「顔色を見る」から「データで気づく」へ ~シタラ興産が実践する、現場の熱中症対策と安全管理~
株式会社シタラ興産/SOMPOリスクマネジメント株式会社

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株式会社シタラ興産 取締役 管理部 兼 経営サポート部担当 谷ツ田 佑介 さま
株式会社シタラ興産 取締役 管理部 兼 経営サポート部担当
谷ツ田 佑介 さま
株式会社シタラ興産 管理部 総務課 主任 山澤 涼雅 さま
株式会社シタラ興産 管理部 総務課 主任
山澤 涼雅 さま
SOMPOリスクマネジメント株式会社 マーケティング戦略部 フィールドセールスグループ 主任
奥村 直幸 さま

【取り組みの背景】

  • 産業廃棄物の中間処理では、屋外や鉄板・コンクリートの上での手選別作業が発生し、夏場の熱中症リスクが高い
  • 特に気温が高くなり始める5~6月は体が暑さに慣れておらず体調不良が起きやすいうえ、本人に自覚がないまま症状が進んでしまうこともある
  • 従来の健康管理は本人と現場リーダーに委ねられており、「顔色を見て声をかける」以外の手立てがなかった
  • 熱中症が発生すると本人は数日間の休養が必要になり、現場の稼働にも影響することが課題だった

【取り組みの成果】

  • ウェアラブル端末の脈拍データなどをもとにしたアラートにより、作業員の体調変化への早期の気づきを支援。無線での声かけや休憩につなげる運用フローを確立
  • 2024年5月の導入以降、端末を装着している選別作業員の熱中症による休業者数はゼロ(シタラ興産社内集計による)
  • アラートや管理画面を活用し、現場と事務所が一体となって作業員の健康状態を見守る体制を実現
  • 現場作業員17名で利用を開始。夏場(5月~10月)のみ利用し、オフシーズンは休止する柔軟な運用を実現

埼玉県深谷市を拠点に、産業廃棄物の収集運搬・中間処理・再資源化を手がける株式会社シタラ興産(以下、シタラ興産)。関東一円から廃棄物が集まる同社の選別現場は、鉄板やコンクリートの上での屋外作業となり、夏場は熱中症のリスクと隣り合わせだ。同社はこの課題に対し、SOMPOリスクマネジメント株式会社(以下、SOMPOリスクマネジメント)が提供する熱中症対策見守りサービス「みまもりふくろう」を導入。同サービスは、NTTPCコミュニケーションズのIoTウェアラブルサービス「みまもりがじゅ丸®」を基盤としている。現在では、端末からのアラートを無線での声かけや休憩につなげ、現場と事務所が一体となって作業員を見守る運用が定着している。
本記事では、導入を推進したシタラ興産 取締役の谷ツ田佑介氏、管理部 総務課 主任の山澤涼雅氏に、導入の背景から現場定着までの道のり、そして今後の展望を伺った。インタビューには、「みまもりふくろう」を提案し、導入を支援したSOMPOリスクマネジメントの奥村直幸氏にも同席いただいた。

「顔色を見て、声をかける」しかなかった──猛暑の選別現場の熱中症対策

シタラ興産の中間処理現場では、機械による破砕だけでなく、地面に広げた廃棄物を木・紙・プラスチック・金属などに手作業で分ける「土間選別」が行われている。炎天下での鉄板やコンクリート上で行うこの作業では、作業員一人ひとりの変化にどう気づくかが課題だった。かつての熱中症対策は、現場のリーダーが作業員の顔色を見て声をかけることだった。しかし熱中症は本人に自覚がないまま進むことも多く、夏場には体調を崩す作業員が出ることもあったという。
現在は、端末からのアラートをきっかけに事務所から無線で声をかけ、必要に応じて休憩を促す運用が定着している。同社は、この仕組みをどのように現場へ根づかせたのか。

リストバンド型端末の装着イメージ。脈拍データなどをもとに、平常時との違いを知らせる

関東一円の廃棄物を資源に変える──シタラ興産の事業と現場

──まず、シタラ興産さまの事業概要と、現場の特徴について教えてください。

谷ツ田氏 「当社は産業廃棄物の収集運搬と中間処理・処分業を行っています。拠点はすべて埼玉県深谷市にあり、現在は3拠点目を建設中です。関東一円から産業廃棄物が集まってきています。
中間処理というのは、お持ち込みいただいた廃棄物を破砕して細かくしたり、混ざり合ったものを分別したりすることで、環境負荷を低減させる仕事です。ものによってはリサイクルに回し、埋め立ても含めた処分までを担っています」

インタビューに答える谷ツ田氏

同社はAIを活用した選別ロボットを約10年前にいち早く導入するなど、先進技術の活用にも積極的だ。建設中の3拠点目は焼却発電施設で、廃棄物の焼却で生まれた熱を発電に利用し、地元の新電力会社に売電する構想だという。深谷の地で40年近く、地域に根ざして資源循環を支えてきた。

──選別の現場では、熱中症のリスクはやはり高いのでしょうか。

谷ツ田氏 「中間処理は機械を使うだけではなく、地面に廃棄物を展開して、木や紙、プラスチック、金属などを手で選別する作業もあります。屋外での作業ですし、現場には鉄板が敷いてあったり、コンクリートの上だったりしますから、真夏はフライパンの上で作業しているような環境です。熱中症のリスクは非常に高いといえます」

──お二方は、今回の導入にどのように関わられたのですか。

谷ツ田氏 「私も山澤も間接部門である管理部の所属です。安全衛生委員会で熱中症対策の用品や施策を検討する中で、他社の導入事例を知り、『当社でも導入してみないか』と機運が高まりました。私は導入までの社内の稟議や調整を担い、山澤が実際の導入の実務を担当しました」

山澤氏 「私は管理部総務課で、社有車や重機の管理、携帯電話やパソコンといった通信関係機器の手配・調整などを担当しています。今回の導入では、機器の手配や設置の検討など、実務面を担いました」

導入のきっかけ──同業他社の事例発表と、スピーディーな意思決定

──導入前は、どのような課題を抱えていましたか。

谷ツ田氏 「やはり大きな課題は熱中症でした。屋外で作業するため、以前は夏場に熱中症が疑われる体調不良者が発生することがありました。特に多いのは、暑くなり始める5月や、梅雨に入り湿度が上がる6月です。7月後半になると体が暑さに慣れ、発生件数は減っていきますが、その日の体調によって具合が悪くなりかける人はいます。
みまもりふくろう導入以前は、現場で顔色を見て『顔色が悪いから休もう』と声をかけるしかありませんでした。しかし、本人は『まだ大丈夫』と思っていることが多く、周囲から見ても判断が難しい部分があります。一度熱中症になると、2~3日は休まざるを得ません。本人がつらいのはもちろん、現場の稼働にも影響が出てしまうため、大きな課題だと認識していました」

作業員の健康管理が、本人の自覚や現場リーダーによる目視確認に委ねられていたこと。そして個人によって暑さの感じ方に差がある中で、声かけや休憩を判断する客観的な情報が不足していたこと。これが導入前の状況だった。

──導入を検討し始めたきっかけを教えてください。

谷ツ田氏 「同業の交流会で、同じ埼玉県の同業他社が熱中症対策として『みまもりふくろう』を活用しているという発表を聞いたのがきっかけです。『非常によい道具がある』とご紹介いただき、検討を始めました」

事例を知ったのはオフシーズンの10月頃。社内で検討を進め、翌シーズンの初夏には導入を完了していたというから、意思決定のスピードは速い。

谷ツ田氏 「当社の代表は、新しいものを積極的に取り入れて有効活用しようという考えの持ち主です。まず試してみようという文化なので、意思決定は速いです。今回も、オフシーズンに事例を知り、次のシーズンの初めには装着を始めていました」

選定の決め手──「シンプルで、必要な時期だけ利用できる」

──いくつかの製品を比較検討された中で、「みまもりふくろう」を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。

谷ツ田氏 「一番は使い方がシンプルだったことです。端末は必要な機能に絞ったつくりで、その分コストも低く抑えられている。現場にはさまざまな年代の作業員がいるので、なるべく機能がシンプルなものを選ぶよう心がけていました。それから、トライアルをさせてもらえたことと、少ない台数から無理なく始められたことも決め手でした」

山澤氏 「細かいところでは、Wi-Fiルーターがコンパクトだったことも助かりましたね」

谷ツ田氏 「そうですね。モバイルルーターなので持ち運びができ、重機の運転席の中に置くことができます。これが非常に有効でした」

──利用プランはどのように選ばれたのですか。

山澤氏 「腕時計型の端末とWi-Fiレンタルを組み合わせるプランを選びました。現場では個人のスマートフォンを工場に持ち込まない運用なので、スマートフォンを使うプランではなく、Wi-Fiルーター経由でデータを送る形が当社には合っていました」

谷ツ田氏 「もうひとつ、夏場の暑い期間だけ利用して、それ以外の時期はサービスを休止しておける点も評価しました。当社では5月から10月末まで利用して、冬場は休止しています。夏が来ればすぐに再開できる。この柔軟さは助かっています」

「みまもりふくろう」の基盤である「みまもりがじゅ丸®」には、端末が取得したデータをどう送るかによって複数のプランがある。Wi-Fiルーターなどの通信機器を経由するタイプ、作業者のスマートフォンを経由するタイプ、端末にSIMを内蔵して単独で通信するタイプ等があり、現場の運用に合わせて選択することが可能だ。

現場への定着──Wi-Fi設置の試行錯誤と、フロア全員での見守り

──導入にあたって、苦労された点はありましたか。

山澤氏 「一番苦労したのはWi-Fiの設置です。ルーター1台でカバーできる範囲よりも、当社の工場の作業範囲のほうがはるかに広いのです。どこに何台置けば作業員の動線をカバーできるのか、有効範囲を確認しながら割り出すのに時間がかかりました。建物を挟むと電波が届きにくくなる点にも悩みました。最終的には、作業員の近くには重機があることが多いので、重機の中にルーターを置くことで解決しました」

この設置検討には、サービスを提供するSOMPOリスクマネジメントの奥村氏も伴走した。

奥村氏 「工場を保有するお客さまには、ルーターを各作業場に配置して使っていただくケースが多いのですが、『何台必要か』は必ず出てくるご相談です。地図で敷地の広さを確認しながら、一緒に台数や配置を考えさせていただきました」

谷ツ田氏 「実際に運用してみると『この場所は電波が途切れやすい』と分かった箇所もあり、当初の想定から微調整しながら、試行錯誤して今の配置にたどり着きました」

運用開始に向けては、トライアルで使用感を確認したうえで、利用者の選定やWi-Fiの設置位置の検討、利用者への説明、顔写真の撮影、サービスへのユーザー登録を進めた。同社は17名の作業員を対象に利用を開始した。これまでの利用では製品としての初期不良はほとんどなく、汗や粉塵の多い過酷な現場環境でも機器は安定して稼働しているという。

──アラートが上がったときは、どのように対応されているのですか。

谷ツ田氏 「基本的には無線で連絡しています。アラートが上がった際は、本人に『○○さん、大丈夫ですか』と声をかけたり、現場を見ているリーダーに『少し様子を見てください』と依頼したりします。無線は全員が携帯しており、一人が話せば全員に伝わるため、携帯電話よりも迅速に情報を共有できます。必要に応じて声をかけ、現場の判断で10分ほど休んでもらうことで、体調悪化の早期把握と適切な対応につなげています。
事務所は1階のワンフロアにあるため、担当部署だけでなく、ほかの部署の社員も含めて、フロア全体で管理画面を確認しています。現場の作業員やリーダーだけに任せるのではなく、事務員も協力し、全員で作業員の健康状態を気にかける体制が整いました。暑さの感じ方には個人差があるため、脈拍データなどをもとにしたアラートが、声かけや休憩を判断する客観的なよりどころになるのは心強いですね」

事務所に設置された管理画面。作業員の情報やアラートをフロア全体で確認する

導入の効果──組織で見守る運用が定着し、熱中症による休業者数ゼロを継続

──導入による効果について、改めて教えてください。

谷ツ田氏 「非常に大きな効果がありました。導入以降、端末を装着している選別作業員では、熱中症による休業者は出ていません。日々の状態をモニタリングし、アラートを声かけや休憩につなげることの有効性を、強く実感しています。実際に効果が表れているからこそ継続しており、今年で3度目の夏を迎えます」

熱中症は年齢を問わず、その日の体調や環境によって誰にでも起こり得る。同社ではウェアラブル端末によるモニタリングに加え、ファン付き作業服の貸与や冷却ベストの活用など、複数の対策を組み合わせて作業員の安全を守っている。

──作業員の皆さまの受け止めはいかがですか。

山澤氏 「作業員から特別な声が上がることは多くありません。熱中症に『ならなかった』ことは、本人にはなかなか実感しにくいものだと思います」

谷ツ田氏 「ただ、脈拍数が上がって無線でフォローが入れば、『見てもらえている』ことは認識できます。声をかけてもらって少し休み、周りの人間も『調子が悪かったのだな』と分かる。その安心感はあると思います。不満の声も上がっていません。全員の健康のために行っていることですから」

日々のやり取りを通じて、現場が健康のための取り組みとして受け止めてくれている手応えがあるという。

今後の展開──「まだ導入できていない部署にも広げたい」

──今後の活用について、構想があれば教えてください。

谷ツ田氏 「今後は、まだ導入できていないコンテナの製作・溶接部門にも展開したいと考えています。火を扱ううえ、屋根の下とはいえ暑い環境なので、本来はそこで働く作業員にも端末を装着してもらいたいところです。ただ、現在導入している部署とは異なり、広い範囲を移動しながら作業する人が多いため、Wi-Fiのカバー範囲が課題となっています」

奥村氏 「移動の多い作業環境であれば、SIMカードをデバイスに内蔵したタイプのプランなど、別の選択肢もご案内できます」

谷ツ田氏 「通信範囲の課題を解消できれば、より多くの作業員を見守れるようになると考えています。現状でも非常に有効に活用できており、導入してよかったと感じています。同業他社では、まだ導入していない企業も多いと思いますので、当社からも交流の場などを通じて取り組みを発信しています。こうした仕組みが、業界全体にさらに広がっていくと良いですね」

谷ツ田氏と山澤氏へのインタビューからは、ウェアラブル端末の導入だけに頼らず、現場への声かけや複数の暑熱対策を組み合わせて安全を守ろうとする同社の姿勢が伝わってきた。ウェアラブル端末による見守りに加え、ファン付き作業服や冷却ベストの活用、フロア全員で健康状態を気にかける体制づくりと、同社は打てる手を着実に重ねてきた。AI選別ロボットや焼却発電施設といった先進技術への挑戦と、従業員の健康と安全を第一に考える姿勢。シタラ興産はその両方を大切にしながら、地域の資源循環を支え続けている。

「みまもりがじゅ丸®」の導入・活用をご検討の方へ

NTTPCコミュニケーションズの「みまもりがじゅ丸®」は、リストバンド型のウェアラブル端末で取得したデータなどをもとに平常時との違いを知らせ、働く人の体調変化への早期の気づきと対応を支援するIoTサービスです。本記事でご紹介した、SOMPOリスクマネジメントが提供する熱中症対策見守りサービス「みまもりふくろう」にも活用されています。現場の安全衛生管理・熱中症対策をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

※「みまもりがじゅ丸®」は、NTTPCコミュニケーションズ株式会社の登録商標です。
※「みまもりがじゅ丸®」は、ヘルスケアサービスです。医療機器とは異なります。
※「みまもりがじゅ丸®」は、疾病を診断するサービスではありません。熱中症や頻脈などの症状を診断することはできませんのでご注意ください。

現場で働くヒトの❝いま❞を、見える安心に。みまもりがじゅ丸®

作業者が装着するウェアラブル端末から脈拍や位置情報をリアルタイムに取得・可視化し、熱中症対策やひとり作業時の安全・健康管理を支援するIoT見守りサービスです。現場で、人手をかけずに安全管理の高度化を実現します。