「AIに使われる」から「AIを使いこなす」へ──エクシオ・デジタルソリューションズが描く生成AI活用と組織づくり
園 洋志 さま
小野 大輔 さま
佐村 俊幸
【取り組みの背景】
- 事業の約3分の2はソフトウェア開発。AI駆動開発の進展は、事業の存続に関わるテーマ
- 「AIに仕事を奪われる」のではなく「AIを使いこなして生き残る」——この危機感が全社活用の出発点
- 2025年度はリテラシー向上に注力。個人の活用は広がった一方、業務への組み込みが課題に
【取り組みのポイント】
- 「リテラシー向上(2025年度)→業務への組み込み(2026年度)→業務変革・成果創出(2027年度)」の3段階で推進。各組織にアンバサダー(推進役)を配置し、生成AI推進センタ(AI CoE)が裏方で支援
- ソフトウェア開発では2〜3割のヘビーユーザーを起点に活用が一気に拡大し、2026年に入り営業・バックオフィスにも波及
- 普及が進むにつれ、セキュリティ審査や従量課金(クレジット制)のコスト管理という新たな課題にも直面
- 今後は「AIで業務効率化」から「AIを使ってどうビジネスを拡大するか」へ。人材育成・採用のあり方も転換期に
- 鍵は「環境を渡して終わり」にしない仕組み化と、社外コミュニティとの情報共有
「AIに仕事を奪われる側になるのではなく、AIを使いこなして生き残る」——通信建設を源流に、通信インフラ・社会インフラ・システムソリューションの3つの事業を展開するエクシオグループ。そのシステムソリューション事業を担うエクシオ・デジタルソリューションズ株式会社(以下、EDS)は、事業の約3分の2を占めるソフトウェア開発を中心に、セキュリティを担保し安心して使える環境を整えながら、生成AIの活用を全社的に進めている。本記事では、EDSでAI推進を統括する取締役執行役員 ソリューション統括本部長の園 洋志氏、生成AI推進センタ(AI CoE:Center of Excellence)を兼務し現場の実務に精通する小野 大輔氏と、NTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)CMOの佐村俊幸による対談形式で、エクシオグループ・EDSのAI・DX推進の取り組みを紹介する。事業としての課題認識から、段階的な推進体制、現場での活用実態、導入時の課題、今後の展望までを伺った。
通信建設を源流とするエクシオグループと、デジタルを担うEDS──事業の現在地
まずは、エクシオグループとEDSの事業の全体像から話を伺った。
佐村「エクシオグループさまはGPUやネットワークなど、さまざまな面でNTTPCとご一緒させていただいているパートナーです。まずは御社の事業内容について、概要から教えていただけますか。」
園氏「エクシオグループは、いわゆる通信建設会社として知られていますが、現在は大きく3つの事業セグメントに分かれています。1つは通信網を構築する『通信インフラ事業』。2つ目は、近年データセンターの比率が高まっている『社会インフラ事業』。3つ目が我々の領域である『システムソリューション事業』です。このシステムソリューション事業を、更に発展、拡大させていく中核会社の役割を与えられているのが、私たちエクシオ・デジタルソリューションズ(EDS)になります。」

園氏「EDSの事業の柱は大きく2つ、ソフトウェアの受託開発と、ITインフラ構築です。ソフトウェア開発はNTTグループをはじめ、通信キャリア・官公庁・金融・製造など幅広い分野のお客さまから受託しています。あわせて、法人案件のネットワークやサーバーの構築なども手がけています。
事業領域としては、既存のお客さまとの取引で成り立っている『ベース領域』、お客さまから直接案件を受けてコンサルティングまで含めて取り組む『注力領域』、そして新しい技術に挑む『先行領域』の3つに分けており、生成AIはこの先行領域にあたります。」
【捉え方】「AIに取って代わられる」危機感を、事業を変えるモチベーションに
エクシオグループ・EDSにとって、生成AIは単なる業務効率化の道具ではない。事業そのものの存続に関わるテーマだという。
佐村「私たちもそうなのですが、昨年は『生成AIを活用すること』自体が目的化してしまう場面がありました。EDSさまでは、そもそもどのような課題意識から生成AIに取り組まれてきたのでしょうか。」
園氏「我々の事業の約3分の2はソフトウェア開発です。AI駆動開発が進むと、いずれAIに取って代わられる——そういう未来が見えてくると、事業として大きな危機感があります。だからこそ、『AIに仕事を奪われる側になる』のではなく、『AIを使いこなして生き残る』。これが事業としての強いモチベーションになっています。」
園氏「具体的には、まだウォーターフォール型で開発している大規模システムにAIをどう取り込んでいくか、書いたコードの品質やセキュリティ脆弱性をAIでどうチェック・改善するか、といったところに取り組んでいます。ITインフラ構築の領域も同様で、AIを活用していかなければ競争力を失っていくという危機感があります。」
佐村「ソフトウェア開発の現場が、まさに最前線で変化に直面しているのですね。」
園氏「そうですね。業務効率化というより、ビジネスそのものが変わっていくという前提で、使っていかないと生き残れないと考えています。」
【推進体制】リテラシー向上→業務組み込み→業務変革の3段階
事業としての危機感を、どう全社の動きに変えているのか。同グループは、3段階のフレームと部門横断の体制で推進している。
園氏「グループ全体として、3つのステップで進めています。2025年度は『リテラシー向上』。利用者数をKPIに、まずはみんなにしっかり使ってもらう年でした。基本的な活用スキルの研修などを行い、個人レベルでの活用が広がりました。2026年度は、それを『業務に組み込む』フェーズ。そして2027年度には、業務変革・成果創出として、AIを使ったビジネス価値の創出まで踏み込んでいきたいと考えています。」
佐村「その3段階は、どのような体制で進めていらっしゃるのですか。」
園氏「グループ全体では、人材開発部、社内ITを見るDX戦略部、そしてセグメントを横断して施策を考えるデジタルコンサルティング本部などが連携し、各組織に推進役のアンバサダーを置いています。教育やIT面の支援、コンテンツ提供、AI活用サポートを、この連携で進めています。」

佐村「生成AI推進センタは、その中でどのような役割を担っているのでしょうか。」
園氏「生成AI推進センタは、生成AIに関する専門知識と技術を集約し、EDSだけでなくエクシオグループ全体のAI推進を担う組織です。全社的にはデジタルコンサルティング本部が旗を振り、生成AI推進センタはその核として裏方で支える建て付けです。あわせて、R&D(研究開発)の事務局・マネジメントも担っています。AIのCoEとして組織横断で形成されており、メンバーの多くは兼務で、幅広く動いています。」
各組織に置かれたアンバサダーが活動しやすいよう、教育や交流の施策も並行して整えている。
園氏「アンバサダー向けの研修コンテンツも準備を進めています。AIに関する理解に加え、ローコード※1体験とAIエージェント体験の2つのハンズオンを用意しました。研修だけでなく懇親会も開いて、全国に分散しているメンバー同士の横のつながりをつくることも意識しています。AI活用を個人の工夫で終わらせないために、社内で事例集のサイトを用意する、アイデアコンテストを実施するなど、行動した人や使い方を共有した人を称賛する仕掛けを作っています。年度末には成果発表会や社長表彰も予定していますよ。」
※1 ローコード:プログラミングをほとんど行わずに、画面操作を中心にアプリケーションを開発できる手法
【現場の実際】ソフトウェア開発とインフラで異なる活用の温度差
現場では、生成AIはどう受け止められているのか。領域によって温度感は大きく異なるという。
佐村「ソフトウェア開発とITインフラでは、現場の生成AIの捉え方に違いはありますか。」
小野氏「トーンがかなり違いますね。ソフトウェア開発では、もうゼロからコードを書く人はいないのではないかと思うくらいで、ある程度のドラフトまで一気に作れます。新しいことに億劫な人もいますが、2〜3割がヘビーユーザーとして動き始めると、全体に一気に広がっていきます。当社はいま、ちょうどその分かれ目を超えたところです。ツールとしては、GitHub Copilot※2を中心に使っています。一方、インフラ領域ではまだ限定的です。インフラは複数のシステムを組み合わせて構築するため、個々の機器単位で生成AIを使っても効果が出にくいんです。ただ、トラブルシューティングやドキュメント生成、運用マニュアルの作成、調べものといった用途でははっきり効果が出るので、その辺りから使い始めています。Microsoft 365 Copilot※3もかなり優秀になってきましたし、業務情報を入力してよいというルールを整えたことで、安心して使える環境になってきました。」
佐村「現場でも、もう使うのが当たり前という段階に来ているのでしょうか。」
小野氏「今年に入ってトーンが大きく変わったと感じます。バックオフィス(コーポレート本部)や営業も、チームを組んで積極的に使おうとする姿勢が出てきました。セキュリティに関するお問い合わせも増えていて、モチベーションが上がってきている印象です。」
園氏「今年度のテーマが『業務に組み込む』ことなので、営業もバックオフィスも含めて活用していく体制をEDSの中でつくっているところです。昨年は学びの年でしたが、今年はしっかり使って成果につなげていきます。もちろん、AIが事実と異なる回答をすることもあるので、その点は慎重に扱っています。」
営業・マーケティングの現場でも活用は具体的だ。
園氏「営業では、お客さまの情報や経営環境を事前に収集する際に、生成AIでおおよその全体像をつかみ、自社ソリューションがマッチするかを『壁打ち』する、といった使い方をしています。マーケティングでは、調べものはもう検索よりも生成AI中心です。たとえば他社が生成AIをどう使っているかの事例調査などは、かなり効率的に行えます。生成された内容が正しいかどうかを見極めにくい点には、注意して使っていますね。」
※2 GitHub Copilot:GitHubが提供するAIによるソフトウェア開発支援ツール。コードの補完・生成のほか、エージェント機能による開発支援を行う
※3 Microsoft 365 Copilot:WordやExcel、Teamsなど、Microsoft 365の各アプリケーションに組み込まれた生成AIアシスタント

【導入の壁】セキュリティ審査と、AIクレジット(従量課金)という新たな課題
普及が進む一方で、導入には固有の難しさもあった。
佐村「2025年から2026年にかけて、導入で苦労された点や壁になった部分はありましたか。」
園氏「やはりセキュリティの担保です。社内のDX戦略部による審査を設け、新しいツールが出てくるたびに一つひとつチェックして可否を判断しています。これは結構な手間がかかります。Copilot Studio※4も、検証を兼ねて今年から使い始めたところです。アンテナの高い人は早く使いたいのですが、会社として確認してからとなるので、そこは大変でしたね。」
園氏「そして、実はこれからが一番の悩みどころです。GitHub Copilotをはじめとした料金体系が従量課金(クレジット制)に変わり、上限に達してしまう人も出てきます。会社としてどう運用するか、頭を悩ませ始めています。便利になるほど考えなければならない、というのが正直なところです。」
佐村「セキュリティも含めて安心して使えるようになると、もう使わない日がないくらいになりますよね。」
園氏「ソフトウェア開発のチームは、まさにそうです。最初に推奨ツールとしてGitHub Copilotを導入し、社内の申込ページから簡単に使い始められるようにしました。ただ、対話型からエージェント型へと機能が進化すると、クレジットの使い方も変わってくる。便利な反面、難しさもあります。」
※4 Copilot Studio:Microsoftが提供する、AIエージェントやチャットボットをノーコード・ローコードで構築できるツール
【今後の展望】AIを「業務効率」から「ビジネス拡大」へ

2026年度から2027年度に向けて、エクシオグループ・EDSはどこを目指すのか。
佐村「今後、どのようにAI・DXを進めていこうとお考えですか。」
園氏「ビジョンとしては、事業としてどうAI時代を生き抜いていくか。これは走りながら考えている段階です。社内で活用するのは当たり前として、業務プロセスへ落とし込んでいく。これまでは現場主導で『こう使うといいね』と進めてきましたが、これからは事業責任者の目線で、どの業務プロセスにAIを使うべきかを設計していく。それが今年のテーマです。」
園氏「ソフトウェア開発では、コードを書くこと自体の価値が相対的に変わっていきます。だからこそ、業務知識や専門知識を持ってAIを使いこなし、お客さまの課題に応える力がより重要になります。それにともない、人材育成や採用のあり方も変わってきます。人数を確保して対応するモデルから、高いスキルを持つエンジニアが付加価値を生むモデルへと、軸足を移している段階です。」
佐村「これまでは『使って業務効率が上がりました』で済んできたものが、今年あたりからは、ビジネスにどう活用して収益を上げるか、という段階に移りつつありますね。」
園氏「そうですね。来年度以降は、『AIで業務効率化』から『AIを使ってビジネスをどう拡大するか』へと、中期的な見方が変わってくると思います。」
AI・DX活用を進める企業へ──仕組み化と情報共有のすすめ
最後に、これからAI・DX活用に取り組む企業に向けて、現場で得た学びを伺った。
佐村「これからAI・DX活用を検討する企業に、活用促進に繋がるようなヒントを教えていただけますか。」
小野氏「AIが他のITツールと最も違うのは、『使い方が決まっていない』ことだと思います。使う人によってアウトプットの品質が変わるので、現場に『使えばいい』と任せきりにすると、具体的な進め方が分からず戸惑ってしまう。これは現場の問題ではなく、進め方を設計する側が解くべき課題です。実は、私たち自身も最初はそうでした。だからこそ、アンバサダーを置き、手順やテンプレート、現場でうまくいった事例を中央に集約して共有する仕組みを積み上げています。ある調査でも、こうした『仕組み化』を進めることが効果的だと示されています。大切なのは、研修で『分かった』で終わらせず、現場が『これは使えそう』と感じられる状態まで引き上げること。『分からなければこの人に聞けばフォローしてくれる』体制まで含めて、組織的に取り組むことが大切です。」
情報共有の重要性も、両氏が口をそろえて強調した。
小野氏「私はAI研究会のようなコミュニティに参加していて、さまざまな業種でAIをミッションに持つメンバーと研究や交流をしています。社内だけで進めていると、自分たちの立ち位置が見えにくくなるんです。外と情報共有して現在地を確認し、良い取り組みは取り入れさせてもらう。そうした環境に身を置くことが、特にAIに関しては大切だと感じています。AIを定着させ、さらに飛躍させるところまで見据えて設計し、行動する。そこまでやって初めて、やりっぱなしで終わらなくなると思います。」
園氏「私は、『AIだから』と特別に意識しすぎてはいない、という感覚もあります。社内のDXという意味では本質は大きく変わらない。ただ、とにかくスピードが速い。だからこそ、自分たちだけでどうにかしようとせず、知見のある方やコミュニティに聞いたほうが早い。そう考えています。」
佐村「私たちNTTPCも同じ思いです。本日はありがとうございました。」
「AIを使いこなして生き残る」——その言葉を出発点に、エクシオグループ・EDSはリテラシー向上から業務への組み込みへと、段階を追って取り組みを進めている。仕組み化と情報共有を重視しながら、その先の業務変革・成果創出のフェーズへ。同グループの今後の歩みに注目したい。
※Microsoft、Microsoft 365、Microsoft 365 Copilot、Word、Excel、Teams、Copilot Studioは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。
※GitHub Copilotは、GitHub, Inc.の商標または登録商標です。