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REPORT

「Innovation LAB Meetup Night #2」を開催~ 活発な情報交換とパートナー交流の場に ~

2024年2月13日、生成AI/LLMをテーマとした「Innovation LAB Meetup Night #2」を開催しました。このイベントは、NTTPCが主催する共創パートナープログラムに参加するAIスタートアップやハイテクメーカー、学術研究、一般産業分野の企業・団体の皆さまが集まり、先端技術やビジネスに関する情報交換と交流を図ることを目的としています。

イベントは立食パーティー形式で行われ、基調講演やセッションを挟みながら、約80社/200名の来場者が一堂に会し、リラックスした雰囲気の中で親睦を深めました。
この記事では、当日行われた基調講演と2つのセッションの内容を中心に紹介します。

  • Innovation LAB Meetup Night #2 会場の雰囲気1
  • Innovation LAB Meetup Night #2 会場の雰囲気2
  • Innovation LAB Meetup Night #2 会場の雰囲気3
  • Innovation LAB Meetup Night #2 会場の雰囲気4
  • Innovation LAB Meetup Night #2 会場の雰囲気5
  • Innovation LAB Meetup Night #2 会場の雰囲気6

講演
NTT独自の軽量LLM「tsuzumi」の挑戦とビジョン

  • 西田 京介 氏

    NTT人間情報研究所

    上席特別研究員

    西田 京介 氏

「tsuzumi」はNTTグループが2023年11月に発表した独自のLLMで、2024年の春から商用サービスを開始します。講演では、tsuzumiの開発を担当したNTT人間情報研究所の西田京介氏が登壇。西田氏は、昨今の言語モデルの大規模化による課題(膨大な電力消費など)を指摘した上で、軽量でありながら世界トップレベルの日本語処理性能を持つtsuzumiの特長やビジョンなどについて語りました。

専門知識をもった小さなLLMの集合

西田氏:NTTが目指すAIの未来は、大量の計算機資源を必要とする巨大なLLMではなく、専門性や個性をもった小さなLLMの集合知による社会課題解決です。そのために私たちは、小型で性能の良いLLM「tsuzumi」の研究開発に取り組んでいます。

tsuzumiの名前は、和楽器の“鼓”から取っています。私たちは、研究開発を進めるにあたり、楽器の“鼓”になぞらえて、「日本語に特に強いこと」、「小型・軽量ながらも良い性能を持つこと」、「チューニングが柔軟に行いやすいこと」、そして「マルチモーダルへの拡張ができること」を目指し、これらを強みとすべく取り組んでいます。

「小型・軽量」という方向性を明確に選んだことは、現在の大規模言語モデルの潮流とは異なるものです。私たちは、LLMの大規模化・一極集中化ではなく、異なる個性を持った多数のAIが連携することにより、ヒトとAIが一緒に社会のWell-beingを実現する未来を目指します。

講演中の西田氏

tsuzumiがフォーカスするマーケット

西田氏:これまで、メディカル領域やソフトウェア開発など専門用語や業界特有の表現が多く含まれる分野では、汎用AIが十分な性能を発揮しないケースも多々あったかと思います。tsuzumiは、こうした業界特有のデータに対してもカスタマイズが可能なため、AIを活用できる領域を広げることができます。

また、顧客サポート領域では、お客さまのCX向上のために、マニュアル類の読解とお客さま情報のアップデートによるパーソナライズが不可欠です。tsuzumiは、世界トップクラスの日本語処理能力とともに、図表読解も可能なため、コンタクトセンターや相談チャットボットといった顧客サポート領域での進化を支援します。

tsuzumiは、特に「クローズドデータをセキュアに学習させたい方」、「日本語が得意で柔軟なチューニング、マルチモーダルなLLMを求めている方」、そうしたお客さまに向けてビジネスを展開していきたいと考えています。

セッション1
なぜ独自LLMが必要なのか?その戦略とビジョン

  • 佐々木 雄一 氏

    Spiral.AI株式会社

    代表取締役

    佐々木 雄一 氏

  • 山口 祐 氏

    Turing株式会社

    Director of AI

    山口 祐 氏

  • 西田 京介 氏

    [ファシリテーター]

    NTTPCコミュニケーションズ

    サービスクリエーション本部長

    三澤 響

最初のセッションのテーマは、「なぜ独自LLMが必要なのか?その戦略とビジョン」です。生成AI/LLM開発の専業であるSpiral.AIの佐々木雄一氏と、自動車メーカーとして“未来の車・完全自動運転EV”を造るTuringの山口祐氏をお迎えし、独自LLMの開発に取り組む理由を伺いました。

なぜ独自LLMが必要なのか?

三澤:なぜ独自LLMが必要なのか。自社で独自LLMの開発を行う理由について教えていただけますか?

山口氏:車で使う場合、Chat GPTなどのAPIではレイテンシが課題です。APIの応答に数秒~数十秒かかってしまうため、自動運転のような、高速かつ堅牢な判断が必要とされる場では役に立ちません。運転中は、時速100kmでは1秒で27m進み、通信も安定しません。したがって、車の中で安定して高速で動くLLM、AIモデルを開発する必要がありました。

佐々木氏:弊社が独自LLMを作る理由は、一言で言うと「Chat GPTが真面目すぎる」から。弊社はより人間に近いAIに求めるものとして「会話の正確性」よりも「会話の楽しさ」が重要だと考えています。現在開発中のLLMでは、ある著名人にヒアリングした内容を学習させているので、フランクでありつつも思想のある答えが返ってきます。

独自LLM開発における技術的アプローチ

三澤:独自LLMを開発する上で大切にされている技術的アプローチについても教えていただけますでしょうか?

山口氏:自動運転に向けて、キーポイントとなるのはマルチモーダル化です。我々人間は運転する際に視覚から外界のさまざまな情報を手に入れています。一方、LLMはテキスト情報だけで学習することが多いため、LLMに視覚情報を統合しマルチモーダル化していくことが重要になります。

佐々木氏:作っていて鬼門だなと思うのが「記憶」です。たとえば、「東京ディズニーランドはどこにありますか?」と聞いたときに、今の言語モデルはインターネット上の情報から学習しているので、「千葉」と深く紐づいてしまいます。これをいかに忘れさせて本人の「勘違い」を再現してあげるか。これはエンタメ路線に限らず、企業においても独特な企業文化や知識を埋め込むにはどうすればいいのかという同じ問題にいずれ直面すると思います。

また、仮に「人間の個性」が過去の経験の積み重ねで作られているとすると、それをしっかり積み重ねてインプットしていく作業が必要になってくるのではないかと思います。

山口氏:自動運転もまさに同じで、人間は運転していない時間の知識や経験も使って運転しているのではないかと。だから、運転というタスクのみにフォーカスせず、人間が人生で体験してきたこともきちんと学ばせないといけないと考えています。

セッション2
生成AI/LLMビジネスの最前線

  • 金井 良太 氏

    株式会社アラヤ

    代表取締役

    金井 良太 氏

  • 横山 淳 氏

    株式会社Archaic

    代表取締役CEO

    横山 淳 氏

  • 有馬 幸介 氏

    ストックマーク株式会社

    取締役CTO

    有馬 幸介 氏

  • 西田 京介 氏

    [ファシリテーター]

    NTTPCコミュニケーションズ

    CMO

    佐村 俊幸

2つ目のセッションでは「生成AI/LLMビジネスの最前線」をテーマに、アラヤの金井良太氏、Archaicの横山淳氏、ストックマークの有馬幸介氏によるトークセッションが行われました。

生成AI/LLMビジネスの“いま”

佐村:弊社は大企業のお客さまが多いのですが、昨年の6月ぐらいから中小企業のお客さまからの引き合いが急に増えた印象があります。皆さんは、今このビジネスが中小企業の中でも広がっているという実感はありますか?

金井氏:今のところ、それほどではないと思います。今はいろいろ試している段階。不確かな中で新しいことを試すには、それなりに体力が必要です。まずは大企業が先行して取り組んで、ある程度の汎用性が出てきてから中小企業に広がっていく。今はまだその手前のフェーズだと思います。

横山氏:中小企業が1社1社で取り組むのは効率も悪いし、難しいです。弊社が今、あるエンタープライズ企業と進めようとしているのは、「サプライチェーン丸ごとやりましょう」という話です。エンタープライズ企業がリードして、サプライチェーンのボトムのところまで、一緒にフォーマットを決めて導入していく試みです。これは、すごくいいモデルだと思っています。

有馬氏:AIのレバレッジが効くのはデータのあるところ。当然、エンタープライズ企業のほうが長年データを溜めているので活かす場所が多いです。一方、中小企業もAIを使いやすい状況になってきています。僕が起業した5、6年前は、チューニングにすごくお金がかかる時代でした。今はLLMをそんなにカスタマイズしなくてもかなりの精度が出る水準になっているので、中小企業にとって追い風ではあります。

生成AI/LLMビジネスの課題

佐村:生成AI/LLMビジネスを進めている中で、何か課題に感じることはありますか?

金井氏:LLMがどれくらい正確な答えを返せるかというのは難しい問題で、だから8割ぐらい合っていれば役に立つビジネスを見つけることが大事かなと思います。

あとは、生成AI/LLMが今ブームなので人材が足りていないことが課題ですね。

横山氏:弊社は海外人材が多いです。日本人の優秀なAI人材を採用しようと思うと難しいですが、外に目を向けると選択肢が桁違いに多い。そういった方々と接点を持つことができれば、AI/LLM分野のエンジニアを採用できると思います。

有馬氏:僕ら、実は去年ぐらいまで内定承諾率100%だったんですよ。事前学習モデルをゼロからやっている会社は珍しいので誘えば来てくれたんですが、去年に入ってから採用難易度がものすごく上がっている。でもそれはいいことで、世の中にAIや自然言語処理でやれる楽しい仕事が増えたということ。ただ、企業側はより一層努力しなければいけなくなってきていると思います。

NTTPC 若手社員による特別企画

Innovation LABパートナー各社の先進的な取組みを知っていただきたい!パートナー同士の結びつきを深め、コミュニティをもっと盛り上げていきたい!そんな思いからNTTPCの若手社員が企画・立案し、イベント当日に取材を行いました。ぜひご覧ください!

  • 児玉 務

    法人ビジネス推進本部

    AI/IoTビジネスデザイン部

    児玉 務

  • 山口 怜生

    サービスクリエーション本部

    サービスクリエーション担当

    山口 怜生

  • 重田 拓海

    法人ビジネス推進本部

    ソリューション
    エンジニアリング部

    重田 拓海

  • 多賀 晃之助

    経営企画部

    セントラルマーケティング担当

    多賀 晃之助

教えて!Innovation LABパートナー

今回紹介するのは、デジタル画像処理技術と最先端AIを融合し産業課題の解決を目指すモルフォ社と、クリーンな電力を利用したAIインフラの普及を目指すユーラスエナジー社。先進的な取組みを行う両社に語っていただきました。

  • 株式会社モルフォ
  • 株式会社ユーラスエナジーホールディングス

参加者に突撃インタビュー

イベントに参加された皆さまに若手社員が突撃インタビュー。パートナーとの交流やセッションの内容など、イベントに参加して感じたこと・印象に残ったことを伺いました。

  • アズビル株式会社

    多田さま

    サステナビリティを重要視するtsuzumiの戦略とチューニングの効率性が魅力的でした。
    社内の専門的なカスタマーサポートでの活躍が期待できると思います!

  • 株式会社AIdeaLab

    黒澤さま

    tsuzumiによる図表の理解に期待しています。
    実務での活用を増やしながら、みんなでLLMを盛り上げていきたいです!

  • 東京電機大学

    金田さま

    大学では自然言語処理を研究しています。
    専門家の方々にLLMのお話を伺うことができ、非常に良い機会となりました!

  • 株式会社アラヤ

    野末さま

    Turingさまと自動運転車にエッジAIの技術を組み合わせたLLMを載せることについて議論ができ良い機会になりました!

  • 日本シーゲイト株式会社

    竹永さま

    ストレージメーカーとして、生成AI領域で様々な企業さまとの協業を加速できる期待と熱量を感じた良い機会でした!

まとめ

前田英作教授

予定していた3時間があっという間に過ぎ、イベントは閉会へ。最後に、学校法人東京電機大学の前田英作教授より閉会のあいさつがありました。

「大規模言語モデルの登場によって、おそらく産業革命の比ではない、人間が文字を発明したときと同じくらいの変化が我々人類に起きるのではないかと考えています」と話す前田教授。続けて、「最後に2つほど、5年後の未来予測をしておきます。一つは、手元のパソコンの中で自前のLLMを動かす時代が来るでしょう。それを最初に誰が実現するのか、それがこれからの競争になります。そしてもう一つ、今日ここにお集まりの皆さんの中から大化けする企業が5年後、必ず現れます」と熱いメッセージをいただきました。

パートナー共創プログラム「Innovation LAB」の立ち上げからもうすぐ5年。参加パートナー数は間もなく100社に到達し、今回のMeetupイベントにも数多くのパートナーやゲストが参加され、活況を呈しました。
今回の交流を機に、さっそくパートナー企業同士での情報・意見交換や、早いところではすでに協業の検討も始まっているとか!今後もパートナー企業の皆さまとAI市場を盛り上げていきたいと考えていますのでぜひご期待ください。

会の終わりには、最後まで残ってくださった参加者の皆さまと集合写真を撮りました。