INTERVIEWインタビュー

【Vol.7】膨大なデータとノウハウを基にスタートアップが新たな価値を共創するSupership。既存の枠にとらわれない発想がイノベーションへとつながる。

大企業の経営資源とスタートアップの技術力・スピードを掛け合わせ、飛躍的な成長を図る“ハイブリッドスタートアップ”を掲げるSupershipグループ。Supershipはその中核企業としてKDDIの経営資源を活かしながら、スタートアップならではの高度な技術力と柔軟性、機動力で、多様なソリューションを生み出しています。新価値の創造とともにデジタルの力で目指すSDGsについて、Supership株式会社代表取締役副社長COO 稲葉真吾氏に話を伺いました。

Supershipグループ誕生の経緯とは

飯野

グループ誕生の経緯を教えてくださればと思います。

稲葉

かつてKDDIが立ち上げたプロジェクト「Syn.(シンドット)」構想が誕生のきっかけです。Syn.構想はスマートフォンの価値を倍増させる計画で、それぞれのサービス、アプリがゆるくつながり合う“中心のないポータル”の提供を目指して2014年にスタートしました。Syn.構想自体は2018年に終了しましたが、このプロジェクトがSupershipグループの礎です。Supership自体は2015年の11月にスタートアップ3社の合併により発足し、その後もM&Aも含めて業容を拡大しながら現在に至っている状況です。

飯野

面白いのは“ハイブリッドスタートアップ”という造語。Supershipホールディングスの親会社にあたるKDDIという大企業の経営資源をスタートアップ集団がそれぞれの技術・スピードを掛け合わせて、より大きな価値を生み出すという考え方が興味深い。どうしてそのような形で進めることになったのでしょうか?

稲葉

我々のグループに集結したスタートアップの強みをKDDIが持つ膨大なデータや経営力を活かして最大化する。わかりやすい例で言えば「ScaleOut DSP(Demand Side Platform)」ですね。ScaleOutは2015年11月に合併によりSupershipとなったスタートアップの1社。DSPとはインターネット広告の配信効果を最大限に高める広告主向けの広告配信ツールです。このツールとKDDIの持っている膨大なデータを掛け合わせることで興味・関心のあるユーザーを絞った広告配信を行うなど、広告の運用を効率化し、効果を高めることができます。

飯野

Supershipのホームページ見ると、会社のアイデンティティを分かりやすい言葉で丁寧に説明されていますね。それはどのような目的をもって策定されたのですか?

稲葉

買収後の統合プロセスの中で、何を目的としたM&Aだったのか。意気投合してM&Aするとはいえやっぱりお互いに見ているものは断片的になりがちですよね。Supershipグループは10社による『共創体』。全グループ従業員が500人を超えた今、改めてなぜ皆が集まったのかを明文化しようと考えました。全員の気持ちを1つにできる共通言語を策定するため、マネジメント層で長い時間をかけて議論しながら一つ一つ丁寧に作っていった経緯がありますね。

スタートアップならではのスピード感と大企業のアセット(経営資源)の掛け合わせ

飯野

社内で皆さんに伝えているメッセージはありますか?

稲葉

僕らが何のためにSupershipに集まっているのか。KDDIの下で、他のスタートアップにはできない挑戦ができる。ナショナルクライアントとともに大きなプロジェクトに取り組める環境がある。世のため人のためになるものをどんどん作っていこうということを伝えています。

飯野

社名の「Supership」にはどのような思いが込められているのでしょうか?

稲葉

覚えやすくて、強くてかっこいい名前にしたいと。「越えて。向こう側に行く」という語源のSuperに、スポーツマンシップやモノを届けるシッピングなど「先進的」な意味でのshipを掛け合わせています。

飯野

グループパーパス(存在意義)は「ミライリアルの幸せを、デジタルの力で創る」とあります。Supershipのグループメンバーは、どこにやりがいを感じているのでしょうか?

稲葉

繰り返しになりますがKDDIの経営資源を使って、スケールの大きなことができる。この点をあげるメンバーは多いですね。普通のベンチャー企業では難しいものも、KDDIとの関係性や後押しにより他社から一目置かれる存在であるのはアドバンテージ。それでいてベンチャーマインドも失っていないところが良い部分だと感じています。

異なるテクノロジーを掛け合わせ、面白いものをつくる

飯野

新たなテクノロジーで言えば「AI」。ただAIだけではビジネスにならないので、AIに何を掛け合わせれば、マーケットが生まれるのかという発想が重要だと思います。それをまとめるようなイメージで取り組まれているんだなと。

稲葉

そう仰ってくださると有難いですが、色々な畑の人間の集まりなので、それぞれの多様性を認めながらその掛け算で面白いもの作れるカルチャーは大事にしたいと思います。

飯野

掛け算によって生まれ、事業化に向けて進んでいる事例はありますか?

稲葉

インターネット利用者の行動履歴などを分析し、データを活用したターゲティングによる広告配信を行うためのデータアセットとして「Fortuna(フォーチュナ)」という製品を持っています。これはSupershipとグループ会社で高度なAI分析技術を開発するDATUM STUDIOが合作しました。会社の垣根をあまり感じないで取り組んでいますね。「Fortuna」は、AIを活用して正確なデータでマーケティング課題の解決に向けたスムーズな施策実行の実現を目指しています。

飯野

日頃のコミュニケーションを含めて、お互いに掛け算をやっているということですね。

稲葉

DATUM STUDIOは普段は単体で事業をしていますが、AI需要とともに我々と組んで動く案件も増えている感じです。

あったらいいなを叶え、手触り感のある未来を実現したい

飯野

Innovation LABを運営するNTTPCは、KDDIグループからみると競合他社の立場ですよね。目線はもっと大きなところを見ていらっしゃるかもしれませんが、ビジネス的に競合する相手とも関係なく一緒に仕事をされているようにみえます。

稲葉

オープン領域とKDDI社内では言われていて。自由な発想で様々なマーケットに対応できる体制になっています。KDDIと競合する大手通信会社とも仕事したことがあります。KDDIの経営資源を使える自由度も許容してもらいつつ、おもしろければやってみようと。対外的に自由にやらせてもらえるのは本当にありがたいです。

飯野

今後、どのような社会課題の解決や顧客体験づくりをしようとしているのか教えてください。

稲葉

会社としてのSDGsへの取り組みとして明言はしていませんが、やっぱりインターネットの会社なので世の中に対してどうデジタルの力で関わるかを考えています。社会貢献で言えば教育分野でのお手伝いを始めています。学校でのプログラミング授業などデジタル教育のカリキュラムも始まっていますので、そういった分野ではここ2、3年位は小中学校との取り組みも行っています。どういった未来の実現を目指すかといえば、インターネットで世の中にあったらいいなを叶えるという感覚。僕の言葉でいうと『すごい手触り感のある未来』を実現したいなと思っています。タイムマシーンを作りたいとかではなくて、本当にあったらいいなっていう。近い未来を手触り感があるっていう風に言っているんですけど、そういうものを提供する会社になっていきたいですね。

インターネットの力を信じる集団だからこそできること

飯野

経営陣の皆様と、社員はすぐに会話できる環境でしょうか?

稲葉

もちろんです。気楽に色々な会話を楽しめますよ。

飯野

それはすごいですね。組織は大きくなれば伝言ゲームになりがちですが、当たり前のコミュニケーションがすでにできているのはすごいですね。

稲葉

社内は「現場叩き上げ」的な感じです。みんなやっぱり現場が好きなんですよね。プロの経営者として僕はまだまだ。より一層の勉強が必要だと感じています。

飯野

とても素晴らしいですね。Supershipさんが、今後どのようなことをやっていくのか。メッセージをお願いします。

稲葉

僕らはそんなに洗練された企業集団じゃない、生い立ちもそう。泥臭い感じで積み上げてきた部分もあります。だからカッコつけず面白いことをしたいなって思います。そしてやるんだったら大きなことに挑戦しよう思っている人たちの集団だと自認しています。メンバーには仕事を楽しんでほしいと思っていますし、僕自身もそう心がけてはいるので、そういった人たちだからこそ生み出される、SDGsの目線を含めて、なにか世に貢献できるものをこれからも生み出しつづける集団でありたいなって思っています。

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