(引用:NVIDIA)
NVIDIAは、GB200 NVL72などのラックスケール構成でDLC採用を前提とした設計を公表しています。こうした高密度AI基盤を計画する企業にとって、DLCへの対応可否は、サーバーやデータセンターを選ぶ際の確認事項になります。
▶︎ NVIDIA GPU最新動向|Blackwell世代GPUとRubinロードマップから考える次世代AIインフラ【2026年】
液浸冷却(Immersion Cooling)
液浸冷却は、サーバーそのものを電気を通さない冷却液に沈めて冷やす方式です。専用の槽(タンク)にサーバーを収めて運用します。サーバーファンを減らせるため、ファンの消費電力や騒音、振動を抑えやすい点が特徴です。
一方で、サーバーが液体に浸かった状態になるため、保守の手順や冷却液の調達・廃棄、サーバーメーカーの保証範囲など、事前に確認すべき項目が多い方式でもあります。導入を検討する場合は、まずサーバーメーカーが液浸冷却に正式対応しているかを確認します。
リアドア型熱交換器(RDHx:Rear Door Heat Exchanger)
リアドア型熱交換器は、ラックの背面ドアに水冷の熱交換器を組み込み、サーバーから出る温風を冷却液で冷やす方式です。サーバー本体は空冷のまま利用できるため、既存サーバーを活かしながらラック単位で冷却能力を強化できます。
対応できる発熱量は製品や利用条件によって異なるため、導入時には想定するラック密度に対応できるかを事業者に確認する必要があります。
方式にかかわらず、企業が導入を検討する際は、サーバーとの適合性、設備の改修範囲、漏液時の対応、保守体制を事業者に確認しましょう。
水冷GPUインフラ導入時に企業が確認すべきポイント
水冷GPUインフラの利用形態は、自社の建屋や敷地に設備を設置する方式と、データセンター事業者のサービスを利用する方式に分かれます。次にポイントを整理します。
自社設置・コロケーション/ハウジング・クラウドの選び方
水冷GPUインフラを利用する形態は、大きく次の3つに分けられます。
- 自社設置:自社の建屋や敷地にサーバーを設置する形態。データ主権の確保とリソースの専有を両立できる
- コロケーション/ハウジング:事業者の液冷対応ラックを借り、自社サーバーを設置する形態。建屋・電源・冷却設備は事業者側が用意するため、設備投資を抑えながら高密度GPUの運用環境を確保できる
- クラウド:事業者のGPUインスタンスを従量課金で利用する形態。液冷対応基盤で提供されるサービスも含まれ、初期投資を抑えやすく、必要な期間だけ利用できる
機密データの取り扱い、稼働率、年間総コスト、社内の運用体制を整理したうえで、自社の用途に合った形態を選びます。学習はコロケーション、推論はクラウドGPUといった形で、複数形態を組み合わせる選択肢もあります。
また、施設形態としてはコンテナ型データセンターの活用も広がっています。冷却設備や配管を含めて一体で設計されるため、水冷の導入で必要となる事前設計の負担を抑えやすい形態です。自社敷地に設置すれば新規建屋の構築と比較して導入期間・工事負担を抑えられるほか、事業者が運営するコンテナ型データセンターを利用する形態もあります。仕組みやコスト、導入時に関係する法規制については、次の記事で詳しく解説しています。
▶︎ コンテナ型データセンター入門ガイド|仕組み・コストから法規制まで、導入前に知っておくべき基礎知識
データセンター事業者の選定で確認する事項
コロケーション/ハウジングやクラウドGPUを利用する場合、事業者選定で確認しておきたい主な観点は次の通りです。
- 対応する液冷方式:DLC・液浸・リアドア型のいずれに対応し、自社サーバー機種と整合するか
- 対応可能なラック密度:1ラックあたり何kWまで対応するか、Blackwell世代のラックスケール構成に対応できる余力があるか
- PUE・pPUE(partial Power Usage Effectiveness:データセンター内の特定範囲の電力効率)の実績値:公表値と実測値の双方を確認し、自社の要件を満たしているか
- SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)・冗長構成:CDU停止時の運用継続体制が整備されているか、24時間365日の保守対応が提供されているか
拠点と回線:拠点の所在地や災害リスク、自社拠点・主要クラウドとの接続回線および帯域が要件を満たしているか - 実績と検証データ:水冷GPUの稼働実績、検証プロジェクトの成果・経験があるか など
事業者によって、支援の進め方や関与の度合い、サポート体制は大きく異なります。そのため、上記のポイントを確認したうえで、担当者とのコミュニケーションの取りやすさなども含め、総合的に判断すると良いでしょう。
NTTPCが進める水冷GPU基盤への取り組み
最後に、NTTPCが取り組む水冷GPU基盤の検証事例を紹介します。NTTPCは、株式会社ゲットワークス(以下、ゲットワークス社)・株式会社フィックスターズ(以下、フィックスターズ社)と共同で、コンテナ型データセンターと水冷GPUサーバーを組み合わせた検証プロジェクトを進めています。
越後湯沢でのコンテナ型データセンター検証成果
今回の検証は、2025年10月6日から11月14日まで、新潟県越後湯沢にあるゲットワークス社の20フィートコンテナ型データセンターで実施されました。水冷構成のDell PowerEdge XE9640と、空冷構成のXE8640を比較しました。

ゲットワークス社のコンテナ型データセンター(同社データセンターにてNTTPC撮影)
検証で確認された主なポイントは、次の3点です。
- 冷却効果:最大負荷時のGPU平均温度が、空冷構成のサーバーと比較して摂氏15度程度低減した
- 電力効率:コンテナ内のサーバールームを測定範囲とするpPUEで1.114を記録した(pPUEは空調・照明を含む消費電力をICT機器の消費電力で割った値で、1.1前後が優秀とされる水準)
- 安定稼働:CDU(冷却液分配装置)をはじめとする冷却設備が適正に機能し、GPUが安定して稼働した
詳細は次の記事をご覧ください。
▶︎ 水冷GPUサーバーで拓く日本のAI基盤 ~3社連携による検証プロジェクトの取り組み~
▶︎ 水冷GPUサーバーの運用効率向上のPoCに成功し、国内での商用利用に前進
まとめ
本記事では、水冷データセンターの基本的な考え方、DLC・液浸冷却・リアドア型といった主要な冷却方式、企業が導入時に確認すべきポイント、そしてNTTPCの3社連携による実際の検証事例までを整理しました。Blackwell世代以降の高密度GPUを採用するAI基盤では、1ラックあたりの電力密度が従来水準を上回るケースが増えています。空冷方式は今後も汎用業務や中密度なインフラを支える主流であり続けると見込まれる一方、AI学習・推論基盤や生成AI関連のサーバーを中心に据える組織では、水冷を早い段階から検討する必要性も高まっていくでしょう。
NTTPCは、NVIDIAエリートパートナーとして、GPUハードウェア・ネットワーク領域の知見をもとに水冷GPU基盤の導入をご支援します。ゲットワークス社・フィックスターズ社との3社連携による検証プロジェクトで蓄積したノウハウを活用し、お客さまの規模や用途に合わせた構成をご提案いたします。水冷データセンターの導入をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
※NVIDIA、NVIDIA Blackwell、NVIDIA DGXは、米国およびその他の国におけるNVIDIA Corporationの商標または登録商標です。
※Dell、Dell PowerEdgeは、米国およびその他の国におけるDell Inc.の商標または登録商標です。
※本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。製品仕様・サービス内容・市場動向等は予告なく変更される場合があります。