アイスタイルがGPUで挑む、@cosmeクチコミ2,000万件の価値化
株式会社アイスタイル
【取り組みの背景】
- AIを核とした新サービスの立ち上げに向け、2025年7月にAIイノベーション戦略室(現・AIイノベーション室)が発足し、生成AIの実用性検証に本格着手
- 20年以上かけて蓄積した2,000万件超のクチコミは大半が自由記述の「非構造データ」であり、AIによる価値化には大規模な計算資源が不可欠に
- 手元のノートPCでは、モデルによっては単純計算で処理に年単位~数年を要する規模で、仮説検証のサイクルが回らない状態だった
- 生成AIのOSSモデルを自社で動かして検証したくても、それを支える計算資源が社内になく、「試したくても試せない」ことが最大のボトルネックになっていた

【取り組みの成果】
- 高性能GPU(NVIDIA H200ベアメタル)環境の活用により、ローカル環境で年単位かかる計算だった処理が数日単位に短縮
- 限られた試験期間のなかで検証の大半を完了し、クチコミ以外の多様なデータから新たな価値を生み出す試験までチャレンジすることができた
- Qwen・GPT OSS・GemmaといったOSSモデルをファインチューニングを含めて検証し、「自前のモデルを現実的なコストと速度で運用できるか」という問いに実機で答えを出した
- H200環境でのAI推論は秒あたりの同時処理に十分耐えられ、全社規模でも特定業務であれば実務に乗せられる手応えを獲得
- 生成AIだけでなく分析基盤としても活用し、EC・メディア・店舗を横断した生活者行動の分析など、縦断的・横断的な分析が可能に
メディア・EC・店舗を融合した美容プラットフォーム「@cosme」を運営する株式会社アイスタイル(以下、アイスタイル)は2025年、20年以上かけて蓄積してきた膨大なクチコミをAIで価値に変える挑戦を本格化させ、検証基盤としてNTTPCのGPUクラウドを活用した。
本記事では、AIイノベーション室 室長の花野井俊介氏、同室の相馬雅樹氏、伊藤祐己氏の3名に、GPUクラウド導入の背景から検証の日々、今後の展望までを伺った。
「試したくても試せない」──最大のボトルネックだった計算資源
──膨大なデータをAIで活用し、その価値を引き出すには、十分な計算資源が欠かせない。アイスタイルが持つのは、2,000万件を超えるクチコミという独自のデータ資産だ。これをAIで本格的に活用しようとしたとき、大きな壁となったのが計算環境だった。同社のAIイノベーション室が、手元のノートPCでクチコミを分析した場合、処理にかかる時間の試算は「十数年」。精度の高い生成AIモデルを検証したいと考えても、十分な計算環境が社内にはなかった。それがいまでは、年単位かかっていた処理を数日で終えられるまでになった。同室は、従量課金ではなく月額固定のGPUクラウドで、金額を気にせず検証に打ち込む。汎用の生成AI APIに頼りきるのではなく、OSSモデル※1を自社で使いこなす。その先に見えてきたのが、エンジニアに限らず事業部側もGPUを使って挑戦していく、という次の景色だ。
※1 OSSモデル:オープンソースソフトウェアとして公開されている生成AIモデル。自社環境で動かすことができ、用途に応じたカスタマイズ(ファインチューニング)が可能
25年分の「生活者の本音」──@cosmeを支えるデータ資産
まずは、同社のビジョンと事業、そしてAIイノベーション室の役割について伺った。
──まず、アイスタイルのビジョンと事業概要、皆さまのご担当業務について教えてください。
花野井氏「アイスタイルは『生活者中心の市場の創造』をビジョンに掲げ、美容領域に特化してメディア・EC・店舗をつなげたプラットフォームを展開している会社です。中核にあるのは、化粧品の膨大な商品情報と、生活者の方々から長年寄せられてきた『クチコミ』を蓄積した独自のデータベースです。これを基盤に、@cosmeのメディア運営、EC(@cosme SHOPPING)、リアル店舗(@cosme STORE/@cosme TOKYO)、さらに化粧品ブランド向けのマーケティング支援事業までを垂直に手がけています。
私はAIイノベーション室の室長として、この蓄積されたデータ資産をAIでどう価値化し、生活者の体験価値の向上とブランド支援の両面に還元していくかを統括しています。とりわけ力を入れてきたのが、AIを活用した新たな領域への挑戦です。生成AIのOSSモデルが実務でどこまで活用できるのか、その実用性や可用性の検証から、社内業務へのAI活用を見据えたPoC※2まで、実際に手を動かしながら取り組んできました」
※2 PoC:Proof of Conceptの略。概念実証。新しいアイデアや技術の実現可能性を検証すること
導入の背景──2,000万件のクチコミ活用を阻んだ計算資源の壁
クチコミをAIで価値に変える挑戦は、どのように始まり、何に阻まれていたのか。まずは導入の背景から伺った。
──AIへの取り組みを本格化されたきっかけを教えてください。
花野井氏「本格的な取り組みは、2025年7月にAIイノベーション戦略室(現・AIイノベーション室)が発足したところから始まりました。直接のきっかけは、会社として『新しいAIサービスを世に出していこう』と本気で考え始めたことです。
ただ、構想を掲げるだけでは前に進めません。これを生成AIですべて賄うべきなのか、賄えたとしてコスト構造や運用を継続的に維持できるのか、そして何より生活者にとって本当に良い体験になるのか──こうした問いは、机上の議論では答えが出ません。実際に動かして確かめる必要がありました。当社は25年以上にわたって生活者の本音であるクチコミを蓄積してきましたが、その大半は自由記述の『非構造データ』です。この膨大な資産をAIで活かしきれる現実味が出てきたいま、構想の実現可能性を実験ベースで見極めていく──それが本格着手の起点でした」
この構想を起点に、検証の裾野はOSSモデルの実用性検証から社内業務への適用まで広がっていくことになる。
──実際に着手されて、どのような課題に直面しましたか。
花野井氏「着手当初は、手元のノートPCで処理を試みていました。しかし、当社が扱うのは2,000万件を超えるクチコミをはじめとする膨大なデータで、これを真正面から処理しようとすると、モデルによっては単純計算で年単位、場合によっては数年かかってしまう規模でした。アイデアを思いついても結果が出るのは遠い先、という状態では、AI活用に不可欠な仮説検証のサイクルがまったく回りません。
加えて、生成AIのOSSモデルを自社で動かして実用に足るか検証したくても、それを支える計算資源が社内にない。『試したくても試せない』ことが、最大のボトルネックになっていました」
並列処理が可能な高性能GPU環境の確保は、避けて通れない課題だった。
「議論より、まず動かす」──H200ベアメタルで重ねた検証の日々
こうして同社が活用することになったのが、NTTPCの高性能GPUクラウドだ(選定の経緯は後述)。H200のベアメタル※3環境を得た同社は、何を試し、どんな壁を越えてきたのか。
※3 ベアメタル:仮想化を介さず、物理サーバーを1社で専有して利用する提供形態。リソースを他の利用者と共有する一般的なクラウドサービスと異なり、他の利用者の影響を受けることなく、GPU本来の性能をフルに引き出せる。NTTPCのWebARENA IndigoGPUでは、NVIDIA H200(SXM)を8基搭載した物理サーバーを、月額固定の料金で専有できる
まずはお気軽にご相談ください。
壁は技術より、社内の合意形成だった
──取り組みのなかで苦労された点や、印象に残っているエピソードを教えてください。
花野井氏「技術検証そのもの以上に苦労したのは、機密性の高いデータをクラウドで扱うことへの社内合意形成でした。丁寧な説明と、小さく始めて実績を積む進め方が必要でした。
印象的だったのは、実証段階からNVIDIA H100やNVIDIA B200といった多様なGPUサーバーを実際に試させていただき、それぞれの特性や使い方を学びながら、最終的にH200の環境にたどり着けたことです。机上の比較ではなく、実機で手を動かしながら最適解を見つけられたのは大きな経験でした。実際に小規模で『動くもの』を作って共有した瞬間に社内の議論が一気に前向きに変わり、『議論より、まず動かす』ことの効果を実感しました」
検証の過程では、最新鋭のB200が同社の用途にはオーバースペックであることも分かったという。様々な選択肢を比較できたからこそ、H200が最適という結論にたどり着けた。
単発の推論だけでなく、マルチエージェント的に動作するデモを社内に共有したことで、「自分たちもやりたい」という声が事業部側からも上がるようになり、そこからR&Dが本格的に進むようになったという。
3つの検証──OSSモデル・社内DX・生活者体験
──この環境で、具体的にどのような検証を進められたのですか。
花野井氏「今回の取り組みの主眼は、新たな領域で検証を兼ねて実際に動かして確かめることにありました。大きく3つの軸で進めてきました。
ひとつ目は、生成AIのOSSモデルの実用性・可用性の検証です。汎用の大規模モデルにすべてを委ねるのではなく、Qwen・GPT OSS・GemmaといったOSSモデルを実際に動かし、それぞれにファインチューニング※4を施しながら、自社用途にどこまで使いこなせるかを検証してきました。H200環境でQwenシリーズをAI推論に用いたところ、秒あたりの同時処理に十分耐えられ、全社規模でも特定業務であれば実務に乗せられるという手応えを得ました。テキスト生成にとどまらず、画像生成や音声生成など多様な生成モデルの実験も重ねており、『自前のモデルを現実的なコストと速度で運用できるのか』という問いに、実機で答えを出せたことは大きな成果です」
ふたつ目の軸は、データ加工と社内DXへの組込み実験だ。相馬氏が続ける。
相馬氏「膨大なクチコミをはじめとするデータをAIで加工・構造化し、AI推論を業務に活用するアプリケーションを実験的に開発してきました。たとえば、薬機法※5や景品表示法に関わる表現チェックのような業務です。すべてをAIに置き換えることはできなくても、かかる時間は確実に削減できる──そうした手応えをひとつずつ確かめながら、『PoCで動く』ことと『実務で毎日回せる』ことの両者を鑑みながら検証しています」
そして、みっつ目の軸が生活者体験への還元だ。
伊藤氏「すでに@cosmeアプリでは一部商品にクチコミ要約機能を導入していますが、目指しているのは単なる情報整理ではありません。長年蓄積された膨大で信頼性の高いデータを武器に、用途ごとに最適なモデルを組み合わせながら、一人ひとりの好みに合った最適なコスメ選びをサポートする体験の実現を目指しています」
※4 ファインチューニング:事前学習済みのAIモデルに対して、自社のデータで追加学習を行い、特定の用途に最適化すること
※5 薬機法:「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。化粧品の効能・効果に関する表現などが規制されている
──OSSモデルを自社で使いこなす検証には、どのような狙いがあるのでしょうか。
相馬氏「AI駆動開発が広がり、APIを消費する流れが強まる中で、選択肢を複数持っておくことが重要だと考えています。業務には、定常的に回すものと、継続的に改善していくものの2種類があります。定常業務であればオンプレミスや自前のOSSモデルでも十分やっていける。その見極めができたのは、今回の環境で幅広く検証させてもらえたからです。蒸留されたモデルも含め、Hugging Face※6のモデルを本当に幅広く試行できたのは大きな収穫でした」
※6 Hugging Face:AIモデルやデータセットを共有・公開するプラットフォーム。多くのOSSモデルがここで公開されている
花野井氏「モデルの進化は非常に速いので、特定のモデルに依存するのではなく、独自のデータという土台を強みに、どんなモデルでも使いこなせる状態をつくることを重視しています。OSSモデルを選択肢として持っておくことは、BCP※7や地政学的リスクへの備えにもなります。いざというときの選択肢を増やしておく意味でも、実機で幅広く検証できたことは大きかったですね」
※7 BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)の略。災害やシステム障害、外部サービスの停止といった不測の事態が起きた際にも、重要な業務を止めずに継続・早期復旧できるよう、あらかじめ備えておく計画のこと
分析基盤としても「思う存分」──データが見せた生活者のリアル
検証の対象は生成AIにとどまらない。GPU環境は、大量のデータを高速に処理する分析基盤としても威力を発揮している。
──生成AI以外の用途でも効果はありましたか。
相馬氏「大容量のデータを高速で処理できるのは本当にありがたいですね。当社はサービスが多様で、ユーザーの行動データもアクセス数も膨大なので、分析は非常に大変でした。GPUサーバーをAI用途だけでなく、分析基盤として思う存分に使える。これが楽しくて(笑)。たとえば、細かい肌の悩みにどんな傾向があるのかを分析できるようになったり、『店舗では買わなかった商品を、あとからECで購入する』といった生活者の動きを追えるようになったり。縦断的・横断的な分析ができるようになったんです」
伊藤氏「私自身、さまざまなお客さまのロイヤリティを高めるために何が必要かを、業務や実際の販売現場で議論してきた経験があります。EC・メディア・店舗のすべてを使いこなしていただくことが理想ですが、実際には、それぞれを個別に利用されているお客さまも多くいらっしゃいます。データを横断的に分析できるようになったことで、そうした利用傾向を客観的に把握できるようになりました。単一のチャネルだけを見ていては得られない情報です。
また、データを管理する側と活用する側の間にあった分断を越えるきっかけを作れたことです。データは分散して管理した方が管理しやすい一方で、分析には使いにくくなる。まとめることで分析しやすくなり、事業側と管理側で分析のサイクルを回すきっかけにもなりました。事業部側から『こんなこともできないか』というアイデアが出てくるようになったのも、うれしい変化です」
さらに花野井氏は、データの蓄積とAIの高度化を相互に循環させていく重要性を指摘する。
花野井氏「一見すると、それだけではあまり意味を持たないように見えるクチコミでも、ほかのユーザーとの相対的な関係性や商品情報などと組み合わせることで、見えてくるものがあります。そうしたデータを横断的・縦断的に見られる形で蓄積していけば、AIもより多くの文脈を捉えられるようになる。データが蓄積されることでAIが強くなり、AIを活用することでまた新たな価値をデータから引き出せる。そうしたループを回しながら、継続的に検証していくことが重要だと思っています」
年単位の処理が数日に──一段上がった「生活者の解像度」
──一連の検証を通じて得られた効果を、改めて教えてください。
花野井氏「効果は劇的でした。ローカル環境では年単位、モデルによっては数年かかる計算だった処理が、高性能GPU(H200ベアメタル)環境では数日単位にまで短縮されました。結果として、限られた試験期間のなかでも検証の大半を完了でき、クチコミだけでなく、さまざまな種類の情報から新たな価値を生み出す試験まで終えることができました。
何より大きいのは、新たなAIサービスの構想を生成AIで賄えるのか、自前のチューニングで現実的に運用できるのか、社内DXの未対応領域にAIが効くのか──これまで仮説の域を出なかった問いに、実機で答えが出たことです。必要なときだけ計算資源を使うことでコストも用途に応じて最適化でき、スピードが上がったことで、実証にまで踏み込めるようになった点が、最も大きな変化です」
──サービスの観点では、どのような可能性を感じていますか。
伊藤氏「AIの計算速度は非常に魅力的で、これまで以上に現実の状況を細かく捉えたサービスがつくれるようになると考えています。たとえばレコメンドであれば、購買履歴から『どのような商品を購入したか』を見るだけではなく、その購入が流行による一過性のものなのか、あるいは季節や一定の期間に繰り返される傾向なのかといった、時間軸を含めた背景まで考慮できるようになります。そうした情報を踏まえて、その方にとって適切なタイミングで、適切な提案を届けたい。ユーザーから見える体験はあくまでシンプルで分かりやすくしながら、裏側では蓄積してきたさまざまなデータを複雑な関係性も含めてモデリングする。そうすることで、一人ひとりの状況や変化により寄り添ったパーソナライズが実現できると思っています」
そして、一連の検証で得た最大の手応えを、花野井氏はこう表現する。
花野井氏「実際に手を動かし、モデルでデータを処理してみて初めて、これまで見えていなかったものが見えました。集計では平均に埋もれていた少数の切実な声、言語化されていなかった購買の決め手、クチコミの行間にある本当の悩み。『生活者の解像度』が一段上がったことが、何よりの収穫でした」
なぜクラウドで、なぜNTTPCだったのか──月額固定の料金と「Innovation LAB」
こうした検証を支えた環境を、同社はどのように選んだのか。ここからは、導入前の検討の経緯を伺った。
オンプレミスか、クラウドか
計算資源の確保にあたり、同社は当初、オンプレミスでの設備導入も視野に入れていた。BCPの観点や、個人情報を含むセキュアなデータを扱う前提を踏まえた検討だった。
──選定時にどのような選択肢を比較検討されましたか。また、重視されたポイントを教えてください。
花野井氏「検討にあたっては、同等のGPUサーバーを扱うベンダーやクラウド事業者など、5~6社にヒアリングを行いました。重視したのは、(1) 高性能GPUを必要なときに確保できる柔軟性、(2) 実証実験から本番運用まで段階的に移行できること、(3) 大きな初期投資を避けつつコストの見通しが立つこと、(4) 機密性の高いデータを扱う前提での安心感、の4点です。
オンプレミスでの設備導入は資産として残る一方、需要の読みにくい検証フェーズでは過剰投資や遊休のリスクが大きく、何より『試したいときにすぐ試せない』点が目的に合いませんでした。私たちがやりたかったのは、OSSモデルの実用性をまず見極めること。であれば、必要なリソースを機動的に使えるクラウドを主軸に据えるのが理にかなっている、という判断でした」
「金額を気にせず試していい」──従量課金ではなく、月額固定
──コスト面では、どのような点を評価されましたか。
花野井氏「従量課金ではなく月額固定の料金体系である点は大きかったですね。GPU系の従量課金を正確に見積もれる企業は非常に少なく、金額が分からない状態で走らせるとコストが想定を大きく超えてしまうことがあります。実際、APIキーの従量課金で検証していた際には、一人で100万円規模の費用がかかってしまったこともありました。それもあって、膨大なデータを本気で処理するなら『ベアメタルじゃないと無理だ』というのが正直な実感でした」
相馬氏「検証する側からしても、金額を気にしないで使っていいというのは非常にやりやすいです。GPUの利用量は事前に想像がつきませんから、コストを気にせず検証に集中できる環境の価値は大きいと感じています」
決め手は「Innovation LAB」と、NTTの信頼性
──NTTPCを知ったきっかけや、選定いただいた理由を教えてください。
花野井氏「もともとは、ハードウェアサーバーとデータセンターの導入を目的に、自分で調べる中でNTTPCさんにたどり着きました。当初は自社設備の導入を想定していましたが、実証実験レベルから試せるクラウド環境のご紹介や、共創パートナープログラム『Innovation LAB』※8のご提案をいただいたことが決め手になりました。これにより、H100・H200・B200といった高性能GPUを『実務レベルで試す』ことが、一気に現実的になったのです。新しい領域への最初の一歩を、低いリスクで踏み出せたことの意味は大きいと感じています。
加えて、NTTグループという圧倒的な信頼性が社内承認を後押ししてくれた点も大きかったです。投資判断のハードルが高い取り組みだからこそ、信頼できるパートナーと段階的に進められたことが、スピードと安心の両立につながりました」
※8 共創パートナープログラム「Innovation LAB」:NTTPCが提供する共創パートナープログラム。GPU検証クラウド環境の提供や技術支援、パートナー間の交流機会などを通じて、AIを活用した新規ビジネスの共創を支援する
このプログラムを通じて高性能GPUに触れた体験を、花野井氏はこう振り返る。
花野井氏「あの"化け物みたいなパワー"をすぐに回せるのは本当にすごい体験でした。環境がなければデモも検証もできません。『Innovation LAB』のような取り組みを知らない企業もまだ多いと思いますが、これはもっとみんなに知ってほしいですね」
──NTTPCに今後期待することをお聞かせください。
花野井氏「さまざまなベンダーとお話ししてきましたが、NTTPCさんのように選択肢を広げてくれる存在は本当に貴重です。たとえばスタートアップの尖ったサービスは、魅力を感じても、企業として直接採用するにはハードルが高い。それがNTTPCさんを介することで、安心して選べるようになります。今回も非常に柔軟に対応していただきました。大手の信頼性とスタートアップの機動力をつなぐパートナーとして、今後も期待しています」
今後の展望──パワポの企画書が、動くモックアップに変わる
──最後に、AI技術の進化が貴社のサービスにもたらす可能性と、今後実現されたいことをお聞かせください。
花野井氏「AIの進化は、当社が25年以上かけて蓄積してきた『生活者の声』を、これまでにない解像度で価値に変える可能性を持っています。クチコミは単なるデータではなく、一人ひとりの実体験です。それをAIが丁寧に読み解くことで、生活者には自分に本当に合うコスメとの出会いを、ブランドには想いを届ける機会を、そして社員には創造的な時間を提供したいと考えています。
AIを『使う』だけでなく『正しく使いこなす』力を育てながら、未知の領域へ検証を兼ねて踏み込む姿勢を続け、AI×@cosmeだからこそ実現できる新たな体験を追求し続けていきます」
伊藤氏「GPUサーバーを使うことは、もはやエンジニアだけのものではなくなりました。セットアップはNTTPCさんのような事業者が手伝ってくれますし、その後の運用も、いまはAIに聞けば分かることが多い。事業部側こそ積極的に使っていくべきだと思っています。事業部側でラピッドプロトタイピングを行い、その先のエンジニア開発へ渡していく。パワーポイントの企画書が、動くモックアップに変わっていくイメージです。もちろん、エンジニアの専門性が不要になるわけではありませんが、挑戦の入り口は確実に広がっています」
インタビューを通じて印象的だったのは、3名の明るい掛け合いだ。「こんな分析もできた」「これも試してみたい」と、互いの話に乗せて次々とアイデアが飛び出す様子から、GPU環境を得たチームが検証そのものを楽しんでいることが伝わってきた。25年以上蓄積されてきた生活者の声と、それを価値に変えるAI・GPU基盤。その掛け合わせが生み出す「AI×@cosme」ならではの新たな体験に、今後も注目が集まる。

GPU製品・サービス
AI/IoT、デジタルツイン用途に適したGPUサーバーを設計・構築。さらにデータセンター・ネットワークなど、GPU運用に必要なシステムをワンストップで提供可能。
※NVIDIA、NVIDIA H100、NVIDIA H200,NVIDIA B200は、米国およびその他の国におけるNVIDIA Corporationの商標または登録商標です。
※WebARENA IndigoGPUはNTTPCコミュニケーションズの登録商標です
※本記事は2026年6月時点の情報に基づいています。製品・サービスに関わる情報等は予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。メーカーが公表している最新の情報が優先されます。