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BIM/CIMの現状と展望 原則適用で加速する建設業のデジタル革新

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就業者数の減少・高齢化が進む建設業界。働き方改革やデータの共有を実現し、それらの課題を解決する取り組みとしてBIM/CIMが登場しました。今回は、当初の予定から2年前倒しして本年度から原則適用が開始されたBIM/CIMについて解説します。

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目次

建設業を取り巻く課題

国土交通省の「令和4年度(2022年度)建設投資見通し」によれば、建設投資(=全建設活動における投資額の推計)は2010年度には42兆円まで落ち込んだものの、東日本大震災の復興需要や景気回復による民間設備投資などもあり、コロナ禍の中でも緩やかな増加傾向をたどり、2022年度には67兆円に達することが見込まれています。

図1 建設投資額(名目値)の推移
(国土交通省 総合政策局「建設投資見通し」より引用)

参考:国土交通省総合政策局「建設投資見通し」

ただし、建設業就業者数から見ると、決して明るい状況とはいえません。一般社団法人 日本建設業連合会の「建設業デジタルハンドブック」によれば、建設業就業者数は2003年度の約600万人から2023年までの約20年間で約480万人まで減少。また、同期間に55歳以上の就業者の割合が26.0%から35.9%へと増加する一方、29歳以下の就業者の割合は17.7%から11.7%へと減少しており、同時に高齢化も進行していることが分かります。
特に高齢化については、全産業平均も55歳以上就業者の割合は24.6%から31.5%に増加、29歳以下就業者割合は20.9%から16.4%へと減少していますが、建設業は全産業平均を上回る高齢化が進行しています。

図2 建設業就業者の高齢化の進行
(一般社団法人 日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」より引用)

参考:一般社団法人 日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」

さらに来る2024年4月には、ついに建設業にも時間外労働の上限規制(時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間まで)が適用され、違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される場合もあります。

人材確保はまさに喫緊の課題といえますが、建設業では現場での作業や立会検査が多く、リモートワークなど働き方改革の導入が困難であること、労働環境などの問題から女性の活躍が難しいこと、専門工事職種での技術継承がスムーズに進んでいないこと、などの理由から、業界全体として人材確保が思うように進んでいない状況にあるといえます。
また、他業種と比較してICTの活用が遅れており、生産性が低いため長時間労働が発生しがちなどの課題もあり、今後の事業継続にも支障を来しかねない状況です。

課題を打破する「BIM/CIM」

そうした課題を打破する取り組みとして、「BIM/CIM」が注目されています。
「BIM」(Building Information Modeling、ビム)は「建築情報のモデル化」で、建築物を建築部材の種類や数量などの情報とともに3次元モデル化(デジタル化)することを指します。
一方、「CIM」(Construction Information Modeling, Management、シム)は「土木情報のモデル化」で、BIMの手法を土木工事の分野まで拡張し、併せて対象を維持管理(マネジメント)まで広げたものです。
国土交通省では2017年よりICTの導入により建設現場の生産性を2025年までに2割向上することを目指す「i-Construction」を推進していますが、BIM、CIMも「BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)」として一体化して再構築し、3次元モデルを活用し受発注者双方の業務効率化・高度化を実現するツールの1つとして位置づけています。
BIM/CIMの具体的な効果としては、まず可視化があります。設計段階から自由に方向を変えたり、拡大縮小したりできる3次元モデルを「見て」確認できるため、設計段階でのミスや施工段階での手戻りを防止することができます。
また、情報共有が容易になるという側面もあります。多くの関係者が共同で業務にあたる建設業では、迅速で正確な情報伝達が業務効率化や残業時間軽減などの課題に大きな効果をもたらします。工事の進捗を確認したり、追加工事が発生した場合に工程を立案する場合にもBIM/CIMはおおいに役立つことでしょう。

現状の導入状況

国土交通省では2019年度に「建築BIM推進会議」を立ち上げ、モデル事業の実施や効果検証などを行ってきました。また、定期的に会議を開催して活動報告を行っています。2023年3月に行われた「第10回建築BIM推進会議」では、関連13団体に向けに行ったアンケートの結果から、2022年12月時点でBIMを導入している企業がすでに48.4%と、約半数におよんでいることが報告されました。
事業所の従業員数別に見ると、2,001人~5,000人規模の企業における導入率87.8%をはじめ、101人以上の企業における導入率が56.2%~87.8%であるのに対し、100人以下の企業における導入率は25.0%~51.9%に留まっています。

参考:国土交通省「第10回建築BIM推進会議」

こうした普及状況や新型コロナウイルスの感染拡大によりリモートワークなどが浸透し働き方が変化してきたことなどを受け、国土交通省は当初2025年度を目標としていた「すべての公共事業にBIM/CIMを原則適用する」という方針(以下「BIM/CIM原則適用」)を2年前倒しし、2023年度から開始しました。
具体的には、発注者が業務や工事の特性に応じて、視覚化に必要な義務項目、そのほか活用に必要な推奨項目を指定して受注側に3次元モデルの作成を依頼し、受注者が3次元モデルを作成・活用するという流れです。インセンティブなども検討されており、国土交通省の「本気度」が伺えます。

BIM/CIMを導入しないリスク

このBIM/CIM原則適用により、適用範囲外となる一部の小規模工事を除けば、BIM/CIMの導入抜きにはすべての公共事業に参加できないということになってしまいます。
しかし、経営上のリスクはそれだけにとどまりません。BIM/CIMを含むi-Constructionへの対応や建設DXへの移行が遅れれば、それだけ企業としての競争力が弱まり、結果として人材確保や価格競争力などの面で不利な立場に立たされてしまう、ということにもなりかねないのです。
また、情報共有の面でもリスクがあります。前述のように、BIM/CIMを活用すればリアルタイムで視覚的に情報の共有が可能となりますが、BIM/CIMを導入しない場合は、連絡不備により予期しない巻き戻りが発生したり、トラブルが発生した際の対応が後手に回ってしまったりといった事態が発生するリスクもあります。
さらにBIM/CIMをリモートで活用できる環境を構築すれば、オフィスだけではなく自宅や建築現場からでもモデルの作製やシミュレーションなどを行うことができます。ロケーションフリーな作業環境の構築など働き方改革を推進する上でも、BIM/CIMの導入は無駄なコストを削減することにつながるのです。

BIM/CIMの導入における障壁

このように建設業界の数々のリスク軽減/競争力強化につながると考えられるBIM/CIMですが、どのような場合においても新たな技術を導入することには困難がともないます。中堅・中小の建設業者が導入を検討する際に障壁となるポイントと、その克服方法をいくつか紹介します。

BIM/CIMを扱える人材の育成

まずは新技術となるBIM/CIMを扱える人材の育成です。BIM/CIMの導入には専用のソフトウェアやツールの活用方法を習得する必要があり、そのことが障壁となるケースです。
先に紹介した「第10回建築BIM推進会議」のアンケート「BIMの導⼊に⾄らない理由」においても、「業務をBIMに切り替えた場合、習熟するまで業務負担が大きいため」(59.3%)、「BIMを活用する人材がいないため、又は人材育成・雇用に費用がかかるため」(51.8%)などの理由が挙げられています。
技術の習得のみであっても負担となるところを、建設業では就業者の高齢化による後継者不足が追い打ちをかけている形です。

システム・ソフト導入のコスト

導入にかかるコストも問題です。BIM/CIM専用のソフトウェアの導入には1ライセンスあたり数十万円のコストが必要となりますし、そのソフトウェアの実行には処理能力の高いパソコンが必要となります。また、場合によっては専門業者によるトレーニングを受ける必要も出てくるかもしれません。
アンケートでも「BIMのソフト等の購入・維持に高額な費用がかかるため」(37.3%)、「高性能のコンピューター等、BIM活用のためのICT機器の導入・維持に費用がかかるため」(26.7%)といった理由があげられています。
特に導入後の費用対効果、維持費については計算が立ちづらく、苦労されている企業も多いようです。

建築BIM加速化事業には補助金の支給も

ただし、コストについては補助金を活用すればある程度負担を軽減することができます。
国土交通省では、2022年度に補正予算80億円規模の「建築BIM加速化事業」を創設し、BIM/CIM導入の加速化を図っています。2023年度末までのBIMモデル作成が対象とされ、BIMの専用ソフトウェア利用料、クラウドサービス利用料、講習委託費などが幅広く補助されます。また、下請事業者などの協力事業者のみでなく元請け事業者やすでにBIM/CIMを導入している企業も補助の対象になるなど、複数の事業者が連携して建築BIM/CIMデータを作成することを想定して設計されています。
また、当初は2023年3月末までとしていた代表事業者の登録期間も9月末まで延長されており、BIM/CIMの導入を目指す企業にも活用しやすい制度となっています。

BIM/CIMを活用する際のポイント

これまでBIM/CIMについて見てきましたが、BIM/CIMの強みを活かしてパフォーマンスを可能な限り引き出すために抑えておきたいポイントがあります。
それは「ロケーションフリー」です。一口に「BIM/CIMで情報を共有する」といっても、実際に情報を共有する場所はオフィス、建設現場、生産現場など多岐にわたります。また、働き方改革の推進にともない、今後は自宅やサテライトオフィス、出張先などからもアクセスする必要が出てくるかもしれません。
しかし、離れた地点から同時にアクセスし、データ量の多い(いわゆる「重い」)3次元モデルを使って説明したり、リアルタイムで編集したりするにはそれなりのプラットフォーム(動作基盤)が必要となります。
BIM/CIMの作業環境を構築する前に、まずは複数の関係者で迅速にデータ共有やデータ編集ができるような動作環境の構築が必要となることをポイントとして抑えておきましょう。初期投資を抑えたい、まずは設計工程に限定してスモールスタートしたい、などの場合には、柔軟性の高いクラウドサービスの利用を検討しても良いかもしれません。

NTTPCコミュニケーションズの「VDIクラウド for デジタルツイン®

NTTPCの「VDIクラウド for デジタルツイン®」は、BIM/CIMの活用を手軽に実現できるクラウドプラットフォームです。クラウド型のサービスのため、機器の購入なども必要なく初期投資を抑えることができます。
オフィスの高性能パソコンを使用するため出社する、という必要はもうありません。クラウド上のGPU/メモリなどのコンピューティングリソースを利用することで在宅勤務が可能となりますし、お互いに離れた場所にいても共同作業が可能となります。「VDIクラウド for デジタルツイン®」は、ロケーションフリーな作業環境で「働き方改革の推進」をお手伝いします。
また、BIM/CIMモデル(3次元モデルに属性情報等を組み合わせた情報モデル)はクラウド上で一括管理でき、大容量データの送受信やストレージへのコピーも必要なく、スピーディで正確な情報共有により「生産性の向上」に寄与します。
また、セキュリティについては接続方式としてインターネット接続のほか閉域網(VPN)を選択することが可能であり、公共事業など秘匿性の高いデータも安心・安全なクラウド接続により保護します。
さらに人材育成面ではオプションとしてペーパレススタジオジャパン株式会社とタッグを組み建設業界向けBIM/CIM専用VDIサービス「ArchiSymphony VBP」を別途提供。BIM/CIMの教育コンテンツからOJTによる実践教育プログラムなどの導入支援サービスとともにすぐに使用開始できるBIM/CIMの実行環境、活用支援などをワンストップで提供します。
オプションは他にも。NVIDIAの3Dエンジニアリング/デザインの協働基盤「NVIDIA Omniverse™ Enterprise」も提供可能。仮想空間上に「デジタルツイン」として建築物を再現し、シミュレーションなどの共同編集が可能となります。

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まとめ

人材不足、働き方改革推進の難しさ、などの課題がある建設業界ですが、今回はそんな課題の解決につながる可能性のある取り組みとしてBIM/CIMを紹介しました。
BIM/CIMで建築物を3次元モデル化すれば、可視化の実現、情報共有の促進などの効果があり、受発注者双方の業務効率化・高度化を見込めるということが分かってきました。実際に、国土交通省が2023年3月に実施したアンケートによれば、2022年12月時点においてすでに約半数の企業が導入しているという結果が出ています。
2023年からBIM/CIM原則適用が決定し、BIM/CIMの導入は必須となりつつありますが、新規導入に当たっては、未だBIM/CIMを扱える人材の育成、システム・ソフト導入のコスト負担など様々な障壁があります。建築BIM加速化事業の補助金なども活用し、無理なく導入を進めていきましょう。
また、導入前には後悔しないプラットフォーム選びに注力することもお勧めしておきます。

※ICT Digital Columnに記載された情報は、リリース時点のものです。
商品・サービスの内容、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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