クラウド活用の拡大やSaaSの定着、ハイブリッドワークの常態化により、企業ネットワークやセキュリティ環境は年々複雑化しています。拠点・クラウド・リモート端末といった監視対象が増える一方で、設定や運用は「継ぎ足し」のまま積み重なり、全体像を把握しづらい状態に陥りがちです。
こうした環境変化の中、人員が増えにくい情シス部門では、障害対応や変更対応、アラート確認といった「止めないための運用」に多くの時間を割かざるを得ません。その結果、本来取り組むべき改善や最適化に手が回らず、対応の属人化や復旧の長期化、運用品質のばらつきにつながるケースも少なくありません。
このような状況では、「人を増やして解決する」よりも、「運用そのものを見直し、少人数でも回る状態を設計する」ことが現実的な打ち手となります。本記事では、情シス部門が抱えやすいネットワーク/セキュリティ運用負荷の実態を整理したうえで、人手不足でも回るために必要な要件(統合監視、初動対応の自動化、通知の整理、運用の標準化)を具体化します。あわせて、自社運用と運用支援型サービスという2つの選択肢を比較し、どのような違いがあるかを解説します。

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情シスが抱えるネットワーク・セキュリティ運用の課題
情シス(情報システム部門)が担うネットワーク・セキュリティ運用は、近年ますます複雑化しています。クラウドサービスの利用拡大、SaaSの増加、リモートワークや拠点分散の進展により、監視・管理すべき対象は大きく広がりました。一方で、情シスの人員体制は大きく変わらず、限られた人数でネットワークとセキュリティを止めずに守り続ける運用が求められています。こうした環境下では、障害対応やアラート確認、設定変更、例外対応といった日常業務が増え続け、情シスは常に「運用を回すこと」そのものに追われがちです。その結果、DX推進やクラウド移行、セキュリティ高度化といった本来取り組むべき戦略的な取り組みに十分な時間を割けない状況が生まれています。
ここでは、情シス部門におけるネットワーク/セキュリティ運用の現場で、具体的にどのような問題が起きているのかを整理し、運用負荷が高まりやすい要因を見ていきます。
日常業務で積み上がる運用負荷
情シスの残業は、日々の運用が少しずつ膨らむことで発生しやすい傾向にあります。
特に負荷が積み上がりやすい要因として、次のような場合が考えられます。
- 積み重なる変更対応
通信やアクセスのルール変更、例外申請、ポリシー改定、端末・アカウント対応など、放置できない運用上のメンテナンスが細かく発生。 - 頻回なトラブル対応とトラブルの複雑化
「遅い/つながらない/落ちた」といった問い合わせが来ると、原因がネット回線なのか、社内の機器なのか、外部サービス側なのか、ログインの仕組みなのかをまず切り分ける必要あり。最初の段階だけでも確認する場所が多く、状況整理だけで時間がかかる傾向。 - 監視・通知の確認作業に時間がかかる
例えば、ログやアラートの画面・通知が製品や拠点ごとに分かれていると、状況把握のために画面を行き来する作業が増え、確認だけで工数が膨張。
このような要因により、今後につながる改善作業よりも「今日の運用を回すこと」が優先されやすくなります。
オンプレ前提の設計のまま、クラウド利用とテレワークの増加
ネットワークの仕組みの多くは、もともと「本社に人が集まって働く」前提で作られています。しかしそこにクラウド利用や在宅勤務が増えると、従来の形のままでは対応しきれず、継ぎ足しの設定が増えていきます。その結果、起きやすいのが次のような状態です。
- 全体像が見えない
拠点・在宅・クラウドがどうつながっていて、どの通信がどの設定(VPN/アクセス制御など)に影響されているのかが把握しづらい。 - トラブル時に状況整理から始まる
原因を探す前に、「どこが関係していそうか」を洗い出す作業に時間がかかる。 - 復旧までの時間が伸びやすい
状況整理が長引くほど、復旧までの時間が伸びやすくなる。
逼迫した人員体制
上記のように業務が複雑化する中でも人員体制が変わらないこともあるでしょう。中には、情報システム業務を1人またはごく少人数で担う、いわゆる「ひとり情シス」の体制で運用している企業もあります。人が増えないまま運用が増えると、現場では次のことが起きやすくなります。
- 仕事が特定の担当者に集中する
固定の担当者が対応し続けるため、手順が共有されにくく属人化しやすい。 - 改善が後回しになる
目の前の対応(問い合わせ・設定変更・トラブル復旧)で手一杯になり、前向きな取り組みに時間を使えない。
これらが重なることで、情シスの運用は個々の工夫や努力では吸収しきれず、構造的に負荷が高まり続ける状態に陥りやすくなります。
担当者の知識・リテラシー・スキル不足
人員が限られている状況では、ネットワークやセキュリティの専任担当を十分に確保できず、インフラに不慣れなメンバーが他業務と兼任で対応しているケースも少なくありません。
日々の運用に追われる中で、クラウドサービスやゼロトラスト、SASE といった新しい技術・概念を体系的にキャッチアップする時間を取りづらい、という現実もあります。
その結果、次のような課題が生じやすくなります。
- 新しい仕組みが「ブラックボックス化」する
設定変更の影響範囲が分かりづらく、「どこまで触ってよいか分からない」状態になりがちです。 - 障害対応に時間がかかる
ネットワーク/セキュリティ/クラウドサービスなど複数領域の知識が必要になるものの、担当者だけではカバーしきれず、原因特定までの時間が延びやすくなります。 - 外部ベンダーとのやり取りが非効率になる
状況整理やログの提示の仕方が分からず、やり取りが往復してしまい、結果として復旧が遅れることがあります。
こうした知識・リテラシー・スキルの不足や偏りは、「詳しい人しか触れられない領域」を増やし、担当者の心理的な負担や属人化を一層強めてしまいます。人手不足とあわせて、運用全体のリスク要因として捉えておく必要があります。

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人手不足でも回るネットワーク・セキュリティ運用の要件

人手不足が続く中で、ネットワークやセキュリティ運用を人的努力だけで回し続けることには限界があります。属人的な対応や場当たり的な運用を続けていては、負荷は減らず、トラブル時の影響も大きくなりがちです。そこで重要になるのが、ネットワークとセキュリティを一体として捉え、運用そのものを設計し直すことです。監視・初動対応・通知・運用ルールを個別最適のまま積み上げるのではなく、少人数でも安定して回る形に整理することで、運用品質と継続性を両立しやすくなります。
ここでは、情シス部門が実務に落とし込みやすい観点から、人手不足でも回るネットワーク/セキュリティ運用に求められる要件を整理して紹介します。
統合監視・可視化:ネットワークとセキュリティを一元的に把握する
統合監視とは、ネットワークやセキュリティ、拠点ごとの状態などを、1つの画面(ダッシュボードなど)で横断的に把握できるようにすることです。個別の製品や拠点ごとに監視画面が分かれている状態では、トラブル発生時に原因を調べる前段階として「状況を整理する作業」だけで多くの時間を要してしまいます。
統合監視を導入することで、次のような効果が期待できます。
- 状況把握が速くなる
「どこで何が起きているか」をまず1か所で確認できるため、調査の初動を迅速に行いやすくなります。 - 画面の行き来が減る
ネットワークとセキュリティを別々に確認する必要がなくなり、複数画面を往復する手間が軽減されます。 - 属人化しにくくなる
「まずここを見る」という共通の起点ができることで、特定の担当者だけが状況を把握できる状態から抜けやすくなります。
一方で、統合監視を有効に機能させるためには注意点もあります。監視対象の定義(何を監視に含めるのか)や、ダッシュボードの運用ルールが曖昧なままだと、情報が整理されず、かえって「見づらい」「結局見なくなる」といった状態に陥る可能性があります。そのため、統合監視を導入する際には、監視対象の範囲と確認ルールを明確にしたうえで運用設計まで含めて整えることが重要です。
初動対応の自動化
初動対応の自動化とは、トラブルや異常が起きたときに、「状況を把握するための要点(いつから/どこで/影響範囲など)」を、あらかじめシステムで自動的に出せるように設定しておくことです。
自動化がない場合、アラート通知を受け取った後に、複数の監視画面やログを確認しながら影響範囲を整理する必要があります。一方で初動対応を自動化していれば、通知と同時に「10:32~/拠点A/回線Xでエラー増加/影響:拠点Aユーザー」といった形で、状況の要点が一目で分かる情報を受け取ることができます。
これにより、一次切り分けにかかる時間を短縮できるだけでなく、担当者ごとの経験や勘に依存しがちな判断のばらつきを抑える効果も期待できます。結果として、夜間や休日対応、引き継ぎ時の負担も軽減しやすくなります。
通知の整理
人手不足の現場では、届いた通知を「とりあえず確認する」という行動が積み重なり、業務が分断されやすくなります。通知そのものが多い状態では、重要度の低いアラートにも反応せざるを得ず、結果として割り込み作業が増え、集中して取り組む時間が削られてしまいます。そのため、通知はすべてに即対応する前提ではなく、扱い方をあらかじめ分けておくことが重要です。例えば、通知を次のように分類して運用します。
- 参考情報(見に行かない)
傾向把握を目的とした通知で、原則として対応アクションが発生しないもの。
(例:一時的な軽微な遅延や瞬間的なエラー増加は、通知のみとし対応しない) - 営業時間内に確認する(今すぐではない)
業務影響は限定的で、即時対応を必要としないもの。
(例:夜間は通知のみ受け取り、原則として翌営業日に確認・対応するルールを設ける) - 人の判断が必要(業務影響・例外対応)
自動判断が難しく、影響範囲や優先度を人が判断する必要があるもの。
(例:一部拠点・一部ユーザーに限られる場合は様子見、全社や基幹業務に及ぶ場合は即対応とするなど、影響範囲に応じて対応方針を分ける)
このように「見に行かない通知」を意識的に増やしていくことで、通知を確認する回数そのものが減り、割り込み作業を抑えやすくなります。
運用フローと役割分担の標準化
見える化や自動化を進めても、最後に残りやすいのが「人の判断のバラつき」です。そこで必要なのが標準化です。
ここで言う標準化とは、トラブルや通知が来たときに、誰が何をするかで迷わないレベルまで、「対応の型」をそろえることです。
例えば、通知が来た場合の対応の型を次のように決めておきます。
- 一次対応は誰がやるか(受け取る責任者・担当者の明確化)
- 最初に何を確認するか(見るべき情報の固定)
- どこから上に上げるか(エスカレーション体制の強化)
- 外部に依頼するとき何を渡すか(状況・ログ・時刻などの情報共有の型を定義)
特に外部ベンダーと一緒に運用する場合は、どこまで自社でやり、どこから先を依頼するのかをはっきりさせておくほど、トラブル時の行き違いが減りやすくなります。
運用負荷を減らす2つの選択肢:自社運用/運用支援型サービス
ここまで見てきたように、見える化、初動対応の効率化、通知の整理、運用ルールの標準化といった取り組みは、人手不足でも回るネットワーク/セキュリティ運用を実現するうえで重要な要素です。これらを実際に運用へ落とし込む際に、次に検討すべきなのが、運用の担い手を自社で持つか(自社運用)、運用支援を目的とした外部サービスを補助的に活用するか(運用支援型サービス)という選択です。
どちらが適しているかは、情シスの体制や求める役割によって異なります。ここでは、自社運用と運用支援型サービスの考え方と特徴を整理し、それぞれの違いを比較します。
次の通り、両者の比較をまとめました。
| 観点 | 自社運用 | 運用支援型サービス |
|---|---|---|
| 概要 | 自社で仕組みを作って回す | 支援機能を活用して回す |
| 監視(見張り) | 情シスが一次対応を担うことが多い | ダッシュボード+アラート+自動切り分けで省力化(一次対応の負担を減らす) |
| 初動の状況整理 | 情シスが画面を見て調査 | 自動切り分けで情報が整理される |
| 切り分け | 経験に依存しやすい | AI支援により迅速化しやすい(効果は運用設計・契約範囲による) |
| 変更対応 | すべて自社対応 | 範囲・テンプレ・運用設計で省力化(実作業の担い手は契約範囲による) |
| 属人化 | 起きやすい | 抑えやすい |
| 拠点追加 | 例外が増えやすい | 標準化しやすい |
| 情シスの役割 | 実務対応・稼働が中心 | 判断・調整・改善が中心 |
このように運用の仕方で情シスの担当者が対応しないといけない範囲やその頻度に差が生じやすい傾向があります。次にその詳細をご紹介します。
自社運用:機器購入+監視ツールで抱える場合に起きやすいこと
自社運用とは、ネットワーク機器やセキュリティ製品、監視ツールなどを自社で選定・導入し、日々の監視・対応・改善までを情シス自身で行う運用のことです。
この方法のメリットは次のとおりです。
- 運用の自由度が高く、自社事情に細かく合わせられる
- 既存の環境やツールを活かしやすい
一方で、次の点には注意が必要です。
- 設計・設定・改善の作業は情シスの仕事として残る
- 担当者が少ない場合、運用を構築する側の負担が重くなりやすい
運用支援型サービス:可視化・自動切り分け・AI支援で「見る・調べる」を減らす―Prime ConnectONE®
運用支援型サービスとは、ネットワークやセキュリティ運用における負荷を軽減するために、可視化・自動切り分け・AI支援などの機能をあらかじめ組み込んで提供するサービスです。情シスがすべてを個別に設計・運用するのではなく、支援機能を活用することで、日々の運用を省力化しやすくなります。
運用支援型サービス:Prime ConnectONE®イメージ画像(引用:NTTPC)
主なメリットとして、次のような点が挙げられます。
- 状況把握の効率化
ダッシュボード上でトラフィックやセキュリティ状況を横断的に可視化できるため、全体像の把握が容易になります。 - 初動対応の迅速化
故障原因の自動切り分けやAIによる運用支援により、トラブル発生時の一次対応を素早く行いやすくなります。 - 運用作業の省力化
(例:感染端末の隔離など)運用負荷を軽減するための機能が用意されており、情シスが常に手作業で対応する必要を減らすことができます。
※提供される機能や対応範囲は、サービスやプランによって異なります。
運用支援型サービスを効果的に活用するためには、サービス側が担う領域と、自社で判断・対応する領域をあらかじめ整理しておくことが重要です。責任分界点を明確にすることで、支援機能の効果を最大限に引き出しやすくなります。
例えば、Prime ConnectONE®のような運用支援型サービスでは、ネットワークAIエージェントを活用し、ネットワーク(VPN)とセキュリティを横断的に可視化・整理します。これにより、障害時の一次切り分けや日常的な状況確認といった「見る・調べる」作業を大きく削減できます。
また、ネットワーク/セキュリティ運用は、すべてを自社で抱える必要はありません。判断や方針決定は情シスが担い、可視化や一次切り分けなど負荷の高い部分を運用支援型サービスで補完するハイブリッド型運用は、人手不足の中でも無理なく続けやすい現実的な選択だといえるでしょう。
▶︎Prime ConnectONE®の詳細はサービスページをご覧ください。
まとめ ― 「運用を設計し直す」ことで、情シスの時間を取り戻す
本記事では、情シス部門が抱えやすいネットワーク/セキュリティ運用の負荷について、その背景にある構造的な要因を整理したうえで、人手不足でも回る運用の考え方を解説してきました。
日々の設定変更や障害対応、監視・通知対応は、一つひとつは小さくても、積み重なることで大きな負担になります。特に監視対象が増え、構成が複雑化するほど、「止めないための運用」に時間を取られやすくなります。
こうした状況を改善するには、個々の作業を頑張るのではなく、可視化、初動対応の効率化、通知の整理、運用ルールの標準化といった観点から、運用そのものを設計し直すことが重要です。これにより、属人化を抑えながら、少人数でも安定して回る運用に近づけることができます。
そのうえで現実的な選択肢となるのが、負荷の高い運用部分を運用支援型サービスで補完する運用です。どこを自社で担い、どこをサービスに任せるのかを明確にすることで、運用品質を維持しつつ、日々の負担を下げやすくなります。
人を増やせない時代だからこそ、情シスが本来注力すべき判断や改善に時間を使える体制を整えることが、結果として安定したネットワーク/セキュリティ運用につながるでしょう。
NTTPCでは、統合ネットワーク Prime ConnectONE® を通じて、ネットワーク/セキュリティ運用の効率化を支援しています。現状の監視対象や運用フローの棚卸しから一緒に整理できますので、まずはお気軽にご相談ください。
※「Prime ConnectONE」は、NTTPCコミュニケーションズの登録商標です。
