図解でわかるSD-WAN!ネットワーク安定化など中小企業の導入メリット

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図解でわかるSD-WAN!ネットワーク安定化など中小企業の導入メリット
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「最近、社内のネットワークが遅くて仕事に支障が出る」「テレワークが増えて通信環境が不安定」「クラウドサービスを使いたいけれどセキュリティが心配」といった悩みを抱えている、中小企業の情報システム担当者やネットワークインフラ担当者の方は多いのではないでしょうか。

これらの課題を解決する選択肢の1つとして、SD-WANという技術が注目されています。これは、従来のネットワーク構成と比べて柔軟性と拡張性に優れ、通信の最適化やセキュリティ強化を実現できる仕組みです。

この記事では、SD-WANの基本的な仕組みを図解で説明するとともに、中小企業での導入メリットや製品選びのポイントについてわかりやすく紹介します。

SD-WANとは?基本的な仕組みを従来のネットワークと比較解説

SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)とは、物理的なネットワークをソフトウェアで制御するSDNの技術を、拠点間接続やクラウド接続などのWANに用いることで、仮想的なネットワークを構築・管理する技術や概念のことです。
一般的に、企業のネットワークは専用線やブロードバンド回線、モバイル回線などを用いてWANを構築しています。SD-WANでは、これらの物理回線をアンダーレイ回線として使用しながら、回線種別に依存することなく、オーバーレイにより仮想のWANを確立します。
従来のネットワークでは、特定の回線に依存した通信が主流でしたが、SD-WANによって回線の種別に関係なく、柔軟な通信が可能になります。これにより、特定の回線にアクセスが集中することによる通信の遅延を改善できるのです。

「SD-WANは全国展開している大企業向けの技術」というイメージを持たれがちですが、実際には中小企業の規模に適した低コストのサービスも多数登場していて、導入のハードルは以前よりも下がりました。
まずは、従来のネットワークとSD-WANの違いを図解で確認してみましょう。

【図解】従来のネットワーク

往来のネットワーク

従来の企業ネットワークは、拠点間の通信を閉域VPNや専用回線等のWANで接続しますが、オフィス拠点やテレワークからのトラフィックが一度拠点となるデータセンターに集中するため、近年のクラウドサービスの利用拡大などによる通信量の増加に対応できず、回線の逼迫が発生してしまいます。従来のネットワークは、「Web会議の通信が途切れる」「クラウドアプリケーションの動作が重い」といった問題が起こりやすい構造といえるでしょう。

回線の逼迫による通信トラブルは、業務効率の低下を招くほか、情報システム担当者の業務負担も増えるなど、多くの企業で課題となっています。

【図解】SD-WANのネットワーク

SD-WANのネットワーク

SD-WANを導入したネットワークでは、各拠点からの通信やテレワークの通信を仮想的に一元管理できます。アクセス環境を問わず、通信の内容や優先度に応じて複数の回線を自動的に使い分けることで、ネットワーク全体の混雑を効果的に緩和する仕組みです。
また、クラウドサービスなどの通信に、データセンターや本社などを経由せず、拠点のインターネット回線から直接アクセスさせる「ローカルブレイクアウト」も可能です。

アプリケーションレベルで通信をコントロールできるので、クラウドサービスの利用拡大やテレワークの増加によるセキュリティの不安も解消できます。また、既存のインターネット回線のまま導入できるので、導入コストが低価格に抑えられることも魅力です。

SD-WANとVPNの違い

SD-WANが複数の回線の集合体であるのに対して、VPNは基本的に2つの拠点間を結びます。


VPNは「Virtual Private Network」の略で、インターネット上に仮想的な専用回線を作る技術です。データのカプセル化、暗号化、認証、トンネリングの技術により、安全な通信を実現できます。VPN接続の種類には、インターネットVPNやIP-VPNなどがあります。
一方、SD-WANは複数の回線をソフトウェアで制御し、通信状況に応じて最適な経路を自動で選択するネットワーク技術です。アプリケーションごとに通信の優先度を設定したり、障害時には自動で予備回線に切り替えたりすることができ、より安定した通信を実現します。
また、セキュリティ機能との連携(SASEなど)にも対応しやすく、大規模なネットワークやクラウド活用が進む企業に適しているでしょう。

SD-WANとSASEの関係

SASE(サシー)とはSecure Access Service Edgeの略で、ネットワーク機能とセキュリティ機能を統合し、クラウド上で提供しようというネットワークセキュリティモデルです。SASEの実現に必要な構成要素の1つがSD-WANです。

SASEは、SD-WANのようなネットワーク最適化の機能に加えて、セキュリティ機能を一体化します。例えば、ファイアウォール、ゼロトラストアクセス(ZTNA)、Webフィルタリング、データ漏えい防止(DLP)など、従来は個別に導入していたセキュリティ機能を統合し、クラウド上で提供しているのです。

なぜSD-WANが選ばれている?中小企業にうれしい5つのメリット

SD-WAN

企業のネットワークにSD-WANを導入すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。特に、中小企業にとって魅力的な5つのメリットを紹介します。

<SD-WAN導入の5つのメリット>

  • 回線のつながりにくさ、速度低下が改善する
  • アプリケーションごとの回線の使い分けでセキュリティを担保
  • 閉域網とインターネットの併用によるコスト削減
  • 通信状況の管理がしやすい
  • 新たな拠点のネットワーク構築が容易

回線のつながりにくさ、速度低下が改善する

SD-WANを企業のネットワークに導入すると、アプリケーションやトラフィックの種類に応じて利用する回線を自動的に使い分けて、通信速度が最適化されます。

例えば、ある小売業の企業では、本社と店舗を結ぶネットワークで、昼休みや夕方の時間に回線の混雑が発生し、「POSの反応が遅れる」「オンライン発注ができない」といったトラブルが発生していました。これらは、小売業の店舗運営にとって優先度の高いトラフィックです。SD-WANによって、リアルタイム性が求められる通信に安定した専用線を割り当てることで、回線のつながりにくさや速度低下の改善が期待できます。

アプリケーションごとの回線の使い分けでセキュリティを担保

SD-WANは、アプリケーションごとに通信を識別して、回線を使い分けることができます。例えば、顧客情報や財務データを扱う基幹システムのような機密性の高いアプリケーションの通信には、安全性の高い専用線を割り当てることで、セキュリティレベルを担保します。

セキュリティリスクの少ないSaaSやクラウドサービスなどの通信は、センターに集約せずにインターネット回線に直接逃がす「インターネットブレイクアウト」によって、センター拠点へのトラフィックの集中を防ぎます。このような回線の使い分けによって、回線の逼迫を防ぎながら、セキュリティ水準を保つことができるのです。

閉域網とインターネットの併用によるコスト削減

SD-WANの回線を自動的に使い分ける機能により、インターネットを経由せず特定の組織やグループ内だけで利用できる閉域網のネットワークと、インターネット回線を併用できます。
従来のネットワークの場合は、企業全体の通信量の増加に対して、高コストな閉域網の回線を拡張する必要がありましたが、SD-WANならセキュリティリスクの高い通信にだけ閉域網を利用するという使い分けが可能です。

柔軟な回線選択により、閉域網とインターネットを併用してコストを削減できることは、限られた予算でネットワークを運用する中小企業にとって大きなメリットになります。

通信状況の管理がしやすい

従来のネットワーク管理では、各拠点の通信状況を把握することが難しく、問題発生時の原因特定にも時間を要することが課題でした。特に、専任の担当者がいない中小企業での管理負担は大きいものです。
SD-WANなら、管理画面から全拠点のトラフィックの状況をリアルタイムで可視化できるので、通信量の推移、回線の利用状況、応答速度などの情報を一元的に管理して、問題の早期発見と対応が可能になります。

また、通信量の増加傾向を事前に把握できるため、回線の混雑が発生する前に対策を講じることができるでしょう。例えば、特定の時間帯に通信量が集中するなら、その時間帯だけ追加の回線を自動的に利用するといった対策です。このような予防的な管理が可能になることも、メリットの1つといえます。

新たな拠点のネットワーク構築が容易

例えば、事業拡大に伴い新たな支社や営業所を開設する際、従来のネットワーク構築では、専門的な知識を持つ技術者が現地に赴いて設定作業を行う必要がありました。これには時間とコストがかかり、特に遠隔地への拠点展開においては大きな負担となります。

SD-WANの場合、新拠点の現地での作業はSD-WAN機能を持つルーター機器の接続のみで、詳細な設定はリモートで行えるため、ネットワーク構築の作業を効率化できます。新拠点の開設にかかる時間とコストを削減し、短期間で統一された品質のネットワーク環境の構築ができるのです。事業展開のスピードアップを図りたい中小企業にとって、大きなメリットになるでしょう。

SD-WAN製品を選ぶ時のチェックポイントは?

SD-WAN製品を選ぶ時のチェックポイントは?

SD-WANの導入を検討する際には、自社のネットワーク環境や課題に適した製品を選ぶことが大切です。ここでは、製品選びで特に重視したい4つのポイントをご紹介します。

<SD-WAN製品を選ぶ時のチェックポイント>

  • 導入のしやすさ
  • セキュリティの高さ
  • 運用のしやすさ
  • コスト

導入のしやすさ

既存のネットワーク回線を変更することなくSD-WANを導入できるかは、製品を選ぶ際の重要なポイントです。回線の種別に依存することなく仮想的なネットワークを構築できる、オーバーレイ型の製品を選ぶといいでしょう。

また、専門的な知識がなくても初期設定や拠点の追加ができる製品を選ぶことで、情報システム担当者の負担を減らし、効率的にネットワーク管理ができます。具体的には、SD-WAN機器を設置して接続するだけで、自動的に設定をダウンロードして、ネットワークを構成できる製品がおすすめです。

セキュリティの高さ

SD-WANを導入する際には、セキュリティ機能の確認が必要です。特にインターネット回線を利用する構成では、外部からの攻撃リスクが高まるため、十分なセキュリティ対策が求められます。通信内容を暗号化する機能や、コントロールパネルから不適切な通信を制御する機能のほか、SASE商材と組み合わせて導入できるかなどを確認しましょう。

運用のしやすさ

SD-WANの設定変更をしたい場合に、ベンダーに申込みをして変更手続きをしなくてはいけない製品だと、運用の工数がかかってしまいます。ネットワークの状態確認や設定変更を行えるコントロールパネルを提供している製品なら、手続きにかかる期間を削減できるでしょう。

また、アプリケーションごとのトラフィック状況を確認できる製品なら、従業員から回線の遅延などの報告があった場合に、通信状況を確認して対応できます。通信量の増加傾向を把握して、計画的な改善策を講じることも可能です。

コスト

SD-WAN導入時の初期費用や月額利用料だけでなく、保守や導入支援などのオプション料金や、将来的な拡張時のコストも含めて、コストを総合的にチェックします。
一部の拠点間でSD-WANの効果を検証してみたい場合には、初期費用を抑えて、スモールスタートできる製品を選ぶのがおすすめです。

SD-WANでネットワーク運用をもっと効率的かつ安全に!

クラウドサービスの利用拡大やテレワークの定着により、従来のネットワーク構成では対応しきれない課題が増えています。SD-WANは現代の働き方に対応した柔軟で効率的なネットワーク環境を実現する技術として、今後ますます注目が高まるでしょう。

「通信の遅延で業務効率が落ちている」「テレワーク環境のセキュリティが不安」「ネットワーク管理の負担が大きい」といった課題を抱えているなら、SD-WANの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
重要なのは、自社の課題に適した製品を選び、段階的に導入を進めることです。まずはベンダーに相談し、現在のネットワーク環境の診断を受けることから始めてみることをおすすめします。