INTERVIEWインタビュー

【Vol.14】行き着いたのは「CATALYST」としての役割。データから新たな情報価値を創造し、社会と産業に変革を。

2005年の創業以来、データ活用のプロフェッショナル集団として躍進する『ALBERT(アルベルト)』。産業に実装されるAI活用のパートナーとして、近年ではトヨタ自動車と自動運転技術におけるデータ分析分野で連携しているほか、SBIホールディングスや東京海上日動、KDDIとの資本業務提携など、大手企業との取り組みが進んでいます。
今回は、株式会社ALBERT 執行役員 データコンサルティング部 部長の鈴木弥一郎さんに、ALBERTのミッションや今後の展望、企業におけるデータシェアリングの実情について伺いました。

AIの社会実装を見据えた、主要産業のトップカンパニーとのパートナーシップ

飯野

まず初めに、ALBERTの事業について教えてください。

鈴木

分析技術を活用したAI実装やDX推進のコンサルティング、ビッグデータ分析、AIアルゴリズムの構築、AIシステム開発などを行っています。一方で、AIを活用した独自プロダクトの提供も行っており、それらを様々なデータソリューションとして活用する事業も展開しています。加えて、当社の経験値を活かしたデータサイエンティストの育成や実務におけるOJTも支援しています。

飯野

ALBERTは「産業に実装されるAI活用のパートナー」を掲げていますが、どのような取り組みをされているのでしょうか?

鈴木

一例を挙げると、トヨタ自動車とは自動運転分野におけるAI技術の活用で連携しているほか、KDDIとは顧客データの分析を行っています。グループが保有する膨大なデータを活用した、顧客に対しての価値提供や経営視点で必要な予測分析等を行っています。

飯野

創業から現在に至るまでの経緯をお聞かせください。

鈴木

2005年の創業当初はマーケティング領域のサービス中心でしたが、この15年ほどの間に「AI」という言葉、そして技術が広まり始め、社会全体における技術の高度化により、様々な産業分野でデータ活用の重要性が増していくことになります。
私たちもこうした潮流に伴って、データ分析やシステム開発、AI構築等の事業を展開してきました。

そして、2017年に大きな転機を迎えました。新たな経営戦略のもと重点産業の絞り込みと、その産業に対して当社のケイパビリティを集中させたことです。それが翌年のトヨタ自動車、東京海上日動、KDDIとの資本業務提携に繋がっていくことになります。

方針転換した2017年以後の新たな経営戦略は、社会的な影響力の大きな産業に重点を絞り、AIの社会実装スピードを加速させていこうというものでした。具体的には自動車・製造・通信・流通・金融、最近ではこの5つに加え、インフラも重点産業に据えています。
さらに、これらの産業のリーディングカンパニーと、「データ分析だけでなく、企業間でのパートナーシップを構築した上でAI活用やデータシェアリングの取り組みを進めていく」という考えが、新たな経営戦略の核でもあるCATALYST(カタリスト)戦略です。

「We are the CATALYST.」 世の中のデータを、そして産業をつないでいく“触媒”としての役割

飯野

CATALYSTという言葉がALBERTのミッションにも入っていますが、「データサイエンスで未来をつむぐ We are the CATALYST.」には、どのような想いや考えがあるのでしょう?

鈴木

CATALYSTには「触媒」という意味があります。まずはCATALYST戦略についてご説明すると、私たちは企業単体が持つデータの価値には限りがあると思っています。企業が保有するデータ自体は沢山あるのですが、一社が保有しているデータだけでは断片的であったり偏りがあったりするものです。しかし、産業や企業の枠に留まらない「データシェアリング」を行うことは、企業単体では非常にハードルが高いものがあります。
そこで、私たちがCATALYSTつまり「触媒」となって、産業や企業の垣根を越えて多種多様なデータを幅広くつなぎ合わせ、そのビッグデータから新しい情報価値を創造していくことが重要と考えています。

鈴木

私たちが「触媒」となり、事業を通じてデータサイエンスでデータの価値(情報価値)を縒り集めつむぐことで、これまで予測できなかったような新しい価値を未来に創造していく、という想いが当社のミッションには込められています。

飯野

CATALYST精神を持ったALBERTの社員がバラバラのデータから価値を見出し、結びつけることで、データの価値を広げていけるということですね。しかし、様々な垣根を超えるデータシェアリングは、重要性が高い一方で調整が難しそうな印象があります。

鈴木

産業間や企業間でのデータシェアリングは、企業活動はもちろん今後の社会や産業変革に必要不可欠な取り組みです。最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されていますが、実際にその重要性を捉えている企業は多くありません。むしろデータシェアリング(中でも、特に社外との連携)に対しての抵抗感が強いという企業も少なくありません。

また、それ以前に自社が保有するデータの活用すら十分にできていないという企業からの相談も多く見受けられます。部門単位やシステム単位でデータ分析を行っているケースはしばしばありますが、こうした単発的・局所的な対応では、分析結果から得られる知見も限定的になってしまいます。
そのような悩みや課題を持つ企業に対して、「会社全体でどのように情報資産を活用し、どのようにビジネスを変革していくのか」という視点から、私たちが「触媒(CATALYST)」としてあらゆるデータ、そして産業全体をつなぎ合わせ、情報価値創造につながるご提案をさらに積極的に進めていかなければならないと考えています。

NTTPCと連携してリリースしたプロダクトで自社の課題を解決

飯野

ALBERTがCATALYSTとして道しるべを作っていく役割の重要性が理解できました。やはり、現状ではAIプロダクトだけだと課題解決は難しいのでしょうか?

鈴木

当社も2016年までは8つのプロダクトを展開していました。当時はプロダクト中心のビジネスを進めていこうと考えていたのです。しかし、前述した2017年の転機を迎え、AI活用というアプローチを前提に、当社が定めた重点産業への注力という方向へとシフトしました。
AI分野においては、先進的な技術や製品・サービスを起点とした様々な市場がありますが、汎用的なプロダクトがそのまま利用できないプロジェクトも多くあります。そこでALBERTとしては、「顧客の根本的な課題は何か」「その課題を解決するためにはどんなアプローチが必要なのか」「そのなかでもALBERTの強みを生かして提供できる最大価値は何か」という点にフォーカスしていくに至りました。

その結果、個社別のコンサルティングやデータ分析、AI開発を手掛ける一方、顧客に十分な価値を提供できるプロダクトとして、AI・画像認識ツール「タクミノメ」と、AI・高性能チャットボット「スグレス」の2つに絞り、現在展開しています。

飯野

そのAI・画像認識ツール「タクミノメ」ですが、昨年末の11/25にNTTPCコミュニケーションズと共同企画製品をリリースされています。

鈴木

「タクミノメ」は、ビジネスで活用できるAI画像認識モデルの開発を実現するプロダクトです。AIの専門家ではない顧客企業の担当者でもノーコードで扱えるため、「AI開発の内製化を従来より手軽に実現する」ことが可能です。
というのも画像解析は、対象物や検出方法によってさまざまなパターンがあり、実装可能なレベルのAIモデルを構築するには試行錯誤の繰り返しが必要な技術です。もし、お客さま自身で手軽に行える環境があれば、モデル構築をスピーディに進められますし、学習精度の向上にもつながります。また何より、社内にAI開発の知見・ノウハウが蓄積されることも大きなポイントですね。

「タクミノメ」はこれまでクラウド版のみ提供していましたが、今回NTTPCコミュニケーションズと連携することで「AI・画像認識ワークステーション」という形で提供することが可能になりました。製造業を中心に、データ取り扱いや予算などの面からオンプレミスのニーズは根強くありますので、これは大きな進展だと思っています。

飯野

今後、NTTPCコミュニケーションズに期待していることを教えてください。

鈴木

「タクミノメ」については今後、デプロイ(実装)後の運用も考慮したAIカメラパッケージなどの検討を進めたいと考えています。また、当社も参加しているNTTPCの「Innovation LAB」を通じて、他のAIパートナー企業とも協業しながら新しいビジネスに取り組んでいきたいですね。

飯野

本日はありがとうございました。

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