「食×健康×情報」の研究をAIで加速——北海道情報大学がDGX Spark導入で挑む、ローカルLLMを活用した研究DX
北海道情報大学インタビュー記事の第一弾(記事はこちら)では、北海道情報大学が育てる「情報イノベーター」——「AIを使う側」に立ち、自ら課題を見つけ、対話を通じて解決へ導く人材——と、その育成に向けた実践を紹介した。
では、そうして育てた「情報イノベーター」は、どのような社会課題に向き合っていくのだろうか。
その一つが、北海道情報大学 健康情報科学研究センター(以下、HISC)が長年取り組んできた「食×健康×情報」というテーマである。北海道江別市に拠点を置く同大学は、2007年設立のHISCを核に、地域と密接に連携しながら、地域住民のヘルスリテラシー向上、機能性食品のエビデンス構築、認知症予防のための長期コホート研究など、「未病」という視点から地域と社会の健康寿命に向き合ってきた。そして今、その研究に生成AIとローカルLLMを組み合わせ、研究DXの新たな段階に踏み出そうとしている。
その挑戦を支えるインフラの一つが、NVIDIAの小型AIワークステーション「NVIDIA DGX Spark」だ。
本インタビューでは、健康情報科学研究センター長 本間直幸教授、および同センターで地域支援コーディネーターを務める伊藤直仁氏への取材を通じて、大学が描くヘルスケアトランスフォーメーション(HX)と、それを支えようとするNVIDIA DGX Sparkの位置付けを紹介する。
本間 直幸 教授
伊藤 直仁 氏
北海道情報大学が進める「食×健康×情報」の研究DX
- 北海道情報大学は、北海道江別市に拠点を置き、地域と密接に連携している。同大学は2007年設立の健康情報科学研究センターを中核に、産学官連携で「食×健康×情報」の研究とヘルスケアトランスフォーメーション(HX)の社会実装を推進している。食の臨床試験「江別モデル」を軸に、地域住民のヘルスリテラシー向上、機能性食品のエビデンス構築、認知症予防に向けた長期コホート研究まで、「未病」という視点で健康寿命に向き合っている。
- 江別モデルは、約17,000名のボランティア登録と累計141件のヒト介入試験(2026年3月時点)を基盤に、食品の機能性を科学的に検証してきた。そのヒト介入試験は、北海道が全国に先駆けて2013年に創設した北海道食品機能性表示制度「ヘルシーDo」の認定を支えてきた。近年は江別いきいき未来スタディ(2022年度〜10年間、55歳〜75歳の江別市民約1,200名対象)など、認知機能・食生活・生活習慣を統合的に追跡する長期コホート研究にも取り組む。
- こうした取り組みで積み上がる大規模な健康データを解析するために、健康情報科学研究センターはNVIDIA DGX Spark™を導入。ローカルLLMを活用した高度なデータ解析の実現を目指し、研究DXに向けた次の一歩を踏み出している。
北海道情報大学が描くHX——「食×健康×情報」で健康寿命に向き合う
北海道情報大学は、北海道江別市に拠点を置き、地域と深く結び付いてきた大学だ。2027年4月には総合情報学部 情報理工学科を新設し、DXを共通基盤としながら、GX(グリーン・トランスフォーメーション:環境)とHX(ヘルスケア・トランスフォーメーション:健康)を融合した学びを展開する。
同大学はHXを「DXを基盤に、医療・診療・治療の高度化や病気予防、生活の質向上などを通じて、健康増進を実現すること」と定義している(北海道情報大学 情報理工学科詳細サイトより引用)。医療の高度化や病気予防にとどまらず、日々の食事や運動といった生活習慣の見直し、そしてヘルスリテラシーの向上まで——HXは、幅広い領域を横断して人々の健康を高めていく変革として位置付けられている。
第一弾記事で描いたのは、「AIを使う側」に立ち、自ら課題を見つけて解決へ導く「情報イノベーター」を育てる教育だった。では、その学生たちは、どのような社会課題に向き合っていくのか。その一つの実践が、大学が根ざす江別地域で行われている。
地域とともに歩む研究の拠点が、2007年に設立された健康情報科学研究センター(HISC)である。「食の臨床試験の拠点として、食と健康を基盤とし、地域が抱えるヘルスケアの課題解決に、AIやIoT等の情報技術も駆使して取り組む」研究組織で、本間直幸教授が2021年からセンター長を務める。学生は、この地域に根ざした研究の場で、地域から得られる実際のデータに触れながら学んでいく。学んだ力を実践する場が、大学の拠点である江別地域にあること——それが、北海道情報大学の大きな特徴である。
情報理工学科のデジタルヘルス研究室——情報イノベーターがHXに向き合う学びの場
情報理工学科に設けられる予定の5つの研究室の一つが、「デジタルヘルス研究室」だ。担当は、健康情報科学研究センター長を務める本間直幸教授と、バイオインフォマティクスを専門とする齋藤静司教授である。
生命科学のデータ解析と、食・生活習慣・ヘルスリテラシーの研究とが、一つの研究室のなかで交わる。
本間教授は、複数教員制で研究室を持つ理由を「複数の専門性を掛け合わせることで、単一の学問だけでは解けない課題に踏み込める。」と語る。そして、そこに加わるもう一人の主役が学生だ。
江別モデルをはじめ、健康情報科学研究センターが地域とともに積み上げてきた研究やデータを題材に、学生自身が課題を見つけ、情報技術やAIを使いながら解決策を考える。教科書のなかの数字ではなく、江別という地域で実際に得られたデータに向き合いながら「問い」を立てる——第一弾で紹介した「情報イノベーター」を、HXという具体的な社会課題への取り組みを通じて育てる場が、デジタルヘルス研究室である。
本間教授も「若い世代の発想を取り込んでいきたい。次の世代のリーダーを育成したい。」と語る。
学生が取り組む実践教育の一例として、本間教授は「フードモデルとAIを組み合わせた献立の設計・開発」を挙げる。栄養バランスのデータを持つフードモデルと生成AIを組み合わせれば、たとえば宇宙食や災害食のような特殊な環境で求められる献立をAIが提案できる。ただし、AIが出した献立は、栄養の基準を満たしていても、おいしく食べられるとは限らない。そこを人が判断し、実際に食べられる献立へと仕上げていく。宇宙の閉鎖空間と災害時の避難所生活には、栄養の偏りや心理的ストレスなど共通する課題もあり、こうしたテーマを、学生や若手研究者の発想を取り入れながら探究していきたいと本間教授は考えている。
NTTPCではAI(GPU)基盤やAIソリューションのお悩みに合わせたご提案をしています。 まずはお気軽にご相談ください。
本間教授が描く、未病とヘルスリテラシーの未来

学生が向き合うそのHXの根底には、本間教授が長年掲げてきた一つの考え方がある。
そのキーワードは「未病」である。
未病とは、健康と病気の間の状態——ある日突然どちらかに切り替わるのではなく、そこには連続的な移行があり、生活習慣によって健康側にも病気側にもシフトしていく、という考え方だ。
本間教授が目指すのは、病気になってから治療するだけでなく、未病の段階から健康側へと働きかけることである。
そのために重要になるのが「ヘルスリテラシー」だ。本間教授は、ヘルスリテラシーについて健康情報を「収集する・理解する・評価する・活用する」の4つのステップからなる能力と整理する。
健康に関する情報があふれるなか、情報を集めるだけでは十分ではない。内容を理解し、信頼できる情報かを評価し、自分の生活に生かすところまでできて初めて、健康行動につながる。食品の機能性について科学的なエビデンスを示すことと、その情報を一人ひとりが正しく活用できる力を育てること——本間教授は、その両方を重視する。
その考えをデジタル技術へ広げた取り組みの一つが、本間教授が構想する「デジタル薬」である。
たとえば、日々の健康管理を支援するだけでなく、科学的な検証に基づいて行動変容を促し、未病の段階から健康状態の改善につなげることを目指すアプリケーションだ。本間教授は、食事は日常生活から切り離しにくい行動だからこそ、健康づくりの入り口になりやすいと考えている。
「食」を起点に、情報を届け、行動を変え、未病の段階から健康を支える。
本間教授が描くHXは、人々がより健康に暮らすために情報とデジタル技術をどう生かすか、という発想から始まっている。
産学官連携で積み上げてきた江別モデル

このHXは、北海道情報大学が江別市という地域に根ざしてきたからこそ実現してきたものだ。地域と密接に連携しながらHXを進めるその中核が、健康情報科学研究センターの食の臨床試験「江別モデル」である。大学・自治体・産業界、そして地域住民が連携し、食品の機能性を科学的に検証する仕組みである。
そのルーツは、2007年、文部科学省の知的クラスター創成事業「さっぽろバイオクラスター構想 “Bio-S”」(平成19〜23年度)にさかのぼる。北海道が食料基地としての強みを生かし、道産食材の付加価値を高めようとするなかで、「機能性」という新しい価値を科学的に確立するために、健康情報科学研究センターが設立された。2008年に食の臨床試験「江別モデル」を構築し、2009年に第一号の臨床試験を実施。以来、実績を積み重ね、2026年3月時点で、ボランティア登録は約17,000名、ヒト介入試験の累計は141件に達している。
江別モデルの特徴は、大学が自前の体制で臨床試験を継続的に実施できるという点にある。一般に、大学の臨床試験は特定の研究プロジェクトの枠組みで行われることが多く、プロジェクトが終了するとその後は、予算等の関係で継続的に実施することが難しい場合がある。そうしたなかで健康情報科学研究センターは、大手飲料・食品メーカーからの受託研究を中心に、年5〜10件程度の臨床試験を安定的に実施し、機能性表示食品制度の届出や食品の機能性研究開発に利用されている。医師・看護師・臨床検査技師・管理栄養士・データサイエンティスト・学術担当が学内にそろい、試験デザインの提案から、被験者対応、統計解析、論文作成・学会発表の支援までワンストップで担える。ここに江別市・臨床検査センター・連携医療機関などが加わり、産学官の枠組み全体で機能性評価が回っている。
その成果は、社会制度にも先駆けてきた。北海道は2013年、全国で初めて自治体が認定する食品機能性表示制度「北海道食品機能性表示制度(愛称:ヘルシーDo)」を創設。江別モデルは、その認定に必要なヒト介入試験の受け皿として、これまでに15素材の評価に活用されてきた。こうした自治体による先行的な取り組みは、国が2015年に開始した機能性表示食品制度にも先駆けるものだった。
さらに伊藤氏は、臨床試験がもたらすのは食品のエビデンスだけではないと語る。江別モデルには、繰り返し試験に参加するリピーターのボランティアが少なくない。継続的に血液検査や食生活アンケートを受け、結果を大学から丁寧にフィードバックされる過程で、参加者自身の健康意識と生活習慣が変わっていく。実際、継続参加者では、収縮期血圧・血糖値・中性脂肪などの検査値に、参加を重ねるごとに改善傾向が見られるという。地域住民が自らの健康を見つめ直し、ヘルスリテラシーを育む場にもなっている——それが、地域とともに歩む江別モデルの、もう一つの意義である。
江別いきいき未来スタディ——長期コホート研究で認知機能と健康を追う
江別モデルが「食品の機能性を評価する介入試験」の仕組みだとすれば、その先にある新しい挑戦が、長期観察を通じて食と健康・認知機能の関係を追うコホート研究である。その代表例が、「江別いきいき未来スタディ」だ。
同スタディは、産学官連携の研究として2022年度に開始された。55歳以上75歳以下の江別市民、最大約1,200名を対象に、認知機能や食生活、生活習慣、血液バイオマーカーなど多岐にわたる項目を、1年に1回、10年間にわたって継続的に取得する大規模コホート研究である。地域住民の理解と協力があってこそ成り立つこの取り組みから、質・量ともに膨大な健康データが蓄積されていく。
こうして蓄積が進むデータからは、早くも手がかりが見え始めている。伊藤氏によれば、2026年7月末時点で4回目までの検査が完了しており、まだ研究途上ではあるものの、特定の食パターンと認知機能の間に一定の傾向が見え始めており、成果の一部は論文(Nutrients. 2026 Mar 5;18(5):846)としても発表されている。
こうして地域から得られる知見は、産学官連携を通じて、認知機能や軽度な不調にアプローチする機能性食品の開発などへとつながっていく。地域住民との協力で積み上げられた研究が、社会実装を経て、再び地域へと還元されていく仕組みだ。
膨大な健康データから「宝」を探す——研究DXという次の課題

江別モデルではボランティア約17,000名・累計141件の臨床試験を実施しており、江別いきいき未来スタディ(https://www.do-johodai.ac.jp/topics/9690689/)でも約1,200名が参加し、10年間のコホート研究が進行している——健康情報科学研究センターが積み上げてきたデータは、質・量ともに国内でも希少な水準にある。
だが、その豊かなデータこそが、次の課題も生んだ。
食・生活アンケート、血液バイオマーカー、遺伝子、腸内マイクロバイオーム、認知機能、運動機能、モーションキャプチャ——コホート研究で扱うデータは多層的かつ膨大で、しかも被験者ごとに10年間の時系列がある。伊藤氏は、江別いきいき未来スタディのような研究について、認知機能に影響する要因、年数による変化など、多くの変数が絡み合う複雑な要因を分析していく必要があると語る。既知のメカニズムを検証する介入試験の解析とは、規模も複雑さも異なる世界だ。
一方で、健康情報科学研究センターに常駐するデータサイエンティストは、限られている。伊藤氏によれば、コホートの解析を中心的に担う人員は数名規模だ。しかも、統計解析だけできればよいというものではない。データ解析の技術と、食や健康の専門知識を、両方持ち合わせた人材でなければ、膨大なデータの中から「宝」——研究として、そして社会実装として、意味のある発見——を見つけ出すことは難しい。
同じことは、健康情報科学研究センターに限らず、多くの大学・研究機関で聞かれる悩みだろう。データサイエンティストの絶対数が不足しているうえに、専門領域の知識を併せ持つ人材は、さらに希少である。
長年蓄積してきたデータの中から、まだ見つかっていない「宝」をどう探し出すか。
その課題に対する一つの解として伊藤氏が選んだのが、ローカルLLMを活用できる研究環境の構築であり、その基盤として導入されたのがNVIDIA DGX Sparkである。
なぜNVIDIA DGX Sparkなのか——ローカルLLMを研究に導入

伊藤氏がNVIDIA DGX Sparkの導入に関心を寄せたのは、ここ半年の生成AIとローカルLLMの進化がきっかけだった。
伊藤氏は「LLMの進化がすさまじいので、ローカルLLMにチャレンジしてみたい」と語る。
商用のクラウドLLMサービスは日進月歩で進化しており、対話の性能は目を見張るものがある。一方で、健康情報科学研究センターが扱うのは、個人の健康にかかわる機密性の高いデータである。生命倫理委員会の承認を得て、匿名化を厳格に行い、慎重に管理されているデータであり、外部クラウドに気軽に投入できる性質のものではない。
もう一つの選択肢としては、フルスペックのGPUサーバーをローカルに導入する道もある。だが、その場合、投資規模は跳ね上がり、まだ本格運用に至っていない段階での意思決定としては重い。
「まずはローカルLLMがどこまで研究に使えるかを試したい。その最初の一歩として、DGX Sparkの規模感が合致していました。」
——伊藤氏はそう説明する。
NVIDIA DGX Sparkは、NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchipを搭載した小型のAIワークステーションだ。デスクサイドに置ける小型筐体でありながら、大容量のユニファイドメモリを備え、大規模なオープンLLMをローカル環境で扱えるように設計されている。
研究者が機密性の高いデータを外部に出さずに、AIを活用した高度な解析を試すための入り口として位置付けられる製品である。
伊藤氏は、NVIDIA DGX Sparkに込めた期待を、次のように整理する。
- 機密性の高い研究データを、外部に出さずに解析できること
- 大型GPUサーバー導入の前段階として、ローカルLLMの実用性を検証できること
- コスト・省スペース・省電力の観点で、大学の研究環境に導入しやすいこと
- 学生・研究者がローカルLLMそのものに触れる、学びと研究の場を作れること
健康情報科学研究センターにおけるNVIDIA DGX Sparkの活用は、現時点では環境構築とローカルLLMの動作検証を進めている段階だ。運用には同一構内にあるメディア教育センター(MEC)と連携し、大学のIT基盤の中に位置付けながら、研究活動で使いやすいかたちを模索している。まだ本番環境で解析成果が出ているわけではないが、次の段階に進むための足場を、いま固めているところである。
▶ NVIDIAの小型AIワークステーション「NVIDIA DGX Spark」の詳細については、以下のページをご覧ください。:NVIDIA DGX Spark|GPUならNTTPC|NVIDIAエリートパートナー
![]()
GPU製品・サービス
AI/IoT、デジタルツイン用途に適したGPUサーバーを設計・構築。さらにデータセンター・ネットワークなど、GPU運用に必要なシステムをワンストップで提供可能。
AIを活用した高度な解析が変える研究の進め方
NVIDIA DGX Sparkの導入で、伊藤氏が最も期待している変化——それは、AIを活用した高度なデータ解析という新しい研究スタイルの実現である。
伊藤氏は、その仕組みについて、次のように語っている。
「ローカルLLMを使い、対話式で解析の指示を出せる仕組みを想定しています。」
研究者が「このデータで、認知機能スコアと食生活の関係を見たい」「この変数と、この変数の相関を見たい」と自然な言葉で指示を出せば、AIが必要な処理を組み立てて実行し、結果を返す。研究者はその結果を見て、次の問いを重ねていく——という研究の進め方だ。
伊藤氏は、この可能性を次のように表現している。
「AIエージェントによる研究補助で、解析の多角化を目指したい。」
単純な高速化にとどまらず、一つの解析の結果を受けて次の解析、さらにその次の解析、と重ねていける速度感が、コホート研究のような多変量・多層データの世界では大きな意味を持つ。
同時に、AIを活用した解析支援は、データサイエンティストと研究者の役割分担そのものを変える可能性がある。データサイエンティストは、コードを書く作業から解放され、より高度な統計モデリングや、研究の方向性を定める仕事に集中できる。食や健康の専門家である研究者は、プログラミングを専門的に学ばずとも、自分の専門知識をそのままデータ解析へと接続できる——限られた人的リソースの中で、研究のスループットを底上げする一手となりうる。
もちろん、伊藤氏はAIの限界にも慎重だ。
「新しい発想を出すことは、AIには難しい。ヒトの体は解明されていないことがまだ多く、対象が“人”である以上、数字だけでは説明できない領域もあります。そこは人の手が必要だと感じています。」
——AIはツールとして研究を加速するが、何を解くか、どんな仮説を立てるか、結果をどう解釈するかという、研究の核心部分はあくまで研究者の仕事だ。
これは、第一弾で描いた「AIを使う側に立つ」という思想と、まったく同じ構造である。教育の場では、学生が「問いを立てる力」を身につけ、研究の場では、研究者が「問いを立てる力」でAIを使いこなす——大学の教育と研究が、「問う力」という一本の軸でつながっていることが、ここでも見えてくる。
さらに、伊藤氏は、NVIDIA DGX SparkとローカルLLMの環境が、学生教育の場としても価値を持ち得ると話す。情報理工学科の研究室に配属される学生や、大学院の学生が、ローカルLLMやAIを活用した高度な解析の環境に触れながら、「食×健康×情報」の実データで研究を進める——そうした学びと研究がつながる場を育てていきたいと、伊藤氏は考えている。
結び|「食×健康×情報」の社会実装を、AIで次の段階へ
北海道情報大学の健康情報科学研究センターは、20年近くにわたり、産学官連携で「食×健康×情報」の研究と社会実装を積み上げてきた。江別モデル、ヘルシーDo、江別いきいき未来スタディ——これらは、地方の一大学から始まった取り組みが、地域と国のヘルスケア産業を実際に動かしてきた事実の積み重ねである。
そして今、その研究は、生成AIとローカルLLMという新しいツールを得て、次の段階に踏み出そうとしている。NVIDIA DGX Sparkは、そのための「最初の足場」だ。
まだ本番運用に至ってはいないが、環境構築と動作検証を終え、AIを活用した高度な解析の設計が着実に進んでいる。「食×健康×情報」という20年の蓄積の上に、AIによる研究DXが乗る——その姿が、いま少しずつ見え始めている。
第一弾で描いた「AIを使う側に立ち、問いを立てる情報イノベーター」の育成と、今回第二弾で描いた「AIを研究に組み込み、社会課題を解く実装」——教育と研究、この二つは、北海道情報大学のなかで地続きにつながっている。
情報の総合大学として、AIとデータの力を教育と研究の両方に接続し、健康寿命の延伸というきわめて社会的なテーマに、正面から向き合う。その姿は、他の大学・自治体・企業にとっても、多くの示唆を与えるものになるはずだ。
生成AI、ローカルLLM——技術が進化するほど重要になるのは、AIに何を任せ、人が何を考え、どの課題の解決に生かすのかを明確にすることだ。
「食×健康×情報」で培ってきた研究の蓄積にAIという新たな力を加え、教育・研究・社会実装をつないでいく。北海道情報大学の挑戦は、AI時代に大学が社会課題とどう向き合うのか、その一つの答えを示そうとしている。
▶ NVIDIAの小型AIワークステーション「NVIDIA DGX Spark」の詳細については、以下のページをご覧ください。:NVIDIA DGX Spark|GPUならNTTPC|NVIDIAエリートパートナー
![]()
GPU製品・サービス
AI/IoT、デジタルツイン用途に適したGPUサーバーを設計・構築。さらにデータセンター・ネットワークなど、GPU運用に必要なシステムをワンストップで提供可能。
※NVIDIA、NVIDIA DGX Spark™は、米国およびその他の国におけるNVIDIA Corporationの商標または登録商標です。
※「ヘルシーDo」は、北海道の商標または登録商標です。